浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 6月第1&2週分          

2012.6.9(土)

大飯原発再稼動への疑問   

 朝からの雨が、ほぼ一日中降っている。気温も低い。梅雨入り間近、もうすぐ宣言が出るだろう。やむなく、散歩は中止。少し遅くまで寝ていられて、ホッとするところもある。

 野田首相は、記者会見をして、大飯原発3,4号機の再稼動について「国民生活を守るため、再稼動すべきだ」と表明した。野田首相の言っていることは、とてもおかしい。

 再稼動の是非を判断する基準は、「稼動しても安全性に問題がないかどうか」であるはずだ。国民生活を守るために必須でも、安全性に問題があるなら、稼動してはならない。「安全性に問題がない」ということを立地自治体も納得しなければ、再稼動に同意はできないはずである。その意味では、西川福井県知事が、「野田首相が、立地自治体のこれまでの原発運用への努力を正しく評価し、原発の必要性への強い思いを国民に示すこと」を同意の条件のようにしてつきつけたことも、納得できない。立地自治体のこれまでの努力と協力については敬意を表するが、そのことと再稼動容認とは別問題である。「安全性の確認」が県民にも納得できるような形でなされたのかどうか、そこのところもあいまいなままである。

 野田首相は、「安全性に問題がないことが確認できたから再稼動する」ということだけ言っていれば、かえってすっきりしたかもしれない。「停電が起きれば、命を危険にさらす人が出るなど、国民生活は大きく混乱する」といった脅しのようなことを言いつつ、「だから再稼動だ」というのは、まったくもって余計なことである。「そういう支障が出るから、安全性が確認されていなくとも再稼動しようというのか」との反論を誘発する。民主党内でも、異論続出というのは、あたりまえだろう。消費税増税論議より、この問題のほうが民主党内に混乱をもたらすのではないか。


2012.6.8(金)

再審決定など   

 人通りの少ない早朝、頭からすっぽり帽子をかぶり、目だけ出した格好で、川崎市に隣接する横浜市の住宅から散歩に出かける老人が一人。川崎市に住んでいた高橋克也容疑者がつかまらない状況の中では、こういういでたちでの散歩も気が引ける。気分を変えるためもあり、2009年3月の東京マラソンで使ったシューズを履く。いい値段のシューズだからか、履き心地良好、歩きやすい気がする。そのシューズを履いての散歩は、17分54秒+14分23秒=33分17秒。

 昼は、「年金時代」7月号の「新言語学序説」第102回の原稿を書く。テーマは「美しい言葉について」。ここでいう「美しい言葉」とは、かっこよく聞こえるが、内容が空虚な言葉のことである。「ふるさとは地球村」という長野冬季オリンピックのキャッチフレーズについて、先の「出版を祝う会」で寺島実郎さんがスピーチで触れていたが、これが、まさに「美しい言葉」である。原稿を送ったら、編集者の奈良さんからすぐ返信がきた。「前回の『仙台弁について』に紹介してある仙台弁の意味について、『解答は次号で』と書いてあるのですが、その解答がありません」と指摘された。急いで、11の用例の解答を書き上げて、追加で送付。「解答は次号で」というのは、冗談のつもりだったのだが、まじめな読者もいることに配慮しなければならない。

 平成9年、東京・渋谷で東京電力の女性社員が殺害された事件で、無期懲役が確定したネパール人の男性について、東京高等裁判所は「新たに行われたDNA鑑定の結果、別の男が被害者を殺害した疑いを否定できない」として再審=裁判のやり直しを認める決定をした。DNA鑑定の精度が向上した結果、過去の事件でも、洗い直すことが可能になったことが、新しい証拠につながった。

 学生時代に、誤判、冤罪について、結構関心を持っていた。八海事件を論じた「裁判官」(正木ひろし弁護士著)を読んで、日本の司法制度の暗部を知らされた。後に、「真昼の暗黒」として映画化された事件である。多くの冤罪事件の弁護に尽力した、元裁判官の青木英五郎氏の著作も読みあさった。後藤昌次郎弁護士の著作には「冤罪」など、すぐれたものがたくさんある。こういう本を読むと、いかにして冤罪が起こるか、そして、そういう事件がいかに多いか、慄然とする。その意味で、今回の再審決定は画期的である。日本の裁判を変えるきっかけになるかもしれない。


2012.6.7(木)

夏時間のことなど   

 朝、6時過ぎに散歩へ。世の中は十分に明るい。今朝の日の出は、4時25分。節電が求められている今こそ、「夏時間」を採用すべきである。この日の光がもったいない。今日の日の入りは19:55。夏時間採用で、1時間時計を進めれば、夜の9時でも明るさが残ることになる。アメリカでは、「夏時間」のことをDAYLIGHT SAVINGS TIME(DST)という。文字通り、「日照の貯めこみ」である。3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までDST適用であり、夏期だけでなく、一年の大半がDAYLIGHT SAVINGSという徹底ぶりである。

 そんなことを考えながらの散歩。いでたちは、長袖シャツに長ズボン。マスクをして頭にはUVカットの帽子をすっぽりかぶる。「赤顔は紫外線のせい」という光子の説にしたがって、こういう服装での散歩となる。短パン、短シャツはダメ。帽子は口元を覆い、首の下までかかる。これで、サングラスをかけたら、まちがいなく職務質問にあう。もっとも、メガネはそもそもかけない。メガネの部品が皮膚を刺激するのを避けるためと、口覆い帽子着用だとメガネが曇るから、かけられない。そんな服装で、17分29秒+14分41秒の散歩を終える

。  「職務質問」で思い出した。地下鉄サリン事件の殺人容疑で特別手配されている、元オウム真理教信者の高橋克也容疑者のことである。手配写真の顔と現在の顔を比べて、「まるで別人」、「どうしてこんなに顔が変わるのか」という新聞記事にある。私も同じようなことを言われている。病気治療で髪の毛がなくなり、顔がムーンフェイスになり、目がはれぼったい。「『徹子の部屋』に出ている浅野を見たが、まるで別人」とか、「浅野さん、急に老けたな」、「かつらはずす前のほうがよかった」というコメントが、ツイッター上を飛び交っている。

 夜は、横浜駅近くの店で、佐藤進さん、小林るつ子さん、我々夫妻で会食。5月19日の「出版を祝う会」の準備から当日の手配、事後処理までお願いしたお二人の献身をねぎらうのが趣旨である。加えて、会の総括。「いい会になったね」と自画自賛をする。総括はそこそこに、いろいろなことに話が及んだ。彼らとは25年以上の付き合いであり、昔話も含め、人生を振り返る話も。楽しい時間を過ごした。

 自民党、公明党は、民主党の求める「税と社会保障の一体改革」関係の法案の修正協議に応ずることを決めた。一つの進展ではあるが、政策がどうのこうのという話ではなく、駆け引き、手練手管、腹の探りあいといった政局がらみの事象である。私とすれば、まったく興味がない。だから、何もコメントしない。コメントに値しない。


2012.6.6(水)

クリムゾン・レッドの顔の色   

 朝方、今にも雨が落ちてきそうな雲行き。傘を持って散歩へ。復路でポチポチ降ってくる。持ってきた傘は、なんと、日傘だった。そこから少し小走りになった。17分20秒+14分36秒と復路が短時間なのはそのせい。計測まちがいかもしれない。

 SFCでの授業は、「未来構想ワークショップ」。11グループから、ここまでの調査・研究の進捗状況の中間報告をしてもらった。学生の発表は結構上手である。グループによっては、取材のアポイントメントが取れていないという報告もある。「遅れてるぞ」と、こちらから声をかける。順調に進んでいるグループの報告を聞いて、「本気でがんばらないといかん」と心を引き締めたグループもある。中間報告は、そんな刺激になったようだ。もうひとふんばり、頑張って欲しい。グループ内のチームワークはとれているところが多いのには安心した。これなら、なんとかいけるだろう。

 顔の赤みが増している。「金太郎の火事見舞い」と言っていたが、楽天のユニフォームの色に近い。「クリムゾン・レッド」というとかっこいいが、それが顔の色となるとかっこ悪いことはなはだしい。何が原因なのか、わからない。だから対処のしようがない。田野崎先生の診察を受ける頃になると、赤みが薄れる。診察が終わって数日で、また赤みが増す。それが今の状態。顔の色にも人格があって、田野崎先生の前ではいい格好をしようとしているのではないかと、妻と二人で不思議がっている。見た目のことだから、心配することではないというものの、「見た目は大事」(妻の言)ではある。なんとかならないものだろうか。


2012.6.5(火)

プロ野球交流戦   

 SFCでの授業の日。行き帰りとも電車利用である。「政策協働論」は、「官僚制とマネジメント」について。授業後に提出された「答案シート」を読むと、多くの学生は、官僚制度と政治の関係などについて、基礎的知識が不足しているのがわかる。時間切れで、講義予定を全部カバーできなかったこともあり、もう一度、このテーマで追加講義をしないとけない。

 午後からの「障害福祉研究会」は、久しぶりに視察なし、ゲストなし。今日は、学生が主役である。「今学期ここまでで、一番印象に残ったゲスト、視察」、「今学期のレポートでとりあげる予定テーマ」について、それぞれ発表。そのコメントに、私から、時には長めのコメント。学生が、学期の進行とともに、障害福祉の問題について、理解と関心を深めつつあるのがうれしい。

 妻が「残務整理」で仙台に一泊ででかけている。久しぶりに、独りの夜。楽天対阪神のテレビ中継を見ながら過ごす。楽天が仙台で誕生するまでは、私は熱狂的な阪神ファンだった。楽天が誕生したシーズンから交流戦が始まったので、「セリーグは阪神、パリーグは楽天」という棲み分けができない。今日の試合は、百%楽天を応援である。「打て打て、金本!」だったのが「打つな打つな、金本!」になった。その金本がホームランを打ち、楽天は1対3で敗戦。あーあ。


2012.6.4(月)

内閣改造   

 早朝に12分+12分02秒の散歩。コースを変えてみた。復路で、曲がるところを一つ間違えたら、坂をどんどんのぼっていく道になってしまった。住宅街だから、目印がなく、ちょっと困ったが、なにしろご近所である。すぐに見覚えあるところに行き着いたので、無事に(あたりまえ)帰還。たまには、こういうのも面白い。

 何も予定のない日。6日締め切りの「ガバナンス」7月号の原稿を書く。テーマは「原発再稼動の手続き」。政府が、大飯原発の再稼動を、手続き無視で決めることを批判する内容である。

 野田首相が内閣改造に踏み切った。5閣僚が交代。このタイミングでの改造は、大義名分がない。国会審議を進める上で、参議院で問責決議がなされた田中直紀防衛大臣、前田武志国土交通大臣の交代のために、他の3閣僚も「道連れ」にしたことはミエミエ。ひとからげにしたことで、問責2閣僚の屈辱感は、少しは薄められたか。

 新しい防衛大臣には、民間から森本敏・拓殖大学教授が起用された。森本さんとは、読売テレビの「ウエークアップ」のコメンテーターとして、何度かご一緒した。野田首相としては「民主党内には、適材はいないということですな」という嫌味は覚悟の上だろう。それよりも、何よりも、消費税法案を成立させるために、自民党など野党の攻撃材料を一つ一つ解消していくことのほうが大事と考えているはず。今回の内閣改造が、突破口になるとは思えない。まだまだ、この後、第二弾、第三弾を打ち出さなければ事態は打開できない。そこまで野田首相の覚悟が貫けるかどうか。これからが勝負である。


2012.6.3(日)

教え子の結婚式   

 昼から、SFCでの「教え子」、中島有理さんの結婚披露宴がホテルニューオータニにて。披露宴に出るのは、10年ぶりぐらいだろうか。珍しいことである。「珍しい」といえば、新郎が今どき珍しいぐらいの、爽やか系のいい感じの青年であること、彼らの結婚が「お見合い」によるものであること。私たちの時代でさえ、見合い結婚は珍しいほうだったのだから、今ならもっと珍しいことなのではないか。新郎新婦が並んだ様子は、長く恋愛関係にあったかのように、仲睦まじいを超えて、アツアツに見える。それがとても好ましい。

 教え子の結婚披露宴に、「恩師」として出るのは初めてであり、それがうれしい。中島有理さんには、SFCでの「地方自治論」の授業でSA(STUDENT ASSISTANT)をしてもらった。私の研究会にも所属していたのだから、教え子であることはまちがいない。うれしいことがもうひとつ。有理さんがお色直しで一時退席するのに、お母様の順子さんが付き添っていったが、その時にバックグラウンドミュージックで流れたのが、エルヴィスの「ハワイアンウエディングソング」。順子さんの選曲ということで、同じエルヴィス仲間であることがわかった。会場に流れるピアノ生演奏でも、「ラブミーテンダー」、「好きにならずにいられない」が演奏された。もっとも、後者は、私がそっとリクエストしたのだが。

 12時半開宴で、集合写真の撮影が終わったのは16時。ということで、今日の日記は、このことだけ。


2012.6.2(土)

手続き論がないがしろ   

 17分19秒+15分30秒の散歩を終え、朝のシャワーを浴びて一日が始まる。土曜日は、今週最後のNHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」を見た後は、日本テレビで「ウエークアップ」を見て、仕事にかかる。

 仕事は、来週の授業のレジュメづくり。少し手を抜こうかと思って始めたが、始めてしまうとそうはいかない。結局、参考文献も参照しながら、前回の学生からの質問への回答も完璧に仕上げて、レジュメを完成した。時間がかかる、労力もかかる。気力の続く間は、手を抜くことなく、気を抜かずやり遂げたい。今年度で定年を迎えるので、この授業も今年で最後なのだから。

 関西電力大飯原発の再稼動に反対してきた橋下徹大阪市長ら関西の首長が、一昨日、一転して、事実上、再稼動容認の姿勢を打ち出した。がっかりである。「がっかり」というのは、私が再稼動反対派で、それが「容認」ということになったからではない。私が大事なことだと思っているのは、手続き論であり、それが無視されようとしていることに「がっかり」している。

 手続き論については、この日記でも何度も書いているつもりであるが、繰り返す。今回の再稼動は、地元自治体が再稼動を承認しなければ動かない。「地元の承認」というのが、手続きの第一である。「地元自治体」とは、地元住民の集合体である。知事が承認すればいい、町長が承認すればいいというのは、形式論である。住民の意思は、住民投票に現実性がない中では、議会が代弁することになる。福井県議会が「知事に一任する」と決めてしまったことは、議会の役割放棄である。これも「がっかり」。自治体は二元代表制であり、住民意思を代表するのは、首長というよりは議会の役割という認識が議会側にないらしい。

 次に、承認するかどうかの判断で最優先すべきは、「3.11後」ということを考えれば、大飯原発が再稼動することに安全性の点で問題ないことを自治体として確認することである。電力が足らなくなるかどうかは、判断基準になり得ない。この夏の電力需給が逼迫しようが、安全性が確認できない限り、再稼動を承認すべきではない。逆に、電力は間に合うことが確認されても、安全性に問題なければ、再稼動は認められる。判断基準をまちがえてはいけない。

 手続き論でいけば、原子力規制庁の設置も決まらないうちに、再稼動を決めることはできないはず。今回、大飯原発の再稼動ということになれば、今後とも、再稼動にあたって、原子力規制庁のお墨付きはなくともいいということになる。なぜ、原子力規制庁ができて、その承認のもとに再稼動というまで待たないのだろうか。

 いったん再稼動になれば、「再稼動は期限つき」などということが通るはずがない。安全性が確認されないのであるのに、一定の期限なら再稼動していいなどという「論理」は、一体どこから出てくるのか。ゴーかストップか、どちらかしかないのは、言っているほうだって、わかっているはずなのに。橋下市長の迷走は、後々にツケを残したことになる。


2012.6.1(金)

クールビズ   

 日程が続いて、疲れ気味。それでも、散歩は少しでもやらないと、かえって調子が狂う。軽めに12分+11分55秒の散歩を楽しんだ。決して、「毎日の日課」、「ノルマ」、義務的なものではない。心の赴くままに、というのが長続きの秘訣。

 今日から6月、衣替え。役所では、「スーパークールビズ」ということで、半袖ポロシャツ姿も許されるとか。大臣たちは、かりゆし姿で閣議に臨んでいた。どちらも、どうも違和感あり。ネクタイなし、上着非着用ぐらいはいいが、クールビズとはいえ、公式の場でのラフな服装はなじめない。行楽地にでも言っているスタイルで記者会見をやられても、言葉に重みがない。今年は、電力不足で、これまで以上にクールビズが強調されるのだろうが、ものごとには限度というものがある。「クールビズ」という和製英語は定着したのだろうか。なんとなく、恥ずかしい。「省エネルック」ぐらいでいいんじゃないの。

 しばらくぶりで、何も日程のない一日。まとまったことがやれないままに、自宅での時間が過ぎていく。骨休めにはなる。前にも書いたが、何もしないで、何も決まらないで、時間が過ぎていくのが、今の政治の世界の状況。個人の生活ならそれでもいいが、政治がそれでは困るんだよね。


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