宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

シローの走り書き

走るクマ

香港にて

2005.11.9

 12年前に知事に就任して、最初の海外出張の行き先が香港であった。1994年2月のこと。前年に香港のドラゴン航空が、仙台空港と香港とを結ぶ定期路線を開設していた。そのことを記念しての香港行きであったと記憶している。

 今回、11月6日―8日の日程で香港再訪。仙台・香港の定期路線の再開を求めてのポートセールスである。ドラゴン航空は、2年前に、SARSの発生による旅客減を理由に定期路線を休止した。当方からは、せめてチャーター便の運行は続けて欲しいと要望したが、聴き入れられなかった。ドラゴン航空は、その後、仙台オフィスも閉鎖してしまった。

 昨年からは、キャセイ・パシフィック航空がチャーター便の運航を開始した。これが好調で、これまで14便の搭乗率は平均で85%以上である。今回の出張も、仙台空港からのチャーター便で香港入りしたが、300人満席。我々一行5人を除いて、すべて、東北旅行に来られて帰国する香港からのお客様であった。

 仙台・香港の定期路線の再開をすぐに求めるのは、客観情勢からしてなかなかむずかしい。そもそも、日本政府が香港の航空会社に認めている路線枠は、香港側としてすべて使い切っているので、政府間協議で枠の拡大が合意されない限り、実現は無理である。つまり、我々としては、香港側に要請するより先に、日本政府に頼まなければならない性格のものということになる。

 それでも、今のうちから、仙台空港路線の優位性と我々の熱意を売り込んでおかなければ、次の情勢の変化に対応できなくなる。そんな想いもあって、香港政府、キャセイ・パシフィック航空に知事としてのトップ・セールスをかけたということである。幸いに、お会いいただいた方々のご理解とご支持は、十分にとりつけることができた。キャセイ航空のCEOであるPhilip Chen氏とお会いした時には、彼の著書(香港で現在ベストセラーとのこと)をいただいたが、その中にも、宮城県の魅力について書かれていた。想いは十分に伝わっている。

 そういった要請活動とは別に、12年ぶりで再訪した香港の様子も、印象的であった。高層ビルがびっちりと立ち並び、車が途切れることなく行き交う姿に、街全体のエネルギーが感じられるのは、12年前と大きく変わってはいない。変わったかなと思えるのは、街全体が整然としてきれいになったこと。1997年の英国から中国への返還の影響が、こんなところに出ているのかもしれない。

 中国本土の上海、北京、大連などが活況を呈しているとはいっても、歴史と伝統のある香港には叶わない面がある。金融、物流、証券取引など、しっかりとした制度に裏付けられた信用と安心感は、各国のビジネスマンにとっては大きな魅力であり続けている。街を歩く人たちの服装も物腰も、高い教育程度を反映してか、どこか落ち着いているし、魅力的である。短い期間の旅行者に過ぎない者の目で簡単に判断してはいけないと思いつつ、中国本土の各都市が香港と同程度になるのには、まだまだ時間がかかりそうな気がする。

 知事としての最初の海外出張が香港であったが、最後の出張先も香港ということになってしまった。これも何かの因縁であろう。仙台・香港の定期路線が再開されたら、今度はプライベートでゆっくり遊びに来る機会も増えることになる。そんな期待も持ちながら、香港空港から帰路についた。



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