浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 9月第3週分      

2015.9.19(土)

安保法案が可決成立した日に

 未明に参議院本会議で安保法案が可決成立。衆参両院とも与党多数であるので、よほどのことがない限り、今国会で法案成立は既定のことである。委員会での強行採決も、首相答弁のわかりにくさも、首相側近の「法的安定性は関係ない」発言も、憲法学者の「法案は違憲」発言も、国会外でのデモ継続も、よほどのことではなかったということになる。

 突然、学生の頃に見た映画「真昼の暗黒」のラストシーンを思い出した。山口県で起きた老夫婦強盗殺人事件「八海事件」で、被告人が高裁で死刑判決を受ける。正木ひろし弁護士が冤罪事件として裁判所相手に闘う。被告人が「まだ、最高裁がある!」と叫ぶのがラストシーンである。安保法案成立を見て、このセリフが蘇ってきた。  そうなんだ。安保法案は国会を通ったが、まだ最高裁がある。最高裁判所には違憲立法審査権がある。集団的自衛権の発動として自衛隊員に派遣命令が出たときに、命令に背けば懲戒処分がある。その処分撤回の訴えを起こせば、命令の根拠となる法律が憲法違反で無効との裁判所の判断が出る可能性がある。別な形でも、今後、最高裁判所が法律の違憲性を問う場面が出てくる可能性は十分にある。「まだ、最高裁がある!」。

 そんなことを考えている同じ日に、妻と浜松町の自由劇場で劇団四季のミュージカル「コーラスライン」を観に行った。今までに、ブロードウエイで2回、ワシントンのナショナル・シアターで1回、劇団四季でも1回、それに映画版も数回見ている。今回はまた特別だった。開幕して最初の場面で、何故か涙ぐんでしまった。その後も、ふいに涙ぐむ場面があった。キャシーが一人で踊るところでもグッときてしまう。「ワン」のメロディーに乗っての群舞の場面は何回かあったが、その度に涙ぐんでしまう。コーラスラインに残るメンバーを選ぶオーディションという設定が、演じている一人一人の四季のメンバーのストーリーそのものに思えてきて、感情移入をしてしまうのだろうか。ミュージカルとしての出来の良さにも感激する。ストーリー性がある。人生のあり方を考えさせる。ダンス、特に群舞が素晴らしい。とにかく、素晴らしい作品である。世の中いろいろあっても、幸せな気持ちにさせてくれる。劇団四季のみなさん、ありがとう。


2015.9.18(金)

安保法案大詰め

 民主党など野党の必死の抵抗も時間稼ぎにしかならず、安保法案は成立の瞬間を迎えようとしている。時間稼ぎのさまざまな手段が講じられた。参議院本会議での問責決議案は、発言時間を10分に制限する動議が通ったために、印刷のための1時間ほどの時間を加えても、1件1時間半程度で処理されてしまった。衆議院本会議での内閣不信任案については、民主党の枝野幸男幹事が2時間も演説した。内閣不信任案決議案が否決され、再び参議院本会議での攻防へ。鴻池特別委員長の問責決議案が出され、その処理に時間はかかるので、法案の採決は明日に持ち越すだろう。国会外のデモの波は引かず、法案反対の声はやまない。これはすごいことである。

 こういった俗世間の喧騒とは別に、久しぶりに良い小説を読んだ。敞子姉に薦められた乙川優三郎の「脊梁山脈」(新潮社)である。大陸から復員してきた主人公矢田部信幸が木地師の仕事と出会い、木地師の長い歴史を追い求めていく中に、生きがいをみつけるという物語である。性格も生き方も対象的な二人の女性との関わりの中で、自分の生き方を確立していく。文章のうまさに圧倒された。日本の歴史、地理についての博識ぶりに驚く。風景の描写、女性との交流に詩情あふれるものがある。著者初めての現代ものということだが、時代小説も読んでみたくなった。


2015.9.17(木)

安保法案が参議院特別委員会で可決

 昨日から今日にかけて、参議院特別委員会は、委員会室外の野党議員の物理的抵抗もあり、理事会が開催できなくなった。それでも、午前中には、委員会が開会された。開会してすぐに、鴻池祥肇委員長の解任動議を提出し、野党委員から趣旨説明が入れ替わり立ち替わり行われた。民主党の福山哲郎幹事長代理が40分の演説、大塚康平参議院議員は30分の演説を行った。私は、NHKテレビの中継で、山本太郎議員の演説の途中から聴いたが、安保法案の持つ問題点をわかりやすく論じているのが印象に残った。 演説中、与野党の委員から野次が飛ぶ場面はなかった。静粛にするようにという注意が事前に各党レベルでされていたのだろう。

 山本議員の演説が終了したところで、鴻池委員長の解任動議の採決が行われ、反対多数で否決。それを受けて、委員長席を離れていた鴻池委員長が席に戻ったところで、与野党の議員が委員長席を取り囲み、大混乱となった。この模様も実況中継で見ていたが、その混乱の中で、鴻池委員長は質疑打ち切り、採決の発声をしたとされているが、そんな声はまったく聞こえなかった。それでも、賛成多数で可決されたというのは、これまでも何度か見た茶番である。民主党の福山幹事長代理は、「採決は認められない」とNHKに語っていた。

 夜8時過ぎ、参議院本会議が開会。民主党は中川雅治参議院議院運営委員長の解任決議案を提出したが、反対多数で否決された。さらにその後、関係大臣の問責決議案、安倍総理大臣の問責決議案を提出し、参議院での採決を引き延ばすことになるので、今日中の法案成立はないだろう。明日には、衆議院に安倍総理大臣の不信任案を提出することになるので、これに決着がつくまでは参議院での採決はない。

 国会外では、雨の中、今晩も法案廃案を叫ぶデモの人波が押し寄せている。こんなデモはこれまで見たことない。仕事を終えたサラリーマン、高校生を含む学生、政治に無関心と思われていた母親たち。参加者の顔ぶれも、これまでのデモでは見られない。法案の行方がどうなろうとも、こういったデモのことは、我が国の民主主義の歴史に刻まれることになるだろう。  


2015.9.16(水)

安保法案の参議院委員会での採決?

 午前中、近所の理髪店へ。今まで通っていた美容院が、何の前触れもなく、突然閉店となり、困っていた。私と同年代ぐらいのおばさん一人でやっている店である。初対面の私をどこの誰か知っている。「おじいちゃん、ずっとここに来ていたんですよ。おばあちゃんお元気ですか」と始まって、しゃべるしゃべる。「毎週火曜日の定休日には、国会前のデモに近所の仲間を誘って行ってるのよ。昨日は、菅直人さんに会って握手してきた」という。「しゃべっていても、髪の毛のほうにも集中してください」と時々ダメ出ししないと、いつまでもどこまでもしゃべっている。お父さんの代からここで50年以上やっているだけあって、この辺のことは何でも知っている。昔ばなしで、六角橋商店街の最盛期の頃を「人が一杯でスリが出たわよ」と、髪の毛を切りながら話す。

 そのおばさんも怒っていた安保法制の国会審議。私も怒っている。今日は、午後1時から新横浜駅近くのプリンスホテルで地方公聴会が開催された。ホテルのまわりは法案成立に抗議する人たちが集結し、多数の警官を動員した厳戒体制がとられた。その人波は国会前へと移動し、今日の国会審議の行方を見守る。徹夜もいとわないという人もいて、その熱意ははんぱでない。その国会審議は、委員会の開会が遅れており、今日中の採決はない。未明の採決になるのだろうか。


2015.9.14(月)

ゼミの納涼会

 思い立って、書斎の書棚の整理をしているうちに、昔の手紙とか文書を読みふけってしまい、作業が進まない。闘病時の日記とか、「運命を生きる」への読後感想文とか、慶應大学SFC時代の記録とか、出版パーティーの様子とか。写真類もあって、ついつい見てしまう。これも老化減少の一断面かなと思いつつ。

 夜は、神奈川大学の障害福祉ゼミの納涼会。自宅から1分の「世界長」という居酒屋で、前回に引き続いての飲み会。鈴木康友君が動いて、こういう会を催す。思い起こせば、そういう役回りを自分がやっていた時代もあった。ゼミ生20人の半分が集まり、わいわいがやがや。大学で授業をする、ゼミをするということは、こういうことがあるということ。そういう集まりが嫌いでない私にとっては、うれしい時間である。


2015.9.13(日)

週末の出来事

 昨日は午後から、慶應大学SFC時代の教え子、峯岸宗弘君が来宅。「教え子」といいながら、IT技術が得意な峯岸君から、私が助けてもらうことも多かった。この日は、同じ教え子の守屋茂樹君の結婚披露宴で使うビデオメッセージを撮るためにやって来た。守屋君の結婚式をドタキャンせざるを得なくなったための窮余の一策である。ビデオ撮りが済んで、次は妻のパソコンの不具合を診断・治療してもらう。これまでも、パソコンに不具合があると、「峯岸君、教えて」と電話で指導をしてもらっていた。電話では埒が明かない不具合には、出張診断をお願いすることがあった。この日は、不具合というよりは使い勝手をよくしてもらうことを頼んだ。それも簡単にできたが、ビデオ撮影もあり、結構な時間になっていた。ということで、夕食も一緒にしてもらうことになった。美味しいお酒のせいもあり、話がはずんで、楽しい時間を過ごすことができた。夜遅く、遠く浦和まで帰る峯岸君、ありがとう、気をつけてお帰り下さい。

 今日は、午前中の「ぷれジョブ藤沢」の9月定例会を終えてから、そのまま藤沢市民会館での「第2回地域活動見本市」に移動した。いきいきシニアライフ応援事業と銘打ったこの見本市は、元気で知識・経験に富んだシニアの皆さんに、地域でのさまざまな活動を紹介するというイベントである。24団体が出展しており、「ぷれジョブ藤沢」は2月の第1回に続いての出展である。

 前回の出展では、ジョブサポーターを4人もリクルートすることができた。その一人である西野久子さんも、経験者として勧誘に参加してくださった。今回も「ぷれジョブ藤沢」の唐松初男さんがパネルの作成をはじめ、最大限のお働きをしていただいた。ありがたいことである。プレイヤーを「卒業した」俊樹君もお母さんと一緒に参加してくれた。「僕の後輩のジョブサポーターになってください」という自筆のボードを参加者に見せながら、勧誘に一役買ってくれた。これでジョブサポーター候補を何人確保できたかわからないが、「ぷれジョブ藤沢」の結束を感じることができたイベントになったことを誇らしく思う。


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