浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記  1月第2週分         
2013.1.12(土)

穏やかな中にも 

 最近には珍しい穏やかな天気の一日。郵便ポストまで歩いたが、もっと長い距離の散歩をしたくなるような陽気である。体調もいいのだが、散歩再開できるのは、いつのことだろう。  溜まってしまったお礼状を何通か書き、試験採点の後始末をしているうちに、一日の大半が過ぎる。ゆったりした、穏やかな一日は、自宅の中でも同じこと。

 政権の動きも穏やかにだが、始まっている。安倍首相は、昨日は神戸に出向いて、神戸市理化学研究所やiPS細胞の研究施設を視察した。山中伸弥教授との懇談の様子がテレビで報道されていたが、それなりに絵になっている。今日は、宮城県を訪問して、岩沼市の井口市長や宮城県の村井知事の説明を受けている場面が報道されている。精力的に動き回っている印象を与えている。

 安倍内閣は昨日、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定した。事業費は20.2兆円で、そのうち国の支出分は10.3兆円。借金で賄う部分が多いので、今年度の借金(国債発行額)は総計で52兆円になる。「20兆円景気対策、借金頼み」(今朝の朝日新聞の見出し)というのはそのとおりだろう。今回の緊急対策で景気回復が図られるのかどうかはわからないが、確かなことは、財政規律が崩れつつあるということ。景気の行方はともかく、財政規律の保持は「大丈夫だろうか」と心配になってくる。政権の穏やかな出発の中には、危険が潜んでいるような気がする。


2013.1.11(金)

最後の試験の採点終了 

 「地方自治論」の期末試験の102人分の採点終了。一問、一問、解説をほどこし、よくできた受験生の模範回答を付した、かなり詳しい講評も完成して、受験者全員にメールで送付した。こういう作業は、一気に片付けないといけない。休み休みやると、採点の基準が曖昧になってしまう。試験の出来は、全般にあまり良くない。18点満点が2人いる一方で、零点が6人もいる。一所懸命書いた答案を読むのは、とてもうれしいが、「授業で一体、何を学んだんだ!」と言いたくなるひどい答案にあたると気が滅入る。それは仕方がないこと、それもこれも、私にとって、思い出に残る最終試験である。

 民主党政権がはめた「5年間で19兆円」という東日本大震災の復興予算の枠を安倍晋三首相が取り払った。このことを伝える、今朝の朝日新聞の記事の見出しは、「財源なき青天井」である。気になるのは、「復興予算」の使途である。民主党政権下での使途が、「反捕鯨団体対策費」、「国立競技場補修費」、「官庁施設の防災機能強化」など、復興とは関係ない事業に流用されていた。今後は、真に地元復興につながる事業にのみ使うべきである。

 復興予算の使い方にも工夫が必要である。たとえば、原発事故による放射性物質の除染事業である。「手抜き除染」が問題になったが、確実な除染を行うのは、極めてむずかしい。除染作業が「移染」にしかならないおそれがある。除染は、避難している人たちが元の地に戻ってくることを前提にして、「きれいに、安全にしておこう」ということで行われる。莫大な費用をかけて除染しても、避難してきた人たちが戻ってくる保証はない。被災住民 の方々の要望として、除染よりも生活支援のほうを優先してほしいとの声もあるらしい。そのことも含めて、除染のあり方の見直しが必要となる。

 なにしろ、復興費用確保のために、先行き25年にわたって、復興増税として所得税が2.1%増税(今年1月1日から25年間)され、住民税が年間1、000円上乗せ(2014年6月から10年間)される。これで足らない分は、新たな国債発行(借金)で賄われることになる。負担させられる我々が納得できるような適切な使い方でなければならない。


2013.1.10(木)

こともなく穏やか 

 昨年末退院以来、そして今年初めての田野崎先生の受診。「明けましておめでとうございます」で始まった診察では、血液検査結果も含めて異常なし。CRPが0.02(正常値上限0.1)と安定しているので、ほっとした。年末の風邪症状は、どうやら治まったということになる。ぶり返してもいない。いつも気になるクレアチニン(腎機能の数値)も正常値の範囲内。入院中の心電図検査で、ちょっとした異常があったので、今回再度検査を受けたが、その結果は、だいぶ正常化はしたが、まだ気になる点あり。来週、専門医科で検査、診察を受けることになった。早く疑惑を解消したいので、私としては歓迎。

 帰宅して、「地方自治論」の試験採点にかかる。真面目にやったせいで、かなり作業は進んだ。明日には終わる見込みだが、今回も詳細な試験講評を作成し、学生に送ることにしているので、その作業には時間を要するだろう。それにしても、予定どおり、作業が進んでいるのには満足。

 自分の世界だけで目一杯、精一杯の一日。世の中の動きには、ほとんど無頓着だった。あまり目立った動きはないようなので、まずはこともなく穏やか。


2013.1.9(水)

ほんとの最終授業  

 2時限11:10−12:40の「政策法務論」(第14回)が、SFCでの正真正銘の最終授業である。授業そのものは、いつもと変わりなし。14名の「少数精鋭」が全員出席というのが、やや珍しい。その全員が、「出席カード」に、こもごも、この授業を履修して良かった。浅野先生の授業を受けたのがうれしかったと書いてくれたのが、何よりの「はなむけ」である。授業終了後、SAの石崎遊太君、高橋理恵さんも入っての「全員」記念写真の撮影。個別に、グループごとに一緒に写真を取ってくださいというリクエストがあり、そのすべてに応えた。授業風景などの写真、履修者全員からの感謝の言葉が入ったアルバムをいただく。SAの発案、制作だろうと思うが、ありがたいことだ。「また、いつか、どこかで逢おうな」といいながら、教室を後にした。

 自宅に急ぎ帰って、「地方自治論」の試験の答案の採点にとりかかる。一枚一枚、じっくり読んでいくのは時間がかかる。答案採点は、厄介な義務というよりは、楽しい権利である。だから、ゆっくり、じっくり、楽しみながらやっていこう。なにしろ、これもSFC最後の採点なのだから。    


2013.1.8(火)

最終講義  

 SFCでの金曜日の授業としては最終日。キャンパスへは、「病後注意期間」ということで、タクシー利用。運転手の望月英二さんが市民ランナーだと聞いて、車内で話が盛り上がった。鶴見川の堤防を走るコースも一緒、フルマラソンの回数、記録も大体同じ。先日の10キロランの記録が64分だと聞いて、「望月さん、10キロを自分の年齢以下の時間(分で)で走るのを、私はエイジ・リミット・ランナーと名づけた。現在58歳の望月さんが10キロ58分以内で走るのは、決してできないことでない。目標にしてレースを走ったらどうです」と私は仕向ける。「それはいい、やってみましょう。エイジ・リミットというのも覚えやすい。私の名前はエイジですから」というオチまでついて、話はさらに盛り上がった。「話に夢中になって、運転おろそかにならないようにね」というほどである。50分の道のりがあっという間だった。

 そうやってキャンパスについて、すぐに「地方自治論」の期末試験に臨む。普段授業の出席者は70名前後だが、さすがに今日は101名が受験している。80分の期限内に仕上げるのが、なかなか大変な問題を用意した。ましてや、授業にまともに出ていない学生には、手も足も出ないかもしれない。ものすごい勢いで回答を書きまくる学生もいれば、呆然としている時間が長く、なかなか筆が進まない学生もいる。さてさて、101名の学生は、どういう答案を書いたのか、採点が楽しみである。

 4時限は、「障害福祉研究会」の最終講義。講義の様子はビデオに収録され、大学のビデオライブラリーに収納される。外部から見ることもできる。初めてパワーポイントを使っての講義を試みた。予定の1時間半を少しオーバー。「この授業では、君たちを障害福祉についての戦士に仕立て上げて、社会に送り出すことを企図してのものだった」と宣言しながら、「障害福祉とは、あわれでかわいそうな障害者に、何かいいことをやってあげるというものではない。それは国づくりにつながる」といった講義を展開した。講義というよりは、一種のアジ演説である。学生は、最終講義ということもあって、いつも以上に熱心に聴いていた。

 5時限は、今日の出席者20名一人一人から、「この研究会で学んだこと」を発表してもらった。「障害福祉の深さを知った」、「人生についても教えてもらった」、「浅野先生の人柄に惹かれた」などなど、最終講義の場での「ご祝儀」を意識しての過剰な言葉だから、話半分に聞かなければと自覚しながらも、とてもうれしかった。泣くことはなかったが、泣きそうにはなった。打てば響く、教えがいのある素直な学生たち。教えがいがあった。こういった学生たちと離れるのがつらい。惜しい。残念だ。しかし、短い間でも、こんな幸せな機会を持てたこと、誰に向けての感謝にしたらいいかわからないままに、心から感謝したい。

 感謝といえば、学生たちが立派な花束と一人一人のメッセージを散りばめた色紙を贈ってくれた。うれしいなー。ありがとう。なによりです。そのあと、全員で記念写真を撮って、最終講義はお開き。そのほかにも、いいことがいろいろあって、いい一日だった。


2013.1.7(月)

仕事始め  

 2013年の仕事始めは、「読売テレビ」の「ミヤネ屋」出演。番組にとっても、今日が今年最初の放送である。そのめでたい機会、話題は芸能界の結婚、離婚、そして中島知子さんの洗脳をどうするか。私の出番は限られてしまう。久しぶりのスタジオの熱気を感じつつ、番組を楽しませてもらった。宮根誠司さん、川田裕美さん、スタッフの皆さん、メイクの皆さん、今年もよろしくお願いいたします。

 大阪日帰りだから、これで一日が終わる。新幹線の中で、ゆっくり文庫本を読めるので、これはこれで美味しい仕事である。明日は、SFCでの今年の初授業。そして、その科目の最終授業。早く寝よう。


2013.1.6(日)

今年の目標  

 去年の元日の日記には、「今年の目標」というのが掲げてある。@健康でいること、A髪の毛がふさふさに戻ること、Bジョギングを1キロできるように、C本を出すこと、D仕事をちょっぴり。年末に風邪引きで10日間も入院したのだから、「健康」は達成できず。「髪の毛ふさふさ」の目標(というより願望)達成は、何年か先だろう。「ジョギング1キロ」は今年に持ち越し。「本」は、5月に「運命を生きる−闘病が開けた人生の扉」を岩波書店から出版して、出版パーティーまでやったのだからオーケー。「仕事をちょっぴり」は目標としてもハードルが低い。これも達成である。二勝三敗といったところ。今年の目標は、昨日書いたように、「健康」である。これに「髪の毛ふさふさ」と「ジョギング」を加える。今年は三戦全勝といきたいものだ。

 アメリカは、ぎりぎりのところで、「財政の崖」からの転落を免れた。オバマ政権は富裕層への増税を、曲がりなりにも勝ち取った。年初の急激な株価の上昇で、市場は反応した。一方、日本は「アベノミクス」が効果を現していると浮かれている。年初早々、株価の上昇、円安の進展を目の当たりにしているのだから、経済界が浮かれた気持ちになるのも無理はない。

 しかし、日米両国とも、今の経済好調は、期待の先取りの結果でしかなく、いずれもっと険しい財政の崖に直面するリスクがあることを看過してはならない。アメリカは、厳しい歳出削減を2ヶ月先延ばしにしたに過ぎない。地獄を見るのはこれからだ。安倍政権は、金融緩和と公共投資で景気回復、デフレ脱却を図る政策を選択しているが、それは国債発行の大幅増という劇薬を飲むことにつながりかねない。その先に待っているのは、財政の崖である。日米ともに、これからの1年が正念場である。国民としても、「お手並み拝見」とのんびりしているわけにはいかない。厳しい目で監視していかなければならない。日本の経済の目標は景気回復、デフレ脱却であるが、もう一つの財政の目標は財政再建に道筋をつけることであるのだから。


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