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月刊ガバナンス平成22年11月号
続アサノ・ネクストから 第2

片山総務大臣に期待する

 2007年10月号の本欄で「増田総務大臣に期待する」を書いた。今回は、片山善博総務大臣への期待である。片山大臣とは、知事仲間、同じ慶応大学教授、そしてテレビのコメンテーターでも一緒であり、何かとご縁が深い。鋭い問題意識と政策突破能力だけでなく、その人柄も含めて尊敬している私としては、個人的にも大いに期待し、応援をしたいと思っている。

 片山大臣は、改造菅内閣の目玉閣僚と言われ、民間からの登用ということで注目を浴びている。範囲の広い総務省の仕事の中で、私が最も期待しているのは、地域主権改革の実現である。とは言っても、そんな生易しい課題ではない。国のかたちを大きく変革する一大改革である。地域主権に抵抗する官僚の存在がある。国民一般の中に、地域主権を望む声も広がってはいない。

 前回書いたことだが、この改革実現のためには、必要な大小の仕事をきっちり担っていく、継続的で強力な戦う軍団が必要である。具体的な制度の改正であり、そのためには、膨大な数の法律改正もやらなければならない。一体、誰がその仕事を担うのか。

 地域主権改革のむずかしさは、改革の必要性が、国民の間では必ずしも強く認識されていないことである。なんとなく、イメージとしては良さそうだから、反対することはないが、強く望むほどでもない。国と地方の権限・財源の綱引き合戦に過ぎず、勝手にやってくれという見方もある。国民一般のこういう受け止め方をどうするか。

 その意味で、片山大臣が、地域主権の問題を住民自治という観点から重視していることに共感する。

 地域主権の問題が、政府対首長レベルの問題として前面に出ている中で、住民自治の深化ということこそが本質であることを忘れてはならない。住民が、自分たちの地域のことは自分たちで決めることができる、そういった意見を反映できる範囲が広がることが地域主権の趣旨である。そうなれば、地方議会の役割も大きくなる。

今できることとしては、住民と議会との関係について、住民が地方議会の解散や条例制定を求める直接請求制度の見直しがある。この見直しも含め、片山大臣には、地方議会のあり方について改革を進めようという姿勢がある。こういった実績を重ねながら、地域主権が住民にとって、民主主義の基本であるということがわかってもらえるだろう。

  名古屋市では、議会解散をにらんだ直接請求の署名が集まり、鹿児島県阿久根市では、住民を巻き込んで市長と議会とのバトル(これは悪い例)など、自治体行政への住民の関心が高まっている。

  それにしても、片山大臣は大変である。総務省には、行政管理、郵政の仕事もある。なによりも、民間からの登用であるので、他の閣僚との関係もむずかしくなる局面も出てくるだろう。そして、政権が必ずしも安定しているわけではなく、政変で大臣交代などとなったら、大変に困る。知事時代から、出身の自治省の官僚には厳しかった片山大臣である。内外の敵と戦いながら、成果を挙げて欲しい。


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