浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 6月第3週分          

2012.6.16(土)

がん支えあいトーク   

 一日中、雨降り。気温も低い。暑いのと寒いのと、かわりばんこにやってくる天気で、何を着るべきか迷う。気温の変化に身体がついていかないからだろう。風邪引きの人が多い。最近、公共交通機関を使う機会が多いので、そのことに気がつく。免疫状態を示すIGGの値が400ちょっとと、正常下限の800の半分しかない病後患者としては、よほど気をつけなければならない。

 午前中に「自治日報」から依頼の原稿を仕上げた。「地域主権の用語に惑わされての誤解がある」というのを、慶應大学での授業を通じて実感していたので、そのことについて書いた。「地方分権度60」といった概念を使うと、学生の理解も進んだことを引用しつつ、どうやったら一般国民の関心と関与を引き出すことができるかの考察である。締め切りは7月12日だが、「頼まれたらすぐに書く」という、いつもの習慣に従った。「味はともかく、早い、安いが取り柄のファーストフード並み」は、前にも書いたか。

 午後からは、虎ノ門の日本消防会館(ニッショーホール)での「がん支えあいの日」記念フォーラムで、がん患者の立場から、ひとこと話してきた。主催はNPO法人キャンサーリボンズ。「がん支えあいトーク」の中で、がんと暮らす、働くために、何が必要かのディスカッション。定員700人の会場がほぼ一杯なのに驚かされた。がん患者になると、病気は治っても、それまで勤めていた職場に復帰できない場合がある。それを何とかしようという知恵と支援についての話が中心である。持ち込んだ「運命を生きる」浅野史郎著(岩波ブックレット)30冊が完売。これには喜ぶよりも、驚いたしまった。

 アマゾン経由で購入したCD3種が届いた。フランク永井、橋幸夫、舟木一夫のベスト版。橋幸夫、舟木一夫に西郷輝彦を加えた三人が、私の中学、高校時代に全盛の「御三家」である。懐かしさで買い求めたCDであるが、三人とも過去の人ではない。今も現役で活躍中なのがうれしい。しばらくは、エルヴィスのCDはお休みということになりそうである。

 大飯原発の再稼動を政府が決定。この時期の再稼動はおかしい、必要な手続きを経ていない中での再稼動決定なのでおかしいと言っている。安全性を確認し、住民の同意もとりつけるための、あくまでも手続き論である。手続き論に不備があるままでの今回の再稼動決定は、次の再稼動論議でも繰り返される懸念があるので、特に今回指摘しておかなければならなかった。ばかばかしさだけが残る、後味の悪い顛末である。


2012.6.15(金)

東京一八会   

 今日の散歩は、昨日とまったく同じの12分+12分。今朝は日差しがあったので、顔に日焼け止めを塗り、UVカットのすっぽり帽子をかぶった紫外線対策ルックで出発。紫陽花を見ながら歩いているうちに、三好達治の「乳母車」を思い出した。「母よ― 淡くかなしきもののふるなり/紫陽花いろのもののふるなり/はてしなき並樹のかげを/そうそうと風のふくなり」。紫外線よけに、並樹のかげを歩いていたら、そうそうと風が吹いてきた。

 地下鉄サリン事件などで警察庁から特別手配を受け、川崎市の潜伏先から逃走していたオウム真理教の元信者、高橋克也容疑者が、東京都大田区内のJR蒲田駅近くの漫画喫茶にいるところを発見され、その後、殺人容疑で逮捕された。なぜ遠くまで逃げなかったのか、町の中に無防備で姿を現すのか、そもそも、何を考えて逃走していたのか。今後おいおいわかってくるだろう。高橋の逮捕で、あのおぞましい事件の解明が進展することを望む。被害者遺族とすれば、なおのこと、その思いが強いだろう。

 夜は、JR秋葉原駅近くの居酒屋で「東京一八会」に参加。仙台では、仙台二高第十八回卒業生が集まって、偶数月の18日に「一八会」が開催されているが、その東京近辺版である。昨年、ほんの短い時間だけ参加したことがあるが、今回はもう少し長くいて、他の7人の参加者と懇談しながらの楽しい時間を過ごした。卒業以来46年。みんな年齢を重ねているが、元気である。私も負けていられない。元気をもらった一夜。


2012.6.14(木)

外来受診が楽しみ   

 隔週木曜日、築地の国立がん研究センター中央病院で外来受診の日である。遊びに行くのではないのに、「待ち遠しい」という気になるのはなぜだろう。田野崎先生に会うのが楽しみということもあるが、検査と診察で「異常なし」を確認したいと思うからだろう。そして、今日の診察でも、期待通りの「異常なし」。顔の赤み、ムーンフェイスは、仕方がないところ。身体症状というよりは、見た目の異常なのだから。田野崎先生の診察を受けると、ホッとする。次回の受診は2週間後と言われて、ホッとする。1ヵ月後では、寂しいということではなくて、2週間ごとのチェックであれば、なにか異常が出てもすぐに対処できるという安心感があるから。

 昼は、このところ贔屓の「成富」で、二人とも夏野菜天麩羅天せいろを注文。丁度昼の時間で、狭い店内が混みあっている。だいぶ待たされたが、待つだけのことはあった。帰宅には、新橋駅から東海道線で横浜まで。がんセンターの帰りに電車を使うのは、これが初めて。

 帰宅してから、がんばって、来週の授業のレジュメを作成。なんとか仕上げた。まじめな自分をほめてあげたい。野田首相も、がんばっているようだ。ほめてあげたい。明日が、自民・公明との法案修正協議の締め切り。明日になっても「よくやった」とほめてあげられるかどうか。まさに、野田首相にとっての正念場である。


2012.6.13(水)

グループワーク   

 SFCでの今日の授業は、「未来構想ワークショップ」。11グループに分かれて、グループワーク(学生は「グルワ」と呼ぶ)により課題解決に取り組んでいる。そろそろ、グループとしての見解をまとめる段階である。そこまでの段取り、最終授業でのプレゼンテーションのやり方などについて、グループごとに解説、指導をしておいた。学生だけに「ワーク」させておくわけにはいかない。先生も一緒になってワークするのが、未来構想ワークショップだろうから。

 国会でも、グルワがなされている様子である。民主党が、「税と社会保障の一体改革法案」について、自民党の修正案をどう扱うか、公明党をまじえて議論の山場を迎えている。野田首相が、そのグループワークの民主党代表にいろいろ解説・指導をしている。代表者に任せるのではなく、首相自らもワークしているということだろうか。それにしても、グループワークとして、収まるべきところに収まるかどうか。結論締め切りは15日である。


2012.6.12(火)

梅雨寒の一日   

 梅雨寒というのだろうか。寒いとまではいかないが、涼しい空気の中で、12分+11分34秒の散歩をこなす。授業のある日なので、疲れを残してはならない。短い時間で切り上げた。こんな言い方をすると、散歩が義務的日課のように聞こえてしまう。義務とは言わないが、日課ではある。日課は、自然にこなすものである。理屈はどうであれ、散歩については、「♪いいじゃないの、しあわせならば♪」といきたい。

 慶應大学SFCでの授業の日。我が家を9:45に出て、白楽駅9:50の東横線で横浜駅まで。相鉄線の10:04発湘南台行き快速電車は10:35湘南台着。タクシーでキャンパス到着は10:50。DOOR-TO-DOORで1時間ちょっとの通勤である。相鉄線の30分で新聞や本が読めるのが電車通勤のいいところ。車窓から緑あふれる郊外の景色を楽しめる。

 午前中の「政策協働論」には、朝日新聞の原真人編集委員がゲスト講師でおいでいただいた。新聞報道の実際について、わかりやすく解説がある。そして、新聞記者であることの楽しさ、意義を熱っぽく語る。学生からは、「これからは、朝日新聞を購読したくなった」という感想多数。原さんに来ていただいた甲斐があった。

 午後からの「障害福祉研究会」のゲストは、工業デザイナーの光野有次さん。厚生省障害福祉課長時代に、長崎の重症心身障害児施設「みさかえの園」を視察した折に、ユニークな介助具をみつけた。それが光野さんの作品ということを知り、彼に手紙を出して、「話を聞かせて欲しい」と頼んだのがきっかけである。そこから始まった縁で、今日はSFCまでおいでいたくことになった。日常用具や介護用具、車椅子、座位保持椅子など、デザイン次第で身体的にハンディキャップがある人が使いやすくすることができる。光野さんの講義では、そのことを実例で示してもらった。学生にとっては、新鮮な経験だっただろう。授業のあとは、湘南台駅近くの居酒屋で、学生も何人か加わった「課外授業」。梅雨寒であったが、熱い授業で、寒さを忘れる一日。


2012.6.11(月)

紫陽花の季節に   

 散歩に出たら、地面が濡れているのに気がつく。夜のうちに結構な雨降りがあったらしい。一昨日、関東地方も梅雨入りというのを聞き逃していて、昨日出したお手紙2通には「梅雨入り間近で」などと書いてしまった。散歩の道すがらの、紫陽花が目を楽しませてくれる。庭ごとに、その色はさまざま。青紫あり、赤紫あり。我が家のは真っ白である。「真っ白な紫陽花」というのは、形容矛盾のようだが、これはこれで捨てがたい美しさである。「梅雨には紫陽花の色がよく似合う」。(六角橋百景)散歩は早く切り上げた12分+11分42秒。

 散歩時間の微調整は、NHK−BS1で朝ドラを見るのに間に合わせるためである。7時15分から「ゲゲゲの女房」(再放送)、続けて「梅ちゃん先生」を見る。どちらも面白い。「梅ちゃん先生」の視聴率は毎回20%超えで好調らしい。これは地上波放送のみの視聴率だとすると、我が家のようにBS放送の視聴率も加えたら、もっと高いということなのだろうか。

 このところ、友人、知人から本を送られてくることが続いた。今日は「死刑でいいです」池谷孝司編著(共同通信)を読んだ。16歳で母親を殺し、少年院から出所後は、面識のない姉妹を殺害した山地悠紀夫を追った実話である。副題は「孤立が生んだ二つの殺人」。山地は二つの犯罪を反省することもないままに、25歳で死刑を執行された。極貧家庭で育ち、親から虐待を受け、両親は離婚という生育歴もある。人格障害か広範性発達障害、アスペルガー症候群も疑われている。この本で強調されているのは、原因がなんであれ、適切な支援さえあれば、山地の第二の犯罪は防げたということである。「共生社会を創る愛の基金」の活動が目指しているものと通じる。昨日の大阪での通り魔殺人は「死刑になりたかった」という男の身勝手な犯罪であるが、刑務所出所後のこの男に、生活が成り立つような条件があったなら、踏み止まれたのではないか。こういった犯罪を防ぐための方策も、犯人の断罪と同時に考えられなければならない。


2012.6.10(日)

読書の日曜日   

 少し遅めの出発、少し遅めの歩きでの散歩を17分03秒+16分17秒で終える。帰宅してシャワー。直前の体重測定では、in my birthday suits=生まれたままの格好で=素裸で、58.3kg。57kg台がベスト体重の気がする。病気前は、63kgだったのと比べると、いい線まで落ちた。友人から「太ったね」と言われるのは、このムーンフェイスのせいだろう。

 目の前の仕事や原稿書きが一段落して、まとまった時間ができた。出かける日程や、取材なども入っていない。読み終えた雑誌や不要になった書類などを片付けた。これで、読みかけだった本を読める。「まいっか」浅田次郎著(集英社文庫)は、著者得意の軽めのエッセイ集。「まいっか」とは「ある程度のいいかげんさ」で、漢字を宛てると、「以和為尊」(和をもって尊しとなす)という聖徳太子の言葉になると、「文庫本あとがき」で筆者は解説する。「かわいそうだね」綿矢りさ著(文藝春秋)は、書評で目にして興味を持った。この著者の作品を読むのは初めて。それほど深刻ぶらない軽い青春小説の観あり。大江健三郎さんが一人で選考する「大江健三郎賞」を受賞。大江さんは、この作品を「彼女の転機を記念する傑作」と評している。史上最年少の19歳で芥川賞を受賞した「蹴りたい背中」も読みたくなった。  


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