浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

月刊ガバナンス平成27年2月号
続アサノ・ネクストから 第53

学生に説く、投票のすすめ

 大学で地方自治論の講義を担当している。受講生は20歳代前半で、選挙権を得たばかりというところ。「選挙について」というテーマでの授業で、履修学生への意向調査として、「投票せず」の理由を記述させたことがあった。

 一番多い理由が、「政治に関心がない」である。以下、「誰に投票していいかわからない」、「投票しても何も変わらない」と続く。この結果を得て、彼らを投票に行かせる算段の必要性を強く感じ、次の授業で反論をすることにした。  「投票は、権利であるだけでなく、国民の義務でもある」、「選挙での投票は民主主義の基盤である」といったお題目は、投票忌避学生にはアピールしない。一つ一つの理由(言い訳)に反論しなければならない。

 まず、「政治に関心はない」への反論から。政治に関心がないのとプロ野球に関心がないのとは、まるで意味が違う。プロ野球で、どのチームが優勝しても、君の生活にはなんらの影響がない。しかし、政治に関心はない、だから投票に行かないという人も、選挙結果がもたらす政治のありように否応なく影響を受ける。

 さらに続ける。政治に関心がないという諸君も、まずは投票をしてみろ。そのことで君が政治に関心を持つきっかけになる。投票しても何も変わらないという諸君も、投票することによって君自身が変わることを実感する。君の社会的年齢が5歳分上がる。

 選挙で誰かに投票したら、開票結果でその人が当選したかどうか気になる。当選した候補者は、首長か議員になるが、その後のその人の動向に関心を持つようになる。それもその人に投票したからこそ。

 「投票したい候補者がいない」というが、まずは投票所に足を運べ。投票ブースには候補者の氏名が掲示されている。候補者の政策が理解できなくとも、選挙ポスターの写真が感じが良い、年齢が若いといった自分なりの指標で選んでもいい。  選びたい人がいなければ、自分の名前を書いてもいい。白票でもいい。そういった無効票でも投票率にはカウントされるから。

 この説明に説得力を持たせるために、若者の投票率が低ければ、人数も多いうえに投票率も高い高齢者に比べて、政策上冷遇されることを覚悟しろと補足する。政治家は年代別の投票率もしっかり見ているんだぞと続ける。この脅しは、結構効果がある。

 授業の別な機会に、2014年12月の衆議院議員選挙での投票行動について、履修者127名の調査をした。「投票した」65名、「投票せず」62名、「投票率」51%という結果である。「投票せず」62名中少なくとも15名は、「住民票が実家にあるため」という理由である。首都圏にある大学の学生ゆえということだろう。次回の選挙機会のために、不在者投票制度を説明しておいた。

 私には、「民主主義の国においては、選挙で投票することは、説明なし、理屈なしの絶対善である」という信念がある。20歳を超えたばかりの学生には、選挙投票デビュー戦の段階で、棄権する屁理屈を許さない。それを説くのが、「地方自治論」を講ずる自分の義務であると思っている。      


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