浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記  1月第5週分          

2014.1.31(金)

採点開始

  春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。まさに、今頃の朝の様子である。山際は見えないが、紫だちたる雲は見える。これがあるから、朝の散歩はやめられない。今朝の天気は、「風弱く4度以上」という条件に合い、散歩とラジオ体操、無事に務め上げる。立春は目の前。春はあけぼのである。

 この気持ちのいい日に、痛い目に遭った。午前中、横浜労災病院での耳の治療の2回目。これまで1週間以上、毎日毎晩「寝耳に水」を注入し、鼓膜にへばりついた耳垢を柔らかくして臨んだ今日の診察である。「やります」の掛け声で小野智裕医師が左耳に吸引器を突っ込む。「いでででで」と思わず声(悲鳴)が出る。「ご、ご勘弁を」といっても温顔の小野医師は容赦しない。やさしい看護師さんに頭をしっかり押さえられて、もう一回。こちらは、再度「いででででで」。「もう参りました」と宣言したら、今日はこれで勘弁してくれた。「急がないでいいですから。じっくり、ゆっくりやりましょう」とお願いする。「だんだん、鼓膜に近いところの耳垢を取るので、もっと痛くなります」と無慈悲な宣告。3回目は2月14日。聖バレンタインデイのお仕置きである。登校拒否をしそう。

 午後、SFCの浅野研究会OGの井田晨子さんが来宅。卒業論文を渡してくれた。ちょっとだけ助言をしただけなのに、義理堅いことである。「やっと提出できました」とほっとした様子。よかった、よかった。就職先での仕事が始まる前に、ニュージーランドに行ってくるとのこと。そういう機会は今しかない。こうやって、教え子が新しい世界に旅立って行くのを見るのは教師冥利に尽きる。

 教師冥利といえば、神奈川大学の教え子の学期末試験の答案用紙が届いた。これから採点である。実は、採点はいやではない。学生の出来がどんなものかを確認するチャンスである。自分が授業で教えたことをどれだけ吸収してくれたかを見る。受験者241名のうち、70名分だけ採点したところで、「今日のところはここまで」と宣言。ここまでのところ、出来はよくない。それも疲れてしまう一因である。明日、またがんばろう。


2014.1.30(木)

30歳大発見

 天気予報では、昨日の最低気温が5℃とあったので、早朝散歩を実行するつもりだったが、直前の「おはよう定食」で、「気温は5℃だが、風速5m.風速1mごとに、体感温度が1℃下がるから、今の体感温度は0℃だ」と生島ヒロシさんが伝えているのを聴いて、散歩を断念した。今朝は「7℃で弱い南風」と聴いて、勇んで散歩に出て行く。岸根公園でラジオ体操が始まる前には、「今朝はあったかいね」といった会話が飛び交う。この時期としては暖かい空気の中で、身体を動かせば気持ちがいい。気分よく散歩を終える。

 散歩から戻って、朝刊を開いたら、一面トップのすごい記事が目に入った。「刺激だけで新万能細胞」という見出しで、理化学研究所が、全く新しい「万能細胞」(STAP細胞)の作成に成功したことを伝えている。その研究のユニットリーダーの小保方春子さん(30歳)が割烹着姿研究作業をしている若々しい写真も掲載されている。

 記事の中で、英科学誌「ネイチャー」への掲載が断られたことが紹介されている。「何百年にもわたる細胞生物学の歴史を愚弄している」という激しい意見つきでの拒絶である。厳しい言葉に、小保方さんは深く落ち込んだとのこと。

 この記事を読んで、最近読了したばかりの医療サスペンス「賞の柩」(帚木蓬生)のエピソードを思い出した。細胞生物学で、これまでの常識を覆す画期的な発見を独学でやり遂げた無名の研究者が権威ある雑誌に投稿した論文が「不採用」として戻ってくる。論文の審査をしたイギリス医学界の重鎮、アーサー・ヒル博士が研究者の発見を密かに横取りして、自分の研究成果として発表したことで、アーサー・ヒルはノーベル医学・生理学賞を受ける。一方、無名の研究者は失意に沈み、研究者としての人生を捨てる。アーサー・ヒルは、研究成果独り占めのために殺害した学者の娘の凶弾に倒れる。

 小保方さんが、「ネイチャー」への論文掲載を突き返されたところであきらめていたら、今回の大発見はできなかった。小保方さんの執念深さ、不屈の意志が成し遂げた快挙である。

 16時頃から、日本テレビの「NEWS EVERY」で都知事候補4人の討論会をやっていた。告示前には、討論会は実現せず、有権者のためには大変困ったことであったが、遅まきながらも実現したことはいいことである。司会者二人の進め方も適切で、時間に限りがある中で、候補者の考え方が伝わってくる機会だった。


2014.1.29(水)

大学クラス会

 神奈川大学での期末試験。「地方自治論U」の試験を2教室を使って制限70分で実施。6人の補助員に手伝ってもらい、私は全体の監督だけ。前学期で経験済みだから、問題はない。「授業に出て聞いていれば楽勝だが、授業に出てない学生は合格点にいかない」と学生には伝えてあるが、今回も授業にほとんど出席していない学生が何人も受験している。そういった学生が、どんな答案を作成するのか、これも毎度のことだが、実は大いに楽しみにしていることである。採点は明後日から着手する。

 夜は、丸の内の明治生命館内のcentral court内の会員制クラブにて、東大41-12Bのクラス会。昭和41年入学のドイツ語クラス。法学部進学予定者に若干の経済学部進学予定者のクラスで50名ぐらいだったかな。今日は16名が参加。一人5分ほどの近況報告が面白い。現役は退いて、NPOで活躍したり、東京都立図書館に通って読書三昧だったり、太陽光発電に精力を注いでいたり。この年の者が集まると、病気の話になりがちなのだが、今日はほとんどなし。最後に、グループでプロを目指して活動している木谷正道君がギターとハモニカの同時演奏で、「島唄」、「アメージンググレイス」を見事に歌い、本当の最後には木谷君の伴奏で全員で「ふるさと」(唱歌のほう)を歌う。』実に楽しい会である。18歳で出会ってから48年。外見も性格も当時と少しも変わっていないことに、お互いに驚く。


2014.1.28(火)

国の借金1114兆円

 朝2℃、昼15℃という寒暖差の激しい一日。散歩は昼の時間を待って開始した。岸根公園の坂道には、赤い椿が花をつけていた。我が家の椿は、白いのが一輪だけ。日当りが違う。ひょうたん原っぱのあたりの梅は、開花といっていいだろう。赤い梅の花が目に映える。朝は明るくなるのが早くなり、夕方は暗くなるのが遅くなる。日の長さは一日ごとに延びている。春が一歩ずつ着実に近づいてくるのを感じる。心弾む時期である。

 国の借金は2014年度末には、1144兆円になる。(財務省発表) 今年度末より105兆円増える。春が一歩ずつ着実に近づくのはいいが、国の借金が毎年着実に増えていくのは困ったもんだ。このことを「困ったもんだ」と受け止める人たちが少ないのは、もっと困ったもんだ。「国民一人あたり○○万円の借金を抱える」といった説明に驚いたこともあったが、最近は驚かなくなった。そのことに驚く。今は「一人あたり900万円」とのこと。これでも驚かない。これだけの借金を、いつまでに、どうやって返済するのだろう。借金という積み木をいつまでも、どこまでも積み上がられるはずはない。どこかで、いつか、ガラガラと崩れてくる。我々は、こういう報道に、もう少し驚かなければいけないのではないだろうか。  


2014.1.27(月)

都知事選の情勢報道

 東京都知事選挙の取材が、まだ続く。午前中に毎日新聞の夕刊編集部の田村彰子記者が自宅で取材。東京都知事選挙の特異性について。宮城県知事選挙と東京都知事選挙、その両方を経験している私に、その辺のところ言わせようということらしい。取材に応じているうちに、答えが浮かんでくる。特に、東京の有権者の特異性を強調しておいた。

 午後からは、読売新聞の木下記者から電話取材。「政治家とカネ」というテーマである。「猪瀬直樹知事の辞め方から、新知事にはカネにきれいな人が望まれます」という前振りで訊ねてくる。清廉潔白ということよりも、カネに関わることには身構える姿勢が大事。そういう姿勢であることがわかれば、変なカネは寄ってこない。はねつける前に寄せ付けないということ。そんなことを語ったが、どういった記事にまとめるか。それが取材を受ける楽しみでもある。

 その都知事選挙。まだ始まったばかりなのに、複数の新聞に情勢調査の結果が報道されている。「舛添氏リード。細川氏ら追う」というものである。よほどはっきりした差がない限り、こういった書き方はしない。選挙序盤でこういう記事を書くことに、どういった意味があるのだろうか。読者に何を知らせようとしているのだろうか。報道する側に、特別な意図があるのだろうか。気にかかる。


2014.1.26(日)

NHK新会長の発言

 昨日は、元旦以来25日ぶりの早朝散歩とラジオ体操だった。今日も同じくで、2日続きの早朝散歩。今年は年始以来、寒い日が続き、「4℃以上で散歩決行」の基準に合わない日が多い。そういう中での2日連続は、珍しいこと。明日以降も低温の朝が続く。しばらくはお休みを強いられる。

 NHK新会長の籾井勝人氏が、就任会見でとんでもない発言をした。従軍慰安婦問題について、「戦争をしているどこの国にもあった」、「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」、「すべて日韓条約で解決している。なぜ蒸し返されるんですか。おかしいでしょう」といった発言である。「とんでもない」と私が言うのは、公共放送であるNHKの会長就任会見で言うことではないだろ、と思うからである。内容も問題ありだが、そもそも政治的に微妙な問題をこんなにぺらぺらと話すこと自体がおかしい。

 そんなこともわからない人がNHKの会長でいいのだろうか。そもそも、今回の会長人事は、政権側の意向によるとの見方が強い。安倍首相としては、そのことを覚られたくないのに、会長自身が政権寄りの発言をしてしまい、困ったことになったとあせっているのではないか。今回の人事に批判的な人たちが、新会長の失言を待っているという状況なのに、自分からその罠にかかってしまった。こういうのを「空気が読めない」というのか、それよりももっと侮蔑的な言葉で呼ぶべきなのか。あきれたというのが、一番近い。


以前のジョギング日記はこちらから


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org