浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 3月第5週分          
2013.3.31(日)

出生前診断 

 午後から、藤沢市鵠沼の葉山淳子さんのお宅に。3年前に亡くなったご主人の葉山峻さんを慕う人たちが、時々集まってのホームパーティにお招きにあずかった。葉山氏は、藤沢市長を24年、その後衆議院議員を2期務めた。そういった縁だけでなく、近所のお医者さんなど、多士済々の方々がわいわいがやがや。前・現国会議員の、仙谷由人さん、松本龍さん、阿部知子さんもご一緒。おいしいお酒とお料理を楽しませていただいた。

 妊婦の血液で、胎児のダウン症などの染色体異常がわかる出生前診断が、明日から始まる。検査の結果、胎児に染色体異常が発見されれば、ダウン症の子を持ちたくない妊婦は、人工中絶により、その「悲劇」を避けようとするのだろうか。医学が発達して、こんな検査もできるようになったということを、単純に喜ぶべきではない。この検査が「有用」とされるのは、ダウン症の子の出生を排除することができるという一点だろう。生まれる子どもの選別につながるのを恐れる。

 ダウン症の子だって、できることがある。できないこともある。「ふつうの子」だって、できることもできないこともあるのと同じである。藤沢市の内海隼吾さんは、一般の人と一緒にミュージカルに出演している。石巻市の小林和樹さんは、石巻専修大学を卒業後、仙台市内の洋菓子店で正社員として働いている。3月21日、ニューヨークの国連本部で開催されたダウン症世界会議の場で、石巻の実家で体験した被災の報告も含め、英語でのスピーチを見事に披露して、満場の喝采を浴びた。二人とも、私のよく知るダウン症の青年である。社会の中で、生き生きと活躍する場を得ている。ダウン症の子を持つことは、他のどんな子を持つことと同じように「悲劇」ではない。出生前診断が始まるにあたって、妊婦の方々に、そのことは伝えたい。


2013.3.29(金)

球春到来 

 暖かい天気に誘われて、花見散歩を敢行。まずは、家から5分の白幡池を散策する。見事な桜が池越しに見える。その池では、釣り人が10人ほど。こんなぜいたくな釣りがあるだろうか。池を過ぎて斜面を上っていくと、大木となった満開の桜が迎えてくれる。散り始めた花びらが顔にかかる。なんとも贅沢なひととき。

 花見のはしごは、いつもの岸根公園。いつもの坂は上らずに、篠原池へと歩を進める。池の対岸に目をやると、満開の桜の木が複数重なっている絵柄が迫力満点で飛び込んでくる。池から上る斜面にも、満開の桜、桜。そこここで、奥様方が弁当を広げて、花見の定番コースを楽しんでいる。男性の姿がないのは、平日の昼間だから当然。定年を迎えた初老の男性(私のこと)は、ひとりきりで束の間の穏やかな花見日和を楽しんでいる。

 今日、プロ野球が開幕する。球春到来と新聞、テレビは言い立てる。「球春」という言い方は、いつごろからのことだろう。広辞苑には載っていないが、「球春」とは「野球シーズンが開幕する春先のころ」だそうだ。プロ野球開幕の前に、選抜高校野球は始まっている。そういえば、今年はWBCが開催され、すでに幕を閉じている。いったい、いつが本当の「球春到来」の日なのだろうか。

 選抜高校野球では、仙台育英が早稲田実業に逆転勝ちでベスト8入り。プロ野球のほうでは、楽天イーグルスはソフトバンクと戦って、1対7で完敗。ルーキー則本昂大投手の開幕戦デビューは話題性があったが、話題性だけでは勝てない。今年の戦いも厳しいものがあることを予感させるような、今日の試合であった。  


2013.3.28(木)

90歳の誕生日 

 同居している義母の90歳の誕生日。年齢相応に、心臓をはじめ、いろいろなところに不具合はあるが、頭はしっかりしているし、自立している。自立しているどころか、家事も手伝ってくれるし、我々夫婦にとっては、大事な戦力である。長生きはめでたいことだが、こんなふうに元気なままでの長生きなら、長寿は喜ぶべきことである。どうか、いつまでも元気でいて欲しいと、夜は、お寿司を食べながら昔話に花が咲く。  


2013.3.27(水)

 

 小雨そぼ降る肌寒い日。暖房を入れた部屋に籠り、原稿書きに勤しんでいた。おかげで、「続アサノネクスト」(第32回)として「選挙権は大事」の原稿を書き上げることができた。外では、雨に打たれた満開の桜は、どうなっているだろう。この寒さでは、夜桜見物も楽しめないだろう。

 2012年衆院選の「1票の格差」をめぐり提起された、16件の訴訟の判決が出そろった。今日の仙台高裁秋田支部の判決(「違憲だが無効ではない」)が16件目。16件の内訳は「違憲・無効」が2、「違憲」12、「違憲状態」2である。司法はこういった厳しい判断をしている。それだけ、選挙権は大事ということだろう。だったら、成年被後見人が公職選挙法の規定で「選挙権なし」とされていることのおかしさは、さらに明らかである。「選挙権は大事」という原稿では、そんなことを書いた。


2013.3.26(火)

散る桜  

 午後から、三田の慶応大学で「定年退職者 塾長招待会」に出席。退職者全員ではないが、50人ほどが集まる会である。まずは、全員で記念写真。私は着帽のまま。ハゲ隠しの見栄である。塾長招待会は、ビュフェスタイルの少宴。清家篤塾長が、退職者一人ひとりに記念品を渡しながら、永年の勤務をねぎらう。お気遣いがありがたい。

 三田のキャンパスは、入学手続きの新入生であふれている。同じキャンパスでは、定年退職者の会。老人から若者へ、長い時間を置いたバトンタッチのようなもの。「散る桜 残る桜も散る桜」。キャンパス内の満開の桜を眺めながら、好きな句が頭に浮かんだ。今日ここにいる、20歳前の青年たちには、ピンと来ない一句だろう。


2013.3.25(月)

春なのに  

 曇りがち、時々雨の一日。こんな日は散歩回避である。春なのに、散歩日和に恵まれない。運動不足が気になる。そうこうするうちに、満開の桜が散ってしまう。

 春なのに、物騒な話題。北朝鮮が軍事的挑発をしかねない情勢である。挑発があったら、米韓両軍が共同で反撃する手順などを定めた作戦計画に、両軍が合意している。作戦では、反撃は挑発の拠点だけでなく、軍の中枢も対象としている。北朝鮮を牽制するつもりなのだろうが、逆に刺激することになりかねない。北朝鮮軍による沖縄の米軍基地への攻撃も、「想定外」と高をくくっているわけにはいかない。うらら、うららの春のまどろみが、突然破られることもありうると考えておかなければならない。

 春なのに、心配が去らない。アベノミクスの2本目の矢の財政発動に伴い、国債残高、つまり国の借金が、際限なく積み上がるのではないかという懸念である。「まだいいだろう、このぐらいならいいだろう」と国債残高を積み上げているうちに、突然、海外投資家が保有する国債の大量売りが始まり、国債の暴落(=金利の暴騰)に帰結する。行き着く先は、2%どころではない、二桁のハイパーインフレである。それがこの春に起きることはないとしても、このままでは、いずれそんな悪夢が現実のものとなる。春眠暁を覚えずと、惰眠をむさぼっているうちに、危機は足音を潜ませながら迫りつつある。


2013.3.24(日)

加藤教授退職記念祝賀会  

 午前中に、宮城県東京事務所の菅原久吉所長、山内伸介副所長が離任の挨拶に来られた。菅原さんは3代目の知事秘書、山内さんは7代目(最後の)秘書である。どちらも市民ランナーとして、私と一緒に走ることが多かった。2年間の東京勤務を終えて宮城県に帰る。ご苦労様でした。宮城県庁での仕事が実り多いものになりますように。

 午後は、霞ヶ関ビルの東海大学交友会館での「加藤俊一教授退職記念祝賀会」に出席。加藤先生は東海大学医学部開設当初からの38年間、病院の発展と造血幹細胞移植の分野で大きな役割を果たして、このたび定年退職とあいなった。

 私と加藤君との関係は、宮城県仙台第二高校時代の親友であり、けんか相手である。高校を卒業して45年、私がATLを患った際に、事実上の「第二主治医」として再会した。命の恩人である。まことに不可思議な運命の出会いが、ここにもあった。

 祝辞を頼まれたので、小道具として持参した高三の日記帳を手にして「愛憎半ばする関係でした」と紹介した。ここでは「加藤君」と呼び、病気でお世話になったところでは、「加藤先生」と使い分けた。大学関係の先生方からは、加藤先生の功績への高い評価が率直に語られ、同級生としてはまことに誇らしい思いであった。大学関係者を中心に、骨髄移植関係者、仙台二高一八会メンバーなど、大勢の出席者で熱気あふれる祝賀会の終盤では、加藤先生が「50年間の軌跡」を自らたどる「ミニ講演」が展開された。仲間とともに切り開いてきた移植医療など、加藤君の活躍の一部を知ることができた。退職に「おめでとう」はぴったりこないかなと思っていたが、今日の会に出席して、心から「加藤君、加藤先生、おめでとう」と言いたい気持ちである。


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