宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記

2001.8.11

 仙台メディアテークでの、「イヌイットアート展」のオープニングに出席。私も、仙台実行委員会の委員として、準備会に参加した経緯がある。イヌイットとは、「人々」という意味であるが、私達の世代には、「エスキモー」という名でなじんでいる人達である。

  彼らの生き方は、必要な物しか作らない、作ったものはすべて使い尽くすというもので、地球環境問題を考える先駆けのような役割を果している。そんなことが、国連の環境委員会の評価するところとなり、極北の芸術としてのイヌイット展が世界各地で展開されている。

  その作品は、素朴で単純なのだけれど、ユーモラスで、とても温かみがある。「触ってもいいよ」という作品もあり、親しみを感じる。文化とは生き方そのものであり、大量生産、大量消費、大量廃棄の「文明国」としては、今こそイヌイットの生き方から学ぶべきであろう。宮城県内でも、お米ができ過ぎたとして、青刈りをしなければならない状況である。一体、どちらの社会が豊かだというのだろうか。

  ぜひ、小中学生にみてもらいたい。二十一世紀の豊かさとは何かということを、考える契機になればいいなと思いながら、展示を眺めていた。

  おなじメディアテークで、そのあとに「センス・オブ・ワンダー」という映画の上映会があって、そちらにも顔を出してきた。「沈黙の春」という著作で、1960年代に農薬による環境汚染に衝撃的な警告を与えた、アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンの同名の作品を、日本の監督が映画にした。

  私は、いろいろな場面で、「センス・オブ・ワンダー」ということを引用している。驚きを感じる感性とでも言おうか。環境教育のキーワードであるだけでなく、教育そのものを解き明かすキーワードでもある。「知る」ことよりも、「感じる」ことが何倍も重要、教育とはまさに「感じる」、「驚きを感じる」ことを育てることという、カーソン女史の信念は、心に染みる。

  それよりもなによりも、知事業も、「えっ、これは一体なんなんだ?!」と驚きを感じる感性をなくしては、務まらない。知事業に限らず、どんな仕事でもそうだろう。この感性をなくせば、停滞、マンネリ、無気力、現状支持ということになってしまう。そういったことを戒める言葉としての「センス・オブ・ワンダー」である。

仙台二高の同級生、小野正之君がレイチェル・カーソン協会の会員で、今回の上映の責任者でもあった。彼の勧めもあっての映画観賞であったが、おかげで興味深い映画を見ることができた。午前中の「イヌイット展」もあり、地球環境づいた一日と言える。

  走るほうは、結構蒸し暑い中で、皇居一周。渋谷秘書は、坂道途中までは並走だったが、どうも彼にとっては、だらだら長いあの坂が鬼門のようで、今日も「そこまで」。汗がしたたり落ちた7K。


2001.8.10

 宮城県知事選挙の日程が今日決まるということで、各社が取材に来られた。「ところで、知事、三選出馬するんですか」という質問である。昨日まで、「ともかく、今年の11月末の任期まで、一所懸命知事としての職務を務め上げようということで、頭が一杯。もう4年やるかどうかを決めるところまで至っていない」と思っていた。一日経って、それがコロッと変わるということではない。

 取材を前にして、「ごめんね、何もニュースになるようなことはないからね」と言っておいた。取材を終えて、また同じことを言ったら、「それがニュースなんです」と返されてしまった。

 「官製談合のことがあるから、決められないのですか」という質問もあったが、ちょっとポイントがずれているような気もする。懸案は、財政危機などたくさんある。官製談合の問題は、粛々とやり遂げて行くだけであるので、特に、それがどうこうということはない。

 今日もまた上京。北川三重県知事、橋本高知県知事と3人で鼎談をする。それを本にしたいという企画があるようで、今日は半日ホテルに缶詰でその収録。実に、休憩なしで6時間ぶっ続けであった。両知事の話がとても興味深い。参考になる。本になるかどうかはともかくとして、気の合ったこのメンバーと会って話ができるのは、真夏の夜の夢、つまり心踊ることではあった。

 長い距離を走るには、やや寝不足気味だったので、今朝のジョギングは4Kだけにしておいた。それでも、走後はさわやか、気持ちいい。


2001.8.9

 東京日帰り。行きも帰りも仙台東京間ノンストップの新幹線で、所要が1時間36分。 用務は、宮城県の政策顧問をしてもらっている月尾嘉男東京大学教授とのテレビ対談の収録である。

 月尾先生は面白い。ベストセラーになっている「IT革命のカラクリ」で対談相手の田原総一朗さんが言っていることだが、「危険なほどに過激。東大教授という肩書きがなければ、彼の話はどんなテレビ、新聞、雑誌も載せないのではないか。そう思うくらい危ない話が多い」という評価である。

 でも、今日の話に限って言えば、そんな危険なものではない。むしろ、実に具体的な説得力をもって、本県の進むべき方向を示唆して下さった。「面白い」と私が言うのは、その興味の範囲がとても幅広く、未来を先取りしていると思えるからである。建築学から入って、今やわが国のIT分野での第一人者である。そして、環境問題への鋭い問題意識は、完全に時代の先を行っている。テレビの収録がうまくいったというだけでなく、とても有益な時間を持つことができた。

 仙台に帰り来て、いろいろ仕事をこなして、今日は6時過ぎに帰宅。久しぶりに自宅で夕食。阪神ファンの私としては、「金権」巨人を打倒してくれと叫びながら、テレビ観戦の時間である。

 夏の高校野球では、地元仙台育英が沖縄の宜野座に完敗。春と全く同じスコアで「リベンジ」されてしまった。応援していた私達も悔しいのだけれど、戦った選手達はどんなにか悔しかったことか。でも、こういうことも、人生にはあるものだ。ご苦労様と声をかけてやりたい。

 朝の出発は早かったけれど、いつものように、「ゼロよりはまし」の精神で、霧雨の中、3Kだけ走った。それなりに、いい気持ち。


2001.8.8

 朝6時から、水を2リットル飲んでいた。単なる水ではない。決してうまい味とはいえない薬を溶かした水である。これを1リットル飲んだ頃から下痢が始まり、腸の中のものがすっかり排泄されることになる。ビール大瓶3本分ほどの水を1時間半ぐらいの間で飲み干すのは結構苦痛である。

 腸内の内視鏡検査に先立っての必須の手続きが、この「水飲み排泄」である。市内のある病院で、2年に1回この検査をしてもらっている。同時に胃カメラも。軽く麻酔をしての検査だし、先生の腕も抜群なので、全く苦痛を感じないうちに終わる。

 結果はその場で出る。カラーの胃と腸の写真を見せてもらいながら、解説を受けるのだが、全く問題なし。きれいなものである。腹に一物もないことが、今年も証明された。

 腹に一物はないのだけれど、言いたいことを言えなくて、「腹ふくるる思い」というのは、知事業をやっている間には、たまにある。言われっぱなしで、「腹が立つ」ということもないわけでない。しかし、それらをじっとこらえるのも、知事としての仕事の一つ。そう自分に言い聞かせながらの日々である。なーに、こんなもの、ジョギングの5キロもすれば、消えてしまうほどのものである。

 そのジョギング、今日もこういう次第でできず。しかも、今朝は雨模様でもあった。明日も朝のお出かけは早いのだけれども、ちょっぴりでも走ろうと思う。


2001.8.7

 朝起きたら雨模様。仙台七夕の3日間は、結構雨に見舞われる。そんなことを思い出しながら、「今朝のジョギングは中止」と宣言した。

 10月27日に開会式を迎える、全国障害者スポーツ大会の出場選手決定書の交付式が午後から県庁講堂で行なわれた。長野パラリンピックの感動を受けて、障害者のスポーツ大会を統一大会で開催しようという機運が高まり、その結果としての第1回大会が本県で開催される。「統一」というのは、身体障害者と知的障害者の大会の統一のことである。宮城県と仙台市の大会では、ずっと以前から「統一大会」であった。それを全国規模でやろうということ。

 記念すべき第1回大会の選手として、248名の人が選ばれた。誇らしげな選手達に決定書を渡す役を務めた私も、誇らしげである。新しい歴史がここから始まる。10月の大会を、ぜひとも成功に導きたい。


2001.8.6

 「官製談合」に関して、先週の火曜日に内部調査の結果を発表した。今日の定例記者会見では、「どうして告発しないのか」という質問が相次いで、対応に追われた。宮城県という公的機関が告発をするということは、相当程度に犯罪と確信するだけの材料を得て、関係する相手方の調査もした上で初めて「やるべし」となるものである。漠然たる事実に基づいて発動すべきではないと思うのだが、記者諸兄は必ずしもそうは考えないようだ。

 わが宮城県庁から、二度と「官製談合」などと指弾されることは繰り返してはならない。そのために、職員のぎりぎりの生の声を収集したわけだが、「あなたの名前は外に出さない、関係者の名前も出さない」という条件で初めて、処分を受けることになる可能性など、自分にとっては極めて不利な状況に自ら追い込むような供述を得ることができた。

 それ以上の、捜査に関わることは、我々が主体的に行動することは無理だ。能力も、権限もない。捜査当局の働きかけには真摯に対応するのは当然であり、そうするつもりである。「名前は出さない」という約束の下にやった調査であるし、一方では捜査当局の意向もある。思い悩むのである。いずれにしても、この問題には逃げることなくしっかりと対応するつもりである。

 連日の疲れもあるので、今朝のジョギングは軽めに、4K。ジョギングコースの道すがら、昨夜の七夕前夜祭の花火大会の片付けのごみ集めをやっている集団にでくわした。花火大会を主催した仙台青年会議所の人達のほかに、常盤木学園の学生さんがたが一所懸命清掃に精を出している姿に感銘を受けた。 


2001.8.5

 サンデーマラソンクラブ(SMC)で6K。総計で10K。今朝はとても涼しくて、走るほうとしては絶好の条件。昨日18Kを暑い中で走ったせいで、軽く筋肉痛があったが、走るのには全く支障なし。疲れも残っていない。

 涼しいといっても、またすぐに暑さが戻ってくるだろう。7月の記録的な暑さもあり、米の出来からすると順調過ぎるぐらい。

  「過ぎるぐらい」と書いたのは、全国の米の作況指数が100を超えると、減反をさらに強化しなければならないことが頭にあるからである。減反といっても、既に作付けをしているのであるから、青田刈りなり食用以外の使途に回すことを意味する。これでは、米づくりに汗を流す人達のやる気がそがれてしまう。豊作を心から喜べないという状況になって、どれだけ経つだろうか。


以前のジョギング日記はこちら
 2001年8月第1週分
 2001年7月第4週分
 2001年7月第3週分
 2001年7月第2週分
 2001年7月第1週分
 2001年6月第5週分
 



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