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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2002/5/20
http://www.asanoshiro.org/                 第37号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「瀋陽総領事館事件」(浅野史郎)

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 ○「瀋陽総領事館事件」(浅野史郎)

 次から次へと、ぞっとするような不祥事や事件が続いている中で、瀋陽総
領事館事件が今のホットな話題である。一時の大騒ぎが収まったあとは、い
つの間にかというか、あっという間に、新しい事件のほうに国民の関心は吸
い寄せられていく。前からそういう傾向があったが、最近はそれが顕著であ
る。だから、いずれこの事件も、記憶の彼方に追いやられていくのだろうか
と思ってしまう。

 それはそれとして、一連の外務省バッシングが続いている中で、瀋陽総領
事館事件が起こった。タイミングが悪過ぎる。というか、根っこは同じだか
ら、起こるべくして起こったと言うべきか。

 朝日新聞の5/16のコラム「日本@世界」で船橋洋一氏が書いているように、
瀋陽総領事館事件で明らかになったのは、外務省の使命感の欠如、危機意識
の希薄さ、熾烈な外交戦との自覚の欠如ということなのだろう。そこから、
「あまりにも無防備な日本の外交」(船橋氏)の姿が浮かび上がってくる。

 船橋氏の今回のコラムのタイトルは、「領事館はコンシェルジェではない」
である。在外公館の英訳はミッション(派遣、任務、使命、伝導の意)。つ
まり、在外公館は、国の理念、主権、国民の安全と財産、自尊心を守る砦で
なければならない。それがコンシェルジェ(接客係)に成り下がっているの
ではないかという、強烈な皮肉である。

 「フォーサイト」6月号には、「若き外交官からの『憂国憂省』の手紙」
という特別手記が掲載されている。現役の外務省官僚たちのグループ「外務
省を真に改革する有志の会」による、せっぱつまった肉声とも言うべきもの。
そんなふうに私は読んだ。

 この手記では、「外務省不祥事」といわれるものの事実をしっかりと把握
して、将来に禍根を残さないようなきっちりとした省内処分をせよ、真の意
味の国益を考えた外交のビジョンを提言できるシステムを確立せよ、政と官
の関係の透明化を図れといったことが、率直に提言されている。「保身に汲
々とするなかれ。守るべきは国益であり、示すべきは未来へのビジョンだ。
さもなくば国は滅びる」とまで言っている。

 「さもなくば国は滅びる」という言葉が重い。外務省の不祥事に関しての
一連のできごとと、それへの対処の仕方を見ていると、この言葉が現実味を
持って迫ってくる。まさに、国難である。外務省改革が、言い訳と、先送り
と、小手先いじりと、ことなかれ主義と、官僚の保身の中で漂ってしまって
いるうちに、我々は、この国の外交を根本から立て直す絶好の機会を失って
しまうのではないか。

 「外務省を変える会」という名称の第三者機関が検討を続けている。夏に
は、改革案がここから出される予定と聞く。名前にケチをつけるのも大人気
ないが、「外務省を変える」というだけの認識で、小手先以上の改革に結び
つくのかどうか。それ以外に、委員の数が多過ぎて、一人一回5分程度の発
言しかできないといった問題もある。大胆で根本的な改革案をこの会から出
させるというにしては、仕掛けに問題はないのだろうか。

 以前に、このコラムで、有事法制については、必要性は理解できるという
ことで、有事立法に期待する旨の意見を書いた。今、一連の動きを前にして
改めて腕組みをして考えてみると、心配なことが次々と出てくる。

 現実に「有事」という事態が迫ってきたときに、アメリカをはじめとする
他国の認識や情報に頼らずに、わが国の自前の見識で、責任を持って、有事
か否か、それへの対処方針の確定などなどの困難な事項について、判断がで
きるのだろうか。一体誰が、どの組織が、どういった根拠をもってなし得る
のか。その能力の検証は、事前に済まされている必要があるのだが、今、平
成14年の今現在、その能力は検証されているのだろうか。外務省?防衛庁?
国民は、その能力を信じるだけの根拠を、どこに求めたらいいのだろうか。

 「備えあれば憂いなし」というが、「備え」は法制的準備だけではない。
法制化の前提として、その立法を執行するための実践的、実際的な組織の能
力の問題がある。目の前の暗澹たる事実を前にして、有事を察知し、分析し、
対処する能力を飛躍的に高める必要性は、誰の目にも明らかだろう。そして、
そのもっともっと前に、わが国の真の国益とは何かを含めた、外交のビジョ
ンの確立は不可欠である。外務省改革は、この視点を前面に出してのもので
ない限り、ほとんど無意味に近い。

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 我が家近くのホテルには、もうすぐ開幕する2002FIFAワールドカップに出
場する、イタリア代表が宿泊します。そのためか、この一週間でどんどん付近
の街並みがイタリア色に染まりはじめました。

 明後日には、そのイタリア代表が仙台にやってきます。これから約3週間
は、お祭の日々が続きます。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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