2010.8.31(火)
8月も今日でおしまい。9月になっても、暑さはまだまだ続く様子である。まさに「終わらざる夏」である。散歩は、朝の部はやめて、日が落ちた後にだけやっている。今日は、昼の暑さが去って、やや涼しい風が吹く中、20分間歩いた。
鳩山由紀夫さんが動き回ったが、その甲斐なく、小沢一郎さんは民主党代表選に出るという方針を変えなかった。こうなると、伝書鳩とか、メッセンジャーとか揶揄された鳩山さんが、一番みっともない格好に見える。夕方、菅・小沢会談の直後のそれぞれの記者会見をリアルタイムで見たが、会談では人事の話は出されなかったようだし、代表選挙の結果が出た後は、どちらが勝っても協力し合うことを確認したのだそうだ。二人の話だけ聞いていると、正々堂々たる対決というふうに見える。そんなきれいごとだけで済むはずはないと思うのは、外野の僻目なのかもしれない。それにしても、明日から2週間、マスコミ報道は過熱するだろうし、国民の目も代表選挙に集中することだろう。そんな中、菅首相が、この期間も選挙より国政を優先させると言明しているのは、いいことである。そうあるべきであり、ぜひ、その姿勢でいて欲しい。
2010.8.30(月)
国立がん研究センター中央病院に外来診察へ。今日の検査結果の数値も異常なし。ただ、腎臓機能を表すクレアチニンの値が先週に続いて1.2であり、田野崎医師から点滴を命じられた。
今日の診察で特筆すべきは、今日からステロイド剤であるプレドニンの内服を止めることにするということである。これまでも、2日に一回、5mgの服用だったのだから、それほど多い量ではなかった。しかし、ゼロと2.5mgとでは大きな違いである。「止めてみて、どうなるか、慎重に見ていきましょう」ということになった。その他、クラリッシド(細菌感染予防)、セルベックス(胃の粘膜保護)、フルコナゾール(カビ感染予防)、ポララミン(かゆみ止め)の服用が今日から休止である。これで、明日からは、朝食後に3錠服用するだけとなった。
それにしても、免疫抑制剤であるプログラフの休止に続いて、今回のステロイド剤の休止は、患者としてはうれしいことである。復帰に向けての階段をもう一段上ったというふうに理解している。日常生活の制約も、少し緩めていいのだが、自分としては、もう少しの期間、慎重に対応していきたいと思っている。
点滴を受けながら、今日発売の「週刊現代」を読んだ。「ぶちぬき大特集29ページ」民主代表選「大どんでん返し」は、見出しだけでも興味深い。「平成の悪夢『小沢総理』可能性大」、「仙谷がつかんだ小沢マネーの急所」、「それにつけても鳩山由紀夫」、「9.14最終血戦を予測 ユダは誰だ!」、「負ける!怯える菅直人」。この期間は、週刊誌の売り上げは伸びるだろうなと、半分ため息つきつつ納得する。「週刊現代」でほんとうに読みたかったのは、「医者も人間です 大研究『愛される患者』『嫌われる患者』」という記事だった。この記事を読んで、少なくとも、私は「嫌われる患者」ではないということを確認した。これからも「愛される患者」として、田野崎医師にしっかりゴールまで導いてもらおう。
2010.8.29(日)
暑さのため、散歩を休止していることが続いていたが、日が落ちた後、涼しくなった頃を選んでの散歩を再開した。今日で3日連続であるが、夕食後、すっかり暗くなった道を歩いている。以前は、朝20分、夕20分だったが、再開後は6分から始めて、10分、そして今日は14分である。ぼちぼちと以前のレベルに戻しつつある。
突然思い立って、去年の今頃、何をしていたか、当時の日記を眺めてみた。東大医科研に入院中で、抗がん剤治療の第3クールが始まったところであった。吐き気があって、食事が摂れない。熱もあって、一日中寝ている状態と記されている。CRPが7という値を示していたから、肺かどこかに炎症があったという具合であった。CRPの正常値は0.1以下なのだから、炎症の状態は相当悪かったはずである。3日前の8月26日には、病床で投票した。翌日の30日は衆議院議員選挙の日であり、この選挙で民主党が圧勝した。
闘病について、今は、のど元過ぎて熱さを忘れている状態だが、当時は、結構つらいものだったことを思い出した。それにしても、今回、日記を見て改めて考えたのだが、民主党の圧勝からたった1年しか経っていないのである。その間に、首相は鳩山、菅と代わり、今回、3人目になるかもしれないという状況になっている。こんなことは、1年前には予想もつかなかったなあと、思い起こしている。
2010.8.28(土)
家族は「今までにない暑さだ」、「とんでもなく暑い」と口々に言い立てるが、家族から、こんな炎熱地獄に出てはいけないと厳命されている身としては、その暑さを体感できない。それにしても、長く続く暑さである。
浅田次郎著「終わらざる夏」上下(集英社)、井上ひさし著「一週間」(新潮社)を読む。本屋に行けない私の代わりに、他の本とともに次女が買ってきてくれた。「終わらざる夏」は、昭和20年8月15日の日本敗戦の日以降に、ソ連軍が攻めてきた千島列島の占守島での攻防を描いたものである。その攻防の部分は、最後のほうにごく短く叙述されており、小説の中心テーマは、戦争のおろかしさ、恐ろしさである。戦没者300万人という数字の背後には、300万とおりの人生があるという重みを忘れてはならないということが、作者の訴えたいことなのだと受け止めた。小説は、ここのところ文庫本で読むことが多かったのだが、「終わらざる夏」も「一週間」も単行本であり、文庫本にない重さである。小説の中身も重いものであった。
亡き父が、軍医として派遣されていたのが、千島であると聞いていたので、改めて敞子姉になんという島にいたのか尋ねたら、占守島ではなく、松輪島であるとのこと。「終わらざる夏」にも、千島に派遣される軍医が登場してくるので、それなりの縁を感じながら読むところもあった。
「一週間」は、本の帯に「最後にして最高の長編小説」とあるように、先日亡くなった井上ひさしさんの遺作といっていいものである。著者による、加筆訂正がないままに出版となったことを、出版者は断っている。物語の時期は、「終わりのない夏」と似通っている。終戦後のシベリヤ抑留の収容所が舞台である。深刻な内容ではあるが、トーンとしてはユーモア小説の趣がある。面白く読んだ。捕虜の扱いについてのハーグ国際陸戦協定など、戦時国際法についての無知、収容所にまで軍隊の序列を持ち込む理不尽といった、日本の軍隊の大きな問題点も活写されている。
このところ、マスコミを騒がせている行方不明の高齢者に関連して、戸籍制度の問題も取り上げられている。「終わらざる夏」では、村の役場で徴兵事務に携わる役人の苦悩が描かれているが、この徴兵事務の元になっているのが戸籍である。改めて、戸籍の問題を考えてみる必要があるなと感じている。
2010.8.27(金)
小沢一郎さんが、9月の民主党代表選挙に出馬する意向を示したことについて、昨日の日記で「日本の政治はどうなっちゃうんだろう。うんざり」と書いた。うんざりしているだけでは、いけない。なぜ、こんなことになっているのか、よく考えなければならない。
小沢一郎さんのことでは、私にも忘れられない出来事がある。1997年の夏のことである。その年の10月に予定されていた宮城県知事選挙において、現職の私が再選を目指す立場であった。当時、新進党の党首であり、新進党宮城県連会長代行でもあった小沢一郎さんから呼び出された。用件は、知事選挙で新進党として浅野を推薦しようと思うが、受けないかというものであった。私としては、その選挙では、どこの政党からの推薦も受けないで戦うという方針を固めていたので、即座に「ノー」と答えた。その翌日、小沢一郎さんと自民党宮城県連会長の三塚博さんとの間に坐った宮城県選出の参議院議員の市川一朗さんが、宮城県知事選挙における私の対抗馬として、出馬表明の記者会見をする場面をテレビのニュースで目にした。
この出来事と、今回の民主党代表選への出馬が、政治家としての小沢一郎さんの行動様式、思考形態を理解するうえで、どのようにつながっているのか、明快に説明できるとは思わない。しかし、少なくとも、今回の代表選挙で小沢さん側が「政策で戦う」と言っているのが、信じられるものではないということは、確かである。
今朝の朝日新聞の記事からは、今回の小沢一郎さんの代表選出馬には、厳しい姿勢が読み取れる。まず、「小沢氏は表の政治に徹せよ」の見出しに続いて、編集委員の星浩さんの記事には、厳しい言葉が並ぶ。「小沢氏があえて出馬するのなら、疑惑について反省し、十分な説明をする必要がある」ということに加えて、「軽井沢の空騒ぎ」がひどかったとも書いている。社説の見出しは、「あいた口がふさがらない」である。小沢一郎さんへの批判と並んで、鳩山由紀夫さんについても、「あきれる」と切って捨て、「二人のこのありさまは非常識を通り越して、こっけいですらある」と続ける。天声人語も、「小沢氏は首相に向かない」と揶揄する口調で批判を展開している。
大いに共感する。他のマスコミでは、「堂々と政策論争を戦わすべきである」という論調も見られるが、そんな問題ではない。そんなことを言う以前に、「あいた口がふさがらない」という状態であることを、しっかりみつめなければならない。ばかばかしいから、この問題は、あまり触れたくないと思いつつも、今日の日記は民主党代表選のことばかりになってしまった。反省。
2010.8.26(木)
横浜労災病院の耳鼻科にて再診。イケメンの鈴木貴裕医師により鼓膜に貼りついた耳垢を除去してもらう。前回は、両耳に水を入れて、耳垢を湿らせてから除去したのだが、今回は、事前に家で湿らせ作業をやっておいたので、省略してもらった。除去作業も、前回ほど痛くなく、短時間で終わった。これで、ほぼ完全に除去できたが、もう一回、経過観察をしてもらうため、診察を受けることになった。
小沢一郎さんが、民主党代表選に出馬することを決めたというニュースに、「ほんとかよー」と思わず声をあげてしまった。鳩山由紀夫さんが、小沢さんを全面的に支援すると言ったという報道に、またまた「ほんとかよー」。民主党の人たち、ほんとに、何を考えているのか、理解に苦しむ。「政策で争う」だって。菅直人さん側も、「選挙になるのは、歓迎」と言っているようだが、ホンネなのだろうか。ホンネだとしたら、ちょっとおかしい。カッコつけているだけに聞こえる。
考えてもみたらいい。菅直人さんは現職の首相であり、ほんの3ヶ月しか務めていない。菅さんに対抗して代表選に出るということは、菅首相に不信任案を出すようなものである。菅首相側に、首相をやめなければならない、よほどの失政とか、本人の無能ぶりが明らかになったわけではない。それが、同じ党内から、不信任案が提出されたような事態になっていることが、いかに不穏当かということに思い至らないのだろうか。野党を利するだけの話である。前にも書いたが、そもそも、こんな時期に代表選挙をやることになるのが、おかしい。代表選びは総理大臣選びなのだから、衆議院議員選挙に合わせて設定すべきものだと思う。それにしても、日本の政治は、どうなっちゃうんだろう。うんざり。
2010.8.25(水)
朝日新聞の朝刊一面トップに「ホメオパシー効果否定」という見出しで、通常の医療とは異なる民間療法ホメオパシーについて、日本学術会議が24日、「科学的根拠は明確に否定され、荒唐無稽」とし、医療従事者は治療で使わないよう求める会長談話を発表したとの記事が載っている。ホメオパシー療法については、記事の中の解説によると、植物や昆虫、鉱物などの成分を限りなく薄めた水にして砂糖玉に染み込ませた「レメディー」を、飲み薬のようにして使う民間療法というものである。
ホメオパシーのことは、最近まで知らなかったが、それ以外の民間療法については、私がATL治療のため入院してから、「抗がん剤が効かずに、医者から見離された患者が、この療法で完全に治癒した」といった事例とともに情報提供してくださる方が少なくなかった。私の場合、西洋医学によって、きっちりと治してもらいたいし、治してもらえるという信念があったので、今受けている西洋医学による治療をやめて、民間療法に乗り換えるということは、まったく考えていなかった。主治医に、民間療法について、どう考えるべきか意見を伺ったが、基本的には、「お勧めしない」ということであった。効果ありという客観的データが示されていないだけでなく、今やっている治療の効果がどうなっているか、混乱させる恐れもあるというのが、その理由である。そんなことは想定したくないが、今の治療が効果がないということが明らかになった場合、最後の手段として、民間療法に頼ることはあるかもしれないが、今現在は、民間療法の受け入れは、全く考えていないというのが正直なところである。
いつまで続くこの猛暑。暑さを怖れて、家から一歩も外に出ない一日であった。したがって、散歩の休止が続いている。
2010.8.24(火)
朝起きて、鏡を見ながら、髪の毛がだいぶ増えてきたことを確認している。元のふさふさ状態に戻るには、まだ数ヶ月かかるだろうなと思いながらも、よくぞここまで生えそろってきたものだとも思う。後ろの髪から生え始めて、それがどんどん伸びてきた。今は、ちょっとカットしないとみっともないほどになっている。横の髪もまあまあ伸びているのだが、前髪にあたる部分がほとんど生えていない。髪は一斉に生えそろうわけではないということがわかった。
一斉に生えそろうのではないということでいえば、他の毛関係も同様である。抗がん剤の副作用で、髪の毛だけでなく、身体のその他の毛も、すっかり抜けてしまった。それが復興してくるのにも、時間差があることに気がついた。最初に戻ってきたのが、下半身の毛である。眉毛も回復が早く、今では、以前より眉が濃くなったほどである。口の周りのひげも元に戻るのが早かった。朝にひげを剃っても、夕方には「5時の影」と言われるひげがうっすらと見えるようになっている。こんなことは、以前はなかったのに、傾向が変わったようである。骨髄移植で、血液型がドナーさんのものに変わったのだが、まさか、ドナーさんのひげの生え方を受け継いだということはないのだろうが。まだ戻っていないのは、腋の下の毛。ちょぼちょぼとしかない。こういったことも、興味深いといえば、興味深い。
TBSテレビ「朝ズバ」の取材を自宅で受ける。去年の5月29日(金)にコメンテーターとして出演した後、みのもんたさんをはじめとするスタッフに、ATLの治療のため、番組出演をしばらくお休みするということを申し上げた。その「朝ズバ」であるので、私としても、思い入れがある。番組のほうとしても、昔の仲間の闘病について、特別な思いはあるのだろう。一味違った中身になるのではないだろうか。放送は金曜日になるが、日程は未定。
2010.8.23(月)
今日も、暑い暑い日。その暑い中を、国立がん研究センター中央病院に、定例の外来診察を受けるために出かけた。今日の診察結果も、特に変わりないが、腎機能を示すクレアチニンの値が1.2と高かったので、500ccの点滴を受けた。所要2時間。「点滴受けると、なぜか患者さんの調子がよくなるんだよね」と田野崎医師。先週も点滴を勧められたのだが、「今日はやめておきます」と断ってしまった。田野崎医師の「なぜか」というフレーズが若干気になるが、腎臓機能が悪化するのは避けたいので、今日はお勧めに従うことにした。
夏の高校野球甲子園大会で優勝した興南が、今日、沖縄に戻り、大勢の県民がこの快挙を祝っていた。県民の喜びようが、とても新鮮だった。海の向こうのアメリカでは、沖縄県出身の宮里藍がセーフウエー・クラッシックで優勝した。米女子ツアーで、今シーズン5勝目。1987年に岡本綾子がマークした4勝を抜いて日本人最多記録とのこと。沖縄県が、スポーツの分野で大きく注目された日である。本当におめでとう。よかった。宮里藍さんは、仙台の東北高校三年生の時に、ミヤギテレビ杯で初めて優勝をしたが、最終ホールで優勝を決めたショットを目の前で見ていたのが、当時、宮城県知事だった私である。確か、私からも賞状をあげたような記憶がある。宮里さんは、まだ覚えているかな。
2010.8.22(日)
日曜日。「毎日が日曜日」の生活なので、曜日の感覚が希薄である。TBSの「サンデーモーニング」を8時から見ようかとか、次女がアルバイト休みなので、朝は早く起きなくていいとか、そんなことで、やっと今日が日曜日ということを意識する。曜日をきっちりと意識する生活に戻りたいかと聞かれれば、やはり「イエス」と答えるだろう。
神野直彦著「『分かち合い』の経済学」(岩波新書)、北岡孝義著「スウェーデンはなぜ強いのか」(PHP新書)を読む。混迷の中にある日本が、どういう方向に進むべきかについて、示唆を与える本である。スウェーデンの「国民の家」の考え方、政治への国民の信頼が重要なこと、格差を拡大する新自由主義の破綻といったことが、心に残る。前者の本のあとがきで、神野さんが「老醜をさらしたくない」というようなことを書いているのが、かなり気になった。神野さんは、私より二歳年長なだけなのだから、「老醜」というには、まだまだ若い。現在は、地方財政審議会の会長を務めたり、政権のブレインとしての活躍をしており、バリバリの現役である。なんで、あんなトーンのあとがきを書いたのか、不思議ではある。
今回は、読書のうちでも、知識・情報を得るためのものについて書いたが、自宅療養中のこの期間、小説など、楽しみとしての読書のほうが多い。そちらのほうでは、「荒地の恋」(ねじめ正一著、文春文庫)がよかった。この本は、TBSテレビで「朝ズバ」を担当している高田直さんから頂戴したものだが、彼のお薦めは「当たり」だった。ねじめ正一の作品は、直木賞を受賞した「高円寺純情商店街」しか読んでいなかったが、今回、「荒地の恋」を読んで、小説家としての技量に改めて感心した。細部の描写がうまい、言葉の使い方が洗練されている、ストーリーの運びが巧みである。心に沁みる作品だった。
プロ野球、楽天はソフトバンク相手に4対0で快勝。田中マー君が完封勝利である。ほんとに頼もしいピッチャーである。このところ負けがこんでいた楽天だったので、免疫が落ちそうだったのだが、今晩の勝利で免疫が上がるだろう。
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