浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 2月第3週分       

2016.2.20.(土)

議員定数の削減

 天気予報では、夕方から夜にかけて雨風ともに大荒れになると警戒を呼びかけていた。それではとても、外に出かけるのは無理だなと受け止めて、夜のミュージカル観劇をキャンセルした。実際の天気の荒れ方はそれほどでもなかった。リスクに備えるというのは、最悪の事態を想定して対処するということ。キャンセルは正解であった。

 安倍首相は、昨日の衆院予算委員会で定数削減を先送りしないと表明した。野田佳彦前首相の質問に、ここまで前向きな答弁をするとは思っていなかったので、意外感があった。その結果、衆院の定数10減が2017年中に実現する見込みが出てきた。

 このことは、歓迎すべき動きである。最高裁からも「違憲状態」と指摘されている一票の格差是正は一刻も早く実現しなければならない。格差是正ができなければ、衆議院解散ができないということもある。これはこれで、一段落だと思う。  

 私として気になるのは、定数をもっと大幅に削減しろという議論があることである。私は、衆議院議員が多過ぎるとは思っていない。衆議院議員は、さまざまな階層、地域、職種など多様性を確保する形で選ばれなければならない。そのためには、議員定数はそれなりの多数を確保する必要がある。それが民主主義の基本である。定数が多いと議員報酬の総額が膨大になることを懸念する声もあるが、民主主義にはコストがかかることを認めなければならない。レベルの低い議員がいるから、定数を減らせというのは議論が違う。レベルの低い議員を選ばないようにする、選ぶ側の対応が求められるのであって、数を減らせば変な議員が出てこないといったことではない。


2016.2.19.(金)

政務活動費の返還

 春めいた穏やかな天気に誘われて、久しぶりに昼の散歩。陽が射す中歩いていると、汗ばんでくる。短い時間だが、気分がいい。

 全国47都道府県議会の議員に支給された2014年度の政務活動費(政活費)の9.3%にあたる11億円余が返還された。朝日新聞の調査で判明した。徳島県議会の返還率34.4%は全国最高だが、これは「市民オンブズマンとくしま」の浜川健一さんが領収書の改ざんを見つけたことが発端で、徳島県議の不適切支出を次々と暴いた結果である。市民オンブズマン健在、やるじゃないか。返還率が20%を超えるのは、徳島のほかに、鳥取、標語、福井、青森の各県議会がある。

 こういうことがあるたびに、いつも思うことであるが、政活費の支出について領収書が揃っていればそれでいいのかという疑問である。政活費は、文字通り、議員の政務活動のために支給されるものである。議員の政務活動とは、議員本来の仕事である立法作業(条例案の提出)など、議会としての政策を立案するための活動である。次回選挙に当選するための活動ではない。だとすれば、その支出は、政務活動、つまり政策立案業務に資するものでなければならない。実際には、支出に見合う成果がないのは、どうしたことだろう。具体的には、議員提案の条例を成立させるという成果は、三重県議会、宮城県議会など議会活動が活発なところ以外ではほとんど見られない。

 たとえ話をする。息子の入試合格のために、親が通常の小遣いの他に、「入試突破活動費」を支給する。息子は、それで参考書を買い、塾の月謝を払う。領収書は、きっちりと親に渡す。参考書は積んどくだけで読まない。塾は欠席が続く。結果は、当然ながら、入試不合格である。活動費をもらい、「適切に」使ったが成果が出なかったということ。政務活動費のことを考えると、このたとえ話が、いつも頭に浮かぶ。


2016.2.18.(木)

丸山参議院議員のとんでも発言

 午後から、日比谷の市政会館で第10回「持続可能な地域社会と住民自治に関する研究会」に出席。今日は、新藤宗幸「分権型政策制度研究センター」長の手になる報告書案についての審議。私からは、失礼な言い方だが、「よくできています」と評価させてもらった。地方創生が、安倍政権の重要政策として提起されたことから、期せずして、「持続可能な地域社会と住民自治」という研究会のテーマにとって、格好の素材となった。報告書の中心テーマが「地方創生」ということになり、国の地方創生の進め方に対する厳しい見方も報告書には盛られている。中身について、手直しも含め議論を行い、次回、最終報告書を完成するということで研究会を終えた。

 昨日の参議院憲法審査会で自民党の丸山和也参議院議員が、アメリカのオバマ大統領が黒人奴隷の血を引いているといった発言をしたことについて、今日の衆議院予算委員会では民主党の神山洋介議員が厳しく批判した。丸山議員の発言を書き起こしたものを読んだが、感想は一言、支離滅裂。「日本がアメリカ51番目の州になるということについて憲法上どのような問題があるのか、ないのか」、「たとえば、いまアメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引く、ね。これは奴隷ですよ、はっきり言って」。発言の問題というより、こういう考えを持っている人が国会議員を続けていていいのかという問題だろう。あきれたとしか言いようがない。  


2016.2.17.(水)

法制局の情報開示拒否

 仙台で叔母(母の妹)の告別式に会葬。二人の姉に加えて、95歳の母も同行。家族葬で、とても心に残る葬儀だった。いとこ9人が久しぶりに顔を合わせるのも、葬儀ならではというところ。

 集団的自衛権に関する閣議決定の想定問答を国会が要求したのに、法制局は開示しなかったという記事が朝日新聞の一面トップである。他紙はどうだったのか、確認はしていない。法制局に限らず、各省庁をはじめとする政府機関は、情報公開については、極めて不真面目である。そもそも情報公開法の施行は2001年であり、自治体の情報公開条例の施行に大きく遅れをとった。法施行後の情報開示請求に対する対応は、決して合格点はやれない。今回の「事件」も、その一つである。開示されるべき内容が、国民にとってもとても重要なものであることから、この問題は徹底追及されなければならない。

 川崎市の有料老人ホームで高齢の男女3人が相次いで転落死した事件で殺人容疑で逮捕された元職員、介護のストレスがあったことが、とんでもない行為の原因だったらしい。被害者側から見れば、老人虐待である。つい先日、「ルポ老人地獄」(朝日新聞経済部)を読んだばかり。主に、経済的に困窮する老人の直面する「地獄」が、これでもか、これでもかと紹介されている。今回の「事件」は困窮老人の出来事ではないが、介護の劣悪さが引き起こした「地獄」ではある。


2016.2.16.(火)

企業フィランソロピー大賞贈呈式

 朝一番で日本医科大学武蔵小杉病院の耳鼻科で再診。関根医師に簡単に処置してもらい、疾患の説明を丁寧にしていただいた。こういう説明があると、患者は安心できるということを改めて確認した次第。

 昼からは、「第13回企業フィランソロピー大賞」の贈呈式へ。大賞は(株)リクルートホールディングの「ホンキの就職」に対して贈られた。企業フィランソロピー賞は、味の素グループ(寄り添うキッチン賞)、四季株式会社(こころの劇場賞)、(株)スタイリングライフ・ホールディングス(希望のステッカーアート賞)、(株)特殊衣料(生きるは幸せ賞)の4社に贈られた。贈呈役は日本フィランソロピー協会会長の私。贈呈のあとは、各社から受賞の対象となった活動について、パワポイントを使って詳しく報告される。ここが感動的なところ。贈呈式はみっちり3時間かかる。こんな贈呈式は、どこにもここにもあるものではない。

 景気回復が足踏み状態というのは昨日書いた。昨年10月ー12月の四半期の実質成長率は、前期比0.4%の減。年率換算で1.4%減である。マイナス成長の要因で大きいのは個人消費の低迷である。暖冬で冬物が売れないからという解説もあるが、それだけが理由ではない。賃上げがないので、家計の財布のひもが緩まない。自動車、特に軽自動車が販売不振らしい。

 安倍首相は「経済のファンダメンタルズは確かだ」と強調するが、それなら景気回復があってよさそうである。実態は、そうはいっていない。景気に突然の神風でも吹かない限りは、来年4月の消費税率10%への引き上げは無理かもしれない。そうなれば、財政はますます厳しくなる。財政再建など大きく遠のいてしまう。困りましたな。


2016.2.15.(月)

株価の乱高下

 昼から、築地のがんセンターで前立腺の検査。話せば長い、いろいろ面白いことがあるのだが、それは書かない。「検査は無事に終了」だけにしておく。

 検査の待合室で、衆議院予算委員会のテレビ中継を見ていた。長時間にわたる審議に安倍首相は出ずっぱりで、忍耐強く答弁しているのに感心した。電波停止、震災復興、経済対策、議員定数の見直しの問題について、各大臣も総理大臣も、穏やかに、真摯に、答弁しているのはいいのだが、野党の質問のほうが鋭さも突っ込みもない迫力不足なのには、いささかがっかりさせられた。

 今日の東京株式市場の株価は、先週末より1,069円高の16,022円。こういうのを乱高下というのだろうが、これほど大幅な乱高下は珍しい。こんな状況が続けば、毎日の株価に一喜一憂するほうがおかしいということになる。それよりも、2015年10月-12月のGDPの伸び率がマイナスという統計が発表されたのに、株式市場がこれに悲観的に反応しなかったのが不思議。不思議でもなんでもない、マイナス成長は織り込み済みということなのだろうか。

 それにしても、日本の景気回復は、「もうすぐ、もうすぐ」と言われながら、逃げ水のように先延ばしになっている。バブル崩壊後の景気回復についても、同じようなことがあったことを思いだしている。景気回復後の税収増を当て込んで、公共事業を増やしたり、法人税減税をしたり、借金を増やしたり。過去に学ばず、同じ歌を歌っているように見える日本の財政運営である。


2016.2.14.(日)

法人税率の引き下げ

 気温は高いが、雨降りで風が強い日。春一番だそうだが、強烈な一番である。風の影響で電車が遅れる。傘を差しても、風で役に立たない。傘が飛ばされそう。そんな中、ぷれジョブへ。到着が20分も遅れてしまった。新しいジョブサポーターの報告もあったり、バレンタインデイの定例会は活気ある集まりになった。

 企業向けの政策減税の合計額が2014年度は1兆2千億円にのぼることがわかった。減税の恩恵の6割は資本金100億円超の大企業が受けていた。大企業ばかり優遇するのはいかがなものか、設備投資の拡大につながっていない、減税の効果が実質賃金の増加につながらないのはおかしい、といった見方も出ている。

 安倍政権は、法人実効税率を16年度20%台まで引き下げる。それなら政策減税は縮小すべきだという指摘がある。それよりも、なによりも、法人税率をそんなに引き下げる財源はどうするのかが心配である。引き下げをするなら、来年4月の消費税率10%を実施しない選択肢はないことを政権は覚悟しなければならない。財政健全化の観点からも当然の帰結である。


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