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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002/11/12
http://www.asanoshiro.org/                  第62号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「障害児教育と義務教育国庫負担」(浅野史郎)

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 ○「障害児教育と義務教育国庫負担」(浅野史郎)

 政府の地方分権改革推進会議が10月30日に提出した最終報告に対して、
「補助金縮減の地方への税源移譲などの措置が示されず、とうてい受け入れ
られない」とする6知事連名の緊急提言を公表した。岩手県の増田知事が、
こういった緊急提言をすべきだと言い出して始まったことである。6県知事
には、私のほかに、三重の北川、和歌山の木村、鳥取の片山、高知の橋本の
各知事が名を連ねている。東京の都道府県会館内で記者会見を行い、そこに
は増田、片山知事とともに私も出席した。

 最も大きな問題は、義務教育国庫負担の縮減である。本来、3兆円にのぼ
る義務教育国庫負担全額の廃止と、その分の財源を税源移譲の形で地方に移
すべきであるという主張を我々知事はしてきた。それが、教職員の退職手当
などの5000億円の分だけを廃止し、それに見合う財源手当は示されてい
ない。これでは、「やらずぶった切り」ではないか。

 その記者会見での質問で、「義務教育の国庫負担がなされていることで、
具体的にどんな問題があるのか」というものがあった。それに答える形で、
最近私が考えていることを開陳させてもらったので、ここに再現してみる。

 宮城県では、重い障害を持った子も、本人と保護者が希望するのであれば、
校区の普通学級で教育を受けられるようにしたい。キーワードは、「選択」
である。養護学校、特殊学級を選択することも可能である。

 普通学級で重い障害児を受け入れるとなると、そのままでは無理である。
その障害児のための補助的な教員の配置、校舎のバリヤフリー化が必要であ
る。その教員の配置は、現在の「標準法」ではできない。「加配」と呼ばれ
る、特別の需要に対応する教員の追加的な配置もできない。「できない」と
いうのは、国庫負担の対象にならないということであって、その教員配置の
ための財源を県、市町村が独自に単独で調達するのなら構わない。現に、そ
ういう形で対応している、大阪府大東市、千葉県浦安市の例は、この稿でも
以前に紹介した。

 つまりは、文部科学省が方針として堅持している障害児の分離教育からは
ずれる形での障害児教育を進めようとする地域は、そのために必要とされる
教員配置の費用を独自に負担してでなければならないということになる。結
局は、文部科学省の信じる方法、つまり、分離教育の考え方に沿って障害児
教育を進めないと、地域はそれなりの犠牲を強いられるということである。
そういったシステム自体、本当に望ましいものであろうか。

 障害児教育ひとつとっても、義務教育国庫負担制度は、こういった問題を
投げかけることになる。結局は、文部科学省の方針を押しつける結果をもた
らしている。地域ごとの教育の独自性を保障するゆえんではない。

 こういった各論から「攻める」ということもあるが、正攻法の、そもそも
論もある。義務教育国庫負担は、今の時代に、どういった理由と論理で正当
化されるのか。退職手当や、長期共済掛け金にあてられる負担金の分、総額
5000億円だけを削っておいて、それに見合う財源手当もしないというこ
とは、地方の納得が本当に得られると思っているのだろうか。上に書いた障
害児教育のやり方と違って、退職手当、共済掛け金に、一体全体、地方とし
ての裁量の余地とか、独自性というのはどうやって発揮されると考えている
のだろうか。

 6県知事だけではないが、同じ志、問題意識を持つ知事達とも連帯しなが
ら、この大事な戦いに勝利していかなければならない。

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 雪が積もったかと思ったら、20℃に達するばかりの陽気になったり。気温
の変化に、私の体がついていきません。風邪を引かないのが不思議なぐらい
です。みなさんも、体調管理にはお気をつけて。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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