2010.9.18(土)
入院治療は必要であり、患者にとって医師、看護師に囲まれて治療を受けられるのは安心である。とは言いながら、自宅にいるときのような自由はないし、単調な生活である。ATLという病気と戦うにあたって、まず、抗がん剤の投与である。これが正規軍による戦いで、敵をかなり弱体化させる。その後の骨髄移植は、他人のリンパ球による援軍にあたり、残った敵にとどめを刺す。今回の入院に至ったGVHD、そして感染症、それらへの対応は、ゲリラ戦のようなものである。いつ、どこに出てくるかわからないが、要は、早くみつけ、的確に対処してゲリラを掃討する。そういったイメージで治療をとらえている。
昨日のニュースになってしまうが、菅内閣の顔ぶれが決まった。総務大臣になった片山善博さんは、私にとっては知事時代の仲間で、知事会で一匹狼に近い言動をする片山さんの数少ない理解者の一人だったと思っている。発想がユニークで行動力もある片山総務大臣に大きな期待を持っている。昨日、あちらは入閣、こちらは入院。
2010.9.17(金)
調子がいまひとつよくない。そういう状態でがんセンターの外来診察を受けた。CRPが5.57と上がっている。どこかに炎症が出ているのだろうが、それがGVHDなのか感染症なのかを慎重に見極めなければならない。となると、入院するのがいい。医師の手が届くところで、適切に対応してもらえる。医師も安心、患者も安心、家族も安心。ということで、今日から入院ということになった。ここは、徹底して診てもらって、後顧の憂いをなくしたい。
入院中は、治療の経過などを書くぐらいしか出来事はないし、パソコンも使いにくい環境にある。だから、この日記も、毎日書くということはやめようと思う。
2010.9.16(木)
朝方、雨が激しく降っていた。この雨で、夏の終わりだろう。涼しくなったら、なったで、ちょっと寂しい気はする。
横浜労災病院は、耳鼻科の診察。聴力検査の結果は完璧。鈴木医師がおっしゃるのには、聴力検査ではなんともなくとも、聴こえが悪いと感じる場合があるらしい。自覚的にも何もなくなっているので、これでほぼ完治ということ。11月末にもう一度だけチェックをしてもらう。
日経新聞に、「血液から作る免疫細胞 拒絶反応抑制に道」という記事が載っていた。岡山市の林原生物化学研究所は、ヒトの血液から作った免疫細胞が、がん細胞の中に入り込んで死滅させる新しい抗がん剤メカニズムを確認した。この免疫細胞は、ヒトの臍帯血に含まれる白血球を培養して作られる。「トロイの木馬のように、相手(がん細胞)に入り込んで死滅させる方式。抗がん剤の効きにくいがんで、抗がん剤をがん細胞内に直接運ぶ手段としても利用可能」と説明されている。臨床研究にまで行くのに、早くても5年かかるのだが、朗報ではある。こういった情報が、新聞や雑誌に結構ひんぱんに出ている。病気になる前は、あまり気がつかなかったのだが、今は違う。
情報と言えば、今朝のNHK総合テレビの「アサイチ」で、HTLV-1ウイルスについて放送していた。私もビデオで登場していた。首相官邸での要望の様子のビデオもあった。こうやって、情報が流れていくことによって、この病気への理解が進むことになる。貴重な番組であった。
菅付加代子さんから紹介されて、さいたま市の南克己さんと電話で話した。南さんは、ATLを発症し、私よりちょっと早く東大医科研に入院した。その後、がんセンターに転院してミニ骨髄移植を受け、今年の2月に退院して、今は、元気でいらっしゃる。私の入院治療の期間と、かなり重なる。南さんのほうでは、医科研入院時から私のことはご存知だったが、声をかけそびれたのだそうだ。電話をした時は、南さんががんセンターに月に二回の診察を受診にいくために、駅に向かっているところだった。「へー、電車に乗れるんだ」とちょっと感心しながら、それぞれの診療経緯について情報交換をした。南さんの趣味は、走ること。「10キロレースぐらいなら、一緒に走ることもできるね」と言い合った。こういう仲間がいると、いろいろと情報が得られるだけでなく、精神的にも大きな支えとなるものである。
2010.9.15(水)
このところの調子の悪さは、今日も続いている。ところで、この「調子の悪さ」であるが、どう表現するか、むずかしいものである。体温37℃、CRP2.77といった数値は、調子の悪さの指標ではあるが、自覚症状は別である。吐き気が少し、だるい、眠い、こんなところだが、それがどの程度なのか、うまく伝える言葉がない。というより、自分の身体に聞いても、どこがどうなのか、よくわからない。ともかく、今は、「少し調子が悪い」である。本を読んでも、眠くなることもあり、ベッドの上でラジオを聴いたり、音楽聴いたり。時々居眠り。
今日は、これまでの暑さとは違って、秋らしい天気であった。やっと秋になる。散歩には最適シーズンなのだが、田野崎医師に止められている。千里の道も散歩から、完全回復のためには、散歩も必要なことなのだが、無理をするのも適当ではない。
2010.9.14(火)
民主党代表選挙は、菅直人首相が再選を果たした。14時からずっとテレビの前でこの様子を見ていた。何回もこの日記に書いたが、そもそも、現職の首相に対抗馬が出るということは、党内から不信任案をこの時期に突きつけることに等しい。この時期に、そんなことをする大義名分はないということに尽きる。菅がいいか、小沢がいいかという図式は、マスコミが煽るし、面白いから盛り上がった。だから有意義だったということにはならない。今回の代表選は、せめて菅代表への信認投票という形でやるか、又は、次の衆議院議員選挙の直前まではやらないということにするのが、与党としての知恵ではなかったか。これからの代表選挙をどうするか、時期も含めて、今からルールをしっかりと決めておくべきである。野党の代表ではなく、与党の代表=総理大臣(候補)を選ぶのだから、もっと慎重に扱われることが求められる。
2010.9.13(月)
国立ガン研究センター中央病院に外来診察に行く際には、タクシーを利用するが、そのタクシーの後部座席のシートベルトがうまく使えないことがある。今朝もそうだった。座席にあるはずの留め金(「留め金」でいいのかな)が、シートの奥に埋もれて出てこない。運転手さんに後ろに回ってもらって、留め金を引き出してもらった。病院からの帰りのタクシーでも同じことが起きた。運転手さん曰く「締めなくてもいいですよ」。おいおい、こちらは、遵法精神で言っているのではない。高速道路を走行するのだし、自分たちの安全確保のためにシートベルトを締めるということがわかっていないのだろうか。病気からは回復して命を取り留めても、交通事故で命を失ったらなんにもならない。困ったものである。
診察のほうであるが、検査結果では、炎症反応を示すCRPの値が2.77(正常上限0.1)であった。身体のどこかで炎症を起こしている。肺のPET-CTの写真、レントゲン写真を見ると、影らしきものが映っている。これまでもあった影であり、特にそれが大きくなっているわけではないが、消えてもいない。田野崎医師からは、しばらく慎重に生活を送るべしということで、散歩も休止させられた。17日(金)に再度診察を受ける。インシュリンの注射は、血糖値が落ち着いているということで、今日からやめることとされた。いいこともあれば、心配なこともある。いずれにしても、じっくり療養に努めなければならない。
10日発売の「文藝春秋」を3日遅れで購入。がんセンターの廊下で、診察の順番を待ちながら読んだ。野中広務さんの「小沢一郎『悪魔』が来たりてホラを吹く」は、タイトルが面白そうで読んだが、批判の元とされている事実に伝聞、憶測が多くて、説得力はいまひとつ。それよりも、村木厚子さんの独占手記「私は泣かない、屈さない」(正しくは「屈しない」でないかな)が読ませた。江川紹子さんの聞き方、まとめ方も上手なのかもしれないが、検察による取調べの問題点が手に取るようにわかる。村木さんの凛とした立ち姿が現れるような内容であった。
2010.9.12(日)
札幌から小山内美智子さんが、自宅にやってきた。横浜市栄区にある、重症心身障害者が通所してくる施設「朋」の招きに応じて、神奈川県内の施設で介護の仕事をしている人などに対して、明日、講演をする。
彼女は、2008年9月、悪性リンパ腫と告知をされて以来、この病気と闘ってきた。翌年の1月末に、札幌の病院に入院していた小山内さんのお見舞いにいったが、その半年後に、私自身が血液のがんであるATLを告知されるとは、想像もつかなかった。脳性まひにより重度の障害を持つ彼女は、入院中も医療だけでなく、介護の手も必要としていたのだが、それがままならない。札幌市長とかけあって、介護も受けられるようなシステムを札幌市独自で作らせたのだから、すごい。この辺の戦いも含めた闘病記である「わたし、生きるからね――重度障がいとガンを超えて」(岩波書店)に詳しく記されている。
その後、小山内さんの悪性リンパ腫は奇跡的になくなり、身体中にできていたがんもすっかり姿を消した。今日聞いたら、再発もなく、順調な経過をたどっているらしい。ほんとうによかった。同じ血液のがんの私にも勇気を与えてくれる。それにしても、彼女はすごい。改めて、彼女の生きる力、生き方に感銘を受ける。
民主党代表選が終盤を迎えている。14日に結果が出てしまってからでは遅いので、改めて、この代表選のおかしさを書いておきたい。
まず第一に、この代表選挙は、昨年6月に鳩山由紀夫と岡田克也が争った選挙、今年6月に菅直人と樽床伸二が争った選挙と違って、現職の代表である菅直人が対抗馬を立てられたという選挙であることを思い起こすべきである。現職の総理大臣に「代われ」と迫るわけだから、首相への不信任案の提出と同様の意味合いを持っている。党内から不信任が出るような首相を、ほんの3ヶ月前に代表として民主党は選んだのか。相当にみっともないことではないだろうか。
第二に、対抗馬が勝てば、三ヶ月弱しか務めていない首相が代わり、今年三人目の首相が誕生することになるが、そのことがどれだけ日本の国益を害することになるか、対外的な信用をなくすことになるか、そのことは、絶対に棚上げにしてはならない。そのことを前提条件とするということから始まる代表選挙である。対抗馬のほうに、「それでも菅首相は替わるべきだ」ということの説明責任がある。まっさらな地点から、菅がいいか、小沢がいいかという図式ではない。この時点で首相の首を挿げ替える不利益を補って余りあるということが、国民にも理解されるほどのものでない限り、対抗馬として出ることに躊躇があってしかるべきである。対抗馬となった人は、このことを乗り越えなくては、政策論議などに入る状況ではないと心得るべきである。
第三に、菅か小沢かというのが、政策をめぐってのものであるということのおかしさ、恥ずかしさを認識すべきである。そんなことは、今議論すべきではなく、とっくに党内で議論済みでなければならない。どっちがリーダーシップがあるかといったことで争うなら、まだわかる。今更、党内で政策論争かよ、という揶揄の声にどう答えるのか。
というようなことが、まずは、代表選の出発点にあった。少なくとも、私の頭の中にはあった。さてさて、それにしても、14日には白黒がつくということなんだよね。
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