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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/2/11
http://www.asanoshiro.org/                  第75号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「消費税の引上げ」(浅野史郎)

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 ○「消費税の引上げ」(浅野史郎)

 消費税を引き上げるという議論が、ここにきて活発になっている。奥田日
本経団連会長が、将来の社会保障財源にすることを想定して、04年度から
1%ずつ上げて、25年度には16%にするという改革を提言した。この議
論の口火を切った感じである。小泉首相は、「自分が首相である間は、消費
税の引上げはやらないが、議論をするのは結構」という姿勢である。

 私は、消費税の引上げ論には、慎重な姿勢をとらざるを得ない。歳出の見
直しより前に、増税の議論をするのはいかがなものか。これだけ歳出の削減
をやった、それでもどうしても財源の手当てがつかない、だから増税だ、消
費税引上げだ、というのなら、なんとか理解はできる。

 ここで言う「歳出削減」の議論は、どうしても人件費の問題、天下りの問
題を含まなければならない。霞ヶ関の役人は、給料に見合う仕事を本気で
やっているか、あれだけの人員は本当に必要であるのか、天下り先の確保の
ために、不要な事業や組織を温存していないか。こういったところに向けら
れる国民の目は、「増税」ということになれば、ことのほか厳しいものにな
るはずである。この問題を、実質として整理しきってからでなければ、消費
税引上げなど、言い出せたものでもないだろう。

 次に、国と地方との財源配分の問題である。現在の消費税5%のうち、4
%分は国が取り、1%分は地方の財源として分配されている。引上げがどの
程度の幅になるにしても、国と地方との取り分をどうするかの議論は避けて
通れない。そもそもの議論として、現在の5%の中で地方の取り分を1%か
ら2%に引き上げるという、「片山試案」がある。消費税をいじるなら、当
然ながら、この問題を片付ける必要がある。

 福祉目的税にするという議論を前提として、消費税引上げ論が言われるこ
とがある。思い起こせば、細川内閣の時に、小沢一郎議員と大蔵省とが組ん
で、真夜中に突然福祉目的税の新設がぶち上げられたことがあった。福祉の
充実が目的なら、国民も文句を言いずらいだろうという、安易な発想が透け
て見えた気がしたものである。案の定というか、当然の帰結として、この案
は葬り去られたが、この発想はいつでも息を吹き返すものである。

 そんな荒っぽい論理で消費税の引上げが持ち出されては困る。福祉のどう
いう分野に使うのか、その分野の支出を消費税の収納状態と連動させること
が、実際的なのかどうか。そういった議論をすれば、成り立つことは極めて
疑わしい性格のものであることが、明らかになってくるはずである。

 奥田会長の提案では、消費税の税率を毎年1%ずつあげるとされている。
そうなると、今買っておいたほうが得だからということで、消費が活気づく
というのだが、果してそんなうまくいくものかどうか。確かに、引上げの直
前はそういった心理は働くだろうが、引上げられたあとの消費の落ち込みは、
極めて大きいことは、過去の歴史が示している。現在のように、景気が低迷
しているときに提案すべき内容なのかどうか、私には大いに疑問である。

 以前に、福祉問題についての集会に出た時に、参加者の一人が「税金も
払っていない私がこんなことを言うのはおかしいのですが・・・」と発言し
ていた。それを聞きとがめて、「そんなことはない。あなたは、消費税を
払っているではないですか」と私が言った覚えがある。消費税は、納税者の
範囲を広げた。国民の中の相当程度は、所得税を負担していない。これを、
「国民総納税者」ということに変えたのは、消費税である。消費税の導入に
より、国民すべてが納税者意識を持たざるを得ない状況へと突入した。

 消費税引上げの議論は、当然ながら、この納税者意識を刺激せずにはいら
れない。県政も含めて、政府のやっている仕事の内容、仕事ぶりについて、
厳しい目でのチェックをするのが、納税者意識のしからしむるところである。
それは、行政にとっても、大きな刺激にならないはずはない。

 もっと議論を発展させれば、民主主義の議論の根幹は、税の問題である。
税を取るなら、使い方まで我々に看視させろ、意見を反映させろ。これが民
主主義そのものである。であるとすれば、消費税の引上げ議論も大いにすべ
し、という立場も成り立つ。だからこそ、この議論を安易に流してはならな
いのである。消費税引上げ論は、当然ながら、税制全体の問題にも関わって
くる。歳出見直し論、公務員制度論、そして政治の在りかた論にまでつな
がっていく。

 となると、冒頭の私の慎重論は、ちょっと変形させなければならないかも
しれない。議論はすべし。他人事として傍観するのでなく、さりとて、いか
なる増税も絶対だめという教条論も排しつつ、冷静な、徹底した国民的議論
が巻き起こることは、大いに歓迎していいのかもしれない。

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> [編集後記] <

 先週の土曜日(2月8日)は、浅野知事の55回目のお誕生日でした。ご本人
は「四捨五入すると60歳」とおっしゃっていますが、ますます若くなってい
るように見えます。私も知事のような歳のとりかたをしたいなと。そのため
には、やはりジョギングでしょうか?

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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