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ジョギング日記 12月第2週分      

2015.12.12.(土)

軽減税率導入のどたばた劇

  平成29年4月に消費税の税率が8%から10%に上がる。その際に導入される軽減税率について、対象商品を生鮮食料品に限るとする自民党と、もっと拡大したい公明党の間で協議が続いていた。それがなんと、公明党案を全面的に容認することで決着がついた。これで必要な財源は、当初の自民党案では4千億円以下だったものが、1兆円にまでふくらんだ。

 来年の参議院選挙をにらんで、公明党をつなぎ留めておきたい官邸側と、財源難から対象拡大に慎重な自民党税制調査会。決着は、官邸側が押し切った形で公明党の言い分を全面的に認める形である。

 財源はどこからもってくるのだろうか。これで財政健全化は予定通り進むのだろうか。消費税率引き揚げの分は、すべて社会保障に使うとする「税と社会保障の一体改革」の原則はどこへいった。軽減税率で恩恵を受けるのは、むしろ高額所得者であるということも忘れられている。それもこれも、参議院選挙での公明党対策である。

 このドタバタ劇は、国民もしっかり見ている。公明党の機嫌を取り結んだのはいいが、それによって自民党支持者が離れていくことは考えていないかのように見える。次の国会では、野党からの厳しい追及が待っている。どこまで野党が突っ込んでいけるか、その保証は全く無いのであるが。


2015.12.11.(金)

ノーベル賞授賞式

  夜半からの強い雨と風が朝方まで続く。日中は気温急上昇。そんな中、大阪へ。新幹線から名古屋付近で大きな虹を見た。感動モノである。「ミヤネ屋」では、全国的な異常気象のほかに、ノーベル賞授賞式、空き家対策などが話題に。

 そのノーベル賞授賞式。1901年から始まっているのだから、今年は115回目になるのだろうか。連綿と続く歴史の重みと、盛大な晩餐会に象徴される華やかさなど、数ある世界的な賞のうちでも、ノーベル賞の権威が突出しているのを感じる。そんな賞を日本人二人が受賞するのは、なんとも晴れがましいことである。

 大村智さんと梶田隆章さん。このお二人の業績もさることながら、飾らぬ態度、ひょうひょうとして親しみやすさ、こういった人柄の良さが伝わってくる授賞式であった。この人柄の良さが、研究仲間の力の結集につながったのではないか。特に、科学系のノーベル賞には、頭脳だけでなく、人柄も受賞の条件になるのではないかと感じている。

 オリンピックで日本人が金メダルを取ると、同じ国民としてとても誇らしい気がする。愛国心を刺激される。ノーベル賞の受賞でも同じような気分になるが、それだけではない。お二人の研究の成果が、人類に福音をもたらすという感覚とともに、特に日本人にとって大きな財産となることを予感するので、さらにうれしさが増す思いになる。


2015.12.9.(水)

3万円を1250万人に配る愚挙

  今日は大学の授業日。「地方自治論」では、市町村の仕事として、障害福祉、介護保険、保育所問題、生活保護について詳しく説明した。

 政府は、お年寄りを中心に1人3万円を配る「臨時給付金」の概要をまとめた。来年の前半と後半の2段階に分け、1250万人に配るらしい。これが2015年度補正予算案では「1億総活躍社会の実現」の項目に入っており、3,400億円が計上されている。なんでこれが「1億総活躍社会の実現」に関係あるのか全くわからない。そもそも、1人3万円配って、何を実現しようとしているのか全然わからない。選挙対策?、ああ、それならわかる。わかるから怒りが湧いてくる。

 1億総活躍社会の実現で、補正予算案に盛り込まれた他の項目は、介護施設整備、介護人材確保、保育士の確保、保育所整備の前倒しである。なんだ、市町村の仕事として、今日の授業でやったものばかりが並んでいる。これは新・第二の矢の的「希望出生率1.8」、新・第三の矢の的「介護離職ゼロ」だから、「1億総活躍社会の実現」に結びつけようとする意図はわかる。だけど、「1億総活躍社会」というのが、そもそもなんのことやらさっぱりわからない。選挙対策?、ああ、それなら少しわかる。でも、なんのことやらわからないのでは、選挙対策になんかなるものか。


2015.12..8.(火)

開戦記念日に

  74年前の真珠湾攻撃、今日は太平洋戦争の開戦の日である。そのこともあって、朝日新聞1面の「戦後70年」の特集を読んでみた。

 3回連載のエピローグには「慰霊の旅 傘寿超えても」のタイトルがつく。天皇陛下は、戦後50年の1995年に長崎、広島、沖縄への「慰霊の旅」、戦後60年の2005年にはサイパン。そして戦後70年の今年は、パラオなどの各地で慰霊した。

 「戦争を忘れないように、行動でお示しになっている」と元側近は推し量るが、思いはそれだけではないだろう。今年の全国戦没者追悼式では、お言葉で「さきの大戦に対する深い反省」を表明した。反省は「国家として」ではなく、「天皇陛下個人として」と受け取れる。国家としての反省の表明なら、政治的発言ととられかねず、憲法第4条の「国政に関する権能を有しない」と矛盾する可能性がある。

 80歳を超えても慰霊の旅をお続けになる天皇陛下である。側近が高齢と体調を気遣う中で、続けることをご自分の責任とお感じになっているのではないかと、どうしても思えてしまう。

 今年の4月、激戦地パラオのペリリュー島で戦没者の碑に供花して追悼される天皇陛下と皇后陛下のお姿からは、責任感と使命感を負う厳粛な思いが伝わってきた。


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