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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/6/17
http://www.asanoshiro.org/                  第93号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「宮城県沖地震」(浅野史郎)

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 ○「宮城県沖地震」(浅野史郎)

 5月26日(月)午後6時24分、宮城県、岩手県を中心に、震度6の地
震が発生した。正式な命名ではないが、「三陸南地震」と呼んでいるもので
ある。その時私は、仙台市内のホテルで開催された「鯨サミット」で議長を
務め終わり、それに関して地元テレビ局のキャスターの質問に答えていた。
正確に言うと、その取材の電話が切られた数秒後に揺れが来たのである。

 ガタガタという部分があって、それから大揺れである。ホテルのシャンデ
リアが大きく揺れた。身の危険を感じるほどではなかったが、今までにない
大きい地震で、すぐに対応しなければならなくなるとの感触を持った。激し
い揺れというよりは、大きい揺れ。仙台に限っては、それほどの被害にはな
らないだろうとは思った。

 すぐに県庁に出向いて、被害状況が集まるのを待った。幸いにして、人命
に関わる被害は発生せず、その他の被害も、これだけの揺れのわりには、小
さくて済んだ。県外の多くの方々からお見舞いを頂戴したが、対策にてんて
こ舞いというほどではなかったのが、不幸中の幸いであった。この程度の被
害で済んだのは、ガタガタの激しさは少なく、ユーラユーラの大きさが目立
つという、特異な揺れ方のせいであろうと思っている。

 この地震の前から予定されていたのだが、6月5日(木)には、仙台市内で
「防災シンポジウム」が開催された。三陸南地震の余震もまだ続いている中
でもあり、関心がいやが上にも高まったのだろう。1200名の方々が参加して、
大変な盛況であった。

 私もパネリストの一人として参加したのだが、シンポジウムは、やはり、
次の宮城県沖地震の発生を強く意識してのものとなった。昭和53年6月12日の
宮城県沖地震から今年で25年目。次の宮城県沖地震発生は,今後10年以内に
39%,20年以内に88%,30年以内に99%の確率で発生するという数字も発表
されている。つまりは、私が生きている間に、必ず発生するということと受
け止めなければならない。

 この時のシンポジウムで、私が強く感じたことのいくつかを書いてみたい。
まずは、津波のことである。今回の三陸南地震では、幸いにして、津波の発
生はなかったが、来るべき宮城県沖地震では、十分にあり得る。めったに来
ないものなので、津波に関しての住民の恐怖の記憶は薄れ、地域での備えも
十分でない。

 過去の地震の記録で、津波でなく、山崩れでの被害を受けた地域では、言
い伝えとして「地震が来たら浜に逃げろ」というのがあるそうだ。地震のあ
とに、その地域に津波が来襲したら、大変な被害になる。大きな災害は、ふ
つうは人生にせいぜい一度であり、その時の経験が単純に一般化されると、
こういった間違い情報に転化する危険性がある。そんな恐ろしさを感じた。

 地震発生から津波警報まで数分又は十数分かかっている。沿岸の住民であっ
ても、地震が発生すると、テレビからの情報を待ってしまう。津波警報が出
された時には、逃げるタイミングを逸してしまうことも起こり得る。シンポ
ジウムで私が言い出したのだが、だったら、気象庁は、大きな地震の後は、
何も考えずに沿岸部にまず津波警報を発してはどうだろうか。そして、恐れ
がなくなったことが確認できた時点で、警報を解除する。他のパネリストか
らは、そこまではやり過ぎで、住民の側で「大きな地震イコール津波警報」
と受け止めて行動し、テレビの前で次の情報を待つなどということは、やめ
れば済むことだと指摘されてしまったが・・・・。

 もう一つは、住宅の耐震診断のことである。住宅密集地での建物倒壊は、
それ自体大きな被害であるが、もう一方において、道路を塞いでしまって、
救助のための車両が通れなくなるという意味では、加害行為にも転じてしま
う。行政がすべて耐震診断をし、そのあとの改修まで手がけられるものでは
ない。やはり、それぞれの住民側において、備えを万全にしておく必要があ
る。特に、住宅密集地における古い木造住宅で、高齢者などの災害弱者が住
んでいる住宅は、最優先であろう。一階部分に壁を多く作るだけで、倒壊が 防げるということも、このシンポジウムで教えてもらった。  6月12日には、毎年のことであるが、県庁内で防災の図上演習を実施した。 今回は、先の三陸南地震に際しての対応の反省点を踏まえての演習になった。 その意味では、5月26日の地震は、実施の訓練になったわけであり、その教 訓を生かすことができた。まさに、禍を福に転じる結果とすることができた。  それにしても、わが宮城県にとっては、「天災は忘れたころにやってくる」 どころではない。「忘れる前に必ずやってくる」のである。そういった意識 をもって、危機対応をしなければならないと肝に銘じている。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  前回の編集後記で私がプロ野球の横浜ファンであると書きましたら、何人 かの方から、お返事をいただきました。その全てが「横浜ファン」。  さぁ、今日からはじまる首位阪神との三連戦。一泡どころか、三連勝とい きたいですね。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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