浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記  7月第5週分     

2010.7.31(土)

 暑い暑い7月も、今日で終わり。今年も、残り5ヶ月となった。一日過ぎるごとに完治のゴールが近づく。そう思っている私にとっては、時の流れの速さは、嘆くものではない。骨髄移植から早く一年が過ぎて欲しい、その願いのほうが大きい。

 今朝の散歩20分は、日の当たる中だった。東海大学の加藤俊一医師から、「紫外線は慢性GVHDを誘発する」との注意喚起のメールがあった。帽子、マスク、長袖シャツ、長ズボンを着用の上で散歩するべしとのコメントがあったが、もちろん、そのようないでたちで散歩をしている。それでも、夏の朝の太陽光線はきつい。GVHDを誘引しては困るので、しばらくは朝の散歩をやめにして、夕方だけにしようかなと思っている。

 臨時国会が始まった。今回は、会期は短いが、波乱含みである。民主党の両院議員総会では、菅首相は参議院議員選挙の大敗の責任を取れという声が、多くの民主党議員から起きた。9月の代表選挙では、菅氏を代表の座から降ろそうという動きにも受け取れる。「せっかく政権を取ったのに、鳩山首相が短期間で辞職し、菅首相はまだ何もやっていないという時期なのに、ここでまたまた代表の顔の挿げ替えかよ。民主党もいい加減にしろ」と怒っている人たちがいる。

しかし、両院議員総会での「菅首相は責任を取れ」という声が、どこまで本気か、疑問符がつく。衆人環視の場である。そういった場で、逆に、執行部への責任追及の意見が出ないとなると、「民主党は反省していない。政権にしがみつくだけだ」との批判が出るに決まっている。そういったことを意識したシナリオに基づく演出とまでは勘ぐらないが、両院議員総会での責任論続出をもって、民主党の内紛勃発といったふうには決め付けないほうがいいとは思う。9月の代表選で、本当に菅氏を代表の座から引き摺り下ろすようなことがあるとすれば、その時には、私の不明を恥じつつ、民主党を見限りたいと思う。


010.7.30(金)

 「ジョギング日記」のホームページへの掲載を再開した。日記は昨年の6月の入院以来ずっと書き続けていたが、掲載するだけの余裕がなかった。今回は、再度の入院治療の最後のほうから始まっている。6月12日からは散歩の日課が始まったので、「ジョギング日記」ならぬ「ウオーキング日記」である。いずれウオーキングからジョギングに移行するつもりなので、その時には、看板に偽りなしとなる。

 早速に、何人かの人から、日記掲載の再開を歓迎するメールが届いた。私の病気のことを心配していただいている方々には、ほぼリアルタイムでの状況報告となるだろう。誰に会うでなし、どこに行くでなしの変化に乏しい日常なので、新聞、テレビのニュースなどからの情報を元にして、思いつくことを書くことが多い。

 今日も変化のない一日。雨の心配があったので、朝の散歩はやめにした。夕方、少し涼しくなった頃、10分だけ歩いた。このところ、きっちり日課をこなしていないせいもあり、筋肉が弱っているような気がするが、気のせいかもしれない。それにしても、暑い日が続く。


2010.7.29(木)

 朝から雨。夕方は、降りそで降らない怪しい天気。結局、今日の散歩は朝夕ともに休止した。

 「厚生労働省政務三役の指示に納得している職員は1%」という記事が出ていた。厚生労働省の本省職員を対象にしたアンケートで、大臣や副大臣などの政務三役に対する不信感が浮き彫りになったと記事は書いている。また、中央省庁で昨年度、最も残業時間が長かったのは厚生労働省という調査結果が発表された。まとめたのは、霞ヶ関国家公務員労働組合共闘会議。月平均の残業時間は70時間以上で、2位の経済産業省の46時間を大幅に上回っている。

 「これじゃやってられない」と厚生労働省の職員は思うだろう。何が悪いのか、誰が悪いのかの詮索は別として、こんな労働環境ではいい仕事は期待できない。国家としても大きな損失である。官僚を叩いて溜飲を下げるということから卒業しないといけない。霞ヶ関の官僚に、やりがいのあるいい仕事をさせて実績を挙げる。すぐには目に見える形にはならないとしても、民主党政権にとって重要な課題であることはまちがいない。


2010.7.28(水)

 2008年6月の東京・秋葉原での無差別殺傷事件で殺人などの罪に問われた加藤智大被告が、東京地裁での被告人質問で語り続けた。「償いの意味を込めて、真相を明らかにしたい」という思いから、母親の影響を受けたという自分の性格のこと、家族や職場での人間関係がうまくいかずに、インターネットの掲示板にのめりこんでいったことなどを語った。

 加藤被告は、事件を起こした直前は、派遣社員だった。職場の自動車工場での不満と、掲示板で自分の存在が無視されたことが、無差別殺傷の引き金になったらしい。まったく偶然であるが、昨日再読した「メタボラ」の主人公と境遇がかなり似ている。こちらの主人公の香月雄太(記憶喪失の間は磯村ギンジ)は、派遣社員を辞めて、集団自殺に加わって沖縄にやってくる。派遣社員をやっている時の絶望感も、自殺に向かわせた誘引である。集団自殺から脱出して、記憶を失い、沖縄で再生の端緒をつかむのであるが、加藤被告の場合は、集団自殺ではなく、無差別殺傷に走るという違いがある。

 加藤被告、香月雄太のような境遇の人間は、現在の日本には大勢いる。そのすべてが事件や自殺に至るわけではないが、膨大な数の予備軍を抱えているようなものである。低賃金、劣悪条件化で不安定な働き方を強いられる派遣労働は、若い頃の一時期にはあり得る選択かもしれないが、それがずっと続くしかないと自覚する時の絶望感は小さくないだろう。なんとか、出口をみつけてやらないといけない。自分の存在が価値あるものと思える仕事、役割、そして、将来の姿が見通せる境遇、そんなものから排除されている若者をなくさなければ、本人たちにとってだけでなく、日本の将来にとっても大きな損失である。ましてや、秋葉原事件のような無差別殺傷を引き起こすようなことがあってはならない。特定の変人が起こした稀な事件と片付けるには、その背景はあまりにも重い。


2010.7.27(火)

 日課の散歩を休んでばかりでは、筋肉が弱ってしまうのが心配で、今朝は往復6分だけ歩いてみた。なんとなく、足がしっかりしなくなったような気がする。夕方は、少し涼しくなったので、いつもどおりの20分の散歩。長いこと休むのは、やはり望ましくない。暑さの中、がんばり過ぎない程度にはがんばらないといけない。

 ずっと家の中にいて、本を読んでいることが多い。まだ人ごみに出られないので、横浜駅の大きな書店に行くことができない。白楽駅前の小さな、そして客がほとんどいない本屋で一週間に一回ほど本をまとめ買いしている。新刊書はほとんど置いていないので、文庫本を買う。

 ほぼ一日一冊読んでいるが、これまで何度も、以前に読んだ本を買ってしまうことがあった。前に読んだような気がするなと思いながら、読み進む本もある。山崎豊子の「二つの祖国」は読み始めてすぐに、「ああ、これ読んだことがある」と気がついたが、語り口に惹かれてそのまま読み進めて読了した。

 昨日読んだ「メタボラ」は、読む前から、再読の感じはしていた。文庫本としては、今月の新刊なので、読んだとしたら単行本のはず。念のため、書架を眺めて探してみたが、単行本の「メタボラ」はみつからない。

  読み始めてすぐに、以前に読んだことを思い出した。話の展開で、派遣社員として働く場面があったはずということにも気がついた。実際にその場面が出てきて、既読ということを確認した。笑ってしまうのは、「メタボラ」の主人公は、記憶喪失の若者である。自分も、部分的記憶喪失であることに苦笑してしまう。単なる老化現象なのかもしれないが。それにしても、桐野夏生はうまい。細かいところまで神経が届いている書き手であり、抜群のストーリーテラーであることを再確認しながら、二度目の「メタボラ」を読み終えた。


2010.7.26(月)

 炎暑が続いている。体調も、なんとなく、だるい。ということで、今日は、朝夕ともに散歩を中止した。

 熱中症で多くの人が救急車で病院に運び込まれており、命を落とす人の数も相当のものである。熱中症対策としては、水分の摂取がとても大事である。

  私の場合、薬摂取の副作用としての腎機能の低下に対応するために、一日2000ccの水分摂取が設定されている。もともと、水を飲むのはあまり得意でない私にとっては、2000cc摂取というのは、努力を要することである。一本500cc「生茶」を3本飲んで、牛乳200ccを2本ないし3本飲む。これでだいたい2000cc。生茶を午前中に1本、午後の早い時期にもう1本飲んでおかないと、ノルマをこなすのがきつくなる。

  水分摂取の結果は、クレアチニンの値に出てくるらしい。これが1.1以下なら腎機能は正常と見られるのだが、前回の測定では1.2だった。しっかりがんばらねばならない。

  仙台にいる母が、今日、90歳の誕生日を迎えた。元気である。週に一回は電話で話しているが、自分のことよりも、私の病気のことばかり気にしている。「大丈夫、順調に回復しているから」と毎回言い聞かせているのだが、母の心配はやまない。90歳の親に心配をかけるのはよくない。早く、完治のゴールに辿り着かなければならない。


2010.7.25(日)

 妻から、「がんばり過ぎないで」と何度も言われている。散歩についてもそうである。この暑さの中、散歩はいい加減にしなさいという趣旨である。今日のように、朝から暑い日には、散歩は休むべきであるというのが、妻の言い分。田野崎先生からも、「がんばり過ぎないように」と、同じ言葉をもらっている。「先生も言っているのですからね」と、妻は私に念押しをする。

 ということで、暑い日には散歩は控えることにするが、今朝は、いつもの半分の10分間だけ歩いた。朝から、太陽の照り方は相当なもので、こういった中で散歩をがんばるのは、よくないことはわかる。もっとも、どの程度が「がんばる」にあたるのかは、私と妻とではへだたりがあるのであるが。夕方の散歩も、思い切って休止にした。

 大相撲名古屋場所が千秋楽を迎えた。いろいろあった場所であるが、観客数の減少も思ったほどではなかった。白鵬の3場所連続の全勝優勝と47連勝という快挙もあった。賜杯なき表彰式で、白鵬が涙を流していたのが印象的であった。うれし涙なのか、悔し涙なのか。来場所以降は、正常に戻って、相撲ファンの期待に応えてやって欲しいと願うものである。


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