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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/4/8
http://www.asanoshiro.org/                  第83号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「県警犯罪捜査報償費の闇」(浅野史郎)

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 ○「県警犯罪捜査報償費の闇」(浅野史郎)

 そもそも、「犯罪捜査報償費」なるものを聞いたことがある人は多くない。
ましてや、その中身を知っている人はほとんどいない。実は、私も、知らな
いほうの一人である。文字通り、犯罪捜査に関して、情報提供などの協力を
してくれた人に対して払われる費用のことであるが、その実態については全
く知らなかった。

 私の場合、「知らない」といって平気ではいられない立場である。仙台市
民オンブズマンは、宮城県警の報償費が架空のものであり、だから、その予
算の執行を差し止めるべきであるという訴訟を起こしていた。また、同じく
市民オンブズマンは、報償費に関する情報公開訴訟も提起していた。どちら
も、被告は宮城県知事たる私であり、訴訟の実際は弁護士にお任せするにし
ても、私自身が、そもそも論点になっている報償費について知識が全くない
では済まされない。

 こういった問題意識から、報償費について内容の把握に努めていたのだが、
最終局面では、どうしても、現場の捜査員からも説明を聞かなければ、実態
はわからないと思うに至った。そのことを県警にお願いしたあたりから、県
警の対応ぶりは、私にとって理解できないようなものになったのである。つ
まり、捜査員からの聴取は前例がない、その必要がない、捜査員の士気に関
わるといった理由をあげて、その要請には応じかねるというのが県警からの
反応であった。

 情報公開訴訟では、今年の1月に仙台地裁の判決が出て、「毎月の報償費
執行金額を開示せよ」という判決が仙台地裁から出された。県警としては、
「それでは困る」ということから、私に控訴して欲しいということで、県警
本部長自ら要請をしてきた。「困るといっても、開示されて、実際にどう困
るのか、なぜ困るのか」がわからないままでは、控訴をしても反論のしよう
がない、だから、捜査員から説明してもらいたいと私からお願いしたのであ
る。そこで納得できれば、控訴するということも言った。それに対しても、
本部長からは、「捜査員から聴取の必要はない、副署長クラスから説明させ
れば済む」という回答であった。

 この辺から、私の中で疑問が強くなってきた。なぜなら、ここで控訴しな
いで判決が確定してしまえば、毎月の報償費の金額を明らかにした書類が公
開されることになる。県警が言うには、「それは、大変な支障がある」とい
うことである。それはそうだろう。ところが、「支障とは具体的になんなの
か把握するために、捜査員からの説明を聞きたい、協力者の固有名詞などは
いらない」と頼んだのに対して、それは「必要ない」という答である。つま
り、控訴することよりも、捜査員に説明させないことのほうを県警が選択し
たということになる。これは、どう考えても理解不能であった。結局、公文
書をもって「捜査員からの説明を求める」と要請することになったのだが、
それに対しても「ノー」という回答であった。予算執行権者としての知事か
ら、予算の執行状況について聞きたいという正式な要請にも応じてもらえな
いとなれば、監査委員に監査を要求するしか方法は残っていない。3月末に、
私から報償費に関しての監査を要求して今日に至っている。

 監査の要求、その前の公文書での捜査員からの説明の要求も、どちらも、
県警の犯罪捜査報償費は適切に執行されていないのではないかという疑問が
あってのことである。知事がそんな疑問を持つこと、そしてそのことを公表
すること自体、極めて重大なことである。報償費の予算は、副署長クラスに
までは渡っていても、捜査員にまでは全部は渡っていないのではないかとま
で言っている。こんなことを知事に言われることは、県警の名誉に関わるし、
捜査員の士気に関わること著しい。県警としては、ぜひとも、知事のこんな
「暴論、言いがかり」には反論すべきだし、報償費は的確に誠実に執行され
ていることを確認するための内部調査をしっかりすべきである。

 そんなことを考えていた頃。3月26日に東京高裁の判決が出た。警視庁
銃器対策課の犯罪捜査報償費に関する訴訟判決において、情報提供者への謝 礼の領収書は「支払いを仮装した偽造」と東京高裁が指摘したことが、新聞 で報じられた。判決の中で、「領収書は警察官が作成したと推定する以外な く、無断で氏名を使うことは人格権の侵害にあたる」として、領収書に勝手 に名前を使われたと主張していた会社員2人に対し、東京都は24万円を支 払うべしと命じた。  驚くべきことである。警視庁の例ではあるが、報償費の支払いは架空で あったと高等裁判所が認めざるを得ない事例があったということである。さ らに驚いたのは、この判決に対する警視庁訟務課長の「上告の方向で関係機 関と協議する」とのコメント。法律の解釈の問題ではない。事実関係の争い である。「領収書を偽造した」と判決で指摘されている、当時の警察官に、 「お前、そんなことしたのか、しなかったのか」と聞けば、それで済むだけ の話。つまりは、内部調査をやれば真偽のほどはすぐにわかることなのに、 上告をするとは、常識ではとても理解不能である。  本当に、訳のわからない話ばかりである。警察の中の情報については、 「捜査上の支障」というロープが張り巡らされて、そこから先は「立入り禁 止」。そのロープが、ずいぶんと前面に張られていることが問題。「立入り 禁止区域」が広くなれば、それだけ外の目が入る余地がなくなる。どうして も、そのロープの張り方の適否まで踏み込まないと、こういった問題は解決 にならない。結局は、情報公開の問題に行き着くのである。  それはそれとして、真実はなんなのか。この際、どうしても明らかにしな ければ前へは進めない。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  仙台では、宮城県議会と仙台市議会議員選挙が重なって行われています。 私が住んでいる泉区では二つの選挙併せて20人を越える候補者がいます。見 定めようとは思うのですが、街宣車の声と選挙公報だけでは、よく分かりま せん。ホームページなどでの選挙活動がオープンになれば、もっと多くの情 報が手に入り、候補者の選択に寄与すると思うのですが。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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