浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 8月第3週分           

2014.8.16(土)

エルヴィス・プレスリーの命日に

 正月と盆の16日は、地獄の釜の蓋が開く。この日は、地獄の鬼でさえも罪人の呵責を休む。だったら、この世の人間もみんな仕事をやめて休もうということになる。だから、私も予定していた仕事を休むことにした。  休んで何をするかといえば、エルヴィス・プレスリーの曲を一日中聴き続けるのである。1977年8月16日は、エルヴィスがこの世を去った日である。享年42歳。今日一日は、エルヴィスを偲び、エルヴィスの歌に魂を捧げる。

 昭和37年(1962年)仙台市立第二中学校三年生の夏、仙台市東一番町の三立楽器店の店内に流れる「夢の渚」(Follow that dream)に心が浮き立った。歌っているのがエルヴィス・プレスリーと知ってから、エルヴィス追っかけが始まる。その後しばらくは、1950年代の作品ばかり聴いていた。いまだにこの頃のエルヴィスこそ最高という「50年代礼賛派」である。

 宮城県知事時代に、地元仙台のコミュニティFM「ラジオ3」で「エルヴィス・プレスリーの曲しかかけない、エルヴィス・プレスリーの曲の話しかしない」という「シローと夢トーク」という番組で7年間DJを務めた。2000年には、全国の熱狂的なエルヴィス・ファン30人と「メンフィス・ツアー」に参加し、何千人もの世界各国からのエルヴィスファンとともに、自宅グレースランドのお墓にお参りをした。

 思い出は尽きない。人生でエルヴィス・プレスリーを知ったことの幸運を思いながら、歌を聴き続けよう。


2014.8.15(金)

69回目の終戦記念日

 今日は終戦記念日、明日はエルヴィス・プレスリーの37回目の命日、そして18日は父の34回目の命日である。この時期、亡くなった人たちのことを思う日が続く。

 69回目の終戦の日に、戦没者追悼式が日本武道館で開催された。一年一年、出席する遺族の年齢は上がっていく。直接の遺族の最年少は69歳である。69年が過ぎても、遺族の悲しみは深い。日本人全体も戦没者のことは忘れない。追悼式は無宗教で行われ、天皇皇后両陛下がおことばを述べる。両陛下がそろってのご臨席であることに意義がある。我々国民も戦没者のことを忘れないというだけでなく、不戦の誓いを心に刻む大事な機会である。すぐ隣の靖国神社には「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバー83人が、全員打ち揃って参拝した。毎年書くのであるが、参拝は個人の自由であるが、全員一緒に集団で参拝するのは、一種特別の意味を持ってしまう。そのことが気になる。  


2014.8.14(木)

お盆休み

 お盆の時期の首都圏は、人も車も少ない。お店もお休みが多い。築地のがんセンターはお休みではないし、患者もやや少なめという程度である。そんな中で3週間目の受診をする。血液検査の結果では、クレアチニンの値が1.24と正常上限を超えているのは要注意だが、その他は異常なし。この調子を維持していきたい。  日記もお盆休み。今日はこの程度で。


2014.8.13(水)

8月は氷屋走

 今朝のラジオ体操に、しばらくぶりで藤崎さんの姿があった。藤崎さんは岸根公園でのラジオ体操の創始者の一人である。80歳超なのだが、そうとは見えない元気さでずっと皆勤賞だった。すぐに「藤崎さん、どうしてたんですか」と訊いたら、「商売がめちゃくちゃ忙しくて」という返事。藤崎さんは、神奈川大学の近くで氷屋さんを営んでいる。この暑さで商売繁盛し過ぎたということらしい。ほかの仲間も口々に「どうしたの、心配してたよ」と声を掛ける。「体重5キロ減ったよ」と答えながら、ラジオ体操を元気にこなす藤崎さん。よかった、よかった。それにしても今夏の暑さの影響は、こんなところにも出るのかと改めて感心する私。12月が師走なら、8月は氷屋走だ。

 今日は一日中家に籠って、神奈川大学の「障害福祉論」ゼミの学生レポートにコメントを付す作業をやっていた。ゼミは通年開講であり、成績評価は学年末に行う。前期のレポートは中間評価であり、本番評価は学年末のレポートが対象である。なにしろ履修生は全員2年生で、ゼミは初めて、レポート作成も初めてである。今学期の中間レポートには、正式な評価はしないにしても、最終レポート作成に向けての練習の意味がある。私としては今回のレポートを仔細に見てやって、「こんな書き方では、本番では通用しないぞ」というメッセージを個別に伝えることにした。

 「一日中家に籠って」はいたが、途中、甲子園の高校野球、県立利府高校対県立佐賀北高校の試合を一心不乱に見ていた時間は作業ストップである。24人分のレポートが目の前にあるが、そのうち4人分しか消化できなかった。利府高校が4対2で1回戦突破したのだから、それでいいではないか。


2014.8.12(火)

新しいテレビ

 新しいテレビが届いた。居間のテレビが1週間前に故障した。スイッチを入れても画面が出てこない。3万円位で修理できそうという話で修理に来てもらったが、それ以上の修理代のかかる故障ということが判明。直してもらっても、7年選手の老朽テレビで、またいつ故障するかわからない。それなら買い換えるほうがいい、ということになった。届いたテレビは、元のテレビとほぼ同じ規格のものだが、7年前の半分以下の価格である。この期間の値下げは急激であった。

 居間にテレビのない1週間だった。食事の時にテレビがないのが「寂しいね」と家族で言い交わす。それだけテレビに生活を支配されている図であった。1週間のご無沙汰で、2代目(2台目)テレビくんがやってきて、生活が元に戻った。静寂で家族同士の会話が活発だった1週間をなつかしむことはなく、「やっと普通に戻ったね」ということである。少し反省しながら、ホッとしている私たち。

 夏の全国高校野球大会が2日遅れで開幕した。結果を見るだけでも興味深い。開幕直後の第1試合で龍谷大平安が春日部共栄に敗れ、春夏連覇の夢が消えた。石川県大会の決勝戦で8点差を9回裏に逆転して甲子園出場を決めた星稜高校が、今日の第2試合に出場。静岡相手に逆転逆転の連続の末、5対4で逆転勝ち。「ルーズベルトゲーム」(池井戸潤)を昨日読んだばかり。野球では8対7の試合が一番面白いと言ったのが、フランクリン・ルーズヴェルト米国大統領という逸話からの命名だが、星稜の試合はそれに近い。

 対戦相手の静岡高校についても一言。全国有数の進学校である。古い言葉だが、文武両道である。静岡高校は1回戦で負けてしまったが、県立高校ではわが宮城の県立利府高校が出場している。明日の第3試合でこれまた県立の佐賀北高校と対戦する。どちらが勝っても、県立高校の2回戦進出となる。県立高校がどこまで残ってくれるか。がんばれ。


2014.8.11(月)

朝日新聞の従軍慰安婦問題検証記事

 強風に雲の流れが速い。そんな朝、8月初めての散歩に出かける。体調が悪いわけではないので、身体が軽く感じられる。ラジオ体操で思い切り身体を動かすのが快い。やはり、散歩はいい。みんなと一緒のラジオ体操は楽しい。

 朝日新聞の「患者を生きる」の追加取材で石川雅彦記者が自宅へ。前回の取材は1ヶ月以上前である。そのときは、掲載は8月という話だったが、現在の予定では9月末である。中身の濃い内容にするために時間が必要なのだろう。それもあって、今日の追加取材はみっちり1時間半。時間がかかるのは、私が闘病という本題から離れた話題を次々と話すせいもある。石川記者が記事にまとめるのに難儀するだろう。

 その朝日新聞。このところ連日、各マスコミで批判、非難されている。きっかけは、8月5日、6日の朝日新聞がそれぞれ2面ずつ使って展開した「慰安婦問題を考える」という検証記事である。この記事の中では、戦争中、韓国済州島で軍隊による朝鮮人女性の強制連行があったという故吉田清治氏による証言を虚偽として記事を取り消した。また、慰安婦と女子挺身隊を混同した報道があったことを認めている。

 このことに関して、論客が激しい非難を浴びせている。「吉田証言を32年間も真実と言い続けた」、「このような誤った記事により、韓国政府のみならず、国際機関も日本は性奴隷を作る野蛮な国家という評価をしており、このことは日本の国益を著しく残った」というのが、中心的な論調である。今朝のTBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」に電話出演した桜井よしこさんは「朝日新聞は一旦廃刊とし、出直すべきだ」と厳しい口調で弾劾していた。

 確かに、朝日新聞の罪は重い。問題は、なぜこういった誤報が続いたのかの原因究明とこれからどうすべきかである。前者は、「朝日新聞的正義感」(悪い意味で言っているので念のため)であり、後者は2日間の検証記事全文を英訳して各国に送ることである。朝日新聞は、既に手を打っているかもしれない。その効果は限定的ではあろうが、今すぐにできることとしては、大事なことである。  


2014.8.10(日)

大学の授業と池井戸潤の作品

 このところ、池井戸潤の作品を2作読んだ。いちいち感想文のようなものを書くつもりはないのだが、コメント程度ならいいだろう。

 「鉄の骨」は公共事業の談合の話である。「地方自治論」の授業で、「談合は必要悪ではない。談合は犯罪である」ということを何度も強調した。学生がこの本を読んだら、「浅野先生の言うとおりだ」と納得することだろう。

 「空飛ぶタイヤ」は、三菱自動車(作中では「ホープ自動車」)のリコール隠蔽事件を描いている。4年前にリコール隠しが露見して、経営的に大打撃を受けたばかりの会社が、再び同じ過ちを犯した。企業の危機管理とコンプライアンスについて、慶応大学SFCでの講義を思い出した。2002年、横浜市港北区で、トラックの構造上の欠陥により、走行中にはずれたタイヤが子連れの母親を即死に至らしめた。「整備不良」による事故として責任を負わされた運送会社が、三菱自動車ととことん闘い、最後は勝利する。実話を元にした迫力がある。最後は涙が止まらない。さすが池井戸潤の小説である。すごい。

 台風11号が本土上陸。歩みが遅く、各地で被害が発生している。台風の東側の横浜でも、断続的に大雨が降っている。これも異常気象のひとつなのだろうか。


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