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シローの走り書き

走るクマ

ここまでの楽天 その2

2005.7.12

 ここまで(7月10日現在)の楽天、83試合、24勝58敗1分・勝率0.293、5位日本ハムと13ゲーム、首位ソフトバンクと33.5ゲーム差でパ・リーグ最下位に沈んでいる。サンデー・モーニングで関口宏さんは「パ・リーグは2強3弱1番外」と評していたが、その「番外」という位置である。

 番外ではあっても、このチームを応援する地元の熱気は、どこにも負けない。楽天の試合を見に来るファンは、一つアウトを取れば勝利したかのように喜び、一つ試合に勝てば優勝したかのように熱狂し、逆転サヨナラ勝ちでもしようものなら、世の中ひっくり返ったかのように狂喜乱舞する。そういうファンは、プロ野球どこを探してもない。勝つか負けるかの前に、ここでプロ野球の試合をやってくれるだけで感謝感激、心から応援できるチームがあるだけで幸福満足ということである。

 私はここまで15試合ほど見に行った。フルキャスト・スタジアム宮城での緒戦の対西武16対4での大勝利、次の試合での松坂大輔投手を打っての連勝が強烈に印象に残っているが、それ以外は「あーあ」、「またダメか」という想いで球場を後にすることが多かった。負けた試合でも、9回裏の最後のバッターまでしっかり応援し、見届けるという立派なファンとしての姿勢は崩していないのだが、観戦の戦績はいばれるものではない。

 オリックスと近鉄がいい選手を取り終えて、その後「どうぞ」と示された選手で、どう戦えばいいのか。「よくぞ来てくれた磯部、岩隈」という幸運がなければ、一体どうなっていたのかと、ぞっとするような戦力である。そういった運命でのスタートだったものだから、この「走り書き」の4.6号では「ここまでの楽天、意外といいじゃないか」という書き方になった。

 「この戦力で」ということでいえば、ピッチャーの年齢のことがある。37、38歳が主力。20代後半なら「若手」の部類である。ヴェテランと呼べば聞こえはいいが、既に全盛期は過ぎている。経験だけで勝てるほど甘くはない。外人勢に期待するしかなかったのだが、ラス、スクルメタは二軍から戻って来ないし、ホッジスも二軍落ちのまま。頼みの岩隈でさえ、ずっと勝てなかった。先日のロッテ戦で勝って、やっと6勝8敗である。咋シーズンの「開幕13連勝」の印象が強過ぎたせいもあるが、ここまでは期待を裏切っている。新人一場は、なんと「開幕7連敗」。バッター陣も、外人勢が期待どおりの力を発揮していない。

 こんなことを書き連ねるつもりはなかった。「にもかかわらず、がんばっている」ということのほうを書きたい。特に、最近のがんばり。終盤のねばりが顕著である。3試合連続の終盤での逆転勝ち。3対6で負けていた試合をテレビで8回裏まで見ていて、30分ほど会合出席で抜けた後にテレビを再びつけたら、楽天のユニフォームを着けた選手がヒーローインタヴューを受けているのには目を疑った。大島の9回裏満塁走者一掃逆転三塁打である。この感動だけで、今シーズンは「お腹一杯、ご馳走様」と言ってもいいぐらい。その翌日も大逆転。その前日もだったろうか。記憶がさだかでない。3戦連続逆転勝ちの次の試合、対ソフトバンク戦では、7対0から同点に追いついた。

 うれしいじゃないですか。けなげといってもいい戦いぶり。よくぞよくぞ、この戦力で。この逆転劇、そして7点差追いつき劇を見ていて、「これで、大差で負けている試合でも、9回裏の最後のバッターまでファンは球場を去ることはなくなるな」ということを思っていた。これが楽天ファン気質であって欲しい。負けても負けても、試合をやってくれるだけでありがとう。その感謝の気持ち。ましてや勝ったりしたら、しかも逆転サヨナラなんてしてくれたら、思いがけないプレゼント。ありがとう、ありがとう。この気持ちをなくさずに、ぴったり息の合った応援ぶりでなくとも、心のこもった応援で選手を励ますことができるだろう。

 そういう、新しいスタイルの応援を示しているということだけでも、楽天の存在価値はある。楽天ファンとして胸を張っていい。番外と言われようが、百敗するぞと脅かされようが、めげることはない。ここまでの楽天。いいよ、本当にいいよ。



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