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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/6/4
http://www.asanoshiro.org/                  第91号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「三位一体改革」(浅野史郎)

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 ○「三位一体改革」(浅野史郎)

 「三位一体改革」についての議論が、いよいよ熱を帯びてきた。経済財政
諮問会議、地方分権改革推進会議、地方制度調査会での検討が最終段階に入
り、報告が出されようとしている。一方、地方側も全国知事会のほかに、私
もメンバーになっている地方分権研究会などが、「三位一体改革に値する改
革をしっかりやるべきだ」といった決議をしている。

 そもそも、三位一体改革とはなにか。国による中央集権から、地方分権へ
の流れの中で、権限の移譲に続いて、財源の移譲をどうするかということか
ら出されたものである。「三位(さんみ)」の三つのこととは、税財源、補
助金・負担金、地方交付税のことであって、「一体」というのは、これらを
一体として、つまり同時に改革をしようというものである。

 知事など、我々地方側が主張しているのは、補助金・負担金は廃止をし、
そうやって削減された分は国税から地方税への移譲によってあてる、同時に、
地方交付税についても、本来の趣旨からはずれているようなものは廃止をす
るということである。最後の地方交付税の部分は、論者によってニュアンス
が違っているので、ここは私の意見ということにしておいてもいい。

 地方側が激しく反発したのは、一時期、地方分権改革推進会議の小委員長
案ということで発表されたものが、税財源の地方への移譲については、増税
をする時期まで先送りをし、補助金・負担金の廃止などだけを先行させると
いう案になっていたからである。これはひどい、めちゃくちゃである、三位
一体の名前に値しない、これが地方側の一致した見方であった。

 私達が言っているのは、まず、国庫補助金・国庫負担金を廃止しましょう
ということ。補助金については、その使い方に不合理・不必要な制約がつけ
られること、不要と思われる補助事業についても「補助金はもらわなきゃ損」
という発想で無駄が生じ得ること、補助事業がタテワリになっているので、
補助事業の枠を越えた事業ごとの優先順位の判断がなされなくなること、そ
もそも、補助金をもらうための手間暇が膨大になること、こういった理由か
ら、廃止が適当なものがたくさんある。地方に自由にやらせたら、もっと有
効に財源を使う、又は、そもそもそんな事業はやらないといったことになる。
こういったように、補助金の弊害は、次々と列挙できる。

 たとえ補助金をなくしても、補助対象である事業そのものの必要性は、当
然ながらほとんどの場合なくならない。だから、地方としては、自前で事業
を実施することになるのだが、そのための財源としては、移譲される税源を
あてることになる。具体的には、国税である所得税を地方税である住民税に
一部振り替える、消費税5%のうち、2%(現在1%)を地方に回すなどの
方法による。全体として増税にするのではなく、税収のうち、国の取り分を
減らして地方分を増やすことにする。補助金には無駄があるので、補助金を
減らした分の9割ぐらいの税源が移譲されただけでも、地方はやっていける
だろう。つまり、同じ事業を、全体として90%の財源で実施できることに
なる。

 地方交付税にも無駄がある。地方交付税の第二補助金化、又は前倒し実施
と言われていることである。つまり、公共事業の実施に県債をあてて、後年
度に県債償還の際、元本の相当部分は地方交付税でめんどうを見るというや
り方である。これは、地方交付税の本来の使われ方ではないだろう。こういっ
た使われ方が、無駄を助長するとして、識者からの批判の的になっている。
これは、やはり改めるべきだろう。

 やや専門的になった。読者の方々も、「むずかしい、めんどうでついてい
けない」という感想を持った方もいらっしゃるだろう。さらには、「つまり
は、財源をめぐっての国と地方との綱引き合戦でしょ。そんなことに、一般
の国民は全く興味ないよ」と言われそうである。ちょっと待って欲しい。む
ずかしいというのは、私の説明が下手なせいもあるだろう。しかし、「興味
ない」というのは、考え直してもらいたい。

 この問題は、断じて綱引き合戦ではない。この国のかたち、つまりシステ
ムをどうしていくかという問題であって、実は、一般国民にも大いに関係が
ある。以前から私は、この議論の文脈では、「国民」の代わりに「納税者
(tax payer)」と呼ぶべきだと言ってきた。納税者の払う税金と、その対価
としての行政サービスとの間に、緊張関係を持たせるべきだというのが、こ
こでいうシステムの問題である。

 国に払った税金が、補助金・負担金という形をとって都道府県などの地方
に流れていき、実際の行政サービスのかなりの部分は、地方自治体によって
なされる。そういった構造の下で、行政(特に地方自治体)と納税者の緊張
関係が保たれるかという問題につながる。事業実施にあたっての無駄の排除
ということについては、少し書いたが、それに加えて、限られた財源の中で、
どの事業を優先するかという「あれか、これか」の議論は、国と地方との現
在のような財政システムの中では、極めて限定されてしまう。

 先日、増田寛也岩手県知事、木村良樹和歌山県知事、片山善博鳥取県知事
と一緒に、首相官邸で小泉純一郎首相とお会いして、短い時間ではあったが、
この「三位一体改革」についての意見を申し上げる機会があった。小泉首相
は、補助金廃止についての各省庁の抵抗が強くて大変だということはおっ
しゃっていたが、改革実現に向けての強い決意は感じることができた。これ
に勇気を得て、我々もがんばらなければならないと思った。

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 前々回と前回のメルマガで田島良昭さんのラジオ出演をお知らせいたしま
した。皆さんはお聞きになったでしょうか?

 そのラジオ出演のお知らせの中で、28日のテーマを「25年間の思考錯誤」
としてしまいました。正しくは「試行錯誤」です。誠に申し訳ありません。
また、ご指摘いただきまして、ありがとうございました。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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