浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 3月第5週分           

2012.3.30(金)

球春   

 今日も散歩。珍しく、この一週間は休まず連続である。昨日は、がんセンターの外来受診を済ませて、午後からの散歩というのも珍しいことである。天気予報で期待していた好天ではなかったので、岸根公園は昨日の人手の半分といったところ。それでも梅の木の下にブルーシートを敷いて「花見」をしているグループがちらほら。そのほかに、椿も赤とピンクのが見ごろである。我が家から程よい距離のところに、こんなにいい公園があるのは、なんと幸運なことだろう。といったことを考えながら、21分+20分46秒の散歩を終えた。  

 午後からは、月刊「ガバナンス」5月号の原稿を書く。「国家公務員受難の時代」というテーマ。私にとって、国家公務員としての23年間は、充実したやりがいのある仕事であったと振り返っている。それにひきかえ、今の霞ヶ関の官僚は、給与の削減、天下りの禁止は仕方がないとしても、誤った「政治主導」に振り回されて、十分に力を発揮できていないのではないか。もったいない、かわいそう。国家の損失でもある。そういう意味を込めて、「受難の時代」と呼んだ。公務員を正しく導く、まっとうな「政治主導」こそが、この時代に必要である。

 今日からプロ野球開幕。球春来る。改めて、「球春」というのは、なかなかいい表現である。「待ちに待った」という感じも伝わってくる。その待ちに待った開幕戦、わが楽天はロッテと対戦。開幕投手の田中将大投手は緊張のせいか、力を発揮することができなかった。3対5で敗戦は残念だが、これからに期待しよう。


2012.3.29(木)

ATLのSURVIVORとして   

 多摩川を越える橋からの富士山の姿を確認しつつ、築地のがんセンターへ。富士山が見える日にはいいことがある。検査結果はすべて順調。久しぶりにMRIでの脳検査があったが、これも特に異常なし。今日は放射線科の伊丹医師の診察もあったので、その時に放射線照射治療時の被曝量を改めて確認したら、20グレイだったとのこと。単位を変えて表現すると、2万ミリシーベルト、2千万マイクロシーベルトである。福島第一原発事故以来、「これを超えると危険」という数値を耳にすることが多いが、その数値と比べると、すごい放射線量である。伊丹医師によれば「局所への照射だから、この程度なら大したことない」というのだから、これはこれでよし。

 廊下で診察待ちの間に、ATLの仲間と会う。Tさん、Mさん、Oさん。それぞれ診察日が違うので、こんなに一緒になるのは珍しい。いつもどおり、「体調はどうですか」と情報交換。足のしびれが残る、息切れがするなどの不具合は残るが、皆さん順調で元気である。4人ともATLのSURVIVORS である。ちょっと前までは「ATLになったら助からない」と見られていたことを思えば、これだけでもすごいこと。この10年、ATL治療の劇的な進展があり、我々はその生き証人のようなものだろう。新たにATLを発症する患者に勇気を与えるためにも、我々がしっかりした姿を見せ続けなくてはならない。


2012.3.28(水)

春爛漫なのに・・・・   

 気温がぐんぐん上がって、昼時の岸根公園は春うららというより春爛漫である。今日も子どもたちがはしゃぎまわる中を散歩。こんな散歩でも、時間の余裕、十分な体調、気候温暖といった条件がそろっているからこそ楽しくできる。それだけで幸せ一杯である。誰にともなく「ありがとう」と言いたい気持ちで42分の散歩を終える。

 午後からは、川竹大輔さん、三原岳さんが来宅。改革派知事時代のことを記録しておきたいということでの取材である。川竹さんは、橋本大二郎高知県知事時代の政策秘書、三原さんは、橋本知事時代に高知県政担当の時事通信記者だった。橋本さんをはじめ、北川正恭元三重県知事、増田寛也前岩手県知事、梶原拓前岐阜県知事などと一緒に「地方から変わる日本」という名の下にいろいろ活動していた。私のほうが忘れていることを川竹さん、三原さんがよく覚えているのに驚かされる。単なる思い出話ではなく、きちんと記録して残しておきたいという彼らの意欲に感心しながら、できるだけの対応をさせてもらった。

 今日は、同居している義母の89歳の誕生日。大正12年、関東大震災の年の生まれ。心臓疾患があり、年齢相応の衰えはあるが、基本的には元気である。家事もやるし、頭もしっかりしている。こういうふうに元気で年齢を重ねるというのは、ひとつの理想である。まずは、おめでとうございます。ますますお元気で。

 消費税増税法案をめぐって、民主党内の議論が混乱し、さらには国民新党が造反の構え。一体どうなるのだろう。どたばた芝居を見せられている感じがして、あまり真剣に見たくはないのだが、天下の一大事がこんなどたばたで決まっていくのだろうかと思ってしまう。誰にともなく「バカヤロウ」と言いたい気持ちで報道を見ている。春爛漫なのに、浮かれる気持ちになれないのは、こういった政治の混乱を見せられているからだろうか。


2012.3.27(火)

春の庭   

 昼前の散歩は暖かい春日和の中。今日の岸根公園も子どもたちでにぎわっている。春休み中の小学生がサッカー、バドミントン、テニス、フリスビー、自転車乗りを楽しんでいる。今年初めてひょうたん原っぱを一周。ゆっくり歩きをジョガーが追い越していく。こうやって散歩を続けているうちに、筋肉がついてきた。公園の上り坂もすいすい、クイクイと難なく上れるようになった。こういう進歩を実感できるのが散歩の楽しみに通じる。だからこそ、継続できるのだろう。そんなことを考えながら、21分+20分48秒の散歩を終える。

 自宅に戻ると、庭の沈丁花が強く匂う。土佐みずきが可憐な花を咲かせている。まとまって咲いているストックとパンジー。クリスマスローズは、くすんだ色で残っている。白椿が素敵。典雅な趣。狭い庭でも、春の訪れを伝えてくれる花々に心が和む。

 今さらではあるが、TPP問題をまじめに考えようと思い、いくつか本を読んだ。賛成論ばかりではバランスを欠く。その中で、「TPP亡国論」中野剛志著(集英社新書)が賛成論を徹底批判している。「アメリカが仕掛けた罠に日本はまた嵌るのか」(帯から)という論調で迫る。TPPに関しては、正反対の意見が飛び交っている。どっちの言い分が正しいのか、よくわからない。中野氏と賛成派が公開討論でもしてくれるといいのだが。


2012.3.26(月)

原発再稼動   

 昼前に散歩。18分+17分54秒。岸根公園では子どもたちが大勢走り回っている。2歳ぐらいの子(複数)が達者に走っているのに驚く。「♪あーるき始めた史郎ちゃんも♪」負けそう。生まれて2年しか経っていないこんな子どもが、ちゃんとしゃべって、きっちり走るようになる。見た目もみんな可愛い。昔の子はこんな可愛くなかった。それとも、このご近所の子だからだろうか。公園を散歩すると、いろいろな発見がある。

 東京電力の柏崎刈羽原発6号機が発電を停止した。これで東電の原発全17基が止まった。5月には泊原発3号機が止まり、国内54基すべてが稼動停止となる。私は、原発事故直後から「再稼動できる原発は限りなくゼロに近い」という見立てをしていた。それを前提にして、今夏の電力逼迫をどう乗り越えるのか、その対策を急いで立てるべきであると、この日記でも書いていた。「ほれ、そのとおりになっただろう」と言うつもりはない。問題は、次のようなことであることを、改めて繰り返したい。

 「今後の日本のエネルギー計画は、脱原発なのか、原発廃止なのか、それをどの程度の時間をかけて実現していくのか、検討していこう」という問題提起が政府要人の口から発せられるし、評論家の皆様も同じことを言う。「原発政策をどうすべきか」と選択の余地があるような言い方であるが、目の前の現実は、原発一基しか動いていないのだから、原発廃止したのとほとんど一緒である。原発再稼動の見通しもつかない状況であることを考えると、こんな問題提起自体が場違いである。原発政策というのは、今後の原発一般の扱いをどうするかであるが、今問題になっているのは、「この原発の再稼動を認めるかどうか」という具体・個別の原発についてのことである。さしあたって関西電力大飯原発3,4号機の再稼動が問題になっている。立地自治体の同意が前提であり、その場合、福井県知事やおおい町長が「オーケー」ならいいというのは形式論である。自治体というのは住民の集合である。首長は「イエス」と言っても、その自治体住民の大半が「ノー」と対応したらどうするか。地元議会の意向はどう反映されるのか。実は、この場面で、地方自治が問われていることに気がつかなければならない。国の「政治判断」で再稼動が決まるのではない。決めるのは誰か。立地自治体の住民が関わるのは当然である。個別具体的な原発についてのことなのだから、国民投票なんてことを持ち出す余地はないことも、念のため言っておこう。


2012.3.25(日)

橋下市長はただものではない   

 日曜日は朝の過ごし方が少し違う。NHK BS3で7時半から朝ドラ「カーネーション」を見てから起きだすのが週日の習慣だが、今朝は同じ時間帯にフジテレビの「新報道2001」を見ていた。友人の宋文洲さんが出演する。中身は橋下徹大阪市長の政策特集。税制改革(フラットタックス)、公務員改革、憲法改正などについて、橋下市長の方針に他の出演者が議論を投げかける場面が多い。出演者は見せ場を作れない。「橋下さんのおっしゃるとおりです」と納得してしまうか、簡単に論破されるか。宋さんも、かなり激しく食いついたが、すっといなされてしまう。橋下氏の議論のうまさは定評があるが、それだけではない。打ち出す政策の土台に、豊富な情報と分析、事前の身内での議論の積み重ねがあるから自信を持って議論ができる。このことは大したものである。今朝の番組でも、その点は再確認である。やはり、橋下市長はただものではない。

 大坂維新の会の「維新政治塾」が開講して、昨日は2000人の受講者が参加した。やるほうの狙いはよくわかる。12万円の受講料を払って乗るほうの気持ちはどうなのだろうか。みんな真剣なのだろうが、だからこそ、集まった2000人の集団を見ると「気分先行」のようなものが感じられて、なんとなく不安である。そう決め付けるのは失礼であるから、これからどうなっていくのか、興味を持ってみていこう。これも橋下市長がらみの話題。

 昼前の散歩は18分+19分31秒(往路はコース変更)。気温は低いが、風もなく、春うららに近い。日曜日の岸根公園には、春の光を楽しむ親子が大勢。思わず口元がほころぶ。もう1週間もすれば、公園の桜も咲き始めるだろう。

 夜、SFCの授業で私のSA(STUDENT ASSISTANTS)を務めてくれた神野翔、井田晟子、出口直巳の三君が来訪。神野君は卒業だが、井田、出口両君は新学期でもSAをやってくれる。病気になる前は、ゼミの学生が30人もやってきて誕生パーティーをやったこともあった。今夜はこじんまりと。そのかわり、じっくりと話ができた。彼らのおかげで、久しぶりにお酒を飲んだが、これがまことに旨かった。気分がいい夜。


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