2010.9.30(木)
ゆったりとした今の入院生活であるが、わずかにノルマのようなものがある。まずは、水分補給。さまざまな薬の服用により、腎機能に副作用が出る。正常上限が1.1であるクレアチニン濃度が、このところ1.0と安定しているが、入院前と入院してから、1.4まで上がった時には、生理食塩水の点滴を受けた。現在はステロイド剤の点滴が続いているので、腎機能にも影響が出てくる。そこで、水分の補給が必要である。一日2000ccの基準を、ほぼ毎日クリアしているが、結構大変である。それにしても、2000ccという量は、医師からの指示ではなかったような気がする。明日確かめてみよう。もうひとつのノルマは、散歩である。病室のあるフロアを1周2分で3周するのを一日3セット。今日は、2セットだった。何も運動しないでいては、身体各部の廃用症候群になってしまう。筋肉増強は無理でも、少なくとも、筋肉が萎えるのは抑えられるだろう。
宮崎県の東国原知事が、次の知事選には出馬せず、退任すると発表した。「知事としての限界を感じた。国のかたちを変えなければならない」ということを言っているので、知事退任後は、国政の場に出て行くと見るのが素直なところだろう。東国原知事の気持ちはわからないではないが、なんとなくしっくりとは受け止められない。それにしても、53歳という年齢で、次に何をすべきかということを真剣に考え、実行に移そうという意志には感心する。いまだに療養中の身で、62歳になっている私。次に何をするかを考えるほどの余裕はない。
2010.9.29(水)
5時半起床。朝一番は、用便と体重測定である。今朝の体重は、62.0kg。その後、採血、血圧と酸素濃度の測定(一日に4回もある)、そしてステロイド剤の点滴がある。昨日までは、1回30mg、一日60mgだったが、今日から1回20mg、一日40mgに減量されている。今日は、これに加えて、髄液検査があった。脊髄に注射を刺して、髄液を吸入する。患者さんによっては、これが苦痛に感じるらしいが、私の場合、もう5,6回やっているが、まったく楽な検査である。信頼している朝倉医師の手により、安心して受けているということもあるのだろう。
北朝鮮が三代世襲へ体制固めのため、金正日総書記の三男の金ジョンウン氏を党の要職に就けた。国家権力がこうして世襲で受け継がれていく。21世紀の国家としては、異常なものである。さりとて、そんな国は認めないというわけにはいかない。中国との関係だけでなく、こういった国と日本とが、どう渡り合っていくのか。冷静さも保ちながら、国民としても、関心を持っていくべきものである。
妻が昨日買って届けてくれた「マンチュリアン・リポート」浅田次郎著(講談社)を今日一日で読んでしまった。「蒼穹の昴」の壮大なドラマに引き込まれ、以後、「珍妃の井戸」、「「中原の虹」と読み進んできた。そして、その続編の「マンチュリアン・レポート」である。昭和天皇からじきじきに、張作霖爆破事件についてのリポートの提出を求められる主人公とか、張作霖を乗せた列車の機関車が独白する形など、今までのドラマの流れとは少し離れた書き方である。満州事変前後の日本軍の行動について、著者浅田次郎の厳しい目が感じられる。小説としての面白さから言えば、一連の前作のほうが上ではないか。
2010.9.28(火)
穏やかで、ゆるやかで、ゆったりとした入院生活を続けている。入院治療は、いつもいつもこうではなかった。1年前の今頃は、東大医科学研究所付属病院で、抗がん剤の治療を受けていた。3クール目を終わったところで、これまでの抗がん剤の蓄積などからか、体調は良くなかった。吐き気が強く、口から食べられない時期が続き、腹痛もあった。毎日書いていた日記も、このころは、2週間も休んでいた。そんな時期もあったのだが、のどもと過ぎて忘れてしまっている。こうやって、穏やかに治療を受けているのは、幸運なことであるであることを思い起こさないといけない。
そういえば、今日は33回目の結婚記念日である。去年は、それどころではない調子の悪さで、日記にも記載していないぐらいだった。今年も、お祝いということにはならない。病室に来てくれた光子に「今年はお祝いなし」と言った。34回目の記念日は、おいしいものでも食べながら、二人で祝いたい。
尖閣沖衝突問題について、今日の朝日新聞の「オピニオン 耕論」では、「凍る日中」というタイトルで三人の意見が紹介されていたが、いずれも、とてもわかりやすいものであり、納得もできるものであった。高原明生東大教授は「(中国の)不安と自信が強気の背景」、平和・安全保障研究所副所長の渡辺昭夫さんは「信頼失った中国、お粗末な日本」、元外務審議官の田中均さんは「早急にチャンネル確立を」ということを言っている。外交、ましてや領土問題になると、一般国民だけでなく、政治家だってあまり深く考えてこなかったところがある。過去のつけである。将来展望もこれまで論議されていなかった。日中間の人的パイプが強固であるともいえない。そういう現状の中で、今回の政府の動きについて、非難の声を含む大騒ぎというのは、仕方がないのかもしれない。与党、民主党内さえ、政府批判の声がある。冷静になれというのは、無理だろうが、騒ぎ方によっては、そのこと自体が国益を害するおそれもあるのではないか。
2010.9.27(月)
がんセンター18階の窓から、真正面に見えるはずのレインボウ・ブリッジが、今日はほとんど見えない。雨模様の一日である。気温も低いらしいが、病室内ではわからない。季節の変化が体感できないと、時の流れもあいまいである。毎日同じような生活を、繰り返すだけ。治療は、順調に進んでいる。ステロイド剤が効いているということ。
病院内のコンビニに置いてある文庫本を買ってきて、読んでいる。在庫が少ないので、選択の余地がない。昨日、今日と内田康夫著「金沢殺人事件」と「鯨の哭く海」を読んだが、がっかりした。ストーリーが甘い、浅い。登場する素人名探偵「浅見光彦」が人気なのだそうだが、信じられない。この作家は、年間13冊も上梓したことがあり、作者自ら、あとがきで、「執筆過剰は、確実に作品の質を落とします」と言っている。私は、いい作品に出会うと、その作家の作品を追いかけて読むタイプなのだが、一度でも愚作にあたってしまうと、その後は、読めなくなってしまう。本屋に行けないのが残念。
2010.9.26(日)
日曜日で、病院は静かな一日である。昼過ぎ、当番の森医師が「御用聞きです」と病室にやってきた。体重増、むくみ、血糖値上昇、いずれもステロイド剤の効果として予測の範囲内ということ。「明日は、CRPの値も、きっちり下がっているでしょう」と予想していった。
入院してからも、快食、快眠、快便は変わらない。病院食は、やはり、自宅での食事とは違って、すごくおいしいということはないが、十分に満足して食べられる。快眠は、夜中のトイレが頻繁なので、満点ではない。睡眠導入剤代わりではないが、CDを掛けて寝に就くことが多い。このところは、美空ひばりのカバーソング・コレクションを聴いている。一曲も終わらないうちに眠ってしまうということもあるが、例外なく、CDの途中で熟睡モードに入っている。快便は、いつもどおり。下痢も便秘もなく、薬の影響がここに出てこないことがありがたい。
TBSの「サンデーモーニング」、テレビ朝日の「Sフロントライン」、引き続いての「スクランブル」を観ていた。夕方は、日本テレビの「バンキシャ」。すべて、尖閣沖衝突の船長釈放事件について大きく時間を割いていた。昨日に引き続きなので、大体、論点は定まってきた。気になったのは、街頭での一般市民へのインタビュー。必ずしも、事実関係を知らずに、思いつき、感情論的なコメントが結構多い。こういう報道が、世論を作っていくとすれば、少し問題である。
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