浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 6月第4&5週分            

2015.6.29(月)

もう一度書いておきたいこと

  自民党国会議員の若手議員からなる「文化芸術懇話会」という勉強会での一部議員によるマスコミ批判の発言について、もう一度書きたくなった。それは、先ほど将基面貴巳著「言論抑圧」(中公新書)を読了したからである。

 矢内原忠雄東京帝大経済学部教授が昭和12年9月号「中央公論」に発表した「国家の理想」の論文(戦争に突き進む当時の政府を厳しく批判)などが学内や文部省に問題視され、矢内原教授は教授職を辞するやむなきに至った。これが「矢内原事件」である。これを一つの契機として国家権力の言論抑圧、言論弾圧は激しさを増した。その矛先は出版社にまでも及んだ。

 私を驚かせたのは、本書の次の部分である。(212頁) (以下一部引用)1941年2月、内閣情報局と中央公論社編集幹部との懇談会において、情報局側は自由主義的な編集方針から根本的転換を考えるよう中央公論社側に促した。嶋中雄作社長はこれに対し、「命令さえ下せば国民がいうことを聞くと思ったら、それは間違いだ」と発言した。すると、情報官鈴木庫三少佐は怒鳴りだし、「この際に君はなにをいうか。そういう考えを持っている人間が出版界にはびこっているから、いつまでたっても国民は国策にそっぽをむくのだ。(中略)そういう中央公論社は、ただいまからでもぶっつぶしてみせる!」と息巻いたという。 (以上引用了)

 いつの時代も、自分たちに都合の悪いことを言う一部マスコミは、為政者、権力者側の不興を買う。権力者のマスコミ嫌いは仕方がない。しかし、それを口に出す、さらには抑圧の行動に出るのは別問題である。いわば力のある猛獣が牙をむき出しにするのだから。私たちは、自民党若手議員の勉強会で、一部議員の牙の一端を見てしまったのではないか。

 今日は、楽天の試合もサッカーの国際試合もない。テニスのウインブルドン大会1回戦、錦織圭出場の試合結果を確認してから寝ることにする。日本中が寝不足になるだろうな。


2015.6.27(土)

安保法案成立に黄信号

  夜来の雨は、散歩に出かける時間帯には上がっていたのだが、出鼻をくじかれた感があり、散歩は中止した。「雨は上がったが、下はびしゃびしゃだしな」と、中止の言い訳を自分自身にしている私。「天候、体調が許せば、毎日散歩とラジオ体操はやるべし」という「掟」を自分に課しているところがある。「散歩は義務ではない、楽しみでやるものだ」という「理屈」も信奉している私である。二つの原則の間で揺れている。

 安保法制賛成と反対の間で揺れているように見える今の国会である。数の上から圧倒的に賛成派有利と見られていた国会情勢であるが、このところ賛成派が反対派に押され気味である。それも賛成派の失策によるところが大きい。

 最初の失策は、6月4日の衆議院憲法審査会で自民党推薦の長谷部恭男早稲田大学教授が「集団的自衛権の行使容認は違憲」と明言したこと。そして一昨日のこと。自民党の若手国会議員の勉強会で、安倍晋三首相と親しい作家の百田尚樹氏が「基地の地主は大金持ち。基地が出て行くとお金がなくなるから困る。沖縄は本当に被害者なのか」と発言した。さらに、議員の質問に答える形で「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と述べた。安保法制とは直接関係ない発言だが、こんな「暴論」が自民党議員の勉強会の場で発せられたことは賛成派にとっては大きな痛手である。

 国会内の数の上では安保法案の賛成派が多数であるが、国民の中では「安保法案に異議あり」とするのが多数である。上記の失策、失言で、「異議あり派」は勢力を増やすことだろう。今国会での安保法案の成立に黄信号が灯った。政府側がもうひとつ失策を犯せば、黄信号は赤信号に変わる。


2015.6.25(木)

診察で疑問氷解

 朝から東海道線(上野東京ラインだってさ)に乗って新橋駅、そこから築地のがんセンターへ。いつものことながら、患者(そして元患者も)で一杯である。こんなにがん患者がいるのに、今更ながら感心する。元気そうな人が大半である。こういう光景を見たら、新参のがん患者は「がんは治る」ということを実感して安心するのではないかな。そんなことを思いながら、採尿、採血を済ます。

 1ヶ月ぶりの田野崎隆二先生の診察では、すべて「異常なし」。「最近、疲れやすいのですが」との私の発言に、田野崎先生からは「それはセレスタミンの服用を止めているからかもしれません」と返ってきた。セレスタミンを飲み続けている間は、副腎は副腎皮質ホルモンの分泌を休んでいる。セレスタミンはステロイド剤だから、同じステロイドの副腎皮質ホルモンを分泌する副腎は、「お役御免」を決め込んでいる。田野崎先生によれば「サボっている」。ステロイド(セレスタミン錠剤)の服用を止めても、副腎は副腎皮質ホルモンの分泌をすぐには再開しない。「今がその時期です」と田野崎先生は言う。

 元気がないときにステロイドを服用すると元気が回復する。今はその逆に、副腎からも錠剤からもステロイドの供給がない時期なので、元気がないということになる。「ああそうか、そうなのか」と合点がいった。元気が出ないから散歩は休もうかなと思ったこともあったが、田野崎先生によれば、適度の運動は副腎の動きを活発にすることにつながるらしい。であるならば、散歩は休まずに続けたほうがいい。それで「疲れた」ということがあっても、それはステロイド不足のためとみなそう。「元気をつけようとしたら、セレスタミンを試しに飲んでみるという手もあります」と田野崎先生。そうか、それはありだな。田野崎先生は素晴らしい。頼りになる先生だと改めて実感した今日の診察であった。


2015.6.24(水)

神奈川大学で授業とゼミ

 朝、目が覚めたら、6時過ぎだった。無理すれば、ラジオ体操に間に合うのだが、そんな無理することもなかろう。そんなことを寝ぼけ頭で考えていた。結局は、寝続けることに。身体がしばしの休憩を求めていたのかもしれない。こんな朝があってもいい。

 神奈川大学の授業の日。3時限の「地方自治論」は自治体の危機管理がテーマ。自然災害への対応としての危機管理と、組織の不祥事への対応としての危機管理を説明した。不祥事については、県庁時代の食糧費問題などについて、経験者として話をした。どうしても自慢話風になってしまう。私自身にとっても、ぎりぎりの危機管理ではあった。

 4時限の「障害福祉論」ゼミは、グループワークの実質第一回。今学期のグループワークは今日を含めて4回しかない。短い時間でなんとか報告をまとめ発表まで持っていくのがグループワークである。4つのグループごとに、進み具合には違いがあるが、最後はなんとかまとめてくれることを期待している。ゼミは、講師(私のこと)やゲストの話を聞いているだけでは成り立たない。自分たちで調べ、考え、発表するのが大事。グループの中での軋轢もある。それを乗り越えて成果を出す。その過程で鍛えられるものがある。これがグループワーク、そしてゼミの醍醐味である。そんなことを考えながら、学生たちの動きを見守っている。


2015.6.22(月)

今日は夏至

 今日は夏至。一年中で昼の時間が一番長いらしい。夜が明けるのが早い。ここ横浜の日の出は4時27分。朝方は、梅雨の晴れ間で青空が目に染みる。空気も乾燥していて、爽やかな気持ちで散歩とラジオ体操を楽しむ。

 午後から河北新報の若林雅人記者が来宅。「最近の仙台市の印象、仙台市をどうするか」という取材。仙台市役所の停滞ぶりへの批判をベースにした取材のように感じた。私としては、知事時代の思い出話の中で、仙台市政との関係を語らしてもらった。

 夜は、浦安市の社会福祉法人「ぱーそなる・あしすたんすとも」の人たちと中華街で会食。浦安から車を連ねて10人が、横浜市栄区の社会福祉法人「訪問の家」が運営する生活介護事業所「朋」の視察にやってきた。視察を終えて、有志との会食となった。「とも」の「障がいの種別や年齢を問わない24時間、365日の在宅介護」を支えているのは、西田良枝理事長はじめスタッフの皆さんの信念と熱意であることが伝わってくる。横浜の日の入りは17:01。夏至の短い夜を意義深く過ごすことができた。


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