浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 1月第4週分          
2013.1.26(土)

レポート採点評価  

 寒い一日。一歩も外に出ず、学生のレポートの採点評価に没頭。今日で完了である。採点評価だけなら楽なのだが、「レポート所見」を提出者一人一人に送ることにしているので、手間暇がかかる。授業でレポートの書き方指南を十分にしていなかったことの罪ほろぼしというか、アフターサービスというか。学生にしても、レポート出しておしまいというのでは、もったいない。今後も、レポートや論文を書く機会がある。その時の参考になるようにという思いで、所見を書き送っている。

 平成25年度予算案の閣議決定は今月29日とのこと。通常は次年度予算案の閣議決定は年末である。ほぼ1ヶ月遅れであるが、政権交代してからの予算編成であることを考えれば、これでも早い日程である。防衛費増額についての防衛省対財務省の攻防は、どうやら財務省の粘り勝ちのようである。防衛省としては、尖閣対応もあり、自衛隊の定員を18、000人増やす要求をしていたが、財務省は300人増で押し切ろうとしている。財務省の財政健全化への執念を前にして、防衛省には勝ち目はない。政権が変わっても、財務省の力は揺らいでいない。


2013.1.25(金)

人質事件犠牲者の帰国 

 アルジェリアでの人質事件で難を免れた7人と、不幸にも命を落とした9人の遺体が、政府専用機で羽田空港に到着した。遺族や同僚を失った日揮社員の嘆き、悲しみの様子がテレビに映し出される。危険地帯に日本経済の尖兵として派遣された人たちの「戦死」というには、あまりにも現実離れしている。理不尽な結果である。この人たちが犠牲になったことを無にしたくない。退却するのではなく、新たな出発、前進をするためには、何が必要か、どうすればいいのか、国をあげて考え抜かなければならない。

 夜は、「霞が関北陵会」に参加のため銀座へ。宮城県仙台第二高等学校の卒業生で霞が関の官僚たちの集まり。昨年発足したばかりだが、回を重ねて今回が3回目である。会員は30名だが、今日の参加者は9名とちょっと寂しい。国会開催直前の多忙な時期だから仕方がない。そういう多忙な仕事とは無縁の先輩(私のこと)は、余裕たっぷりで出席。それぞれの職場での活躍ぶりの報告で盛り上がった。


2013.1.24(木)

地方自治体に無理難題 

 築地のがんセンターで外来受診。2週間に1回の受診は、田野崎隆二先生の温顔に接してほっとする時間である。今日は、診察も血液検査の結果も異常なしだから、ほっとしたままで受診を終了。廊下で診察を待つ間に、骨髄移植後8年余の「先輩」である安河内眞美さん、同時期に骨髄移植を受けた「同期生」の小澤礼子さんと一緒になる。安河内さんは半年に1回の受診とのこと。小澤さんは3ヶ月に1回の受診。私は2週間に1回だから、まだまだ回復のステージとしては下のほうである。髪の毛が戻るのを待つのと同じだが、焦らず、じっくり完全回復を目指すことにする。

 帰宅して一休みの後、岸根公園への散歩、所要35分。今年になって2回目の散歩である。寒さはまったく感じない。柔らかい日の光を受けながらの午後の散歩は、気持ちがいい。冬の間は早朝の散歩は控え、昼間の暖かい時間帯を選んで散歩を続けよう。

 自民党の税制改正大綱では、地方税である自動車取得税が廃止される。年間税収2、000億円にのぼる、地方にとっての大きな財源である。これだけではない。地方公務員の給与を削減しろと国に迫られている。国家公務員給与は今年度から2年間、平均7.8%引き下げられているから、これにならえということなのだろう。地方公務員の給与削減に伴って、地方交付税をその額だけ削るというのだから、財源がなくなる自治体としては、給与を引き下げざるを得なくなる。国の都合で、地方自治体に無理難題を押し付ける構図である。地方自治体だって黙っていないはず。どこまで押し返せるか。勝負はこれからである。

 


2013.1.23(水)

政府対日本銀行 

 2%の物価上昇目標を掲げてデフレ脱却を目指す政府と、その目標設定には距離を置こうとする日本銀行。両者の間で「共同声明」がまとまった。「官邸圧力に折れた日銀」(朝日新聞の見出し)という図式である。白川方明日銀総裁が2%の物価上昇明記に応じたのは、首相に総裁罷免権を付与するという日銀法改正を阻止したいという一念からとのこと。日銀の政府からの独立性を堅持したいという思いからと解説されているが、本意とは違う「2%」を丸呑みした時点で、日銀の独立性はなし崩しにされていることに気がつかないのだろうか。1%か2%かという議論ではない。日銀の独立性を堅持したいのなら、もう少し抵抗してしかるべきである。大阪市教育委員会対橋下市長の関係と同じである。橋下市長の横車に簡単に屈するようでは、教育委員会の首長からの独立性を自から否定するようなものだと昨日の日記に書いた。同じ図柄を日銀対首相の中に見る思いである。

 昨日の23時59分が提出期限の「障害福祉研究会」の最終レポート22通が手元に届いた。今日は、終日、その採点評価にかかりきり。がんばったおかげで、今日一日で作業完了。何人かの学生には、提出されたレポートについての所見をメールで送った。論文の書き方指南であるが、そんな余裕もあったのだから、立派なものと自画自賛。


2013.1.22(火)

人質事件の悲劇 

 アルジェリアの天然ガス施設で起きた人質事件は、人質の被害ということでは、最悪の結果となった。日本人7人の死亡が確認されたが、テロが頻発する地域での企業活動が、危険と隣り合わせであることを改めて知らされた。テロ攻撃が始まってからの事後的対応では追いつかない。テロ組織の動きや国際情勢について、現地で情報収集する体制の整備など、事前の予防対策の必要性を痛感する。それにしても、アルジェリアが人質を危険にさらすこと覚悟で、異常に早い段階で対テロ攻撃に出たのはなぜだろうか。慎重な対応を求める関係国の意向を無視するような形での早期攻撃である。アルジェリアとしては「テロリストを生んだのは、あんた方の国のせいだろ」という開き直りがあったからだという解説を国際問題の専門家がしていた。そうだとしても、日本にはあてはまらない。なおのこと、多くの日本人が犠牲になったことの理不尽さを感じる。

 大阪市立桜宮高校の入試中止問題。どこの教育委員会でも、こんな乱暴な入試中止案が出されたら、「それでは問題解決にならない」、「受験生、在校生への悪影響は免れない」と拒否するのが当たり前である。そうでないとしたら、大阪市教育委員会は、教育のなんたるかをまったくわかっていない人たちの集まりと断じるしかない。なぜ断固として入試中止案を跳ね返さないのか。入試関係予算を停止すると脅かされているからだとしたら、実に情けない。実際に予算停止されたら、教育委員会の首長からの独立性を掲げて、民意に訴えればいい。この問題は、橋下市長の個人的な思い込みにより、教育行政に横車が押された事案である。ここで教育委員会が毅然たる姿勢を示さないなら、教育委員会の存在意義はなくなる。しっかりしろ、大阪市教育委員会。


2013.1.21(月)

「冷血」  

 話題の書「冷血(上下)」高村薫著(毎日新聞社)を読了。「週刊朝日」(1月18日号)の書評で、永江朗氏は「2012年の中で最高の書物。犯罪小説の形をとった哲学書」と語る。「日本経済新聞」(1月6日)の書評で、池上冬樹氏は「高村薫にしか書けない内面探索の文学。通俗を介して探る生の刻印」と評している。昨日の朝日新聞の書評には「生の意味を問う傑作」とある。いずれも、最高の賛辞である。私の書評もそれに近い。謎解きでも、犯人探しでもない。動機なき殺人を犯した若者の内面に迫るための背景描写に現実性がある。言葉で表現できないものをどう捉えるか、人間存在の根源に迫る小説と言ってもいい。著者の旧作「レディー・ジョーカー」、「マークスの山」、「照柿」は、ストーリーとして面白いが、「冷血」は深みのある小説である。

 麻生太郎副総理兼財務相は21日開かれた政府の社会保障制度改革国民会議で、高齢者の終末期の高額医療費に関連し、「死にたいと思っても生きられる。政府の金でやっていると思うと寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろと考えないと解決しない」と持論を展開した。会議での発言だから、「自分の人生観を述べただけ」、「個人的見解」という言い訳は通じない。批判を受けて、発言は撤回されたようだが、それで済むかどうか。閣僚の失言第一号は、やっぱりこの人だった。発言は「冷血」というより、「心の緩み」だろう。


2013.1.20(日)

政権初の危機管理  

 アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による襲撃・人質事件で、アルジェリア軍は強攻策に出て、事件発生から4日目の19日には作戦終了となった。外国人を含む数百人の人質の命がかかっているのだから、日本を含む関係各国は、アルジェリア当局が周到な計画のもと、慎重にことを運ぶことを期待していた。強行突破により。アルジェリア治安当局の情報では外国人人質7人が死亡した。「日揮」の日本人社員17人のうち、10人の安否は確認されていない。

 安倍首相は、政権発足後初の外遊先であるインドネシアでの日程を中断して、急遽帰国し、人質事件の陣頭指揮を取った。危機対処にあたる迅速な対応、毅然とした表情には、頼もしさを感じた国民も多いのではないか。日本政府としては、情報収拾程度しかできないが、情報が錯綜する中で、不確かな情報については、確認するまでは発表しないのは適切な対応である。菅義偉官房長官の記者対応もしっかりしている。今朝のフジテレビの「新報道2001」に出演した小野寺五典防衛大臣の発言ぶりも、なかなかのものだった。防衛大臣があの人だったら、こうはいかなかっただろう。外務大臣があの人だったら悪夢だなと思って見ていた。安倍政権発足後初めての危機管理は、今までのところ、無難にこなされている。今後、同じような事案に対処するために、何らかの形で自衛隊が出動することも視野に入れておく必要がある。いずれ自衛隊法の改正の議論が出てくるだろう。危機管理の観点から、与野党ともに、真剣な議論は避けられない。

 午前中、「おしん」の再放送6回分をBSプレミアムで見る。午後は、NHK総合で「全国都道府県対抗男子駅伝」をスタートからゴールまで、じっくり観戦する。最終区で、トップの兵庫は2位東京と1分40秒差。どう考えても兵庫の北村聡は逃げ切るだろうと見ていたら、東京のアンカー上野裕一郎が猛追。5秒差で間に合わなかったが、あと100メートルあったら抜いていただろう。ゴール間際のハラハラドキドキは駅伝の醍醐味である。このあと、散歩34分。「おしん」→「駅伝」→「散歩」は先週の日曜日の行動と全く同じである。


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