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月刊ガバナンス平成25年2月号
続アサノ・ネクストから 第29

若年層の低投票率

 昨年末の衆議院議員選挙。自民党の政権復帰が、選挙結果のハイライトである。その強い光で霞んでいるが、投票率が59%と戦後の総選挙では史上最低だったことを見過ごしてはならない。今回投票に行かなかった40%の有権者、特に極端に投票率が低かった若者たちに言いたいことがある。

 全体の投票率が低いことも問題であるが、若年層の投票率が極端に低いことが気になって仕方がない。若年層が選挙で投票しない理由として、「投票しても何も変わらないから」を挙げるものが多いが、それは大間違いであることを強調したい。

 政権が政策判断をする際には、高齢者に配慮した内容になるように心がける。70歳〜74歳の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる法改正が小泉政権時になされたが、民主党政権では1割に据え置かれた。安倍政権でも、来年度に本来の形である2割に戻す決断はできないだろう。参議院議員選挙が、それでは戦えないからである。

 こういった例は、年金の分野にもある。受益者と負担者の関係では、負担者たる若年層の犠牲の上に、受益者である高齢者の利益が優先される。

 「自分が投票しても何も変わらない」といって投票に行かない若者たちよ。君たち世代の投票率が低いことを政権側に見透かされている。「若者に不利になる政策を選択しても、選挙では負けないから、やっちゃおう」となっていいのか。若年層の投票率が上がることで政策は変わり得る。そのことに気がつくべきである。

 投票したい候補者がいないなら、白票を投じればいい。今回の選挙では、無効票が204万票と史上最高だったが、それによって投票率はそれだけ上がったことになるのだから。棄権は、投票率にカウントされない。

 「自分は政治に興味がない(だから、投票なんか行かない)」というのを、「プロ野球に興味がない(だから球場なんか行かない)」と同じに考えてはいけない。巨人が優勝しても、最下位でも、自分の生活にはなんら影響はないが、政治のありようは、生活に影響を及ぼす。さらにいえば、「明日の天気は変えられないが、明日の政治は変えられる」のである。

 「投票で何も変わらない」ということについて、もう一言。投票すれば、あなたが変わる。政治に関心を持つようになる。投票した候補者が当選したら、その人が議員になってからの政治活動にも無関心でいられなくなるだろう。選挙にも行かないでおいて、「今の政治は全然ダメだ」などとほざいてもらっては困る。

 民主主義の発展途上国で、初めて選挙が行われた際に、嬉々として投票所に出向く人たちの様子が報道されることがある。その映像を見て、何とも感じないのか。平気で棄権をする若年層の姿に、我が国の民主主義ボケを見てしまう。

 他にすることがあるのに、天気が悪いのに、それでもなお、投票所に足を運んで、投票用紙に記載する。その「めんどくさい」行為が、政治的関心の現れである。ネット投票には、その契機がない。私はネット投票には慎重派。理由はわかってもらえるだろう。


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