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9.11衆議院議員選挙

2005.9.6

 衆議院議員選挙は、9月11日の投票日を目前にして、各地で盛り上がりを見せている。「小泉劇場」とも呼ばれる劇的効果もあってか、これまでの同種選挙ではなかったような関心の高まりも報道されている。

 関心の質が問題ではある。面白がっているだけの関心では、深みのあるものとは言えない。ワイドショーでの盛り上がりが、そのまま投票率の高さに結びつくかどうか。ホリエモンこと堀江貴文さんが広島6区から、無所属で立候補している。田中康夫長野県知事が代表を務める新党の誕生も、面白い。面白過ぎる。話題性としては十分であるにしても、選挙全体としては、それがどうしたということになろう。

 選挙は話題性だけではない。政権交代に結びつく選挙であるから、政策がどうであるかが決定的に重要である。その意味では、各政党の策定したマニフェストに注目である。自民党としても、郵政民営化の是非一本というわけにはまいるまい。もっと大きな問題はある。社会保障、外交、財政、地方分権などなど、争点にしないではすまない。

 郵政民営化問題での解散ではあったが、ここにきて、他のことも争点であることは、国民の間にも浸透してきている感がある。地方自治体に身を置く立場からすれば、地方分権、地方財政自立改革(三位一体改革)にどう取り組むのかということが、とても大きな争点であるとは思うのだが、なかなか浮上してこないのは、残念ではあるが。

 以前からの持論であるのだが、政策の中身そのものもあるが、それを超えて、政権交代の是非ということこそが、争点であっていいのではないかと考えている。狙いは、「霞が関の大掃除」ということになる。同じ政権が長く続けば、組織にはゆるみがくる。高をくくると言い換えてもいい。特に、お金の使い方について顕著である。裏金疑惑などはその最たるものであろう。

 組織におけるマネジメントの問題といったアプローチもある。全国知事会の「国の行財政改革検証委員会」のメンバーとして、霞が関における遅刻について指摘したことがある。幹部職員の朝の出勤が10時というのは、一体どうしたわけだ。夜が遅い、電車が混む、家が遠いというのは言い訳にならない。民間会社の職員だって同じではないか。つまりは、遅刻をとがめる人が、組織内には誰もいないということである。大臣がその役目を果たしますか。事務次官ですか。つまりは、マネジメントの不在がここにも出ているということではないか。

 出勤時間が遅いなんてことは小事である。しかし、小事がきっちりと守られない組織に、もっと大事なことが守れるはずがない。お金の使い方しかり、職員の規律しかりである。同じ政権が長く続くうちに、澱がたまってしまう。秘密が露見しないということからくる、やりたい放題というところにまで行ってしまう。情報公開の問題でもあるのだが、そういった部分の大掃除のためには、政権交代というところまでいかないと、とても無理ではないのか。近頃、そんなことを強く思うようになった。

 外交における継続性とか、その他の政策も継続していくことが重要であるということもよくわかる。それと、同じ政権が長く続くことによる組織規律の弛緩とを、どう比べるのか。一度は、どこかで、ガラガラポンをしなければ、前に進めないのではないのか。そんなことを考えながら、今回の選挙を眺めている。

 人それぞれによって、今回の選挙に何を託するのかは違っている。違っていい。しかし、眺めているだけでは変わらない。最低限の義務として、権利として、投票するということはしなければならない。「必ず投票に行く」というのが7割という調査結果を目にしたが、それがどの程度本物だったかを、9月11日確かめるというのも、もう一つの興味ではある。



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