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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2002/9/24
http://www.asanoshiro.org/                  第55号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「日朝首脳会談」(浅野史郎)

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 ○「日朝首脳会談」(浅野史郎)

 9月17日、歴史的な日朝首脳会談が行なわれた。この時期の首脳会談に
賛成の人も、反対の人も、その成果については、なんらかの期待はしていた
はずである。私もその一人であった。会談終了後に、現地からもたらされた
情報は、そんな期待を吹き飛ばすような、衝撃的なものであった。

 その日の夕方、ニュースから流れてきた、拉致された日本人についての
「安否情報」。生存者がいたということを喜ぶ暇もなく、続いて示された
「死亡が確認された方」のリストの長さに、言葉を失った。13歳で拉致さ
れた横田めぐみさん、首相と一緒に日本に帰ってくるかもしれないという期
待さえ持たれていた有本恵子さん。最初に出てきたこの二人の名前を聞いて、
ただただ「むごい」としか思えなかった。

 その後、日本で待つご家族に対して、安否情報が伝えられた。これまた、
なんとむごいことだろう。家族の一人も言っていたが、淡々と、「この人は
生存、この人は死亡」と伝えることができる人は、一体どういった感覚の人
なのか。その後、間を置いて、死亡年月日が伝えられた。そして、たまたま
東京に残っていた一部の家族には、安否確認に立ち会った外務省職員から、
その時の模様を聞かされた。

 家族にとっては、耐えがたいことであったろう。これまでの長い年月、全
く事態が好転しなかった。今回の首脳会談で、打開の糸口が開かれると期待
したその瞬間に、舞台は突然暗転してしまった。運命をもてあそばれたよう
なものである。「死亡確認」と一方的に示されても、とても信じられないで
あろう。真相究明までは、ご家族の中途半端な気持ちは、決して晴れること
はない。

 見守っていた日本中の国民は、ご家族の気持ちを自分のものとして、深く
心を痛めている。国家的犯罪に手を染めた北朝鮮に対する怒りを抑えること
ができない。交渉にあたった外務省にも批判の矢を向ける。小泉首相の「決
断」にさえ、厳しい見方が示されている。

 感情の部分においては、どうにも収まりがつかないものであるから、テロ
国家に対する怒り、外務省の無神経さに対するいらだちとなって出てくる。
これは自然なことではある。しかし、一方、国と国との関係、国家の安全保
障の問題、そして、世界平和への貢献などなどが、日朝首脳会談によって新
しい局面への展望を開いていることも、忘れてはならない。国民感情も、国
と国との関係を考える際には、決してゆるがせにできない要素であるが、一
方において冷静な外交戦略も考えなければならないということである。

 それにしても、拉致問題については、事実関係の解明が重要である。謝罪
をすればそれで終わりというものではない。ちょっと前までは、「第三国で
行方不明者が発見されたことにすることも考えられる」ということが、一国
の首相の口から語られた。拉致の事実関係と、実行者の責任とをあいまいに
して、生存者救助の結果だけを求めるということだが、国と国との関係とし
ては、とんでもないことである。こういった問題において、きっちりとスジ
を通すことの重要さが、改めて確認されなければならない。

 拉致問題に関しての悲し過ぎる展開ということもあったが、今回、日朝関
係はそれなりの進展を見せようとしている。この方向は、後戻りさせてはな
らないと強く感じる。この進展は、少なくともこれまでのところ、政治主導
とは言いにくい。外務省事務当局の描くシナリオに沿って、政治がなぞって
いく形である。外交において、政治はどこに行ったのであろう。

 外交は、日本の政治家にとって、票にならないし、利権にも遠い。「外交
族」というのは、ほとんど存在しないし、外務省シンパというのも、数少な
い。だからこそ、腕力があると見られる鈴木宗男議員などにおすがりしなけ
ればならない状態に置かれてしまう。これが、健全な外交の姿であろうか。

 日本の政治家と書いた。アメリカの議員、特に上院議員は外交問題に一家
言なしには務まらない。他の国でも、同様だろう。ひとり日本においてだけ、
国会議員が、内政問題にのみ関心を集中しているように見受けられる。地元
への利益誘導に熱心なのは、悪いことではないが、それだけでは困る。国の
進むべき方向を決めるのが、国会であり、国会議員であるのだから、外交問
題に無関心は許されない。有権者だって、「うちの議員は、安全保障問題に
どういった見識を持っているのか」を投票の基準にしていい。

 今回の日朝首脳会談では、そんなことも考えさせられた。

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 民主党の代表選が終了しました。そのことについて好意的な表現のマスコ
ミ報道が無いことに多少の違和感を憶えました。

 情報発生源の問題なのか、伝わる過程での変質なのか。メルマガとホーム
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 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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