浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 2月第1&2週分          
2013.2.9(土)

春は名のみの  

 立春前の暖かさはどこへやら、昨日、今日の寒さは真冬のものである。「春は名のみの 風の寒さや」で始まる「早春賦」(吉丸一昌作詞)を小鳩くるみの歌で聴く。自分でも口ずさむことが多いのだが、二番の「さては時ぞと 思うあやにく」とはどういうことかよくわからずに歌っていた。「広辞苑」を引いたら、「あやにく」は「生憎(あいにく)」と同じ意味とのこと。さらに「口ずさむ」なのか「口づさむ」か迷って、これも「広辞苑」で調べたら、「口遊む」と書いて、読みは「口ずさむ」が正解。65歳になっても、日本語の知識が足らない。日本語をマスターしないままに人生を終えるのは口惜しい。「早春賦」から、話が発展し過ぎたか。

 国会審議が始まったが、代表質問でも、予算委員会審議でも、野党の追及が生ぬるいのか、首相以下、閣僚の対応が慎重なのか、軽くあしらわれているという感じで、淡々と波乱なく進んでいる。北風は吹かずに、早々と春の到来を思わせるムードになりかけている。それでは、民主党としては困る。ここらで野党としての存在感を示そうとしたのだろうか。国会同意人事で民主党が対決姿勢をとっている。

 「事前報道された人事案の提示は認めない」というルールは現在も生きているということで、公正取引員会委員長に杉本和行元財務事務次官をあてる人事案の提示に、民主党は退席する形で拒んだ。ルールはルールであり、事前にマスコミで報道された人事案は受け入れないという態度である。しかし、人事の中身ではなく、いわば手続き論での反対はいかがなものだろう。人事をめぐって不毛の議論を繰り返すのは、国家的損失である。政府としても、ルール違反ではあるのだから、「ごめんなさい」と言って、民主党のメンツを立てたうえで、人事案の提示をするのが大人の対応だと思うのだが、どうだろうか。


2013.2.8(金)

65回目の誕生日  

 65回目の誕生日。1年前の日記にも書いたが、病気をしてからは、誕生日を迎えることが、今まで以上に、うれしい。HAPPY BIRTHDAYを実感する。死ぬか生きるかの病気を乗り越えて、ここまでたどり着いて、元気でいることがHAPPYでないはずがない。今回は、65歳到達である。晴れて、我が国の統計上の「高齢者」に仲間入りした。介護保険対象者になったこともhappyである。これで安心してぼけられる(嘘です)。たくさんの方から、お祝いのメッセージをいただいた。ひとつひとつ、心に沁みる。誕生日を覚えていてくださるのがうれしい。あと35回誕生日を迎えれば100歳である。そこまで、なんとかがんばるぞと心に誓う誕生日である。

 慶応大学SFCの「障害福祉研究会」所属の学生が、横浜駅西口のお店を貸し切って、誕生祝いのパーティーを開いてくれた。OB,OGも10人参加。研究会に特別講師としておいでいただいた方々、10人も駆けつけてくださった。来月末で慶応大学を定年退職することを記念する会も兼ねている。誕生パーティーだけだったら、HAPPYなのだが、退職記念となると、ちょっと寂しい。それでも、みんなが祝ってくれて、みんなが盛り上げてくれて、とてもとても楽しい時間だった。来年の誕生日もやろうねと言いながら、別れ難いパーティーを終えた。ありがとう、ありがとう。


2013.2.7(木)

もうすぐ春ですね  

 今朝のTBSラジオ「おはよう一直線」で生島ヒロシさんが紹介していたお好み屋さんの話題。大阪市阿倍野区にあるお好み屋さんが評判になっている。いろいろな具をミックスしたお好み焼きは「アベノミックス」。テレビ局の取材でレポーターが「お店のアベノミックスの評判がいいようですね」と言ったら、店主の返事は「しょせんお好み焼き、こてさきや」。引用は不確かだが、店主の秀逸な対応に感動して、つい書いてしまった。

 64歳最後の日。築地のがんセンターでの外来受診に赴く。血液検査、尿検査の結果は異常なし。診察結果も異常なし。市川團十郎さんが突然に肺炎で亡くなったことについて、田野崎隆二先生からは、免疫力が低いのは白血病の予後では皆同じ、風邪から簡単に肺炎になる。これからも、風邪には十分注意するようにと念押しされた。待合いの廊下で、ATL仲間の山本さんと遭遇。彼女は富士市から新幹線で受診にやってくる。口内炎が治らず、つらいという。小野さんは、悪性リンパ腫の予後で苦労している。彼の場合、目の乾きが尋常でない。口内炎がひどくて味覚がまったくない。まだ若いので、家族のこと、将来のことが不安だという。皆さん、それぞれ抱えているものがある。お互いに、がんばりましょう、お大事にと言いつつ、がんセンターをあとにする。

 帰宅して一休みしてから、散歩へ。春一番だろうか、風が強い。「もうすぐはーるですね、ちょっと気取ってみませんか」。気取って歩いていたら、近所のお庭の紅梅が目に入った。優雅で見事な咲きぶりである。「もうすぐ春ですね」を実感する。


2013.2.6(水)

中国の危険過ぎる挑発  

 昨日の天気予報では、横浜は積雪5センチの雪になるということで、我が家でもそれなりの心構えをしていた。光子は友人との会食予定を、昨日のうちにキャンセルした。電車は運行本数をあらかじめ70%減らしたり、全面運行停止にして交通混乱に備えていた。ところが、幸いにもというべきなのかどうか、実際には降雪はたいしたことなく、積もるまでもいかなかった。1月14日の予報大外れの大雪があったから、気象庁も今回は失敗を繰り返したくなかったからだろう。結果的には、大げさな予報で、みんなを脅したことになる。羹に懲りて膾を吹くというのとは違うが、これも失敗のひとつだろう。

 こんなこととは次元が違う形で脅したのが、中国軍艦の海上自衛隊護衛艦に対する火気管制レーダーの照射である。軍事衝突になりかねない極めて危険な行為だ。レーダーの照射は、艦砲やミサイル攻撃の準備行為である。照射を受けた護衛艦の中でアラーム警報を聴いた乗組員としては、レーダ照射を単なる脅し、挑発行為と決めつけることはできない。相手が攻撃してくることも考えに入れなければならない。ただちに反撃すべきか迷った瞬間もあったはず。その際の緊張感はいかばかりだったろう。

 小野寺五典防衛大臣は、この間の事実関係、今後の取るべき措置について、記者会見では丁寧に、わかりやすく説明をしていた。あの方が防衛大臣だったら、こうはいかなかっただろうなと思いながら、テレビ中継を見ていた。それにしても、政府の中国外務省への抗議に対して、「知らなかった」と応じる中国の真意は一体なんなのか。知らないはずはないから、何らかの回答をするのが当然だろう。もしも本当に知らなかったら、軍の統制がとれていないという、みっともないことになる。いずれにしても、危険過ぎる挑発は、いいかげんやめるべきだ。


2013.2.5(火)

どうしたらいいのだろう  

 午後から日浦美智江さんが来宅。30年以上続けてきた重症心身障害者の支援の仕事に、どうやって区切りをつけるかということで悩んでいる。重症者が通所する施設としての「朋」の開所など、先進的な取り組みを引っ張ってきたのが日浦さんである。丁度その頃、厚生省障害福祉課長の私は、日浦さんの活動に触発され、国の新しい制度づくりに取り組んだ。私にとっては、障害福祉の先生であり、仲間であり、同志である。「何にでも、卒業ということはある」、「恋人同士の別れと同じで、未練、しがらみ、それをどう断ち切るか」などということを語る私。帰り際に「胃が痛い」と言っていた日浦さん。ストレスがないようにするのが一番。それが相談への回答のようなものである。

 北朝鮮の3度目の核実験が、いつ行われてもおかしくない状況にある。食糧難で飢える人民を抱えているのだから、核実験に使うお金などないはずなのだが、そんなことはお構いなしである。価値観をまったく共有できない国が、すぐ隣に存在する。その国が、核保有国になれば、我が国に核攻撃を仕掛けられるポジションを確保することになるのだから、我が国としては死活問題である。核実験を強行するなら、北朝鮮からの再入国禁止対象者の拡大など、我が国独自の追加制裁措置を決定するという政府方針が明らかになっている。その他、核実験非難声明の発表を行い、北朝鮮への圧力強化を図るための国連安保理開催も呼びかける方針とのこと。我が国が主導的立場で進めていくことが大事である。不良中学生が、先生や級友の制止を無視して、教室内で乱暴狼藉を働く図式ではないか。「困ったもんだ」だけでは済まない重大なことである。


2013.2.4(月)

市川團十郎さんご逝去  

 NHKラジオ朝4時のニュースで、市川團十郎さんが、昨夜、肺炎で亡くなられたことを知らされた。昨年末ごろから体調を崩して入院されていたことは報じられていたが、こんなに急にお亡くなりになるとは思ってもいなかった。歌舞伎界の中心を失ってしまったことの驚きと嘆きは、多くの人が共有した。私には、別な意味の驚きと嘆きがある。

 2009年6月、私がATLの治療のため入院したころに、「がんサポート」誌で團十郎さんのインタビュー記事を目にした。白血病の闘病の様子と、病気から回復して元気に活躍していることを語っている。それを読んで、勇気をもらい、先輩患者として、闘病の目標になった。その團十郎さんが、こういう形でお亡くなりになる。私にとっては、大きな衝撃である。

 今日の「ミヤネ屋」では、ほとんどが市川團十郎さんの急逝の話題である。予定していた内容が、急遽差し替えになった。偶然だが、私が出演の日である。番組の中では、白血病治療のことなど、宮根さんから振られることが多かった。こんな形の出演になるなんて、不思議なご縁である。

 帰宅したら、TBSテレビ「ひるおび」から電話取材。私の白血病の闘病の経過を紹介するとのこと。電話での会話は50分に及んだ。今日は、市川團十郎さんに関わることばかりの一日だった。


2013.2.3(日)

白熱の別大マラソン  

 別府大分毎日マラソンは見ごたえがあった。28キロ地点から、ロンドンオリンピック6位入賞の中本健太郎と川内優輝の一騎打ちが続く。中本の後ろにぴったり付く川内の必死の形相が、テレビ画面に大写しになる。川内はこうなってからが強い。途中で、何回か川内がスパートをかけるが、中本はついていき、すぐにリードする。白熱のレースに、胸がドキドキして、テレビ画面から目が離せない。川内は必死の形相なのに、中本のほうは平然とした顔で淡々と走っている。これは中本の勝ちだなと思った瞬間、40キロの給水で川内はスパート。さすがの中本もついてこれない。そのまま、川内は2時間08分15秒の大会新記録でゴール。すごいレースを見せてもらった。久しぶりに感動した。埼玉県庁に勤務する市民ランナーが、実業団ナンバーワンのオリンピック選手に勝ったのは痛快事である。

 レースを見終えて、神橋小学校の投票所へ。横浜市議会議員の神奈川区選挙区補欠選挙である。マラソンの感動を引きずっていたので、投票用紙に「川内優輝」と書いてしまった(嘘です)。市議会議員選挙はいつも投票率が低い。今回は補欠選挙である。投票所は閑散としていた。入院中の病室でも投票していたのだから、今回も棄権するはずがない。大学で「地方自治論」を講じ、学生には「地方議会に関心を持て。投票には必ず行け」と言っているからというわけではない。

 投票は、岸根公園への散歩の途次である。日曜日の岸根公園は、いつもながら親子づれで大賑わい。私の孫の年頃の子どもたちが遊ぶ様を、実際には孫がいない64歳の老人(私のこと)が笑顔で眺めている。のどかだな、平和だな、もうすぐ春だ。


2013.2.2(土)

女性のパワーはすごい  

 朝方に夢を見た。発達障害について、私が誰かに講釈を垂れている。夢が中断して、気がついたら、ラジオから発達障害について話している女性の声が聞こえてきた。NHKのラジオ深夜便「明日へのことば」の出演者の声である。ラジオをつけっぱなしにして寝ているので、夢とラジオと混じり合うのはよくあること。

 ラジオからの声が続く。「発達障害のことは世の中にあまり知られていない、それが本人の生きにくさになる」という話は、私がいつも言っていることである。だから、夢とラジオの融合が起きたのだろう。「私の役割は、一般の人と発達障害の人との間を取り持つ通訳です」という話に、「なるほど、このたとえはぴったりだ」と納得している私。

 話の主は、笹森理絵さん。「発達障害を知ってほしい」というテーマで語る笹森さんは、発達障害の当事者であり、発達障害の息子3人の母親であり、精神保健福祉士という専門家でもある。笹森さんのブログを見たら、アスペルガー、ADHD、LD、発達性協調運動障害を併せ持ち、自ら「発達障害のデパート」と称している。長男は高機能自閉症、次男はてんかんとADHD、三男は自閉系。そんな人が、ラジオ、テレビに出演し、講演にでかけ、本(「へんちゃんのポジティブライフ」)を書き、相談に対応しと、飛び回っている。「明日へのことば」では、こういうすごい人によく出会う。

 午後からは、もう一人のすごい人、橋本明子さんが来宅。橋本さんは、息子さんが白血病になったことから、骨髄バンクの設立運動の先頭に立って活動した。母親として必死の要望活動が実って、骨髄バンクが設立された。骨髄バンクの生みの親というべき存在である。私が「造血幹細胞移植委員会」の委員になったこともあり、そういった経緯や、現状の問題点など、いろいろ教えるということで来宅になった。「血液情報広場・つばさ」で橋本さんと一緒に活動している鎌田麗子さんも同道である。鎌田さんも、委員会で患者として委員を務める。骨髄移植、骨髄バンクについて、いろいろ教えてもらえたのがありがたい。


2013.2.1(金)

ああ、柔道界よ  

 今日から2月。新しい年も、ひと月過ぎた。昨日に引き続き、SFCにて修士課程研究成果発表会で審査。ポカポカ陽気のキャンパスを歩くのが気持ちいい。このキャンパスに来るのもあと数回と思うと、見るものすべてが心に沁みる。素晴らしいキャンパス、熱心な学生。思い出が詰まっている。

 柔道女子日本代表の園田隆二監督が辞意を表明した。全日本柔道連盟の戒告処分だけでは済まないことに早く気がつくべきだった。一方、柔道のオリンピック金メダリストの内柴正人被告に対して、東京地裁は準強姦の罪で懲役5年の実刑判決を言い渡した。柔道界に激震が走る。個人の不名誉だけにはとどまらない。桜宮高校バスケットボール部顧問による体罰問題をはじめ、学校の運動部での体罰が次々と明るみに出ている。柔道界だけでなく、スポーツ全般について、これまで闇に覆われていた恥部のようなものが表に出てきた。これまでのあり方で、改めるべきは改める機会と受け止め、二度と同じようなことを起こさないよう、関係者は真剣に反省し、出直さなければならない。


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