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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2002/5/27
http://www.asanoshiro.org/                 第38号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「地方財政の税源移譲」(浅野史郎)

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 ○「地方財政の税源移譲」(浅野史郎)

 地方分権への動きのうち、権限移譲については、2000年4月の地方分
権推進一括法でかなり進んだ。あとは、国から地方への財源の移譲だと言わ
れてきた。ここにきて、その財源移譲に関する動きが出てきている。5月半
ばに出された、片山虎之助総務大臣の試案で、このことが明確に述べられて
いる。

 「片山試案」の中で、「地方財政の構造改革」として示されているのが、
地方歳出に対する国の関与の廃止・縮減、地方税中心の歳入体系の構築であ
る。

 地方税中心の歳入体系の構築については、なぜそんな方向を目指すべきで
あるかの説明もなされている。つまり、受益と負担の明確化、自立的な財政
運営が、これによってもたらされるということである。

 逆に言えば、現在のシステムの下では、受益と負担の関係が不明確という
ことになる。これを明確にするということは、どういうことか。自治体の行
政サービスを増やすとか、新しく施設を建設するという時に、それによって
地方税を増やすことになるけどいいかという問い掛けが、自治体から住民に
対してなされることになる。逆に、行政改革を進めて、行政運営の効率化を
図れば地方税の税率だって下げられる。

 受益と負担の関係の明確化とは、自治体サービスと税負担との緊張関係の
構築と言い換えられる。つまり、「納税者の選択」が前面に出るということ。
これこそ、民主主義の基本である。片山総務大臣の言っていることは、民主
主義がしっかりと機能するように、地方財政のシステムを変えようという決
意表明ととらえられる。

 地方税中心の歳入体系を構築することによって、自治体の自立的な財政運
営を実現することが期待されているのだが、これは自治体にとっては、いい
ことだけではない。国の補助金に頼るのではなく、自分のところの税収を主
体にして、自前で財政運営をしろということである。自立ということには、
責任が伴う。財政的な自由の中には、失敗する自由も含む。だからこそ、責
任をもった財政運営が期待されるということになる。

 片山試案では、地方財政制度の改革についての具体的な提言を含んでいる。
現在、歳入は国税が地方税より多く、歳出規模は地方のほうが断然大きい。
つまり、歳入・歳出の乖離の状態なのだが、その幅を縮小しようという試み
である。

 国税:地方税=1:1にすると試案は言っている。まず、補助金・負担金
などの国庫支出金を整理して、つまり、なくすべきものはなくして、その分
を地方税に振替え、最初から地方の収入にしてしまう。さらには、いずれ、
地方財政収支の好転があった段階で、地方交付税を(一部)地方税に振替え
ていこうというものである。

 数字で言うと、所得税(国税)から住民税(地方税)へ3兆円移しかえる。
消費税率5%のうち、現在1%は地方消費税になっているが、これを2%に
引き上げる。これで2.5兆円。合計で5.5兆円程度を国から地方へと税
源移譲することになる。

 ちょっと、専門的というか、細かい説明になって、わかりにくかったかも
しれない。細かいことは、あまり気にしなくてもよい。最低限、わかっても
らいたいことは、今回の「片山試案」は、地方分権を大きく進めることにな
るということである。具体的なやりかたでは、自治体全体として、又は、そ
れぞれの自治体ごとに、財政面で現在より有利になるとか不利になるといっ
た議論が出てくるだろうし、それはそれでうまく解決していくことは大事。
しかし、基本的方向を見誤ってはいけない。今回の「片山試案」は、基本的
に正しい方向を目指しているということだけは理解しなければならない。

 小泉首相も、地方への税財源移譲は早くやれという考えだと聞く。いよい
よ、国も本気である。決して、国と地方との綱引きといったレベルで論じら
れるべきではない。日本全体が元気が出るシステムに変えていかないと、こ
の国がもたない。その意味で、改革のスピードも大事。

 今こそ実行の時。そんな思いを持ちながら、知事としてやれることに全力
を注ぐべきであると、自分に言い聞かせている。

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> [編集後記] <

 イタリア代表が、我が家近くにやってきました。毎日たくさんのファンや
マスコミが来ています。外国からとおぼしき人達もぽつりぽつりとですが、
増えてきました。
 
 せめて、イタリア語での挨拶を詰め込むのと、道案内できるぐらいの英語
力を頭の片隅から引っ張り出そうと思います。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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