浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 5月第3週分          

2014.5.17(土)

国論二分の議論

 先週に続いて、「朋」の見学の引率。「引率」とはいいながら、大学のゼミ生8人と一緒に、冒頭に顔を出すだけである。日浦美智江さん(初代施設長)、名里晴美さん(二代目施設長)、庄司さん(現施設長)らが迎えてくださった。26年前からおなじみの施設、おなじみの顔である。しゃべれない、動けないという重い障害で、点滴つき、気管切開の利用者も多い。学生たちは、半日どうつき合って、どんな感想を持ったか、いずれ聞きたいものである。前回見学した6名は、全員、「朋」でのボランティア登録をしたとのこと。今回はどうだろうか。

 集団的自衛権問題。今日は読売新聞を読んでみた。朝日新聞とまるっきり反対で、安倍首相の方針を擁護する記事がほとんど。自前の解説記事(憲法考@自衛権と安保)では、「戦争を未然に防ぎ日本の安全を守るため、憲法解釈見直しの機は熟している」とか、「『立憲主義の破壊』などという抽象的・神学的な9条論議から、『日本の平和と安定のために必要な対応は何か』という実効性の伴う9条論議へ」といった安倍首相の言葉の引用ではないかと思える記述が並ぶ。

 内閣法制局長官が小松一郎氏から横畠裕介氏に交代したことを伝える読売新聞の記事では「解釈見直し 不可能ではない。柔軟姿勢」という見出し。朝日新聞が「『エース』横畠氏、内部昇格」の見出しで、「横畠氏は『行使はできない』と長年説明してきた法制局の内部昇格」であることを強調している。それぞれの新聞社の希望的観測がそのまま記事に現れているようで興味深い。朝日新聞が「行使『改憲経るべきだ』 創価学会が見解」ということを一面で報じているのに対し、読売新聞にはそういった記事はない。

 テレビ討論でも、賛成論、反対論がそれぞれ持論を展開する。消費税率引き上げ賛成/反対、TPP賛成/反対など、最近でも国論を二分するような議論はあった。しかし、新聞論調が賛成/反対にこうもはっきり分かれるのは、あまり例がないのではないか。


2014.5.16(金)

集団的自衛権の解釈改憲を前にして

 「安保法制懇」の報告書を受け、安倍首相が記者会見をしたことで、集団的自衛権行使のための憲法解釈変更問題が今日の朝刊各紙で大々的に扱われている。この問題については、何度も書いて来た。今回は、朝日新聞に紹介されている各種意見を引用してみよう。

 まずは、安倍首相の記者会見から。「抑止力が高まり、紛争が回避され、我が国が戦争に巻き込まれなくなる」(逆だろ。「戦争に巻き込まれやすくなる」が正解)、「立憲主義に則って政治をおこなっていく」(「立憲主義」のなんたるかをわかっていないな)、「人々を守る政府の責任を放棄しろと憲法が要請しているとは私には考えられない」(「人々」が「日本国民」のことだとすれば、自衛の戦いが解釈で認められている憲法で十分だよ)。公明党の山口那津男代表のコメント。「首相が示した具体例は、これまでの憲法の考え方で対応できる部分が相当ある」(「対応できる」と言い切らないのは、首相への配慮、遠慮なんだろうな)。

 欧州某国の元政府高官は、「集団的自衛権の議論が安倍内閣ではナショナリズムと結びつけられるリスクがある」(タイミングがよくない。安倍さんがやるからなおのこと)。石川健治東大教授は、「集団的自衛権行使の実態は、攻守同盟であり敵を意識している。安倍首相は、事柄の重要性を糊塗しようとしている。観念的な安全保障論議を力押しして、デモクラシーの形を破壊してはならない」(憲法論による一刀両断的な反対論。わかりやすさは最高)。

 名もなき人たちのコメント。若手自衛官は、「実感がない。現場が必要としているというより、政治の道具になっている」(実際に戦闘に出る自衛官に実感がないとは?!)。自衛隊幹部は、「直面する現実に、法的な環境がやっと追いついた」(現場の悩みは深刻だろう)。元空自パイロットは、「曖昧なまま出動させられる立場をわかってほしい。時間がかかっても議論を尽くして欲しい。胸を張って政党だと言えないと、日本の敵が増えるだけ」(解釈改憲でなく、憲法改正でということ)。元陸軍伍長は、「300万人が犠牲になり、ようやく憲法9条を得たのに、なぜまた戦争のできる国にならなければいけないのか」(このコメントが最も強く胸に響いた)。


2014.5.15(木)

安保法制懇の報告書

 朝のうちは雨模様で、散歩はなし。午前中から、次回授業のレジュメ作成にとりかかる。「前回の誤解」、「質問と回答」に丁寧に答える部分があるので、結構時間がかかる。それでも、この作業を通じて、学生がどこまでわかっていて、どこがわからないのかがわかり、興味深いところはある。前回のミニテストは満点が10名。前々回は25名、その前は8名。もう少しできてもいいのになあと思いながら、ミニテストの結果を見るのも楽しみである。

 今日、安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、集団的自衛権の行使を可能にするため、政府の憲法解釈を変更するよう求める報告書を首相に提出した。安倍首相がメンバーを選んだ懇談会だから、報告書は解釈改憲賛成という内容なのは最初からわかっている。こういうのを結論ありきという。この結論を得て、安倍首相は慎重に、しかし確実に進んでいくことになる。そんなに、急いで進める理由はないのだから、是非、国民的議論も喚起しながら、慎重にやって欲しい。  


2014.5.14(水)

感動と衝撃のゲスト

 昨日は自粛した散歩を再開。散歩はゆるめ、ラジオ体操はみっちりというアクセントをつける。ラジオ体操ごときと言うなかれ。みっちりやると、結構な運動量である。

 今日は神奈川大学授業の日。「障害福祉論」のゼミには、ゲストとして安積遊歩(ゆうほ)、宇宙(うみ)親子に来ていただいた。車椅子2台に介助者2人で狭い教室がさらに狭くなる。安積遊歩さんとは、30年前からのつきあいである。当時から舌鋒鋭い論客で、初めて顔を合わせたのも、陳情・要望グループの一員対受けて立つ役人という図式の場だった。骨形成不全症で車椅子、ダスキンの海外研修制度でのアメリカ生活1年で、闘う論客ぶりに磨きがかかった。女性として、障害者としての差別に毅然として向って行く。周りの懸念を振り切って産んだ宇宙さんは、同じ骨形成不全症。18歳になった宇宙さん。この子が親に輪をかけてすごい論客である。二人のゲストの話が24人の履修者に大きな感動と衝撃を与えたのは当然である。

 その感動と衝撃を抱えたまま、10分後の「地方自治論」の授業で講義をする。学生に感動と衝撃は与えなかったものの、「地方議会とは」について一所懸命語る老教授(私のこと)。2コマの授業、どちらも充実していた。


2014.5.13(火)

取材と講演

 午前中、静岡朝日テレビの赤田康和さんが取材で来宅。赤田さんは、私の知事時代に朝日新聞仙台支局にいて県庁の取材もしていた。朝日新聞の仙台支局の記者は入れ替わり立ち替わりやってきたが、皆とても優秀だった。その一人の赤田さんは、その後本社に戻り、今回は静岡朝日テレビに出向になった。今回の取材は、静岡県で知事三人体制にするという川勝平太知事の方針について。思いつくままに、1時間近くいろいろコメントしたが、その中から番組の意図に叶うものだけ取り出して最大30秒の放送となるはず。内容はともかく、久しぶりの赤田さんの取材対応は楽しいものだった。

 午後は、慶応大学三田校舎のファカルティクラブでの「慶応義塾全国議員連盟」の場で講演。私の前に小林良彰慶應義塾大学教授が「道州制導入と地方議会」という講演をなさった。私の標題は、「憲法改正と地方議会」というもの。60を超える市町村議会から集団的自衛権の憲法解釈での行使容認について意見書が提出されていることを皮切りに、「憲法改正論議について地方議会は住民への教育・啓蒙的役割を果たすべきだ」という持論を展開した。それにしても、この議員連盟は実に熱心な団体である。今回で11回目。全国から慶応大学出身の地方議会議員が集まってくる。今回は24名が出席。その熱心さにほだされて、私も毎年講演を引き受けている。


2014.5.12(月)

天候急変  

 天気がいい日が続く。散歩には絶好の日和なのだが、ただ一つ、紫外線が強いのが困る。田野崎隆二先生からも、光子からも「紫外線には気をつけなさい」と厳命されている。そこで、散歩に出る前には、日焼け止めクリームを顔に塗りたくっている。厄介だが仕方がない。

 午後から、私的用事であちこち歩き回った。天気は一転曇り空となり、風も強くなる。寒さに震えながらの半日だった。今頃の気候は、こういうことがある。  


2014.5.11(日)

Beautiful Sunday

 清々しい朝。Beautiful Sunday の曲が聴こえてくるような素敵な陽気である。岸根公園のひょうたん原っぱを歩くと、草の甘い匂いが風に乗って渡ってくる。ラジオ体操の胸の運動をして見上げた空は雲一つない青空。「こんな日に散歩をしなかったら、いつまでも悔やむだろうに」という仮定法過去完了の文章が頭に浮かぶ。散歩できて本当に良かった。

 ぷれジョブ藤沢の5月定例会で、10時半に藤沢駅近くの湘南よみうり新聞社の会議室へ。ぷれジョブに関心がある人の新たな参加が多数あった。オブザーバーとして見学に来ただけという人もいたが、私の強引なというより巧妙な誘いで、なんとなく仲間入りをすることになった。これで何組かのチームの発足にこぎつけた。来月には、既存の3チームに新たに3チームが加わり、6チームが活動することになる。

 定例会終了後、今度はNPO法人「ドリーム・エナジー・プロジェクト」(DEP)の設立総会が近くの中華料理店にて開催。NPO法人の理事長は内海智子さん、副理事長が内海邦一さん。私は理事として参加する。このNPO法人の発足も、Beautiful Sundayにふさわしい快挙である。

 DEPの事業としては「ドリプロスクール」というのが主たるものである。知的にハンディがある子のためのウイークエンド・カルチャースクールのことで、各分野の専門の講師によるレッスンを行う。開講科目は、ダンス、英会話、美術、書道、歌唱、写真撮影術、表現(演技力)、茶道、料理、などである。それに加えて、これまでは内海智子さんが個人的に務めていた「ぷれジョブ藤沢」の事務局機能をDEPが担うことになる。

 ダウン症の隼吾君を得たことから、内海さん夫妻はいろいろなことをやって来られた。今度は、一年前に始めたドリプロスクールを、NPO法人の事業として正式に位置づけて活動することになる。経済的にも、経営的にもとても厳しい中での活動であり、その心意気に頭が下がる。私としても、微力ではあるが、応援したい。


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