浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2002/9/10
http://www.asanoshiro.org/ 第53号
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> <<目次>> <
[週刊コラム・走りながら考えた]
○「統合教育」(浅野史郎)
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○「統合教育」(浅野史郎)
宮城県における統合教育の推進については、現在議論の最中であるので、
途中段階での見解は控えておくほうがいいのかもしれない。しかし、現在の
ところの私の見解として、あえて掲載することにした。
といっても、それほど大げさなことではない。障害を持った児童生徒を小
学校や中学校の普通学級で受け入れることを原則と考えるか、例外と考える
かといった問題である。文部科学省の考え方は、「障害児は、基本的には、
特殊学級か養護学校で学ぶべきものであり、例外的に、普通学級でも受け入
れられるのであれば、受け入れてもよい」ということだと、私は理解してい
る。これは、原則と例外が逆ではないか。
基本的には、普通学級で学ぶべきものであり、障害があるために、どうし
ても普通学級で学ぶことに支障があり、しかも、保護者が望むのであれば、
特殊学級や養護学校を用意しているので、そちらを選択することも認めると
いうふうに、考えるべきものではないのか。これが、統合教育の出発点、こ
とはじめである。
そういうと、すぐ反論が来る。障害児を持った保護者のほうが、自ら、特
殊学級や養護学校を選択するケースがほとんどであるというものである。そ
れはそうでしょう。現在のままの普通学級では、そこに入ってくる障害児に、
特別に補助教員がつくわけではなく、担当する先生の目は、その障害児に届
かないか、不十分、もしくは、その先生に大変な苦労を強いる結果になる。
障害児のほうだって、十分な対応をしてもらえないということにもなる。だ
から、当然ながら、普通学級に障害児を受け入れるのであれば、そこに、そ
の障害児専門の補助教員なりをつけなければならない。そういう前提の下で
はどうかとなると、相当に違った議論が展開されることになるはずである。
こんなことを私が考えるようになったきっかけは、いろいろある。大阪府
大東市では、昭和54年、障害児教育の義務化の導入以来、地域の学校で障
害児を受け入れている。この試みを実践した、この問題の草分け的な存在で
ある山本和儀さんから、直接お話を伺ったこともある。
本県でも、障害児を普通学級に入学させている実践例がある。石巻市の小
林厚子さんなど、保護者の選択である。その普通学級では、補助教員などの
特別な手当てはなされていない。あえてその選択をした理由の一つは、「ど
うせ卒業したら、健常者の中で生活することになるのだから、障害児だけの
養護学校での教育では、卒業したあと困ることになる」というもの。実にわ
かりやすい考え方ではないか。
最近感動したのは、千葉県浦安市での実践である。途中経過をはぶいて、
結果だけ言えば、十年ほど前には、障害児を普通学級で受け入れた例がほと
んどなかった人口13万人ほどの浦安市の義務教育学校で、普通学級に現在
在籍している障害児は51人である。市内のある県立高校には、自閉症の障
害を持つ子が、「推薦入学」で在籍している。なぜこんなことが起きたのか
と言えば、保護者の人たちの運動の成果ということである。もちろん、この
浦和市が、ディズニーランドが所在して、財政的にも豊かな自治体であると
いう事情も、あずかって力があったことだとは思う。
本県で、こういった統合教育の方向に、一歩でも二歩でも進めていくため
には、もちろんいくつかのハードルはある。まずは、受け入れる学校、そし
て教育関係者が「なるほど」と納得することが大前提である。文部科学省の
示す考え方と、ある面では、あい反するのだから、そのことへの抵抗感もあ
ろう。
普通学級に受け入れた障害児のために補助教員を配置するといっても、当
然ながら予算措置が伴う。基本的には、義務教育は市町村教育委員会の所管
であるので、財政措置は、各市町村が行なうことになる。それに県がどう援
助するかの問題もある。県の財政状況も厳しい中では、少なくとも、量的な
面では限界もある。
保護者がどう受け止めるか。これは、障害児を持つ保護者、そして、いわ
ゆる健常児の保護者、両方にとっての問題である。
まずは、他の自治体での実践例などの実態を知ること。そのための機会を
作ることが、考えられるべきであろう。知は力である。知ることで湧いてく
る勇気もある。みやぎらしい教育を考える手始めは、この統合教育の分野に
ありそうな予感がする。
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> [編集後記] <
前回この欄で、残暑について書きましたが、仙台では一気に秋が近づいて
きました。それこそ、昼間は「残暑」ですが、日が陰ると急に涼しくなりま
す。やはり「残暑」だったのですね。
それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)
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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬
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