宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2002/4/29
http://www.asanoshiro.org/                 第34号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「有事法制」(浅野史郎)

 [お知らせ]
  ○「とっておきの音楽祭」が本になりました。
  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。

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> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「有事法制」(浅野史郎)

 有事法制、正確には、有事関連3法案という。その審議が4月26日、衆
議院本会議で始まった。

 「3法案」というのは、まず、「武力攻撃事態法案」。わが国への武力攻
撃が発生、もしくは武力攻撃が予測される場合、政府が閣議で対処基本方針
を決定し、首相を長とする対策本部を設置するなどの手続きが規定されてい
る。この中に、自治体に対する指示権など、首相の権限強化が明記されてい
ることもあり、「宮城県知事としてはどう考えるのか」といった質問が舞い
込んでくる。

 あとの2法案は、防衛出動命令前でも自衛隊の陣地構築を可能にする「自
衛隊法改正案」、安全保障会議を補佐する専門委員会の新設などを盛り込ん
だ「安全保障会議設置法改正案」である。

 そもそも論として、「こんな法律は有害無益で絶対反対」という議論があ
る。私は、そういう立場をとらない。こういう法律を作ることが戦争を呼び
こむことになるから反対という論に至っては、理解に苦しんでしまう。むし
ろ、有事に対応した法制度の整備は、もっと早い時期に、じっくりと国民的
な議論を経て制定しておくべきものだったはずである。

 「時代遅れ」という田中康夫長野県知事の批判もあるが、ある意味ではそ
のとおり。遅かったのである。しかし、遅すぎることはない。これもまた田
中知事らの批判で、阪神大震災や地下鉄サリン事件など、日本が経験した真
の有事はいまだ議論の機運すらないという声もある。それもそのとおり。だ
からこそ、急いで議論を進めなければならない。

 確かに、冷戦構造が崩壊したこの時代に、わが国に武力攻撃をかけてくる
という危険性が、どれほど高いものかという議論もあろう。しかし、そう
いったケースにも対応し得る法的な枠組みを確立しておくことが有用でない
とは、決して言えない。「自衛隊が存在しながら、その取扱い説明書がない
状態」という説明をしていた論者がいたが、なるほどそういうことかと納得
される。

 私の考える問題点は、とりあえず3点。

 一つは、「有事」の定義について。「武力攻撃が予測される場合」まで含
む概念であるので、どういった事態がそれにあたるのかの議論を事前にしっ
かりしておく必要がある。日米安全保障条約における「極東の範囲」はなし
崩し的に広げられているし、「周辺事態法」のいう「周辺事態」とは地理的
な概念を超越しているといった解釈がなされている。こういった事実を持ち
出すまでもなく、この種の概念のあいまいさに、危うさを感じるほうが普通
であると思う。

 この議論に関して、特に気になるのは、米国との関係である。アメリカの
国家戦略に引きずられて、広範な「周辺事態」が、「武力攻撃が予測される
場合」とみなされてしまうことにならないかどうか。もう秒読みが始まって
いるとも言われている、米国による対イラク攻撃や、テロへの報復が大規模
に行なわれた場合、いずれも日本がなんらかの協力を行なうことは十分にあ
り得る。その協力に対して、攻撃を受けた側の国家やテロ集団が、日本に対
してテロを含む反撃をしかけてきたら、その事態は「有事」にあたるのだろ
うか。「それは、その時に考えます」では済まないだろう。

 二つ目は、テロ、不審船への対応である。武力攻撃という、あまり現実性
のない事態への対応が、今回の「武力攻撃事態法案」の趣旨であることは仕
方がない。まず、最も大変な事態への対応を規定しておいて、その後にテロ、
不審船、大規模災害などへの対処法案を考えるという段階を経るということ
である。それにしても、テロ対策、不審船対応というのは、かなり現実性の
ある事態であるので、2年以内などと言わずに、早急に準備が必要である。

 三番目は、これに関連して、自治体としての対応である。本県の場合も、
女川の原子力発電所がゲリラに狙われたらどうするか。そのほかに、宮城沖
に不審船が出没した、国籍不明の武装集団が上陸した、新幹線が妨害された、
通信網の寸断が企てられた、こういった事態が生じた場合には、まず、県が
すぐさま、なんらかの対応をしなければならない。その際の、関係機関との
協力体制、市町村への連絡体制、住民の保護の方策などについて、どれだけ
の準備ができているか、はなはだ心許ない。これではいけない。有事法制が
どうであれ、自治体としての危機管理の問題である。

 今回の有事法制をめぐる動きは、まずは、国民的な関心の高まりの中で、
十分に審議が尽くされなければならない。同時に、それぞれの部署において、
危機管理の体制を取っておかなければならない。そんなことを、改めて考え
させられている。

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> [お知らせ] <

 ○「とっておきの音楽祭」が本になりました。

 障害のある人もない人も一緒に音楽を楽しみ、音楽で心のバリアフリーを
目指す「とっておきの音楽祭」が本になりました。是非、お手にとってご覧
下さい。

『音楽でバリアを打ち壊せ』
 岩波ジュニア新書 780円
 菊地昭典 著   千坂コウイチロウ 写真
 2002年4月20日発売

<内容>(とっておきの音楽祭ホームページより転載)

 10月8日あの日のあの感動が本として甦りました。書いたのは実行委員
会の企画プロデューサーである菊地さん、写真はプロの写真家であり実行委
員の千坂さんです。

 初めての試みにとまどい、時には激論を交わし時には感涙し、準備をすす
めていく市民ボランティアの実行委員たち。福祉シロウトの著者が自分の心
のバリアに気付き、悩み、その原因を探っていきます。

 養護学校の生徒たちとの心温まる交流。心のバリアフリーを熱く訴える
ミュージシャンたち。そして10月8日、ストリートステージでの障害のあ
る人とない人の共演は、街往く人たちの心に響きました。

 小雨が降り冷え冷えとしていましたが、街はあたたかい空気に包まれてい
ました。躍動感のある写真と内容、感動がいっぱいつまったこの本をご一読
ください。

詳しくはこちらから
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/50/6/5003960.html

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> [編集後記] <

 ゴールデンウィークに入りました。私も本当に久しぶりにピクニックなる
ものをしてみました。

 大人数でお弁当を食べたり、子どもに負けずに遊具で遊ぶなど、楽しい一
日を過ごしました。ただ、行きと帰りの渋滞は、運転手の私にとっては、あ
まり楽しいものではありません。父親の苦労が骨身に染みた一日でもありま
した。

 皆さんのこれからの予定はなんでしょうか。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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