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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002/5/6
http://www.asanoshiro.org/                 第35号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「個人情報保護法案と人権擁護法案」(浅野史郎)

 [お知らせ]
  ○「とっておきの音楽祭」が本になりました。
  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。

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> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「個人情報保護法案と人権擁護法案」(浅野史郎)

 今国会に、個人情報保護法案と人権擁護法案が提出されて、連休明けから
の審議入りが予定されている。これらに青少年有害社会環境対策基本法案
(今国会には提出せず)を加えた3法案は、「メディア規制三法案」と呼ば
れているが、そう呼ぶのはこれらの法案に断固反対の立場をとるマスコミな
らではのことである。だから、このコラムでは「メディア規制法案」とは呼
ばない。名称そのものが、一つの立場を代表することになるからである。

 ともあれ、法案の審議入りを目前にして、各新聞をはじめとするマスコミ
での報道は激しさを増している。マスコミ各社は法案に反対の立場をとって
いるので、どうしてもそういった方向での報道になってしまう。そういった
事情もあり、読者というか、国民一般としては、この問題を客観的かつ実物
大で理解することは、相当にむずかしくなっている。

 個人情報保護法案は、高度情報化時代の中で、個人情報をいかに守るかと
いうことが趣旨の法律である。クレジット業者など、個人情報を大量に扱う
業者から情報が垂れ流されたら、個人のプライバシーは損なわれる。まして、
インターネットの時代である。情報はあっという間に全世界を駆け巡る。強
力な規制がされなければならないことは、当然であり、遅きに失した感さえ
ある。 

 趣旨はそういうことであるが、報道機関が抱く危惧も理由がないわけでは
ない。メディア規制を目的としてこの法案が出されわけではないが、できあ
がった法案は、メディアを不当に規制するおそれがあるということであろう。

 法律の定める「基本原則」では、個人情報を扱うときには、目的を明確に
し、その目的の範囲内で扱うこととされている。ある政治家の汚職事件を取
材している記者が、「あなたの疑惑を記事にするために情報収集しています」
と、相手方に断らなければならない事態を危惧している。さらに、基本原則
の「本人が適切に関与できるように配慮すること」という規定があるので、
その政治家から「情報を見せろ」、「情報を使うな」、「訂正しろ」と言わ
れかねない。そうなったら、取材や報道は成り立たなくなるではないかとい
うのが、報道機関の言い分である。

 罰則つきの義務規定は、報道機関には適用されないが、どういうメディア
が報道機関に該当し、どういった記事や放送が「報道」と言えるのかの判断
が、主務大臣に委ねられていることにも、危惧が表明されている。

 人権擁護法案は、不当な差別や虐待に苦しむ被害者を救済することが目的
である。「特別救済」と呼ばれる手続きがあるが、これは深刻な差別や虐待
に対して、人権委員会が強制的な権限で踏み込んだ対応をするものである。
救済の対象行為としては、人種・信条を理由とした差別、人種などを理由と
した差別的言動や地位利用を伴う性的言動などがある。

 報道機関が問題にするのは、対象行為の中に、報道機関による人権侵害が
規定されていることである。その内容は、まず、プライバシーを侵害する報
道であり、「私生活に関する事実をみだりに報道し、名誉や生活の平穏を著
しく害する報道」と定義されている。次ぎに、過剰な取材として、「つきま
とい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務地、学校などで見張り
をし。または押しかける行為」や「電話をかけ、ファックスを送るなどの行
為」を継続、又は反復し、生活の平穏を著しく害することとされている。

 「みだりに」とか「著しく」というあいまいな概念で取り締まられては、
取材など成り立たないというのが、報道機関の反発の根拠である。取材内容
の審査をする人権委員会の独立性にも疑義があるという主張もされている。

 人権擁護法案も、まさに時代の要請である。わが国が人権擁護の点で、決
して世界に冠たる実績を上げているわけではないので、この法案の必要性は
認めなければならない。また、報道規制をするための法案でないことも、十
分に理解できる。

 これらの法案に対して、報道機関が挙げている反対の理由を、「いいがか
り」、「心配し過ぎ」、「ためにする議論」と一蹴していいのか、私にはま
だ疑問が拭えない。記者会見で聞かれたので、「国論を二分している法案な
ので、逐条的に審議するなど慎重な対応が必要である」と答えたが、ホンネ
である。個人情報保護法案も人権擁護法案も、その精神、趣旨・目的には、
なんの異論もない。せっかくの前向きな法案である。運用上、報道規制につ
ながる可能性があるのであれば、そのことをそのままにして無理やり通すこ
とは、避けるべきというのが、順当なところであろう。

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> [お知らせ] <

 ○「とっておきの音楽祭」が本になりました。

 障害のある人もない人も一緒に音楽を楽しみ、音楽で心のバリアフリーを
目指す「とっておきの音楽祭」が本になりました。是非、お手にとってご覧
下さい。

『音楽でバリアを打ち壊せ』
 岩波ジュニア新書 780円
 菊地昭典 著   千坂コウイチロウ 写真
 2002年4月20日発売

<内容>(とっておきの音楽祭ホームページより転載)

 10月8日あの日のあの感動が本として甦りました。書いたのは実行委員
会の企画プロデューサーである菊地さん、写真はプロの写真家であり実行委
員の千坂さんです。

 初めての試みにとまどい、時には激論を交わし時には感涙し、準備をすす
めていく市民ボランティアの実行委員たち。福祉シロウトの著者が自分の心
のバリアに気付き、悩み、その原因を探っていきます。

 養護学校の生徒たちとの心温まる交流。心のバリアフリーを熱く訴える
ミュージシャンたち。そして10月8日、ストリートステージでの障害のあ
る人とない人の共演は、街往く人たちの心に響きました。

 小雨が降り冷え冷えとしていましたが、街はあたたかい空気に包まれてい
ました。躍動感のある写真と内容、感動がいっぱいつまったこの本をご一読
ください。

詳しくはこちらから
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/50/6/5003960.html

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 たくさんの方のご紹介によりこのメルマガの登録者が740名を超えました。

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> [編集後記] <

 ゴールデンウィーク最終日の今日、皆さんは何をしていましたか?私は、
とんぼ返りとはいえ、実家に顔を見せに帰りました。

 せっかくの連休でしたが、何だか時間が取れませんでした。世の中が忙し
くなってきている証拠なんでしょうか。

 「仕事に追われるより、仕事を追え」と、大学の先生が言っていたのを想
い出しながら、明日からの仕事のスケジュールを立てています。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
                            メールアドレス mmz@asanoshiro.org

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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