浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記  2月第4&5週分       

2016.2.29.(月)

政府機関の地方移転

 閏日。いつもの2月より1日多い。もうかったのか、損したのかはわからない。ともかく、明日からは3月だ。春らしくなってもらわないと困るのだが。

 政府機関の地方移転について検討がなされているが、政府は文化庁を数年以内に京都府に全面移転する方針を固めた。また、徳島県への消費者庁の移転については、一部職員を現地に試験的に配置したうえで、8月末までに結論を出すことを目指すとしている。

 これに先立って、政府の「まち・ひと。しごと創生本部」は昨年8月31日を提出期限として、都道府県から政府機関の誘致募集をしたところ、42道府県から69機関について誘致の提案があった。宮城県からは、環境調査研修所を大崎市岩出山地域へ、水産総合研究センターの開発研究センターを気仙沼市へ誘致したいという提案があった。

 誘致提案の募集が、「まち・ひと・しごと創生本部」から行われたということから、これら誘致が「地方創生」に資すると考えられていることが透けて見える。地方創生にかかる事業は、そこに住む住民たちが企画し、実施して初めて成功すると考える私から見ると、政府機関の誘致を地方創生に結びつけることには違和感がある。

 京都への文化庁の移転が本決まりとなり、京都の人たちは喜んでいるようだが、政府機関の誘致がそんなにうれしいことなのか。現在の首都東京に対する「千年の都」の誇りはどこにいったのだろうか。


2016.2.28.(日)

出所屋居酒屋2号店の開店祝い

 暖かさに誘われ、19日(金)以来の昼の散歩。ものみな春の光に輝いているような日和である。春だ、春だとつぶやきながら歩く。いい気分。

 夜は、我が友玄秀盛が新宿歌舞伎町にオープンする「酒肴蔵 京丹後屋」のお祝いに駆けつけた。「新宿駆け込み餃子」に次ぐ、「出所者支援居酒屋」の二店舗目である。狭い店を上手に使って、50人も入る素敵な店である。開店祝いには、玄さんの志に賛同する仲間たちが50人近く集まって大盛況。ここでは、料理長をはじめ、出所者6人が働く。1号店は4人である。玄さんの志がどんどん実現していく。その背景には、多くの仲間がさまざまな支援を惜しまないという事情がある。私もできる限りの支援をしたいと思っている。


2016.2.27.(土)

国勢調査の人口速報値

 午後から、横浜根岸のJX体育館での、ショートドラマの練習に顔を出す。3月5日(土)に杉田劇場で「21番目の素敵な出逢い」のイベントがあり、その中でショートドラマが演じられる。出演者の大半は、ダウン症や知的にハンデのある子どもたちである。イベントでは、私とスペシャルゲストとの対談もある。そのゲストはショートドラマにも出演する。今日の練習にも参加するというので、練習の合間にゲストと対談の打ち合わせをするという算段だった。打ち合わせというよりは、顔合わせは無事終了。ゲストは誰もが知る女優さんだが、主催者からは事前に明かすなと釘をさされている。

 2015年国勢調査の人口速報値が発表された。外国人を含む日本の総人口は1億2711万人。2010年の前回調査より94.7万人の減少である。総人口が減るのは、1920年の国勢調査開始以来初めて。

 この速報値を基にして衆議院小選挙区の「一票の格差」を見ると、37の小選挙区で最高裁のいう「違憲状態」となっている。次の衆議院選挙までに、違憲状態を解消するためには定数の「9増15減」を実現しなければならない。「15減」なら、15県の小選挙区が1つずつ減る。東北では、宮城、青森、岩手、福島の4県が削減対象。「9増」では東京都の小選挙区は4つ増える。青森、岩手の小選挙区が3つに減らされ、東京の小選挙区が29に増える。一票の格差は是正されても、代表議員数において東京との格差は広がるばかりである。これって、ホントにいいことなんだろうか。

 速報値を見て、もう一つ指摘したいことがある。5年前と比べて、47都道府県のうち人口が増えたのは、東京圏の東京+3県と愛知、滋賀、福岡、沖縄の4県のみ。大阪府は初のマイナスの0.3%減である。秋田県は5.8%減と最大の減少率。東京都の人口は35万4千人の増。人口の東京集中はさらに激しくなっている。「地方創生」で東京一極集中を是正しようとしているが、とても無理という気がしてくる。   


2016.2.26.(金)

シャープ、鴻海傘下へ

 少なくなった髪の毛といえども、伸びるものは伸びる。みっともなくならないように、切るものは切らなければならない。整髪に行っていた近くの美容院が廃業したので、近くの理髪店に通っている。「通っている」といっても、今日で2回目。前回は4ヶ月前である。髪が少ないからすぐ終わる。30分もかからない。終われば、それなりにすっきりはする。

 シャープが、国内大手電気メーカーとして初めて外国企業傘下に入ることを決断した。産業革新機構と鴻海、どちらの支援を受けるか迷った時期もあったが、鴻海を選択した。それ以外の選択ができないところまで追い込まれたということだろう。企業の技術が国外に流出するおそれなど気にしていられない。鴻海の支援額は6000億円超というから、産業革新機構には引き止める力はなかった。  あのシャープがなんで?、国内有力企業の買収はシャープだけで済むのだろうか?、日本企業一人勝ちの栄光の日々は戻ってこないのだろうか。そんな疑問とともに、落日を見ているような寂しさを感じる。


2016.2.25.(木)

炉心溶融の判定基準、5年気づかず

 築地のがんセンターで月一の定期受診。待合室で小池さんと村田さんに会う。どちらも私と同じく田野崎隆二先生の骨髄移植を受けて回復した仲間である。小池さんはATLが治ったあとも,月一仙台から通っている。村田さんは骨髄異形成症候群のサバイバー。3ヶ月ぶりの受診でお会いするのは2年ぶりかな。私の検査結果は、CRPの値が高いほかは順調。

 今朝の各紙で報道されているが、東京電力は福島第一原発事故当時の社内マニュアルに炉心溶融(メルトダウン)の判定基準が明記されているのに5年間気づかなかったことを発表し、謝罪した。驚くべきことである。マニュアルにある基準に従えば、事故の3日後には1,3号機について炉心溶融の判定ができていた。東電が炉心溶融を公表したのは、事故から2ヶ月後である。

 特筆すべきは、マニュアルに炉心溶融の判定基準が記載されていることに社員が気付いたのが、新潟県の委員会の求めに応じて、東電が当時の経緯を調べ直したなかでのことだということである。新潟県の泉田裕彦知事は、以前から、「事故原因の検証・総括がないままでの柏崎刈羽原発の再稼働は論外」と主張している。この線に沿って、事故原因の検証を東電に迫ったことから、「マニュアルに炉心溶融の判定基準があることを5年気づかず」というとんでもないことが露呈した。なんということだろう。

 一方、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1,2号機が新規制基準に適合すると認められた。原発は40年で廃炉にするのが原則だったはず。安全性という観点からは、40年経た老朽原発を運転延長するよりは、新規建設原発の運転のほうが望ましい。新規建設に世論の反対があるからといって、高浜原発のような老朽原発を再稼働させようというのは、ご都合主義過ぎる。福井県知事は、新潟県知事のように筋を通すことなく、先発の鹿児島県知事、愛媛県知事にならって、すんなり高浜原発の再稼働を認めるのだろうか。


2016.2.24.(水)

覚醒剤犯罪

 夜、横浜のインターコンティネンタルホテルで開催の横浜米ロータリークラブの例会で講演。人口360万人の横浜市の皆さんには、「地方創生」はどれだけ関心を持っていただけるか、不安を覚えながら1時間の講演を終えた。こういうのも、私にとっては勉強になる。

 覚醒剤使用容疑で再逮捕された清原和博容疑者が、供述を始めたようで、関連情報が集まってくる。こういう話題はあまり書きたくないのだが、清原容疑者個人への興味ではなく、覚醒剤犯罪を撲滅したいという立場からは、考えるところはある。覚醒剤使用・所持は犯罪だが、被害者ははっきりしない。加害者は他にいるような気がする。覚醒剤を密売して資金を稼いでいる暴力団のほうが加害者である。まずは、ここを根絶しないと、この種の犯罪は繰り返される。警察が狙っているのもそこのところだろう。がんばって欲しい。


2016.2.23.(火)

野党の選挙共闘へ

 午後から、横浜市栄区職員研修で1時間半の講演(講義?)栄区の神山副区長からの依頼である。神山さんは、昭和62年4月から1年間、厚生省障害福祉課で勤務の経験がある。私とは6ヶ月一緒だった。そういう因縁もこれあり、講師をお引き受けした。栄区役所で福祉関係の仕事をしている職員を中心に50人ほどの講義。栄区桂台にある社福「訪問の家」の名里晴美理事長と職員など、部外の方々も来られていた。「障害福祉の仕事」を1時間半。その後30分の質疑応答。みっちりやらせてもらった。

 民主党と維新の党が合流して新党を立ち上げる方向で、両党執行部間の話し合いがまとまったらしい。党名は新しくする。参議院選挙を前にして、このままでは野党ボロ負け必至という危機感があるからこそ、なんとかまとまったのだろう。自民党谷垣幹事長からは「野合」などという言葉も漏れたが、なんと言われようと、合流して新党を立ち上げなければならない。

 一方、共産党が参議院選挙の改正定数1の一人区の多くで、候補者取り下げする方針を明らかにした。これまでは、どんな選挙でも独自候補を出すのが共産党のやり方だったのが、思い切った方針転換である。これが実現すれば、参議院選挙での野党候補の一本化がいくつかの一人区では成立することになるだろう。ここから、野党連合政権まで見通すことはできないが、そこに向けてのごくごく小さな一歩ぐらいにはなるかも。でもやっぱり無理だな。


2016.2.22.(月)

澤昭裕さんの遺稿

 今日の日経新聞に掲載されている「Wedge」3月号の広告に、「澤昭裕遺稿」とあるのを見つけて、驚いてしまった。「脱原発に漂流する日本の未来を憂うー病床で綴った最期の原子力論」という論考である。澤さんが今年の1月16日に膵臓がんのため亡くなったことは、今回の「遺稿」で初めて知った。

 澤さんは、私が宮城県知事をしている1995年に、通産省(現経済産業省)からの出向で商工労働部次長に就任し、それから2年宮城県庁で活躍した。通産省から出向してくる役人は、皆さん優秀なだけでなく、行動力がある人ばかりだったが、その中でも澤さんは出色の存在だった。発想がユニークで、人的ネットワークが広いうえに、行動力抜群である。関西弁で次々と言葉を繰り出す、愛すべき存在でもあった。

 2年間の宮城県庁勤務を終えて経済産業省に戻り、その後、東京大学先端科学技術研究センター教授に転じた。エネルギー政策には独特の見識を持ち、特に2011年3.11の福島原発事故の後は、安易な脱原発論に批判的な意見を発表していた。こういった活動には、私も外から注目していた。原発再稼動に関しては、私と立場を異にするが、論理的でぶれない論考には、「さすが澤さん」と思いながら見ていた。

 そんな澤昭裕さんが58歳の生涯を終えた。まだまだやり残したことはあっただろう。「Wedge」3月号を入手して、澤さんの遺稿を拝読しながら、ご冥福を祈りたい。


2016.2.21.(日)

野党共闘に暗雲

 昨日、今日と、1時間半の講演を文字起こしした原稿に手を入れる作業に没頭した。大変な作業で、延べ10時間ほども費やしただろうか。こんな作業は、二度と引き受けたくない。

 この夏の参議院選挙を控えて、野党がどのぐらい与党連合に迫ることができるのか、大いに気になるところである。安倍政権では、このところ閣僚や自民党議員の不祥事、問題発言が続いている。にもかかわらずと言おうか、直近の世論調査では、内閣支持率は下がっていない。安倍政権に不満を持つ人は少なくないが、かといって野党を支持しようということにならない。このままでは、参議院選挙で自民党が大勝、民主党大敗ということになるだろう。

 民主党と維新の会の合流どころか、野党の選挙協力体制すらできていない。民主党内でさえ意見の対立がある。最大野党の民主党が、自民党との対立軸を打ち出していないようでは、どうにもならない。有権者が民主党に期待を寄せるのはむずかしい。民主党としては、この状況を打破するために、党内結束を固めるなど、真剣に立ち向かわなければならない。


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