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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002/9/3
http://www.asanoshiro.org/                  第52号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「宮城らしい自然再生」(浅野史郎)

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 ○「宮城らしい自然再生」(浅野史郎)

 議員提案による「自然再生推進法案」が、先の通常国会に提案され、継続
審議となった。次の国会において引き続き審議され、成立が図られることに
なろうが、この法案に関しては、いくつかの問題点を指摘することができる。

 そもそも、自然再生推進法案の目的は、価値のある自然環境を単に保全す
る、守るということだけではなく、積極的に手を加えて「再生」、「創出」
する事業を、関係者が一緒になって進めていこうというものである。例えば、
宮城県の蒲生干潟。水鳥の生息地として、貴重な役割を果している。この蒲
生干潟は、なにもしないで守ることはむずかしい。沖合に防潮堤を設けるこ
とによって、干潟の侵食を回避することができる。こういったような事業を、
国が定める自然再生基本方針に基づいて、地域住民やNPOなどの多様な主
体の参加を得て、計画を策定し、実施していくことになる。

 この趣旨は、まことに結構である。問題は、計画の策定、事業の実施の段
階に、どれだけ地方の主体性を発揮することができるかである。わが国の自
然条件は、多種多様である。まことに変化に富んでいる。まさに、自然その
ものが、地域特性を表しているとも言える。だとすれば、自然再生事業の主
導権をとるのは、国ではなく、地域でなければならない。具体的には、都道
府県の果す役割は、まことに大きいものにならざるを得ない。

 そういったことが、現在の法案では、必ずしも担保されていないのではな
いか。都道府県の役割のみならず、地方の自然保護などに関するNPOなど
の団体がどう関わっていくか。制度的な配慮をしておかないと、タテワリの
各省庁が主導権を握り、地方の意見については、単に「聞き及ぶ」というだ
けになりはしないか、そういった疑問が残るのである。

 さらに言えば、今回の法案で想定されている「自然再生」を限定的にとら
えるのではなく、もっと幅広く、たとえば、「自然と人間の共生」といった
プロジェクトまで含むものとして考えられないか。自然を資本と考えて、そ
の自然資本を維持し回復することを目標にした事業の実施も、広義の「自然
再生」と考えたい。つまり、自然資本への再投資であり、その結果として、
より豊かな生態系と天然資源を生み出すことができる。

 やや本題からははずれるかもしれないが、産業資本主義(インダストリア
ル・キャピタリズム)から自然資本主義(ナチュラル・キャピタリズム)に
考え方を転換しなければ、自然環境の悪化、環境汚染の進展、環境ホルモン
など人間の遺伝的資質への脅威などによって、持続的な成長は望めない時代
に我々は生存しているのではないか。そういった議論が、「自然資本主義」
ということを1999年にアメリカ人のエイモリー・B・ロビンスさんが提
唱して以来、世界で真剣に論じられつつある。

 自然再生法案の問題にもう少し近づけた議論も提起したい。つまり、地域
の自然の再生を考えるにあたって、自然と一体となった地域の文化をどうす
るか、地域づくりをどうするかといったことも、重要な論点である。繰り返
しになるが、であるからこそ、自然再生法案の趣旨が活かされるような制度
的配慮として、都道府県など地域の主体性を認めるプロセスが欠かせないこ
とを指摘したい。

 宮城県の豊かな自然を、人間の暮らしとの関連の中で、次の世代に伝え残
していくことは、今の時代に生きる我々の責任であることを、改めて痛感す
る。

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> [編集後記] <

 テレビなどで「残暑が厳しく」などと聞くたびに、今年も知らぬ間に夏が
終わってしまったのかと、寂しくなります。しかし、近頃の気象状況から考
えると、盆明けから「残暑」と言い始めますが、9月上旬までは「盛夏」な
のではないかと。

 「残暑」を季語としてとらえないと、いろいろと納得がいきません。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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