浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 9月第2週分          

2010.911(土)

 昨日、届いたばかりの新米を食べたと書いたが、実は、葡萄も届いていて、新米を食べた後のデザートに、色も形も素晴らしい葡萄を食べたのである。甘くて深い味が口いっぱいに広がる素晴らしいものだった。

 送ってくださったのは、甲府市の堀内勢津子さん。熱狂的なエルヴィス・プレスリーのファンで、身の回りの物に、エルヴィスの写真をアレンジするという徹底ぶりである。生活の中に、エルヴィスの歌がすっかり入りこんでいるらしい。私の知事時代に、山梨のテレビ局が堀内さんを追う番組の取材で、知事室に来られたのが初対面。それが契機となって、当時、仙台のコミュニティFMラジオ3で毎週水曜日放送していた「シローと夢トーク」のテープを堀内さんに送っていたのだが、その番組をいたく気に入ってもらっていた。

 去年も葡萄を送っていただいたのだが、その時の私は入院中。味覚障害もあった。少ししか食べられなかったのを思い出す。今年は、いろいろな種類の葡萄を十分に堪能させてもらっている。ぶどうは、「ぶどう」でなくて、「葡萄」と漢字で書くと、おいしそうに思える。そんなことは私だけの感覚だろうか。

 今日は9月11日。9.11として記憶に残る、ニューヨークのワールドトレードセンターに2機の飛行機が突っ込んだ日である。「これはテロではない、戦争だ」と叫んで、イラクを攻撃したのは、ブッシュ大統領だった。たまたま、「アフガンの男」フレデリック・フォーサイス著(角川文庫)の上巻を読み終わったところである。9.11のテロは誰が何のために仕掛けたのか、イラク戦争からアフガニスタン掃討に、アメリカは何故にあれほど関わるのか、オサマ・ビン・ラディンとは何者かということが、少しは分かるかと思って読んでいたが、民族、種族、国家、イスラム教の各派が入り乱れて登場し、何がなにやらわからなくなった。下巻を読み通す根性をなくしつつある。

  ニューヨークでは、テロの現場近くにイスラム教のモスクを建てる計画があったり、キリスト教の牧師がコラーンを燃やすと言い出したり、イスラム教をめぐって、さまざまな出来事が起きている。アフガニスタンでの戦いは一向に収まらない。憎しみの連鎖のようなものが、感じられる。


2010.910(金)

 村木厚子さんが起訴されていた、郵便割引制度の偽証明書発行事件の判決が、大阪地方裁判所で、今日あった。予想通り、無罪であった。無罪以外の判決はないと思っていたが、実際にそのことを確認できて本当によかった。検察側が控訴するなどということは、まさかないだろう。これだけ、捜査上の問題点を判決で指摘されているのだから、控訴なんてことになれば、恥の上塗りになる。村木さんもおっしゃっていたが、早い時期に厚生労働省での仕事に戻ることができたらと願っている。

 日本振興銀行が経営破たんを免れない状況になった。本邦初めてのペイオフが実施されることになるだろう。1000万円超の預金がある人にとっては、大変な被害を蒙ることになる。振興銀行としては、経営再建にあたるということだが、単に経営の仕方がまずかったというのではなく、そもそもビジネスモデルとして成り立つかどうか、疑問が持たれていた銀行である。再建への道のりは、厳しいと言わざるを得ない。

 「宮城かくだ発田んぼ通信」とともに、角田の面川義明さんから新米が届いた。9月6日に稲刈りをしたとのことで、「米作りを始めてから、こんなに早い稲刈りは初めて」と書いてあった。「今年一年の思いがギッシリ詰まった」新米を、早速、炊き上げた。キラキラ輝く米粒を見ただけで、おいしさの予感がしたが、実際に味わってみると、とてもおいしい。こんなに早く新米を賞味することができて、家族ともども、幸せを文字通り噛み締めたものである。ありがとう。免疫力が上がる気がする。


2010.9.9(木)

 昨日の大雨が上がり、朝、新聞を取りに外に出たら、ここのところなかったような涼しさであった。午後からは、少し暑さが戻ってきたが、おとといまでの猛暑とは違う。

 司法試験の合格者の発表があり、二女が受かっていた。昨年の発表は、私の入院中であり、不合格の報に、私もがっくりきたのを思い出す。弁護士資格を得ても、就職がむずかしいとは聞いているが、まずはほっとした。本人は、朝方、何度も何度も不合格の夢の繰り返しなので、めんどうだから早く起きてしまったと、発表前にこぼしていた。正夢でなくてよかったね。

 民主党代表選の合格発表は、来週の14日。それまで、両候補者は、毎日どんな夢を見て過ごすのだろうか。マスコミ報道もマンネリ気味になってきた。今日発売の週刊誌では、スキャンダルっぽい記事が出ている。選挙期間が長くなると、なりふり構わないというか、品格が疑われるような報道が出てくるのは、避けられないのだろうか。

 娘の合格祝いを盛大にやりたかったが、私は、まだ、外での食事はできないし、生ものが食べられないので、彼女の好きな刺身の盛り合わせを一緒に祝うこともできない。アルコールも飲めないので、盛り上がることもできない。ささやかな、気持ちだけのお祝いになってしまった。


2010.9.8(水)

 朝から雨。日中は激しい雨になった。今まで降らなかった分の借りを返すかのごとく、猛烈に降る時間帯もあった。その雨の中、総理官邸に陳情に出向いた。

 HTLV関連患者団体による陳情で、政府に対して、HTLV-1総合対策を求めるものである。「日本からHTLVウイルスをなくす会」の菅付加代子代表、「はむるの会」の石母田衆理事、「長崎・佐賀HAM患者会ひまわり」西次夫代表、聖マリアンナ医科大学の山野嘉久准教授が出席した。陳情を受ける側は、菅直人総理大臣、仙谷由人官房長官、古川内閣官房副長官、瀧野内閣官房副長官、小川勝也総理大臣補佐官の面々。私は、ATLの患者として出席し、妻は家族として同席した。

 陳情には45分間も時間をとっていただき、菅首相をはじめとする政府要職のメンバーに患者側の話をじっくり聞いてもらった。今までに、私が陳情を受ける機会は何百回もあったが、患者として陳情をするのは、これが初めてである。こういう病気になったからこそ、こんな陳情をしているのだということを、一つの運命と感じながら、テーブルに就いていた。菅首相、仙谷官房長官は、個人的にも親しい仲であったこともあり、私の病気についてはとても心配していただいていた。こんな形で久しぶりにお会いすることになったことについても、特別な感慨がある。

 菅首相には、問題の中身を十分ご理解いただき、共感してもらったからだろう、この問題解決のための特別チームを設けることを言明された。菅付さんたちが、自身の大変な身体状況を持ちながら、長い間主張し続けてこられたことが、実現に向けて大きな一歩を踏み出したと言える。これで、HAMにより身体的、精神的、経済的に大変な思いをしている患者の多くが救われることが期待される。HTLV-1の感染を広げないための妊婦への検診も、進むことだろう。こういったことが、確実に実現されることを、心から望んでいる。


2010.9.7(火)

 テレビ朝日の「スーパーモーニング」で、私の闘病の様子が紹介された。8時から家族で見ていたが、なかなか登場してこない。結局、9:14から20分ほどであった。なかなか良く出来ていたと感想をいいあった。ビデオでの紹介が終わった後、コメンテーターの鳥越俊太郎さん、大澤孝征弁護士から温かいコメントがあった。いずれも、旧知の方々であるが、とてもありがたく、うれしいことであった。

 番組が終わった頃から、電話、メールで何人かの方から「見たよ」というメッセージをいただいた。この日記では、近況を伝えているつもりであるが、実際に動く映像を見て、肉声を聞いて、「元気そうでよかった」と実感してもらったようである。そういった声を聞くにつけ、取材に応じてよかったと思う。

 民主党代表選で小沢さんが、一括交付金のことを話している。国から地方自治体への補助金を一括交付金に変えることによって、大きな財源が得られると主張している。全国知事会の麻生会長が反論しているように、小沢さんの言っていることには現実性がない。東国原知事も、ブログの「そのまんま日記」に、昨日、同じような反論を書いている。国から地方への補助金21兆円のうち、17兆円は社会保障、教育など、削りようがないものに宛てられている。残りの補助金を一括交付金化したことによって、削減できる額は、ごくわずかである。しかも、補助金の一括交付金化は、民主党の政策として、すでにマニフェストにも掲げられている。小沢さんの独自の政策ではない。もう少し、緻密な議論をしなければ、的を得た政策論議にはならない。


2010.9.6(月)

 外来受診日。血液検査結果には、懸念材料なし。腎機能のクレアチニンは1.1とぎりぎり正常値。インシュリンが朝2単位、昼4単位であったのを、朝2単位、昼2単位と減らされる。リピトール(コレステロールを下げる薬)が2錠から1錠に減量。少しずつであるが、薬の量が減らされつつある。その都度、ゴールに近づいているということで、うれしいことである。PET-CTの検査があったが、田野崎医師の診察の時には、結果がまだ届いていなかった。来週の診察で結果の説明がある。

 毎日、自分で計れる身体の状況を記録している。それを一週間分、表にして、外来診察の時に、田野崎医師にお見せしている。体温は朝が36.5℃、夕方が37.0℃、血圧は、朝夕ともに、110−70、血中酸素濃度は98。いずれも、安定している。食事前の血糖値は、最近は安定してきて、大体110前後というところである。体重は、朝一番で計測しているが、今日は57.9kg。じわじわと増えつつある。髪の毛は、計測するというものではないが、確実に増えつつある。ただ、そのスピードが、期待するほど速くない。後ろ髪は伸びているが、頭頂部はごく少ない。このままで伸びが止まってしまったらまずいなと心配をしている。髪がすっかり生え揃えば、病気の回復も完全になると自分では思っているので、「早く生えろ、生えろ」と鏡に向かって語りかけている。


2010.9.5(日)

 日曜日である。選挙サンデーである。昨日は、東京新宿で民主党代表選挙の街頭演説が猛暑の中で行われていたが、今日は、菅さん、小沢さん、テレビ生出演の掛け持ちで舌戦を繰り広げていた。フジテレビの新報道2001、NHKの日曜討論に二人並んで出演していたが、何度も同じような繰り返しの「政策」披露に飽きてしまったので、早々とチャンネルを変えてしまった。テレビ朝日のSフロントラインには、菅さんが単独出演していたし、他の報道番組には、それぞれの陣営を代表する民主党議員がいろいろ語っていた。

  そこで語られる内容だが、現職でない小沢さん側の目玉「政策」は具体性がないか、具体的なものには実現性に乏しい。その他の政策では、言い方の違いだけで、争点となるものではない。なのに、声高に言い合う感じになっているのに、どうも違和感がある。「激突」ぶりが、同じ党の中の代表選びというより、対立する政党間での論戦模様である。政策の違いを無理やり持ち出したてはいるが、本質は単なる権力闘争ということを見誤ると、一体、これなんなのだろうという感じになる。

  日曜日である。スポーツサンデーでもある。楽天の試合は西武相手のデイゲーム。暑い仙台での熱い戦いを冷房の効いた部屋で観戦した。今日は、昨日のような逆転劇の再現はならず、5対6で負け。中継の合間にチャンネルを変えて、フジサンケイ クラッシックゴルフの中継を見た。石川遼が高校の先輩の園田峻輔をプレーオフ4ホール目で破る瞬間をライブで見ることができた。18歳と20歳の戦い。こんな勝負ってあるのだろうかと興奮してしまった。いつもながらの石川遼プロのしっかりしたコメントにも感心。これがホントに18歳の若者のコメントか。思わず、隣で見ていた妻に「あんた、18歳の時、何考えていた?」と言ってしまった。

  朝日新聞に、郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で起訴され、無罪を主張している厚生労働省元局長の村木厚子さんの単独取材記事が出ていた。検察の暴走としか思えない事件で、村木さんは164日間もの逮捕・拘留を強いられた。今週の10日(金)に大阪地裁で判決公判があるが、村木さんの言うように、真実は強い。無罪以外考えられない。その日を私も心待ちにしている。これ以外にも、今週は、いろいろ出来事がありそうだ。


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