浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 5月第4週分          

2014.5.24(土)

新聞を読めよ

 今日も朝から晴天。気持ちのよい五月の朝が続く。ラジオ体操では、木の蔭になる位置を占めているが、その蔭が濃くなっている。新緑の勢いが蔭を作っている。紫外線対策には上乗である。思い切り身体を動かしても、汗は出ない。最高の気象条件を五月の風はもたらしてくれる。

 昨日から手がけた特別講義の準備が完成した。SFCの金子郁容教授から依頼されて、明治大学の経営学部3、4年生に「公共ガバナンス」の科目の中で特別講義をする。テーマは「地方自治は民主主義の学校」というもの。地方自治に興味がない、知識がない学生にもわかるような講義になるように、「書き下ろし」のパワポを作成した。明治大学の学生がどんな反応をするか楽しみである。

 昨日の朝刊であるが、朝日新聞に集団的自衛権について新聞社説はどう扱ったかの記事があった。これが興味深い。在京6紙では賛否が割れる。朝日、毎日、東京が行使容認に反対、産経が賛成である。読売、日経は「その他」となっているが、日経は中立で読売は賛成に近いように読める。地方紙では、北海道新聞、信濃毎日新聞、京都新聞、沖縄タイムスがいずれも明確に反対を打ち出している。

 神奈川大学でも、慶応大学でも、「新聞を読めよ。社説も読めよ。新聞各社で姿勢が違うことにも留意せよ」と、授業で何度も学生に説いてきた。こんな比較表は、まことに興味深いではないか。そして、地方紙のほうが、反対論調が明確なのは、中央の政治と距離がある地方だからこそというのにも気がつくだろう。それにしても、「国論を二分して」という問題であることが、新聞論調の違いからもはっきりしている。5月17日の日記でも書いたが、国政におけるこういうissue(論点)は、結構珍しい事象であることを再度強調したい。学生諸君、新聞を読めば、こういった議論をリアルタイムで体験できるのだよ。歴史の証人になるのだよ。


2014.5.23(金)

「吉田調書」の衝撃

 昨日はゲリラ豪雨に見舞われた横浜。今朝もその再現となるのを懸念して、今朝の散歩には大きめの傘を持ってでかけた。これは全くの杞憂であり、清々しい天気の中での散歩とラジオ体操を楽しんだ。昨日のニュースで、「ウオーキングで認知症が予防できる」と言っていた。楽しみながら、予防ができるなら、結構なことである。

 福島原発事故発生当時の福島第一原発所長の吉田昌郎氏が政府事故調の調べに答えた「吉田調書」というのがある。政府はこれを開示しない方針である。ところが、朝日新聞は、この「吉田調書」を何らかの方法で入手した。その内容が、連日、紙上で報道されている。

 今朝の記事では、驚くべき真実が書かれている。事故発生直後、全部の交流電源が喪失した。その際に、原子炉に冷却水を注入する装置であるIC(非常用復水器)に水を補給すれば、原子炉を制御できる。しかし、実際にはICへの水の補給は行われなかった。吉田氏が「ICのコントロールの仕方を知らなかった」からである。これは吉田氏のミスであり、それが炉心融解(メルトダウン)につながった。だが、それは避けられないミスであり、吉田氏個人は責められない。政府事故調の報告書では「訓練、検査も含め、ICの作動を経験した者は発電所内には誰もいなかった」という。「人間の能力の限界を踏まえた対応策が用意できないなら、原発再稼働への不安はぬぐえない」と宮崎知己記者は記事をまとめている。

 安全性の確保は物理的なものだけでは不十分である。原発を扱う人材に、原発を正しく制御する能力が備わっていなければならない。「吉田調書」を読むと、そこが万全でなかったことが、被害を甚大なものにしたことがわかる。泉田裕彦新潟県知事が、「福島原発事故の原因、実態が明らかでない中で、原発の安全性を論じることができない」という趣旨のことを述べているのは、まさに正論である。それにしても、ことここに至っても、政府が「吉田調書」を開示しない方針(菅官房長官)なのは、理解に苦しむ。


2014.5.22(木)

大飯原発運転差し止め判決

 3日ぶりの散歩に勇躍家を出る。外に出れば、五月のお散歩日和である。紫外線も強い。体調は最高。こうやって散歩もラジオ体操も元気にできることの幸せを感じながらの五月の散歩。一年中で一番美しい季節を満喫する。

 3週間ぶりの受診のため、勇躍家を出て、築地のがんセンターへ。待合の廊下で、富士市からの山本けいこさんに会う。富士市からは2時間近くかかる。交通費も多額にかかる。「他に行けないからね、ここに来るしかないのさ」と筋肉痛がよくなった山本さんは笑う。次に、仙台からの小池さん夫妻に会う。毎週仙台から通うのは大変だが、まだ東北大学での受診は許されないから仕方がない。山本さんも小池さんも、同病の友である。白血病の中でも、最も難知性が高く、致死性も高いATLを克服できたのは、三人とも、同じ良き医療機関と同じ良き医師群に恵まれたから。そのことに感謝しつつ、今は田野崎隆二医師の診察を定期的に受ける身である。

 検査の結果、診察の結果は、異常なし。田野崎先生から、「いいですね」と言われて、診察室を出る。帰り際に、田中君代さんに会う。彼女も、ATL Survivorである。みんな順調に経過しているのがうれしい。

 昨日の福井地裁の判決には驚いている。「大飯原発の再稼働は認めない」、福島原発事故後、原発の運転差し止め判決は初めて。樋口英明裁判長はよくぞ判断した。「生存を基礎とする人格権は法分野において最高の価値を持つ」とよくぞ判示した。「原発の稼働がコストの低減につながる」といった議論は、「電気代と住民の安全は同列で考えるべきではない」との論で一蹴される。福島原発事故を経験した国民にとっては、素直にうなずける論理であり、判決である。地震国である日本では、ほとんどの原発は再稼働できないことになる。政府としては、絶対に認められない判決である。関電は間違いなく控訴する。上級審では、十中十一この地裁判決は覆るだろう。そうだとしても、この判決のもたらす意義はとてつもなく大きい。


2014.5.21(水)

ゲストが計4人も

 水曜日は、神奈川大学授業の日。3時限「障害福祉論」ゼミのゲストは、大塚由紀子さん。パワポを使って、障がい者の就労支援の実際を説明してもらった。大塚さんの活動はFVP株式会社を使ってのものである。今回のゼミでは、就労支援のテーマは初めてだったので、学生は新鮮な気持ちで大塚さんの話を聴いていたようである。

 4時限の「地方自治論」でもゲストを迎えた。「地方議員登場」ということで、小川顕正(川崎市議会)、藤野英明(横須賀市議会)、松浦芳子(東京都杉並区議会)の3議員に登場いただいた。全員話上手で、歯に衣を着せぬ率直な物言い。これが学生には受けた。「議員なんて偉そうな人たちばかりかと思っていたが、とても気さくなので考えを改めた」といったコメントが多かった。「面白かった。また、やって欲しい」という要望も多かったが、そうはいかないよ。次回からは、また、あまり面白くない私の授業に戻る。


2014.5.20(火)

銚子連絡道路整備促進地区大会で講演

 千葉県旭市のいいおかユートピアセンターで開催の「第16回銚子連絡道路整備促進地区大会」で基調講演。東京駅から「特急しおさい5号」に乗り込む。これが成東までは特急で、それ以降は普通電車になり飯岡駅で下車。各駅ごとに、高校生がわんさか乗り込んでくる。この高校生たちは卒業後、ほとんどはこの町に残らない。いずれこの町に戻ってくるのだろうか。実は、そんなことが、今日の講演のテーマである。

 5月8日に「日本創成会議」(増田寛也代表)が公表した試算では、銚子市と匝瑳市が「消滅可能性都市」にあげられている。両市とも、2040年に若年女性(20歳-35歳)人口が50%以上減る見込みである。「この大会は、16回もやっているのに、まだ道路が完成しない。まごまごしていると、道路ができる頃には、町がなくなっているということになりかねない」と言って講演を始めた。テーマは「魅力ある新しいふるさとづくり」である。「だから、ふるさとづくりが大事」ということで論を進めた。初めてのテーマだが、なかなかうまくいったと自己評価。

 帰宅すると、プロ野球交流試合の初戦、楽天対横浜ベイスターズ。じっくり見てしまったが、2対3で負け。これで楽天は5連敗。どこと戦っても、勝てる気がしない。疲れがどっと出た。


2014.5.18(日)

川崎市自閉症協会の社団法人化

 今日もBeautiful Sunday である。天気が素晴らしいのはいいのだが、紫外線が強いのは困る。今朝の散歩には、「頭と顔全面被い型帽子」を着用する。これで紫外線防止にはなるのだが、呼吸がやや苦しい。何といっても、外見がおどろおどろしい。夜にこの格好してコンビニ周辺を歩いていたら、間違いなく警察官による職務質問を受ける。朝は、すれ違う人の奇異なまなざしを受ける。それでも、紫外線防止のためには、必要な帽子である。

 午後から、川崎市の高津市民会館会議室で開催の一般社団法人川崎市自閉症協会の設立総会に出席。これまで、川崎市自閉症協会として長い間活動してきた団体を正式に社団法人化するための総会である。中身に変わりはないが、対外的には社団法人のほうが責任も明確であり、活動しやすい面はある。その理事に私も名を連ねることになった。理事をお引き受けしたのは、以前から川崎市自閉症協会の明石洋子会長には、ひとかたならぬお世話をいただいたことだけでなく、会の活動がとても活発であることに共感しているから。今後は、理事の一人として、協会の発展のため微力を尽くしたい。      


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