浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 3月第5週分          

2014.3.31(月)

年度末に

 3月最後の日。役所での言い方では、平成25年度末である。昼に、久しぶりの散歩、岸根公園まで。公園の桜が見事な咲きっぷりである。雲一つない青空に花が咲き誇っている。今年も、いい桜を見られたという感慨に耽りながら歩いている私。

 NHKの朝ドラ、大評判の「ごちそうさん」が終了し、今朝から「花子とアン」が始まった。逆境を撥ね返してけなげに生きる子役という設定は、朝ドラの定番で手堅いスタートである。語り手が美輪明宏というのは、大胆な起用であるが、他のキャストは無難なところ。明日からの展開が楽しみ。

 明日からの展開といえば、消費税率の8%への引き上げがある。国民は納得して受け入れているようだが、それは「増税分は全額社会保障費の増加分に充てます」という政府の説明を信じているからだろう。野田政権でも、そのように説明していたが、説明どおりなら、今後、社会保障費が増加したら、その分だけ消費税率を引き上げ続けなければならない。「そうするんですか。本当ですか」と訊いてみたくなる。「国家財政の破綻を避けるためには、財政再建が必要で、そのために消費税率の引き上げをする」と、正々堂々と説明するべきである。国民は正しく理解し、受け入れるはずである。そんなことを考えながら、明日からの増税の行く末を見ていく。


2014.3.30(日)

春だ、春だ

 朝方からの雨に、強い風も加わって、春の嵐の様子。雨は夕方には上がり、陽も出て来た。明日は、花見ができそうな天気を回復するだろう。

 雨のめぐみをたっぷり吸い込んで、わが庭の花たちは、元気に咲き誇っている。つばき、水仙、ラッパスイセン、ラベンダー、イチハツ、パンジー、ビオラ、海棠、土佐みずき、大根の花、ルピナス、クリスマスローズ、金魚草、忘れな草、スノーフレーク、ムスカリ(花の名は光子に教わる)。狭い庭は花盛り。春だ春だ、お花が春を運んできた。

 春だ、春だと浮き立ってしまうのは、プロ野球開幕3連戦。我が東北楽天イーグルスが西武ライオンズ相手に三連勝。先発の則本昂大、塩見貴洋、辛島航が好投し、打線もつながって、悠々たる勝利である。このあと、仙台に戻ってのオリックス・バッファローズ相手には、日本シリーズの最優秀選手美馬学、期待の高卒ルーキー松井裕樹、顔も投球も端正な青山浩二が先発する。(私の予想-青山は?)


2014.3.29(土)

東松山市で「すばるセミナー2014」

 午後から埼玉県東松山市へ。東横線の白楽駅から、東上線の東松山駅まで、乗り換え無しの直通である。松山市民活動センターで「すばるセミナー2014」で1時間半の講演をする。「暮らし続けるために」というのが全体のテーマで、私の講演の前には佐藤進さんがコーディネーターを務める「常時介護を要する障害者の支援体制をめぐって」というシンポジウムがあった。これは聴きそびれたのだが、進さんのコーディネーターぶりが、高く評価されていた。仲間として、友人として、それはうれしいこと。

 一時間半の講演は、「地域が支える福祉」ということで、障害福祉の話をした。セミナーの後の「反省会」では、特にぷれジョブのことに皆さんの関心が集まっていた。その反省会には、社会福祉法人すばるの職員を中心に、30人あまりが参加していた。仙台つどいの家から下郡山和子さんをはじめ3人が参加。とてもいい雰囲気の反省会だった。そもそも、この東松山は、私にとってはなつかしいところである。26年前の厚生省障害福祉課長のときから、何回も訪れている。すばるが法人化した時、10周年にも顔を出している記憶がある。やきとんの店が日本一多いところも気に入っている。なによりも、我が友佐藤進さんが活躍しているところだから、愛着がある。今回は久しぶり。とてもいい時間を過ごした。


2014.3.28(金)

ねむの木学園美術展

 9時に宮沢歯科へ。治療は30分もかからなかったが、自己負担額は6000円超となった。今回の治療は、右下の奥歯がぐらぐらするのを隣の歯とのブリッジで押さえるもの。今日の治療では、そのブリッジを据え付けたので、費用が嵩んだ。「グラグラ」は、定期チェックでみつかったことから治療になったもので、それまで痛いとか、不具合とかは感じなかった中での治療である。であるからして、治療が終わっても、「達成感」がない。つまり、治してもらってよかったという感がしないのである、放っておくと、これから悪化する、それを予防するという意味はあるので、「やってよかった」と思うことにしよう。

 午後から、光子と横浜そごうで開催中の「ねむの木の子どもたちとまり子美術展」に出かける。重い障害を持った子どもたちの作品が並ぶ。月並みな感想だが、子どもたちの感性がほとばしる作品に圧倒された。作者と宮城まり子さんとの関わりが作品に添えてあり、それを読むと味わいが増す。まり子さんを扱った作品がとても多い。そこでは、「おかあさん」と呼ばれているのも印象的である。入り口で、今回の美術展開催のための経費1,000万円を寄付で集めた松岡紀雄さんにお会いした。「今回の寄付の呼びかけは、私自身の70余年の人生が問われている」という覚悟で取り組んだ松岡さん。その松岡さんのご案内で、宮城まり子さんともお会いして、15分ほどお話することができたのも、うれしいことであった。

 今日、プロ野球の開幕。開幕戦というのは、格別である。勝っても同じ1勝だが、重みが違う。勢いが出る。その開幕戦、西武相手にわが楽天イーグルスは、則本が完投勝利。幸先のいいスタートである。

 義母の91歳の誕生日。心臓に持病がある以外は、どこも不具合なし。頭も身体もしっかりしている。小さなバースデーケーキでささやかにお祝い。元気で長生きしてください。


2014.3.27(木)

催花雨

 冷たい雨が降る朝、築地のがんセンターへ。風邪症状が10日も続いている。普通の人であればなんでもないことが、ATL予後の私には万一ということがある。風邪引きが引き金になって、重篤なGVHDが発症する可能性があるからである。田野崎隆二先生に急遽診察いただいた結果は、異常なしである。先週の診察で1.69だったCRP(炎症反応の値)が0.15(正常値上限0.10)に下がったのを見て、ほっとした。田野崎先生の「今後とも無理しないで」の声に送り出されて、診察室を出る。

 そのまま、芝の仏教伝道協会へ。日本フィランソロピー協会の理事会が13時から開催される。公益法人は安く借りられるので、最近の理事会は、ここを使っている。会議室には暖房が入っている。桜は開花したのに、外はそぼ降る雨。開花してすぐの頃の雨は、花よ早く咲け咲けとせき立てているようで、催花雨と称する。いい言葉だな。理事会のほうは、実り多いディスカッションもあり、有意義に終えた。

 「袴田事件」で死刑判決が確定していた袴田巌さんが、今日、東京拘置所から釈放された。静岡地裁で再審開始決定がされたことを踏まえての釈放である。50年近く前の事件である。静岡地裁は、袴田さんの着衣が捏造された疑いがあるとまで判決で述べている。これは警察、検察による権力犯罪ではないのか。それを見抜けなかった裁判官も同罪ではないのか。

 学生時代の一時期、冤罪問題に興味を持ち、正木ひろし弁護士の八海事件についての著作を読み、「冤罪を弾劾する信念の弁護士」後藤昌次郎さんの講演を聴きにいったりしたのを思い出す。当時から、冤罪はあり、冤罪を産む要因は今も昔も変わらない。自白偏重、やっていないのにやったと自白するはずがないという思い込みなどなど。村木厚子さんは、自身の強い意志で冤罪を晴らしたが、普通の人間なら押しつぶされてしまう。一旦は押しつぶされた人が、再審決定で釈放を勝ち取った袴田さん、自分ではそのことを正しく認識できるような精神状態ではない。司法の責任は、とてつなく重い。


2014.3.26(水)

日米韓首脳会談の日に

 黒岩由香さんたちが企画している、骨髄バンク普及のための劇映画づくりに関して、生島ヒロシさんにお願いごとがあるということで、私も同行して生島企画の事務所へ。最大限ご協力を得られそうであり、映画づくりの会の顧問役をしている私としても、ほっとしているところ。生島さん、ありがとうございました。

 ハーグにて日米韓首脳会談が行われた。安倍首相と朴槿恵大統領とは実質的に初対面。歴史認識の問題とか、慰安婦問題などは当然話題にはならない。ともかく会ったということだけでも、大きな成果ではある。安倍首相が韓国語で発言したのに、朴大統領がにこりともしない対応だったのは、体調が悪かったからと理解したい。これからの日韓関係の改善に一歩ずつでも進んで行くことを期待する。

 このタイミングに合わせて、北朝鮮が弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。その意図がわからない。乱暴な子どもが、近所の子ども同士仲良くしているのに駄々をこねているの図ではないか。そんな比喩では済まされない。国連安保理決議違反として、国際的に制裁を受けるべきとんでもない行為である。拉致問題解決のために、北朝鮮に何らかの支援をしようという気分も、すっかり白けてしまう。困った国だ、無法のならず者国家をなんとかしなければならない。


2014.3.25(火)

障害のある学生の受け入れ

 久しぶりに歩いて、神奈川大学キャンパスに出向いた。偶然に、人間科学部中国語学科を今年卒業した大築佑司君に会った。この偶然は説明がむずかしい。先日、神奈川大学の入江先生から電話があって、今年卒業する筋ジストロフィーの学生がいる、近く会ってもらえないかということであった。その「近く」の連絡がないままになっていたか、それとも、その電話の際に、日程を聞いたのを私が忘れたのか。今日別件でキャンパスに行ったら、そこで偶然大築君と入江先生に会ったのである。車椅子の学生がいるのを見て、「浅野です」と声を掛けたというのが実際。入江先生のつもりでは、今日の1時のアポイントメントがあったので、私の研究室に赴いたら、私がいなかったということになる。

 あまりに奇妙な偶然だったので、ついつい長い前置きになってしまった。その大築君の話だが、神奈川大学の4年間は大変だったということである。通学は自力でできるのだが、母親に送り迎えをしてもらう。排尿や物を取り出すのに人手がいるのに、大学ではそれが得られない。語学研修で北京に行くのに、先生に反対され、反対を押し切って行ったが1週間で帰され、研修の単位はもらえない。悪いことだけではない。反対を押し切るのに、学科生70人のうち、50人の署名があったのが力になった。車椅子を運んでくれる学友もいた。一緒に学んで、学生は変わるのである。しかし、大学全体が障害のある学生を受け入れるのに、本気で取り組まなければ、大築君のような苦労はなくならない。新学期から始める「障害福祉論」のゼミに、大築君にゲストで来てもらうことにした。これから入学する障害をもった学生のために、自分も力になりたいという。

 SFCの障害福祉ゼミの教え子で、ぷれジョブ藤沢のジョブサポーターもやってもらっていた小林恵里菜さん。藤沢市役所に就職が決まった時、本人以上に私のほうが喜んだ覚えがある。今日、メールが届いて、なんと配属が障害福祉課とのこと。偶然なのか、神様の思し召しか。本人と同じぐらいに、私もうれしい。


2014.3.24(月)

静岡での講演

 昼から、静岡市のグランシップにて「人とつながり生きる社会とは」という1時間20分の講演。静岡県と静岡県社会福祉協議会の共催になる"健康しずおか"さわやかキャンペーン推進事業の中で実施された。全体のテーマは「社会的孤立をなくそう!?ひとりにしない静岡の仕組みづくり?できることからはじめてみませんか?」というもの。テーマぴったりではないと思いながら、@特定の人たちを排除しない、A仲間として引き入れる、Bこちらから入っていく、ということを障害者中心の話題として提供した。すべて、私自身が直接関わった話なので、こちらも話しやすいし、聴くほうも具体的な話でわかりやすい(と信じる)。内容はともかく、話すべきことをすべて話して、時間ぴったりで終えられたのは満足であった。行き帰りの新幹線、そして会場からも富士山の勇姿を眺められたのは何よりの幸せ。静岡の人は、いつも富士山を見られてうらやましい。

 橋下徹氏を再び市長に選んだ大阪市長選挙が、橋下氏の勝利で終わった。「大義なき選挙」、「選挙をしても何も変わらない」、「橋下氏のひとりよがり」、「過去最低の投票率」など、テレビ、新聞の報道ぶりは予想どおり。私とすると、67,000人もの人たちが、白票や無効票を投じるために、投票所に足を運んだということが驚きである。しらけて棄権したのとは違う。この選挙に対して、そして橋下氏に対して、強いメッセージが無効票に込められている。地方自治論の授業で、若者の投票率が低いことに危機感を覚え、「棄権はするな。投票すべき人がいなかったら白票を投じるか、自分の名前でも書いて来い」と学生に言っている。別な形ではあるが、これが実際に大阪市長選挙で実現するとは、驚きである。

 最後に今朝の朝日新聞の天声人語にあった川柳が秀逸であったので、引用する。「淀川に 独り相撲の 触れ太鼓」。投票日は、大相撲大阪場所の千秋楽であった。(注 触れ太鼓は、本来は初日の前日に本場所の取り組みを知らせるものです)。鶴竜関は、別な形の独り相撲で横綱を射止めたのとは、大きなコントラストだなあと思っている私。


2014.3.23(日)

国会論戦の季節に

 体調十分になったので、怠惰な生活にはさようならである。5月の講演のパワポイントを作成。パワポさえ作ってしまえば、あとは本番を待つだけ。夏休みの宿題を3日目に終えてしまった中学生の心境である。

 2014年度予算が成立した。これからの国会論戦は、予算以外の重要課題をめぐってのものとなる。外交問題では、韓国、中国との関係回復がある。日韓首脳会談が実現するようだが、それだけで日韓関係が正常化するとは思えない。TPP交渉が暗礁に乗り上げているが、これを日本側としてどう打開するか。

 ここにきてロシアのクリミア統合の動きがある。日本は欧米並みにはロシアに圧力をかけづらい。資源問題も、北方領土問題もあり、ロシアとの関係を悪くしたくない。それでも、ロシアの大国主義に基づく強権姿勢は、G7の一員としては断固たる措置をとることを躊躇してはならない。

 集団的自衛権容認の動きは、外交問題でもある。解釈変更がもたらす外交的影響も考慮しなければならない。アメリカは歓迎しているということで、日米関係強化につながることにはなるかもしれない。一方で、このタイミングで集団的自衛権を容認する解釈変更をすること自体が、日本による戦争準備への大きなアクションと受け取られる余地がある。その危機感を「悪用して」、中国が尖閣諸島領有の実力行使をする可能性はゼロではない。そこまで考え抜いた上での、慎重な対応が政府には求められる。

 そんなことよりも、消費税率引き上げを目前にして、経済失速にならないよう、アベノミクスが機能するようにすることが安倍政権にとっての最重要課題である。通常国会会期中に、株価暴落という事態がないといえるか。集団的自衛権容認問題で、内政問題をおろそかにしてはならない。


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