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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/4/29
http://www.asanoshiro.org/                  第86号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「新型肺炎(SARS)」(浅野史郎)

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 ○「新型肺炎(SARS)」(浅野史郎)

 新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)は、4月26日現在、28
か国・地域で、感染者4649人、死者274人に達している。この数字を
見ると、SARSは大変な猛威を振るっているように思えるが、感染拡大が
続くのは、5か国・地域にほぼ限定されている。

 日本では、今のところ、正式な発症者はゼロ。これを見れば、水際作戦が
成功していると言えるだろう。SARSの流行地である中国本土との行き来
は盛んであり、現地で働いている日本人は多いのだから、日本国内で発見さ
れた感染者がゼロというのは、奇跡に近い。実は、感染者はいるが、発症が
重篤でないために、いつのまにか直ってしまったという人がいるかもしれな
い。だから、「感染者ゼロ」というのを、そのまま受け止めて、安心し切っ
てしまうのは、少々早過ぎるのかもしれない。

 感染者が出ていないということもあり、国内には具体的な「騒ぎ」は起き
ていない。香港から帰国してきた小学生の転入に際して、神経質過ぎるよう
な対応をしている学校当局があるぐらいであろうか。もちろん、流行地への
出張や旅行を取りやめる例は、枚挙にいとまがない。こちらのほうは、「神
経質過ぎる」と言うことはできない。

 SARSが恐れられているのは、そもそもの原因がわからないということ
もあり、根本的な治療法がみつかっていないことが大きな要因であろう。当
然ながら、決定的な予防法もない。どのようにして感染するのかも、十分に
わかっていない。そして、致死率も、4%とか5%と比較的高いことも、不
気味である。

 症状がインフルエンザなどと変わらないので、症状だけでSARSと判別
するのがむずかしいと言われている。38度以上の熱、咳、筋肉痛、発疹、
下痢といった症状はインフルエンザと同じでも、流行地域から帰国したとい
う要件が加われば、にわかにSARSと疑われることになる。仮に、日本国
内で感染者が発見されれば、伝染経路の確定が問題になり、次には、その感
染者と接触した人の追跡が必要になってくる。その時点では、大きな騒ぎに
なるだろう。

 ただし、ここで正しく理解しておかなければならないのは、SARSの伝
染性は、それほど高くはないということである。感染ルートは、感染者の咳
やくしゃみを浴びる「飛沫感染」であろうと考えられている。感染者と直接
接触するとか、1メートル以内に近づいて、飛沫を浴び、それが鼻、目、口
などの粘膜に付着するといったことがなければ、感染は防げるとのこと。空
気感染の可能性も消えてはいないようであるが、基本的には、飛沫感染、接
触感染であるから、手洗い、消毒の徹底で防ぐことは可能なはず。インフル
エンザやはしかよりは感染力は弱いと言われている。

 ということからいけば、SARSに対する対策はおさおさ怠ってはならな
いとしても、いたずらに神経質におびえることはない。特別なしつらえの病
室がないと、伝染が防げないということでもないはず。標準的な予防対策を
しっかりとれば、院内感染を防ぐことは、それほど大変なことではないであ
ろう。

 それにしても、今回のSARSへの対応ぶりで、各国ごとの差が出たこと
が印象に残る。アジアでは、ベトナムが成功例として評価されている。それ
に反して、中国、香港の対応が後手に回ったことが、WHOなどから批判さ
れている。特に、中国は、感染者の数を過小申告したことが明るみに出てし
まい、あわてて修正するという、最悪の対応をしてしまい、世界の信頼を失っ
てしまった。それだけでなく、必要な対策が後手に回ったために、感染者の
拡大を防ぐことができなかった。このことによって中国が失ったものは、限
りなく大きい。

 まさに、SARSは、単なる疾病の蔓延ということを超えて、経済問題に
もなっている。中国、香港を中心に、旅行客の激減だけでなく、会議や商談
会の中止によって、経済活動が抑えられてしまっている。わが仙台空港から
の香港便も、5月までは運休を余儀なくされている。我々にとっても、大き な痛手である。  まだまだ「教訓」まで言うのは早過ぎるのだが、事態を甘く見ないで適時 に適切な対応をすること、逆に、過度に神経質になってパニックに陥る愚は 避けるべきこと(幸い、そういった事態は生じていない)、こういった事態 における情報隠しは最悪の選択であること、そんなことを考えさせられる。  ともあれ、身近なところから。手洗いとうがいの励行。十分な睡眠、バラ ンスのとれた食事、良好な体力の保持、これらが基本であることは、どんな 疾病の流行の場合でも同じことである。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  今年のゴールデンウィークは飛び石連休のためもあり、海外旅行者が激減 しているそうです。その代わりに、パソコンやテレビなどが売れているそう です。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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