浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 7月第2週分          

2012.7.14(土)

暑い日の読書    

 夜中に降り続いた雨は、朝方には上がったが、散歩に出るタイミングを逃して、今日は中止。昼からは、太陽も顔を出し、暑くなった。一日中、家の中で過ごした。緊張感がないせいか、本を読んでいても、眠気が襲ってくる。

 ときどき居眠りをしながら、「零式戦闘機」吉村昭著(新潮文庫)を読む。戦艦武蔵が巨艦巨砲主義の崩壊の象徴だったのとは違って、零式戦闘機(ゼロ戦)は日本の航空機工業技術の高さを示す、極めて優秀な戦闘機として太平洋戦争の初期には大活躍をした。零戦戦闘機の開発に関わった技術者の奮闘と哀感を、乾いた文体で客観的に描くのは、吉村流記録文学の真骨頂である。戦争が長引く間に、アメリカの圧倒的な工業力により、B29など新型戦闘機を大量に戦地に送り込み、ゼロ戦を圧倒する。無謀な戦争の犠牲になったのは、戦艦武蔵も零式戦闘機も同じである。  


2012.7.13(金)

愚行か、徒労か    

 6時18分、自宅を出たら、曇り空。お隣の恵藤さんのおばさんに「こんな天気のほうが、お散歩にはいいわね」という声に送られながら、散歩に出発する。岸根公園に到着したのが遅れて、集団ラジオ体操は第二体操から参加。体操の輪に加わっているのは、ほとんど私より年上のようだ。当然のことだが、みんな元気一杯。この年齢で、ラジオ体操ができるぐらいの健康状態、身体状態というのは、大したものである。その大したものである高齢者が集団で体操をしている姿は、さらに大したものである。そんなことを考えながら、16分30秒+15分49秒の散歩を終える。蒸し暑い中で、汗をかきながらの散歩は、愚行でもないし、徒労でもない。確かな手応え(足応え)と満足感が残る。

 何も日程が入っていない日であるが、こんな日は、溜まってしまった「雑用」を片付けることになる。なんとか片付けてから、「戦艦武蔵」吉村昭著(新潮文庫)を読む。戦艦武蔵を建造するのに、膨大な時間、資金、労力が費やされた。戦争という人間の奇怪な営みの中で、人間の狂気的なエネルギーが注がれる。吉村の即物的、客観的叙述から浮かび上がってくるのは、「徒労」、「愚行」という言葉である。本人たちは大真面目の使命感に突き動かされ、国を挙げての猪突猛進で突き進む。そこにこそ、戦争の虚しさ、愚かさがある。吉村が伝えたかったのは、そのことだろう。

 今の政局の動き。新党ができて、民主党は揺れ動いても、野田首相は揺るがない。消費税増税法案の成立に向けて猛進している。このことを虚しいとか、愚かと言うつもりはないが、国民は呆然として眺めているというところはある。原発再稼働への猛進もしかり。こちらは、呆然と眺めている国民だけではない。毎週金曜日、首相官邸を取り巻くデモの波は、再稼働反対を叫び続けている。200人で始まったデモが、20万人(主催者発表)に増えた。何かが変わった。これから、さらに何かが変わる。これまでのデモとは参加者の中身がまるで違う。愚行であるはずもなく、徒労に終わるものでもないだろう。

 


2012.7.12(木)

健康は異常なしだが、天候に異常あり   

 朝、TBSラジオ「おはよう一直線」に電話出演。小沢新党にコメントするつもりだったのに、生島ヒロシさんから突然「大津市の中学生いじめ自殺」についてコメントを求められた。ありきたりのコメントしかできなかったが、短い時間の出演なので、それも仕方がない。

 朝食後、国立がん研究センター中央病院での外来受診で築地へ。検査結果、診察結果は異常なし。異常ではないが、驚いたことは、毎度の検査結果が正常値上限の1.1以上だったクレアチニンの値が0.9だったこと。試験でいつも赤点ばかりだったのが、突然、合格点を取ったようなもので、光子にも「よかったね。真面目に給水したからだ」とほめられた。合格点というのは、腎臓機能が正常に働いていることだから、慶賀すべきことである。このところ特別に水分摂取に努めたわけではないのだが、結果オーライで、ひとまず安心である。それも含めて、「異常なし、順調」というのはありがたいことである。2週間後の次の外来受診までは、安心していられる。これからも、健康に留意した真面目な生活を送ろう。真面目な生徒さんの真面目な決意表明。

 九州北部で大雨が続いている。テレビのニュース画面には、すさまじい豪雨被害の様子が映し出されている。この大雨、尋常ではない。気象庁のメッセージでも「経験したことのない大雨」という表現になっている。この大雨、明日も続くという予報である。今年の気象は、どうもおかしい。日本全体が尋常でない気象状況だが、その中でも、九州北部の降り方は異常である。被害がこれ以上広がらないことを心から祈っている。  


2012.7.11(水)

パンダの赤ちゃんの短い命   

 なじかは知らねど、このところ体重急増である。朝の散歩を終えてシャワーののち、in my birthday's suits(生まれたままの格好)で測って59.5kg。ちょっと前までは58kg前後だった。ああ、それなのに、あっという間にこの増え方。特に大食いもしていないし、お酒もほどほど。間食もほどほど。指を回すとゆるゆるだった手首周りがキツキツ、お腹もズボンがキツキツ。光子からは、「ムーンフェイスがさらに丸くなった」と言われている。なんとかしなければならない。

 今日の散歩は18分+17分06秒。その合間に、集団ラジオ体操の仲間入り。あいかわらずふらつきながら、10分間の体操を楽しむ。それだけで気分爽快、入場無料で楽しめる。健康のためにもなる。ラジオ体操万歳。  9時半過ぎに自宅を出る頃には、夏の日が照り、暑さが始まっている。その中で、慶応大学SFCへ。研究室棟の5階から富士山がうっすら見えた。この季節、この時間にはめったにないこと。なんかいいことがあるだろうか。

 いいことと言えないこともないが、今日は、楽しみにしていた学生の発表の授業である。「未来構想ワークショップ」の今学期最終局面。今日と来週とかけて、11グループが今学期の研究成果を発表する。今日は、1グループ制限時間15分で6グループ。すべてが制限時間内であったことも驚きだったが、すべてのグループの発表が秀逸だったこともうれしい誤算、うれしい驚きであった。グループワークの途中状況を眺めていたが、「これじゃ、とても無理だな」と思っていた。この期待が見事に裏切られた。GOOD JOB,GOOD JOB。自宅に戻って、記憶が残っているうちに、各グループの発表を評価して、コメントも付さなければならない。さっきまでそれをやっていて、やっと終わったところ。

 帰宅したら、上野動物園で生まれたパンダの赤ちゃんが亡くなったというニュースを知らされた。誕生の日には、日本国中でお祝いしたのに。久しぶりの明るい話題だったのに。なんということだろう。パンダグッズを用意していたお店はどうするのだろう。パンダの赤ちゃんの名前募集に応募した人たちは、どうするのだろう。名前もつかないうちに亡くなってしまうなんて。パンダの赤ちゃんの短い命。とても悲しい。

 かたや、名前がついて船出したのが、小沢新党。「新党・国民の生活が第一」と命名された。うわー、言いにくそう。アナウンサー泣かせの党名だ。命名者も新代表も小沢一郎さん。不思議な笑いを満面に浮かべて、挨拶をする小沢さんの姿が、テレビニュースで何度も流れた。「増税法案の撤回」、「脱原発」、「地域主権の確立」を掲げての船出とのこと。なんだか、変だな。批判や非難ではなく、そういう思いしか浮かばない。船出はしたが、どの島を目指すのだろう。


2012.7.10(火)

授業も終盤   

 慶応大学SFCでの授業の日。「政策協働論」は、今回が実質的に今学期最後の授業。「今学期を振り返って」ということで、今までに扱ってきたテーマについて、改めて講義をした。授業後提出される「答案シート(出席カード)」の記述によれば、多くの学生が、「よくわからなかった事項が、今日の再説明でよくわかった」という反応だった。学期全般を通じて、楽しくて有意義な授業だったという感想が多くて、私とすればうれしいことであった。来週の最終授業は定期試験を実施する。「試験問題はむずかしいよ」と脅かしたせいもあり、「試験のこと心配です」という記述もちらほら。授業を真面目に聴いていれば、決してむずかしくない。ちょっとクスリが効きすぎたか。

 午後からの「障害福祉研究会」は、秋山美紀研究会と合同で実施。秋山さんは、私が宮城県知事の頃は、地元仙台放送の人気キャスターだった。お互いにいろいろあって、今はSFCで一緒というのは、不思議なご縁である。定年で、私は来年3月には、慶応大学を去る。私の研究会の学生は、秋山さんの研究会で引き受けてもらいたいと考えている。それもあって、今回の合同授業になった。授業内容は、双方の研究会の学生同士のやり取りのようになったが、そのスタンスがかなり違っているのが面白い。そのこともあって、今日の合同授業は、私の研究会の学生からは大好評。もっと早く、こういう合同授業をしたかったという声が多数あった。

 午前も午後も、大変に意義深い授業で、私としては大変満足。来週の研究会の最終授業のあとには、「課外授業」(飲み会)をする予定。学期中に、何度か提案したのに、参加希望者が少なくて不成立だったのが、今回はほぼ全員が参加希望。最後の最後になって、やっと成立した飲み会である。盛大にやりたい。


2012.7.9(月)

新幹線は読書空間   

 読売テレビ「ミヤネ屋」出演で大阪へ。番組のプロデューサーが吉川さんから結城豊弘さんに交代した。結城さんは、「ウエークアップ」を育てたプロデューサーとして、面識があった。今度は「ミヤネ屋」でお付き合い願う。番組内容は、芸能人の結婚式、パンダの出産、柔軟剤入り洗剤、大林素子さんのロマンスなどで、私のコメントが入る隙はない。小沢新党、尖閣諸島の購入のところで、一言二言だけだった。他のコメンテーターは安藤和津さん、岩田公雄さん。番組が終わっての帰り道、局の玄関のところで、森若佐紀子さんが「待ち伏せ」していた。森若さんは、私が病気になる前、毎週金曜日の「ミヤネ屋」にレギュラー出演していた頃の司会者。ご結婚をし、昨年長女を出産して産休、育休に入っていた。三年ぶりの再会となる。「お元気になられて、本当によかったです」と喜んでくれた。私の病気のことを心配してくれていた。ありがたいことである。

 大阪への行き帰りの新幹線の中で、「殉国」吉村昭著(文春文庫)を読む。新横浜・新大阪間は「のぞみ」で2時間17分。本を読むのには、丁度いい環境である。冷房が効き過ぎなのがたまにキズ。節電の掛け声はどこにいったのだろう。「殉国」は、太平洋戦争末期の沖縄戦での絶望的戦いを「15歳の陸軍二等兵比嘉真一」の体験を通して描く。徹底的な取材に基づき、事実を忠実に、綿密に描き出す、作者特有の記録文学である。作者の主観を徹底的に排して、事実のみ書く。これがいい。先日読んだ「虹の翼」も同じこと。昨日は「炎環」永井路子著(文春文庫)を読んで中断したが、吉村昭の作品をもう少し続けたい。


2012.7.8(日)

会合続き   

 曇り空の朝。傘を持って散歩に出かける。早めの出発なので、今朝も集団ラジオ体操に間に合う。NHKラジオから流れる女性リーダーの掛け声に合わせて、体操をする。今朝のラジオは、富山県小矢部市の市民公園からの実況である。その公園には、1,800人が集まって集団ラジオ体操をしているとのこと。こちらの岸根公園の集まり具合は、目測150人。体操の途中で小雨が降ってきたが、樹の下に陣取っていたおかげで、濡れないで体操を続行できた。体操を終えても小雨は降り続いていたが、「さしたる雨」ではないので、傘はささない。散歩は、19分+18分39秒で終えた。

 午後からは、「出番」が相次いだ。13時半から、青山のこどもの城で「玩具福祉学会」第12会大会で1時間半の講演。「障害福祉は闘いだ」ということを伝えたかった。次の出番は、銀座ブロッサムで「共生社会を創る愛の基金」の設立記念シンポジウムで閉会の挨拶。今までいろいろな会合に出たが、閉会の挨拶は初めて。60歳過ぎても、初めてということはあるものだなと、自分自身で感心しながら、きっちりと閉会の挨拶をやらせてもらった。驚いたのは、この会に700名を超える出席者がいらして、閉会の挨拶の時までお残りになっていたこと。シンポジウムなどを熱心に聴いていかれたことは、言うまでもない。話題の中心の村木厚子さん絡みの会とはいえ、「こんな地味なテーマなのに・・・」という遠慮があり、せいぜい参加者は200人ぐらいだろうと思っていた。これが見事にはずれての大観衆。それだけで、感激してしまう。病気以来初めて、江川紹子さんとお会いした。3年ぶり以上である。「元気になってよかったね」と喜んでくれる江川さん以上に、私の方こそうれしい再会であった。それ以外でも、昔の仲間、新しい同好の士にも会うことができて、私としては、大満足の会であった。


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