浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記  2月第1週分        

2011.2.5(土)

 千里の道も散歩から    

 昼前、再開2回目の散歩へ。立春を過ぎて、日の光も春らしくなり、暖かい。その中を5分+5分。自宅での筋肉トレーニングで鍛えていたつもりだったが、実際に歩いてみると、使う筋肉が違っているのを感じる。足首のところの筋肉が張っているようだ。もう少し散歩を継続すれば、この辺の筋肉もついてくるはず。歩く時間をだんだん延ばし、ある程度まで進んだら、軽いジョギングもとりまぜて、次のランニング段階まで持っていく。そこまでに1年以上かかるかもしれない。まずは、散歩をきっちり続けることが大事。前にも書いたが、「千里の道も散歩から」である。

 仙台の90歳の母から、「2月8日の誕生日おめでとう」という手紙をもらった。その前に電話で話した時には、「2月8日でなくて、2月6日と書いたかもしれない。ぼけたかな」と言っていたが、手紙では、ちゃんと「2月8日」となっている。手紙の字も内容も、しっかりしていて、ぼけている兆候はない。90歳の母親がしっかりとやっているのだから、63歳になろうとしている息子も、しっかりとやらんといかん。

 仙台「ラジオ3」の佐藤研さんからのメールで、2月8日の「シローと夢トーク」誕生日特集のための私のDJが、ちゃんと録音されており、番組としての編集を無事完了したとの報告があった。一昨日、かなりの混乱の中で録音した代物なので、うまく番組にできるのだろうかと心配していたのだが、ホッとした。その番組、私は聴けるのだろうか。


2011.2.4(金)

 久しぶりの散歩    

 暖かい日。散歩再開のタイミングを探っていたが、今日は絶好の日和である。厚いジャンパーを着込み、手袋をして歩き出したが、このいでたちでは暑いほど。実に2ヵ月半ぶりの散歩である。「最初から飛ばさないように」という妻の助言もあり、今日のところは、3分+3分の6分の歩き。自宅内での階段昇降の成果で、筋肉は相当できているので、しっかりした歩きができた。

 昨日のことであるが、取材に来られたOさんが、帰りがけに「プレゼント」を渡してくれた。退院1周年と早めの誕生日祝い。いただいたのは、島根県松江市の李白酒造の「大吟醸 月下獨酌」300ml。なんと時宜を得たうれしいプレゼントだろう。善は急げで、早速、晩飯の時にありがたくいただいた。ともかく、おいしい。Oさんの気持ちが込められていること、久しぶりのお酒であること、それがお酒の味をさらに高めている。妻の目が光っているからというわけではないが、7勺ほど飲んで杯を置く。少量であるが、ゆっくりと、いつくしみながら味わった。


2011.2.3(木)

 退院一年、そして新しい病友    

 外来受診の日。受診を待っていたら、隣に坐った女性が、「浅野さんですか」と声をかけてきた。それが長谷川智子さん。ATLを発症し、横浜市立病院で抗がん剤治療(なんと8クールも。私の場合は、3クール)を受けた後、がんセンターに転院して骨髄移植を受けた。主治医は田野崎医師。それから5年。重大な合併症も感染症もなく、職場復帰して元気でいらっしゃる。今日は3ヶ月に一度の受診の日。長谷川さんは、私の目標であり、励みである。ご出身が、岩手県陸前高田市ということで、九州以外に三陸沿岸にウイルスキャリアが多いという情報に合致するのだろうか。いろいろお話を伺ったが、途中段階では大変なこともありながら、今元気でいるということがなによりである。毎週、一人ずつ病友が増える。

 1月13日の日記に、病友として石井竜也さんのことを書いた。同姓同名で、米米クラブのボーカルの方がいる。その関係者から、私の日記に登場する石井竜也さんは、自分のところの石井竜也ではないですよねというメールをいただいた。そのとおり、別人です。この方面に疎い私は、米米クラブは知っていたが、そのボーカルの方が石井竜也さんという名前だとは知らなかった。無知ゆえの混乱を招いてしまった。「石井竜也さん(米米の石井さんとは別人です)」と書けば問題はなかったのに。

 今日の診察の結果は、異常なし。血液検査の結果も変わりなし。このままで、復帰に向けて準備をする段階である。一年前の今日、4ヵ月半の入院生活を終えて、ここがんセンター中央病院を退院した。退院して私はほっとしたが、自宅療養を支える妻の負担が大きくなることにすぐ気がついた。あれから、丸一年、妻にはがんばってもらったことになる。

 退院して驚いたのは、階段が昇れないこと。手すりにすがって、腕の力を借りないことには前に進めない。入院中は、病棟内をぐるぐる回る「散歩」を相当やっており、筋肉の衰えを防いでいたつもりだったが、水平移動の筋肉と垂直移動の筋肉は違うということだろうか。あれから一年。途中、GVHDによる肺炎のため2回入院し、その後、あの悪夢の出血性膀胱炎による入院もあったが、ここまで辿り着いたということである。それなりの感慨あり。

 仙台の松岡邦明君は、私の仙台二高時代の同級生。発病以来折につけ励ましてくれる友人の一人だ。12月の膀胱炎による3度目の再入院を知り、病気快癒祈願のお百度参りを始めたという。昨日、松岡君から電話があって、この日で、お百度参りの半分、50回目の祈願を終えたと聞いた。祈願に出向くのは、定義(じょうげ)如来で、彼の自宅から車で1時間もかかる。家を6時半に出て、8時のご祈祷を受ける。それを50回。ありがたいことである。こうやって祈ってもらっていることを知ることで、私の病状にも、まちがいなくいい効果を生んでいる。文字通り、おかげさまで、快癒は目の前である。ほんとうに、ほんとうに、ありがとう。


2011.2.2(水)

 久しぶりの「シローと夢トーク」(予定)    

 仙台の「ラジオ3」の佐藤研さんからメールがあり、「シローと夢トーク」の誕生日記念特別番組を制作したいとのこと。「シローと夢トーク」の特別番組と称するものを入院中に3回ぐらい制作した。文字通り、病床からのDJであり、私とすれば、仙台のエルヴィスファンを含む友への「こんなに元気にやっているよ」というメッセージを伝える意味合いもあった。最新の制作は、一昨年のクリスマス特集だから、ずいぶん長い間お休みしていた。ということで、誕生日特集のDJを我が家の書斎で試みたが、今回は、実際に曲を流す形でやろうと色気を出したのが失敗の元で、何回やってもうまくいかない。なにしろ、慣れない録音機を操作し、手元から離れたCD再生機も扱わなければならない。あきらめて、今までどおり、語りの部分だけの録音に変えて、なんとか終了。録音機ごと佐藤研さんに明日送る。うまくできていれば、ラジオ3で2月8日(火)15:00−15:45放送される。

 夜7時のNHKニュースで、大相撲八百長疑惑問題がトップニュースで報道されたのに驚いた。八百長疑惑に驚いたのではない。驚いたのは、今まで明るみに出なかったことにである。というより、国会の予算委員会審議のニュースを差し置いてのトップニュースということに驚いたのである。そうか、世間の関心は、予算審議より八百長問題にありというのが、NHKの読みということかと、複雑な思いで納得。

 海の向こうの政変がらみでは、エジプトのムバラク大統領が9月の大統領選挙には出馬しないと表明した。逆に言えば、それまでは辞任しない。シバラク大統領ということか。これでは、国民は納得しないだろう。さあ、どのような形で収まるのか、世界の目がエジプトに注がれている。


2011.2.1(火)

 村木厚子さんの勇気ある闘い    

 プロ野球のキャンプが今日から一斉に始まる。楽天イーグルスが発足した2005年、キャンプ地の沖縄県の久米島に応援にでかけた。その時の久米島の人たちの熱烈歓迎ぶりに感激した。今年は、日本ハムのルーキー、斉藤祐樹投手を囲むフィーバーぶりが半端でない。沖縄県名護市は盛り上がっている。沖縄県への経済効果は45億円とのこと。しっかりキャンプで練習を積んで、公式戦で一軍デビューを勝ち取って欲しい。わが田中将大投手との対決を期待しているからね。

 昨夜のTBSテレビのドラマ「私は屈しない 特捜検察と戦った女性官僚と家族の465日」の余韻がまだ残る。ドラマとしての出来もいい。村木厚子さん(ドラマでは中井章子)役の田中美佐子は、村木さんと姿かたち、物腰、しゃべり方がそっくり。とても上手に演じていた。

 検事の取調べの場面。「これで認めれば、執行猶予ですよ。大したことない罪で済む」という検事に対して、村木さんは問う。「検事さんの言う大したことのある罪とはどんなものですか」、「殺人とか傷害だよ」。ここで村木さんは、きっぱりと宣言する。「私は恋に狂って殺人を犯すことはあっても、法律に反して虚偽文書を作ることは絶対にしません」。社会的弱者のための仕事に身も心も捧げてきた一人の官僚としての自負がある。検事が言う罪を犯すことが「大したことない」などということは、絶対にない。人間としての尊厳の問題、誇りの問題である。そんな宣言に聞こえて、胸に迫るものがあった。同時に、検事の取調べでは、こういった手法で被疑者を「落として」きたのだろうと察しがついた。「執行猶予で済むなら」、「早く保釈されたい」といった被疑者の心理に乗じて、真実でない供述に落とし込む。

 逮捕されて、手錠をかけられ、腰縄つきで連行される村木さんの姿に胸がつぶれた。独房での生活、看守の横柄な口のききかた、人間としてのプライドがずたずたにされるような扱いである。にもかかわらず、毅然とした態度を崩さない村木さんに救われる思いはするが、無実の人間に対するなんたる理不尽、横暴かと、怒りがこみ上げてきた。そんな中で、村木さんを信じ、励ます家族の姿に感動する。家族だけでなく、多くの人たち(私も入っていたつもり)の支援は、村木さんを支える力になっただろう。

 それにしても、160日以上に及ぶ不当な拘留期間、無罪獲得までの465日間、村木さんは、雄雄しく戦い抜いた。少しも揺らぐことなく、無実の主張を貫く姿は神々しいほどである。最後に、裁判官から無罪の判決を受ける場面は、感激の涙を禁じえなかった。検察の情報を鵜呑みにして、村木さんを犯人扱いするマスコミの浅薄さとか、検察の犯罪的な捜査方法など、まだまだ言いたいことはたくさんあるが、今回は、ドラマを見た感激だけでとどめておこう。

 小沢一郎民主党元代表が、昨日、政治資金規正法違反(虚偽記載)で「強制起訴」された。小沢氏は一貫して無罪を主張している。その点では、村木さんと同じだが、中身はだいぶ違うのではないか。今日のところは、それ以上書かない。


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