浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記  10月第2週分         

2012.10.13(土)

復興予算のデタラメ使い道    

 散歩、ラジオ体操はいつもどおり。午前中、宮澤歯科で治療。左下の奥歯の治療は3日目であるが、なかなか終わらない。神経を取り去ってしまえば簡単なのだが、一緒に血管も取り去られることになり、歯根に栄養が行かなくなり、いずれ歯が崩壊する。だったら、別な方法でいくしかない。「先生、気長にいきましょう」と患者の私が言うのだから、じっくり時間をかけて治療をお願いしたい。80歳になっても、20本以上元気な歯が残っている老人になりたい。80−20運動の実践者としての心意気である。

  朝日新聞の一面トップの見出し。「復興予算、被災地中心に」というあたりまえのことが守られていない。「財務省、今年度から見直し」と見出しが続くが、記事では、「財務省は来年度の復興予算は被災地中心に使うよう見直すことにした」とある。被災地の復興以外に復興予算が使われており、それを財務省も認めていたということである。財源は「東日本大震災復興特別会計」から出ており、その費用は「復興増税」として、今後25年間所得税に2.1%加算される分で賄う。復興税を課しておいて、その財源を被災地復興以外の予算に使うとは、とんでもないことである。被災地出身であり、重い税金を課されている者(私のこと)としては、怒りをどこにぶつけたらいいのか。黙っていられない。

 山中伸弥・京大教授がiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞したことで、日本中が喜びに沸いているその時期に、森口尚史氏のiPS細胞を使った臨床応用のニュースが飛び込んできた。これが、まったく裏づけがないこと、つまり、森口氏の自作自演であることは、ほぼ明らかになっている。森口氏がなぜこんなことをするのかの動機がわからない。そして、読売新聞が、ちょっと考えれば、おかしいという話をなんで簡単に信じてしまったのかがわからない。森口氏にインタビューしていたNHKは、そのことを放送しなかったのと、好対照である。「世紀の大誤報」というのは大げさだが、社内では責任問題になるだろう。


2012.10.12(金)

ぷれジョブ藤沢は順調    

 久しぶりの散歩。散歩に、運動に、絶好の日和である。ジョギングのときもそうだったが、散歩をしていると、考え方が前向きになる。ジョギングでは、「いっちょう、やったろう」と超前向き、戦闘モードになることも多かった。散歩では、そこまではいかないが、ストレス発散というより、ストレス予防になる。処方箋いらず、自己負担いらずの手軽な薬である。岸根公園でのラジオ体操にはじめて参加したのが5月12日だから、今日で5ヶ月続けている。仲間のどなたとも話をしたことがない。おはよう、さようならの挨拶さえ交わさない。寡黙な新参者で通している。それはそれで、気楽なものである。百人の仲間とは、ラジオ体操を一緒にやることによって、気持ちが通じ合っているような気になる。だから続くのだろうなと思いつつ、今日も、気持ちよく身体を動かしている私。

 夕方は、ぷれジョブ藤沢の定例会へ。私が言い出して始めたので、やはり休むわけにはいかない。7月初旬から始まったが、「訓練生」の内海隼吾君は着実に成長している。毎週金曜日、1時間の「訓練」を3ヶ月続けた。次の訓練場所に変わるまで、あと3ヶ月。折り返し点にたどり着いたことになる。受け入れるワキプリントの社員の人たちの、ご理解とご協力がありがたい。その辺の経過を、ジョブサポーターの林圭佑君が的確なレポートにまとめてくれた。オブザーバー参加の鈴木暢さん(ハートピア湘南所長)が「ぷれジョブ第一号のメンバーが素晴らしいので、次の参加者にとっては、ハードルが高く見えるのが心配だ」と言っていたのが印象深い。そんなふうに考えるより、この第一号がこれから続く人たちのモデルになることはラッキーと受け止めるほうがいい。


2012.10.11(木)

「それなりに満足」の講演    

 午前中に、十愛療育会の日浦美智江理事長と事務局長、事務主任の三人が来宅。9月28日に横浜みなとみらい小ホールで開催されたチャリティ公演「千羽鶴」が、無事、終わったことの報告である。主催は十愛療育会後援会になっている。私がその後援会長なのだが、名前だけで何もやっていない。今回の公演を最初から最後まで仕切ったのは、今日おいでいただいた三人である。当日は、私たち夫婦の35回目の結婚記念日で、二人で見に行ったが、440席はほぼ満席。チケット売り上げも、予想以上にあった。経費を引いた実収入が67万円。初めてのチャリティ公演で、これだけの収益をあげたのだから、大したものである。改めて、公演実施に関わった方々に敬意を表したい。

 十愛療育会は、新たに重症心身障害児者施設の建設を計画している。今回の収益金もそのための資金援助に宛てられる。収益だけが目的ではない。こういったイベントの開催を通じて、地域の方々に施設建設計画に関心を持ってもらう。重症児者のことについても知ってもらう、そのことも目的である。その目的も、かなり達成できたことになる。日浦さんは、「10分だけ」と言っていたが、話し出したら止まらないのは、私と同じ。その話が面白いから、ついついこちらも聞いてしまう。30分以上になったが、いつもどおり、とても楽しい、充実した時間だった。

 午後からは、千駄ヶ谷の日本経営協会の行政本部、NOMAホールで開催の「公務能率研究会議」にて、1時間半の基調講演。講演のテーマは「地方分権〜現在そして未来へ〜民主主義を根づかせる」というもの。地方自治を住民の立場から見直してみようということである。参加者80人のほとんどが、市町村の行政職員、地方議会議員なので、どのように受け止めてもらったか、ちょっと不安ではある。内容はともかく、時間ぴったり、前座ありは、私も参加者も、それなりに満足。

 このところ、取材にしても、講演にしても、病気のことが一番多い。次に、障害福祉関係だろうか。病気前には、地方自治、政治関係が一番多かったのだが、だいぶ様相が変わった。久しぶりの地方自治の話題、このことも、それなりに満足。


2012.10.10(水)

「政策法務論」の特別講義    

 世が世なら、今日が体育の日である。この日が「晴れの特異日」というのには、異論もあるらしいが、日中はからっとしたいい天気。暑くなく、寒くなく、慶應大学SFCのキャンパスは秋日和。この時期にしては珍しく、ここから富士山が見えた。

 そのキャンパスに、厚生労働省の樽見英樹人事課長をお招きして、「政策法務論」の特別講義をしていただいた。本省の人事課長といえば、「政府高官」である。そういう人に気軽に講義をお願いできたのは、樽見さんが厚生省で私の後輩であるから。年金局では、私の部下、その後、在米日本大使館、北海道庁の福祉の課長と、私が辿ったポストを樽見さんが継いでいるという縁もある。法律立案から成立するまで、実際に手がけた法案を例にあげて、わかりやすく説明してもらった。特に、麻薬取締法の改正についての話は、学生だけでなく、私も興味深く聞かせてもらった。「泳がせ捜査」、「おとり捜査」を例外的に認めている最初の例が、麻薬取締法の中にあったとは、驚きである。そんな裏話も聞けて、とても有益な講義だった。樽見さん、ありがとうございました。  


2012.10.9(火)

熱心な授業   

 今朝の最低気温は何度だったのだろう。6時過ぎに家を出る頃は、結構涼しかった。風が吹くとさらに涼しい。今シーズン初めてのウインドブレーカー着用にて散歩に出る。身体を動かすのには丁度いい気候。身体への負担が全然違う。散歩しても、ラジオ体操しても、身体は軽やかで、楽である。しばらくは、この暑くもない、寒くもない季節を楽しもう。

 慶應大学SFCのキャンパスも秋の風情の中、輝いている。学生諸君も輝いている教室で、「地方自治論」の授業。「今日の授業まではつまらないよ。来週以降を期待してくれ」と言いながらの授業のテーマは「地方自治体の財政」である。学生の興味を引くテーマではない。しかも、むずかしい。予想通り、地方交付税については、「よくわかりません」の展開だったが、授業終了時に提出してもらった「出席カード」の記述では、「先生の説明で、かなりわかったような気がします」というのが多かった。「ほんとかね」といぶかりつつも、学生の熱心さはうれしいものである。

 午後からの「障害福祉研究会」には、神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授の鳥居深雪さんにゲストとして来ていただいた。3年前に、日程を組んでいたのが、私の入院で実現しなかった。「3年越しの恋が実ったようです」と鳥居さんは言うけれども、実は、これが初対面。今回は、鳥居さんの研究室から西尾祐美子さんも出席していただいた。講義の内容は、発達障害児の学校での教育が中心。制度論から始まって、特別支援教育で発達障害児を教えたご自身の経験にまで展開した。実例があるのでわかりやすい。我々に対するテストもやってくれたが、私は見事にひっかかってしまった。「注意欠陥ですね」と鳥居先生に診断される私。こういう講義の展開に、学生は魅了されたようである。授業後に提出のあった出席カードには、そんな感想が一杯書かれていた。鳥居先生、西尾さん、ありがとうございました。


2012.10.8(月)

「体育の日」に   

 体育の日は10月10日、1964年の東京オリンピック開会式の日と決まっていた。それが「ハッピー・マンデイ」とかいう「三連休倍増作戦」によって、10月の第2月曜日にされてしまって、今日に至る。「ハッピー・マンデイ」が増えると、月曜日の授業が休みになるから、時間割で動いている学校関係は困る。慶應大学教授になった最初の年に、月曜日に授業を設定したために、別な日に何度も補講をさせられる羽目に陥ったのを思い出す。

 ともあれ、今日は体育の日。岸根公園のラジオ体操の参加者が多くなるわけでもない。我々にとっては、毎日が体育の日である。それでも、いつも以上に熱心に体操に取り組んだ。腹筋運動も40回×3セットの分割払いを完済。これもいつもどおり。

 体育の日には、出雲全日本大学選抜駅伝競走がある。それを忘れていて、青山学院大学が大会新で初優勝するレースを見逃したのが悔しい。青山学院大学は、この数年で急成長。来年の箱根駅伝でも優勝を狙える。いよいよマラソン、駅伝の季節の到来である。これから、毎週のようにレースが見られる。走れない今の私としては、テレビ観戦で応援するしかない。

 やるべきことは、一応、みんな終えたので、今日は、手紙、メールの返信で後回しにしていたものを一気に整理した。それも終えたあとは、「中央公論」、「選択」の読み残しをつまみ読み。体育の日、いろいろな過ごし方があるが、福岡県でビール15杯飲んで追突事故を起こす国税徴収官の過ごし方は、いただけない。

 そんないやなニュースの中、うれしいニュースが飛び込んできた。iPS細胞の研究で山中伸弥・京大教授がノーベル賞の医学生理学賞を受賞。我が家では、「絶対今年は受賞だ」と期待していたので、とてもうれしい。万能の再生細胞なんて、すごい発見である。医療全般での大きな可能性が広がる。おめでとうとともに、ありがとうとも言いたい。


2012.10.7(日)

仙台「びすたーり」   

 仙台で迎える朝。ホテルの31階の窓から、仙台のきれいな街が一望できる。ホテルを出て、東昌寺にお墓参り。お彼岸に来れなかったので、「遅れてごめんなさい」と言いながら、墓前で手を合わせた。

 昼は、母と二人の姉(夫婦)と我々夫婦で食事会。長町の「びすたーり」で昼食を楽しむ。母の隣の席で話をするから、耳が遠い母にも、私の話は通じる。子どもたち同士の昔話などになると、よく聴き取れないようだが、それでもうれしそうである。食事もほとんど平らげる。食欲旺盛、老眼鏡いらず、杖いらず、92歳にしては元気であるのがうれしい。

   「びすたーり」の店内は満席の盛況である。お店は、福祉関係のNPO法人が経営しているが、その責任者の白木福次郎さん、深野せつ子さんによれば、昼間はいつも盛況とのこと。おいしい食事を楽しんでいるお客様は、この店が障害者を多数雇っていることを知っているだろうか。店の壁には、筋ジストロフィーの人たちが、パソコンで描いた絵がかかっている。毎月、第二、第四土曜日の夜には、ここでコンサートがある。民家を改造したお店の作りも風情がある。食材も吟味されている。そして、何より、お値段が手ごろである。なんだか、「びすたーり」の宣伝になってしまったな。

 食事を終えて、仙台駅から帰途につく。「横浜駅並みに混雑している」と光子が言うように、駅は主に観光客で混み合っている。地下のおみやげ物売り場も大混雑。ほとんどの人が、牛タンの袋を手にしている。仙台といえば牛タンというのが、観光客には定着したようである。


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