浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 2月第4&5週分          

2011.2.28(月)

がんばらない一日    

 朝から雨が降っている。春の暖かい雨ではない。日中の最高気温は6℃。当然ながら、散歩はできない。階段昇降もさぼってしまった。

 慶応大学SFCの春学期に、私が担当する授業の概要、授業計画(シラバス)を登録した。学生は、Web上でこれを閲覧し、どの科目を受講するかを決める。授業シラバスを作成して、登録をするという過程を通じて、大学への復帰が現実のものとして意識される。一体、どれほどの学生が受講してくれるのか、少々不安ではある。「客の入りが気になる」というのに近い心境である。

 今日の「活動」としては、これぐらい。原稿を書くはずだったが、勝手に延期。昼寝はしたが、散歩はお休み。「がんばらない」というのが、今の私にとって、最大の「がんばり」なのかもしれないが、でもなんだか後ろめたい気がする。


2011.2.27(日)

村木厚子さんとの対談    

 フジテレビで東京マラソンの中継を断続的に見ていた。3万人超のランナーがスタートする瞬間はしっかりと目に納めた。09年の大会では、私もこの大集団の中の一人としてスタートを切った。今後、この大集団の一員となる可能性はあるのだろうか。漠然とした夢としてはあるが、「ぜひとも」と思うのはやめておこう。すべての条件が許せば、あるかもしれない。その程度の「夢」は、持ち続けたい。レースは、男子は2時間7分34秒でエチオピアのメコネンが優勝、日本人1位(全体で3位)は埼玉陸協の川内優輝選手が2時間8分37秒の好タイムでゴールし、世界陸上の代表内定となった。川内選手は埼玉県職員(高校の事務職員)だから、市民ランナーである。仕事もしながら、厳しい練習と両立させて、この結果である。感動した。

 会いたい、会いたい、会ってお話を聞きたいと熱望していた村木厚子さんとの対談が、あるテレビ番組の企画で実現した。2009年6月に、私はATL治療のため入院したが、それからすぐに村木さんは虚偽有印公文書作成容疑で逮捕された。なんたる理不尽と怒った私は病床にある。無罪を訴えるメッセージを、何人かの支援者と連名で送るぐらいしかできなかったが、同じように過酷な運命に見舞われた私としては、村木さんをその運命と闘う同志という感覚で見ていた。村木さんのがんばりは、私のがんばりに通じるし、村木さんが無罪を勝ち取ることは、私が病気を乗り越えることに通じると思っていた。村木さんは、無罪を勝ち取り、仕事に復帰した。同志として、話したいこと、聞きたいことは山ほどある。それが、今日、実現した。村木さんを我が家の玄関で迎えた時、思わず涙で声が詰まってしまった。対談は、実に興味深く、そして楽しく進行した。これが編集されて、番組になるが、その詳細については、まだ言えない。  


2011.2.26(土)

有用な新聞記事    

 NHKラジオ第一「どよう楽市」に電話出演。電話の向こうにいる残間里江子さんによれば、私の病気のことを心配している聴取者がたくさんいるとのこと。短い時間ではあるが、元気な声をお聴かせできたので、安心していただいたと思う。そんな機会を作ってくださった残間さんはじめ、番組関係者に感謝したい。電話で出演している様子を、カメラで撮られていた。また、何かの番組で使うのだろうか。電話出演が終わって、散歩に出たが、その際もカメラがついてきた。99歳の佐藤さんの家の庭の前を通るときに、「元気でね。いつも応援してますよ」と声をかけてもらった。毎度書いているが、佐藤さんの元気さは、私の理想、目標である。

 顔のあちこちに発疹が出ていて、かゆい。マスクをして寝ているので、それの刺激によるのかもしれないが、顔だけでなく、胸や腕にも発疹が出ている。GVHDではないだろうし、ヘルペスとも違う。今朝の朝日新聞の「be」の記事に「ステロイド剤の副作用として、ニキビのような発疹がある」というのを見つけた。一日の服用量は4mgと少量にはなったが、ずっとステロイド剤を飲み続けている。「発疹の原因はこれかもしれない」と、一応、納得。

 同じく「be」の「フロントランナー」に協和発酵キリン社長の松田譲さんの紹介記事が出ていた。ご主人が骨髄炎を発症しているTさんからのメールで、「こんな記事があります」と教えてくれた。「抗がん剤の新薬で世界に挑む」というタイトルがついている。この会社が挑む抗体医薬の開発の歴史と将来についての話が興味深い。抗体医薬とは、ヒトの免疫の仕組みを活用し、がん細胞だけを狙って破壊する薬で、副作用が少ない特質を持つ。まさに、夢の抗がん剤である。すでに他の報道で承知していたことであるが、「4月に成人T細胞白血病リンパ腫の治療薬の承認を厚生労働省に申請する」とあるのは、まさに、私の病気のための薬のことであるので、期待がふくらむ。こういう会社の努力が、我々患者に福音をもたらす。

 自分が病気になったからということもあろうが、毎日の新聞で、医療関係、薬事関係の記事が目に留まることが多い。世の中の関心の高まりも、こういった記事が増えている要因だろうと思う。記事は、とても有用であり、病気についての理解を深めてくれる。  


2011.2.25(金)

光の春・気温の春・花の春    

 朝からいい天気である。気温は4月上旬並みというから、桜が散り終えた頃の陽気なのか。風は強いが、暖かい南風は、むしろ心地よい。この風が、春一番らしい。そんな中で10分+10分の散歩をするのは、実に気持ちいい。雲ひとつない青空の下、春の光が降り注ぐ。気温が高いので、歩いていて汗ばむほどである。光の春、気温の春を満喫している。花粉症だけはごめんだが。

 我が家の猫の額ほどの庭に、パンジーが各種いろどりで咲いている。ストック、ゼラニウム、葉牡丹、スノードロップ、日本水仙、クリスマスローズ。花の名前は、妻から教えてもらった。花の春も到来である。

 午後から、雑誌の取材。自治体職員に何を期待するかというのがテーマである。私の23年間の国家公務員体験、12年間の知事の仕事を通じて、思うところがいささかある。その思いに任せて、どんどんしゃべりまくったが、これを編集するのは大変だろうなと、記者に同情してしまう。「公務員は、仕事を通じて幸せになれる」ということを、現職の自治体職員にぜひ知ってもらいたい。そういう強い思いに押されての饒舌であった。  


2011.2.24(木)

2週間ぶりの外来受診    

 2週間ぶりで、がんセンターでの外来受診に。検査結果は、満点ではなかった。腎臓機能を示すクレアチニンの値が1.3と、正常上限1.1を上回った。生理食塩水の点滴を受ける。所要2時間。日頃から、水分接種をまじめにやらないといけない。一日2000ccは、結構きついノルマではあるが。

 外来に行ったので、散歩は中止。それほど疲れたわけではないが、大事をとる。その代わりということでもないが、「年金時代」に連載中の「新言語学序説」の原稿を書き上げた。締め切りは、毎月10日なのだが、いつもそれよりずっと早く担当者に届けている。「内容はともかく、締め切りと字数はきっちり守る」というのが、私の原稿執筆のモットーなのだが、今回もそのとおりである。

 ニュージーランドのクライストチャーチの地震被害の惨状が伝えられている。日本人の中で、安否不明の人が多数いる。日本からの救助隊が、現地に到着したが、時間との勝負である。見守るご家族の方々の心労を思うと、心が痛む。ニュージーランドと同じ地震大国である日本でも、同じような地震が、いつ、どこで起きるかわからない。首都圏でも、耐震化が遅れている建物が多数密集する地域がある。地盤が悪くて、揺れによって地面が液状化するような場所もある。地下街、地下鉄にいるときに大きな地震に襲われたら、どうなるのだろう。大きな地震なんて、絶対に来ないと信じ込んで、街づくりが行われているのではないか。まだまだ発展、開発を続けている東京の町並みを見ていると、そんなことを考えてしまう。

 26日(土)のNHKラジオ第一「どよう楽市」に電話出演する。番組は8:35→10:55。10時過ぎから自宅でスタンバイして、実際の出演は10時15分ごろから5分間ぐらい。パーソナリティ(というんだろうか)は、NHKのアナウンサー宮本愛子さんと、残間里江子さん。この日のゲストは、なんと、生島ヒロシさんである。昨日のTBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」には、残間さんがゲストで出演していたが、その逆の形で生島さんがゲストとなる。「どよう楽市」は、ラジオ放送ならではの、しっとり落ち着いた雰囲気の番組で、中高年を中心に人気があったが、残念ながら、来月19日で終了してしまう。その直前に出演させてもらうのは、光栄なことである。


2011.2.23(水)

散歩良ければ、すべて良し    

 今朝は、TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」を、首都圏ローカル、5時の「おはよう定食」の時間から聴いていた。今日のゲストは、残間里江子さん。生島ヒロシさんと私との共通の友人である。三人とも同世代、同じく宮城県出身。よくしゃべるというのも、共通点だろうか。二人の掛け合いは、息がぴったりで、いろいろな話題が幅広く語られていく。残間さんの著書「人に会うと 明日が変わる」が3月1日に発売されることも、紹介された。睡眠時間3時間のところを1時間に削って書いたのは、がんに侵された恩人N氏に頼まれたからという。奇跡がおきた。原稿を書き上げたところでN氏に会ったら、がん細胞がなくなっていた。本のタイトルどおり、人との出会いを大事にしてきた残間さんの、面目躍如ではないか。

 番組が6時半に終わり、そこから私の一日が始まる。腹筋50回、体温36.2℃、体重57.1kg、血圧127−74、血中酸素濃度98%、血糖値115、いずれも「良し」。以上は、自宅でできる検査であるが、それ以外の検査結果は、外来診察の際の血液検査でもたらされる。明日がその診察日。その結果も、すべて、「良し」だといいのだが。

 散歩は10分+10分。実際は、あとのほうの「10分」は正しくない。今日のところは、珍しく、「9分57秒」である。「珍しく」というのは、これまでは、これが10分05秒とか、10分+アルファであったから。散歩の目標を「あの信号まで」ではなく、「10分行ったところまで」としているのは、24年前にジョギングを始めた時からの習慣である。往路と復路にかかる時間が同じというのが理想。だいたいは、復路のほうが少し時間を要する。「疲れ」があるからだが、つまりは、往路がオーバーペースということになる。その時の体調によって、10分で歩ける(走れる)距離は変動する。「昨日より遠くへ行けたな」となれば、調子がいいことを示す指標となる。この「10分」が少しずつ、少しずつ延びて(「伸びて」なのかな)いくことに喜びを見出しながら、散歩を続けていきたい。

 ニュージーランドのクライストチャーチで大きな地震があり、大きな被害が出ている。24人の日本人と連絡がつかないということで、心配である。クライストチャーチには、宮城県知事を辞めて3週間ぐらい経った2005年12月半ばに訪問した。一緒に行った妻は、倒壊した聖堂の近くのホテルに宿泊したと言うのだが、私の記憶はあいまいである。市電が走り、緑が多い、落ち着いたきれいな町という印象は残っている。あの美しい町が、テレビのニュースで見ると、がれきだらけになっている。地震の怖さを見せつけられる。


2011.2.22(火)

菅政権の危機    

 暖かな天気に誘われて散歩へ。10分+10分。光は春の色、気温も春のもの。そんな中を颯爽と歩くのは、実に気持ちがいい。散歩を、大学復帰に向けての身体的リハビリの一環と位置づけてはいるが、そんな義務ベースではない。権利ベースとしての散歩は、この時期が一番である。

 菅内閣の支持率が20%以下に落ち込んだ。予算関連法案の成立が危ぶまれている。そんな中で、菅内閣は総辞職だ、さもなければ衆議院解散だと、野党が叫んでいる。野党は、野党になった瞬間から、政権打倒か衆議院解散を目指すのは当然であるから、野党にそう言われたからといって、動揺することはない。野党としては、内閣総辞職するべきというなら、なぜ内閣を変えなければいけないのか、それを示す必要がある。議員内閣制のもと、正当な手続きで選出された首相であり、その首相に任命された閣僚である。次の衆議院議員選挙までは、辞める必要はないし、ここで首相を変えることの国際関係でのマイナス面も考慮すべきである。内閣総辞職するほどの失政はあったか。金の問題、権力の乱用、その他大きなスキャンダルなど、あっただろうか。

 「民主党が内輪もめをしている」、「首相が決断できない」、「できもしないことを言う」といったことが、民主党の支持率が上がらない要因となっている。政権への支持率低下も同じ要因である。しかし、そのことが倒閣の理由になるだろうか。それらの結果として、政策が実行できないとか、間違った政策が導かれているということはあるとしても、非難するなら、そのことをこそ非難すべきである。とすれば、結論を出すには早過ぎる。付託された任期を通じて、どういった結果になるのかを、じっくりと見定めてからでいい。新学年になって1ヶ月で、「お前は、成績が悪そうだから」といって落第させてはならない。

 予算関連法案が通らないから、首相は辞めろという論もあるようだが、これは論理的におかしい。学級委員長が、校門のところでいじめっ子に行く手を阻まれて、遅刻してしまった。「遅刻をするような奴は、委員長として不適格だ、辞めろ」と、そのいじめっ子が言うようなものである。野党の反対により、予算関連法案(の一部)が通らないとしたときに、反対した野党が「法案が通らないのだから辞めろ」というのとどこが違うのか。

 チュニジアに始まり、エジプトでも、専制的な独裁政権が倒された。リビアも時間の問題だろう。いずれも、長期間、政権が独占されてきた。結果として、圧政、人権侵害、絶対的な貧困など、国民として黙っていられない状況を作り出した。それがインターネットの普及も大きな力となって、民衆の団結へとつながり、政権打倒を果たした。菅政権と比べるのは、変だとは思うが、発足してまだ一年も経っていない。圧政も、人権侵害も、その他、国民を苦しめることをしているわけではない。それでも、任期も待たずに途中で打倒されなければならないのだろうか。その後の選択肢は用意されているのだろうか。

 菅政権擁護論のようになってしまったが、真意はそうではない。民主党内で内輪もめをしている場合ではない。与えられた条件の下で、しっかりと政権運営をし、国民のためになるような施策を実施して欲しい。首相の座にしがみついているという印象を与えてはならない。捨て身になって、誠心誠意、政権運営をせよ。そうなったら、堂々と政権擁護の論を展開するよ。  


2011.2.21(月)

春眠、寝惚けを引きずる    

 TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」を聴きながら、起きる態勢を整える。今日のゲストは、与良正男さん。TBSテレビ「朝ズバ」で、病気療養中の私に代わって、金曜日のコメンテーターを務めてくれている。そんなことで、親近感を持って与良さんのコメントを聴いていた。気象予報士の江花純さんが、「光の春、気温の春、音の春」と言っていたのに感心した。この順番で春はやってくるらしい。光の春、気温の春というのは、なるほどとすぐ思い浮かぶが、音の春という表現は新鮮である。鳥の声、雪解けのせせらぎの音などの音の春は、まだ少し先である。

 光の春は、暦に先駆けて、すでにやってきたようである。週日は、6時半ごろに離床するが、その頃には、世の中は光があふれている。寝起きは、このところ、眠気が抜けない日が多いのだが、「春眠暁を覚えず」とはちょっと違う。昨夜も3回か4回、トイレに起きたので、深い眠りが持続しないせいもある。頭に帽子をかぶり、マスクと手袋をつけて寝ている。薬の副作用のせいではないかと思われる発疹が頭や胸、腕に出ているが、寝ているうちにそれを爪で引っかいたりしないように、この格好で寝ている。マスクは、喉を乾燥から守るため。

 今日の日記、なんだか、まだ寝惚けている感じで、要領を得ない。これも春の訪れが近いせいと思いたい。「菅政権の危機」といったことを書きたいと思ったが、これは明日に回す。すっきりした頭で書かないといけないから。


2011.2.20(日)

今日は寝て曜日    

 今日は寝て曜日  朝の起きがけの検温で36.7℃だった。朝の体温とすれば、やや高い。今日は日曜日ということだから、寝て曜日にして、おとなしくしていることにした。「おとなしく」というのは、散歩中止、腹筋なし、階段昇降なしということである。一週一回は、運動なしの休養日というのは、プロ野球選手のキャンプでもやっていること。これが長続きの秘訣である。

 昼は、横浜国際女子マラソンをテレビ観戦。山下公園の前の通りを4回も行き来する変則コースである。元気な頃は、自宅から山下公園まで何度も走った。その見慣れた景色のところを選手が駆け抜ける。予想通り、期待どおり、尾崎好美選手が2時間23分56秒の好タイムで優勝。世界陸上の日本代表内定第一号になった。3人が32キロ地点で並走しているところで、トイレに立った。戻ってきてみたら、尾崎選手がスパートをかけて二人を引き離したところで、一番いい場面を見逃したのが残念。


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