浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記  2月第4週分          

2014.2.22(土)

原発立地首長の福島視察

 「一ヶ月延期誕生会」の会場となった重慶飯店別館の下見に、中華街へ。歩行者天国の中華街大通りは、人で一杯。若いカップルや若くないカップル、中国からの旅行団(多分)、埼玉方面から直通電車でやってきた(多分)家族連れが肉まんなどを歩き食いしながら、楽しそう。笑顔が一杯、中国語なまりの日本語での客引きが一杯、地図持って歩く人が一杯。老人一人旅(私のこと)は、ラーメン一杯食べて中華街を去る。

 暖かい昼下がり、散歩に出る。一日休んだだけで、筋肉が弱っているのを感じる。散歩を義務と感じるようになると、楽しくなくなる。筋肉が弱ったっていいじゃないか。休みたければ休む。寒ければ自粛する。そういうふうにやっていけば、毎回の散歩の楽しさは継続する。病気前のジョギングの時も「楽しくなければ走るな。楽しくなければジョギングでない」という、「シロー流ジョギング継続法」で年間1500キロ走ってきたのを思い出す。

 原発立地首長たち約50人が、20日と21日、福島第一原発と双葉町や富岡町などを視察した。全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)のメンバーによる視察はこれが初めて。首長たちは視察で何を見て、何を感じたのだろうか。「再稼働は住民の同意が得られない」と思った首長もいただろう。一方、「安全が確保されれば、再稼働はしてもいい」というのもあっただろう。どう受け止めるかは、いろいろあろうが、この時期に事故現場を視察するのはいいことである。次は、立地自治体の住民たちを誘って再訪して欲しい。


2014.2.21(金)

浅田真央選手に絶賛の嵐

 このところ日課のようになった未明のソチオリンピック観戦。今日はフィギュアスケート女子フリーの浅田真央選手の演技を固唾を飲んで見た。これが素晴らしかった。昨日のショートプログラムのあまりのひどさに、今日は立ち直れるのだろうかと心配した。「大事なときに転ぶ」こともなく、自己最高の141点。昨日の16位から発進し、6位まで上がった。どん底からの這い上がり。見ているみんなに勇気を与えたということだから、金メダルよりもっと大きな価値がある。ソチ五輪の感動ドラマでも最高のものである。中国版ツイッターでも感動、大絶賛の嵐。「外国人選手の試合で初めて泣いた」、「真のスポーツ精神とは金メダルをいくつ獲得したかではなく、自分を乗り越えて、自分に勝てたかどうか。あなたはキム・ヨナより素晴らしい」、「浅田真央の完璧な幕引きは金メダルよりも確かなものだ」、「王者が優勝するとは限らない」などなど。日本人も外国人も一緒になって、真央ちゃん、ありがとう!

 こんなふうに純粋に感動している私だが、国会あたりでは感動できない動きが見える。安倍晋三首相が昨日の衆議院予算委員会で、集団的自衛権行使容認の「解釈改憲」を閣議決定で行うと答弁した。閣議決定の後には、国会で議論してもらうということも答弁したが、そこでは何を議論するのだろうか。閣議決定された「解釈改憲」が正しいかどうかの議論など、するはずがない。憲法の新解釈で集団的自衛権が認められるということを前提にして、それに合った形の自衛隊法改正案が政府提案され、その審議をすることになるはず。こういうのを「前のめり」という。日本の憲法は、大事なことも解釈でどうにでも変えられるというのでは、「日本の憲法は軽いもの」と外国から見られる事態は避けられない。こういったことこそが国益を害する。集団的自衛権を認めたいのなら、憲法改正の正攻法でいくしかない。前のめりは、スキーのジャンプでも、政治の場でも、どちらも危険である。

 夜は、寺島実郎、残間里江子、生島ヒロシと私の「四人会」。いい名前ができるまで、「四人会」(仮称)でいく。会食の場所選定は回り持ちで、今回は生島さんが「芝とうふ屋うかい」で設定してくれた。ごちそうも美味だが、楽しい仲間での話が一番のごちそう。私以外は多忙を極める人たちの日程調整(私の役目)には毎回苦労する。それだから、こうして4人が揃うのは、有り、難い。ありがたい。


2014.2.20(木)

緊張感

 未明の女子フィギュアショートプログラムの実況中継を見ていた。宮根さんが「心臓バクバク」になるという浅田真央選手の演技は、失敗、それも大失敗の連続。いろいろ言うまい。オリンピックでの成績がどうのこうのではない。人生とは、なんたる苦難を用意しているものなのだろう。そんな空恐ろしさを感じた。フリープログラムで何が起こるかわからない。そんな時点で書いているが、「フリーは、自分の演技ができるように、がんばってください」なんてことは、とても言う気になれない。

 オリンピック出場選手の感じる緊張感とは、まったく無縁の「スポーツ」は、気ままな散歩である。対戦相手がいない。だから、勝ち負けがない。全員が勝者である。66歳にもなったら、そういう「スポーツ」がいい。終われば楽しいだけの散歩を、今日も一時間近く楽しんだ。今度の日曜日は、東京マラソン。移植者枠の10キロレースに出てみたいと願った時期もあった。結果的にそれができたらハッピーだが、そうでなくとも、そこに向かって散歩からジョギング、そしてランニングを目指すのは楽しい。66歳を超えた老人の「スポーツ」はそういったものである。

 TPPの交渉も緊張感の漂う場である。TPPに限らず、外交交渉を制するのは、外交テクニックではない。「外交問題は内政問題」と言われるように、内政をきっちり把握することこそが、外交交渉に勝利する鍵である。具体的には、農産物の自由化をどこまで認めるか、関税引き下げがどこまでなら認容できるかは、相手方の手の内を読むテクニックにより決まるものではない。交渉のテーブルで、後ろを振り向いたときに目に入る日本の農業関係者と、交渉前にどれだけ腹を割った調整ができているかによって決まる。「ここまで認容してくれたら、これこれの飴玉(救済措置)も用意するよ」といった、国内での事前の調整こそが大事である。その意味では、今頃になって「後ろを向いて」、日本の関係者と話を始めるのは、外交交渉の勝利にはつながらないと思うのだが。


2014.2.19(水)

ソチ五輪、女子初のメダル

 「ミヤネ屋」出演で大阪へ。新幹線の中では、読書していたが、ふと気付いて窓外に目をやったら、なんと大きな富士山が裾野の下まではっきり見えた。本を読んでいたり、居眠りをしていたりで、富士山に気付かず、折角の勇姿を見過ごした悔しい思い出が何回かある。今日は上出来。いいことがありそう。

 「ミヤネ屋」では、佐村河内・守さんの聴力疑惑について、聴力判定のむずかしさについてちょっとだけコメントの機会があった。あとは、ほとんどオリンピック、それも女子フィギュアの話題である。ソチから帰って来たばかりの本田武史さんが、かなり詳しく、わかりやすく解説してくれるので、宮根さんとコメンテーター席は、「ヘー、そーなんですか」の連続。「こうやって解説されると、演技を見る興味が増します」と本田解説に称賛の声。本田さんは頭いいんだなーの声もあった。フィギュアスケートに限らず、解説者によって、素人が競技をしっかり理解して見られるかどうか、大いに違ってくる。本田武史さんは◎、そしてあの人は××である。

 帰宅して、テレビを見たら、スノーボード女子パラレル大回転を中継していた。こんな競技があることも知らず、竹内智香選手の名前も初めて知った。テレビ、新聞でも女子フィギュアの話題は大々的に報道するのに、この競技はほとんど触れられない。その競技で、竹内選手が堂々の銀メダル。ソチオリンピック女子では初めてのメダル獲得、それだけでなく、アルペンの歴史の中でも日本人女子初のメダルである。この瞬間を生中継で見られたのは、まことにラッキーだった。


2014.2.18(火)

日本人として誇らしい

 朝の低温、強風と打って変わって、昼間は穏やかな春の陽射しに、風も収まっている。これは散歩日和と、久しぶりの昼の散歩に出かける。道には雪が残り、溶け出した雪が水溜りになっていう。そういう障害物を避けながらの散歩は、結構気持ちがいい。ゆっくり歩きだったが、適度に汗もかき、終わってみれば、快適な散歩である。

 日曜日の日記では、ソチオリンピックでの羽生結弦選手の華麗な演技、好ましい容姿、礼儀正しさが中国、韓国の人たちにアピールしていることを書いた。続いて、ジャンプ男子ラージヒルの個人で葛西紀明選手が銀メダルを獲得したことも、世界各地から称賛の声が上がっている。41歳、不屈の闘志、幾多の挫折、金メダルへの挑戦継続とドラマ性満載である。海外のネット上には「最高に尊敬する」など称賛の言葉が多数掲載されている。この種目金メダルのカミル・ストッホ(ポーランド)が霞んでしまう。日本人としては、メダル獲得だけでなく、こういう評判がうれしい。誇らしい。

 大雪で多くのトラックが立ち往生の中央高速道路で、動けなくなった運転手たちに、山崎製パンの運転手がパンを配って歩いた。その記事がネット上で評判になり、中国最大の日本情報サイトにも転載され、大手メディアも報道したことから、注目を集めているとのこと。「中国なら強奪が起こる。こんなことは考えられない。日本人はなんと友愛と思いやりにあふれているのだろう」とベタほめである。これも日本人として誇らしい。これがホントのアンパンマン。

 インドネシアのバリ島沖でダイビング中の7人が行方不明になった事故で、3日後の今日、5人が救助された。漂流三日で助かるとは、メンバーの冷静沈着な行動がもたらした奇跡である。この時点で、2人の安否が確認されていないので、手放しでは喜べない。早く見つかってほしい。


2014.2.17(月)

災害大国日本で

 我が家の周辺の道の雪が消えない。家の屋根からは、今でも、どすん、どすんと雪が落ちてくる。空き地には雪かきで集められた雪がうず高く積まれている。なんてことは、いくらのことでもない。3日前の大雪で集落が孤立したり、交通機関、特に道路の混乱が続いている。東横線の元住吉駅では電車のブレーキが雪のために効かなかったことによる追突で多くの負傷者を出した。この大雪による事故などでの死者は15人以上とのこと。

 高速道路などの通行止めで、トラック運送による物流が滞っている。家人によれば、近くのコンビニからパンなどの食料品が一部姿を消しているとのこと。産地から物資が届かないからだろう。日常生活にも、少なからぬ影響が出ている。改めて、日本は災害大国であることを実感する。地震、津波、水害に加えて雪害もある。富士山の噴火による被害もあり得る。

 その災害大国で新たに建設中の原子力発電所がある。青森県下北半島北端の大間原発である。この原発は、東日本大震災の時点で着工済みだったが、福島原発の事故発生で状況は変わったはずである。原発立地自治体の住民は、福島の原発事故後の壊滅的被害の状況を知って、これまでとは違った次元の恐怖を味わっている。その思いは、立地自治体だけでなく、原発から至近距離にある別の自治体(函館市)の住民にとっても同じことである。大間原発の対岸の函館市が事業者(電源開発)と国を相手に建設差し止め訴訟を起こすのはこういう事情からである。

 世界初のフルMOX原発である大間原発が立地する青森県大間町(人口6,300人)の住民ではなく、対岸の函館市(人口274,000人)が起こす訴訟である。大間町の住民のほうが、原発事故への反応が鈍いのではあるまい。原発による地元の経済発展、雇用の確保に目が眩まされている。福島原発事故後の惨状があっても、大間町の住民は目を覚まさないのだろうか。それが不思議でならない。

 静岡県の浜岡原発立地市の御前崎市長は、再稼働容認の構えである。「周辺自治体」は従前は御前崎市を含む4市だったが、福島原発事故以降「周辺自治体」に新たに5市2町が加わった。そして、それら自治体からは再稼働に対しては厳しい見方がなされている。直接の立地自治体には、原発からの固定資産税収入があるだけでなく、雇用も増えるし、工事で経済が活性化する。周辺自治体には、そういったメリットはないのに、事故の被害だけは被る。再稼働を容認するかどうかに差が出るのは当然だろう。再稼働の容認を取り付けるべき自治体の範囲を30キロ圏内に広げなければ、周辺自治体は収まらないだろう。


2014.2.16(日)

葛西はレジェンド

 久しぶりの陽射しと暖かさで散歩日和なのだが、散歩道のあちこちには大雪の名残りが残る。これでは散歩は無理。2月に入って、最初の2日間だけ散歩に出かけただけで、朝はもちろん昼の散歩すらできていない。これでは身体がなまってしまうが仕方がない。こんなことを以前にも書いたことがあるが、歴史は繰り返す(まことに大げさ)。

 ソチオリンピックの話題が終わらない。ジャンプ男子ラージヒルで41歳の葛西紀明選手が登場。数日前から義母が「41歳でメダルは無理、無理」と言っている頃、私は「葛西はいける。金メダルもあり得る」と強弁していた。結果は、金メダルのカミル・ストッホ(26歳ポーランド)と僅差の銀メダル。2回目に大ジャンプをしたところで、銀以上のメダルが確定。その瞬間に、後輩の日本人選手3人が葛西に駆け寄って抱きついたのは感動もののシーンである。試合後の談話で、現役続行で金メダルを目指すという葛西選手。その発言に、「葛西はレジェンド(伝説の人)だ」と実感した。次は団体戦での金メダルが見たい。

 男子フィギュア金メダルの羽生結弦選手には、日本以外の国の人たちからも称賛の声があがる。男性的なジャンプ、柔らかな演技への称賛だけではない。韓国では、長い手足と小顔、あどけない表情も、特に女性の人気が高い。中国では、「本当に凄い。羽生が中国人だったらよかったのに」との声もあるらしい。羽生選手のおかげで、両国の日本人への見方が変わったとすれば、羽生結弦選手の五輪での活躍は国際的にも大きな意義がある。  


以前のジョギング日記はこちらから


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org