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シローの走り書き

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郵政国会の混迷

2005.7.26

 国会が終盤を迎えて、混迷している。郵政民営化法案を巡って、参議院で自民党から18名の反対があれば、法案は否決される。「そうなったら衆議院の解散もあり得る」というメッセージが浮遊しているからである。

 まずは、郵政民営化の理念がよくわからない。私がわからないというよりは、国民の間で「なぜ郵政民営化なのか、そうなると今より世の中はよくなるのか、今のままだと何が問題なのか」という疑問が解消されていない。「郵政民営化」を「三位一体改革」と置き換えても、なんとなく当てはまってしまうのは悲しいのだが、それはさておきである。

 わからないという以上に、これが目下の日本における一大事なのかということへの疑問は、さらに大きい。この点は、三位一体改革とは一味違う。三位一体改革ならぬ地方財政自立改革、そして地方分権への大きなうねりは、時代の要請である。これもさておき、「何がなんでも、今のこの時期に郵政民営化」という小泉首相の姿勢には、大きな違和感が伴う。

 そして、政局である。参議院で否決されれば、衆議院の解散があり得るというのは、由々しきことである。憲政の常道からいけば、とても理解不能。しょせんは、政権党である自民党の内部の混乱ではないか。法案反対者には党内で厳正な処分をする、それが党内分裂につながるかどうかは、国民の関心の埒外である。それにしても、解散で国民に一体何を問うのであろうか。とは言え、解散権は首相にある。解散の理由、大義名分は、極端に言えばなんでもいい。

 郵政民営化法案の行方がどうなるのか、今はわからない。衆議院解散があるのかどうか、これはさらにわからない。それにしても、これは政局の混乱であることには変わりはない。政局の混乱は望むところではないが、混乱後に現れるであろう新しい政治の姿には期待がないわけではない。

 大事な政治課題に果敢に立ち向かう政権であって欲しい。小泉内閣が継続していることも想定しつつであるが、現内閣にあっても、郵政民営化には一応の決着がついていることを前提に、残された重要課題の解決に全力を挙げるべきである。

  我々地方側にとっては、三位一体改革(地方財政自立改革)への決着を断固つけてもらわなければならない。霞が関の「言い分」に耳を貸すのは、いい加減なところでやめるべきである。各省大臣も、事務当局の代弁ではなく、内閣の一員として国家百年の大計に立った判断をすべきように促し、首相とすれば、さもなければ造反議員に処分をするよりも、さらに断固たる姿勢で反対閣僚の進退まで問うのがよい。

  国際関係も、もどかしい状態である。国連常任理事国入り、中国、韓国などとの関係正常化。これらは、日本として、アジア諸国との連帯を強めていく姿勢を明確に出すことが、解決の唯一の方策という点で共通している。非核、平和主義を前面に掲げて、アジアの近隣諸国の理解と協力を得ることが必須であるが、小泉政権がそういった方向で対処しているメッセージは伝わってこない。靖国問題もこの文脈で対処すべきことである。

  「解散すれば自民党は総選挙でまちがいなく敗北する」と自民党幹部が予測している。解散に至る事態を避けようとする牽制的な発言なのかもしれないが、そのとおり自民党が敗北して新しい政権が誕生するということが、日本国民にとって吉と出るか、凶と出るか。

  「二大政党制下の政権交代があり得る政治状況」というのは、それ自体望ましいことであろう。政権に緊張感と責任感をもたらす。「政権交代があり得る」という状況から、現実の政権交代へ。このほうが、改革は徹底する。一時の政治的混乱状況はあるであろうが、それも生みの苦しみのようなもの。必要なプロセスと見るべきだろう。

 政権交代で私が期待しているのは、霞が関の大掃除である。一党による長期政権の中でたまりにたまった汚れをきれいにするのは、政権交代時の最優先課題である。「汚れ」ということだから、スキャンダルのにおいもする案件である。この大掃除だけでも、政権交代の意義はあるというべきだろう。

 郵政国会の混迷から、話がずいぶん進み過ぎたかもしれない。「走り書き」であるから、想いはついつい先走ってしまうのである。



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