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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/6/24
http://www.asanoshiro.org/                  第94号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「IWC(国際捕鯨委員会)」(浅野史郎)

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 ○「IWC(国際捕鯨委員会)」(浅野史郎)

 6月16日から19日まで、ベルリンで開催された第56回IWC(国際
捕鯨員会)に出席してきた。昨年の山口県下関市に続いての開催である。こ
こでの第1回「鯨サミット」、そして、今年の仙台での第2回目のサミット
については、このメルマガの5月27日号に書いた。

 ベルリンでのIWCが、私にとっては、実質的には初めての総会参加とな
る。「鯨サミット」の成果を携えて、全国の自治体からの商業捕鯨再開を待
望する声を、反捕鯨国を含む委員に訴えなければならない。名誉なこととも
言えるが、結構な責任も感じての参加ということになる。

 第2回「鯨サミット」での宣言文を、総会初日の6月16日(月)に、私
が壇上から直接読み上げさせてもらった。4日間の総会を通じて、壇上から
話すことができたのは、開催地であるドイツの消費者保護・食糧・農業担当
のキュナスト大臣と私だけであったのだから、破格の扱いを受けたことにな
る。日本代表団として、あらかじめ議長とうまく話をつけてくれたおかげで
ある。この点は、大いに感謝したい。

 そういった扱いは受けたが、会議のほうでは、私の訴えだけでなく、日本
代表団の主張はことごとく無視され、反捕鯨国の理不尽な主張が、まかり通
る状況であったのは、まことに残念至極であった。そもそもIWCは、捕鯨
を適切に管理することを目的に設立された会議であるにもかかわらず、資源
保護、環境保護が前面に出てしまっている。参加していた発展途上国の代表
が、会議の場で何度も繰り返していたが、まさに、IWCが環境保護の先進
国に「ハイジャック」された状態になっている。

 今回の会議では、特に、2点において、わが国などにとっての敗北感を深
める決定がなされた。一つは、「鯨保存委員会」の設置決議、いわゆる「ベ
ルリン・イニシャティブ」が通ったことである。あえて、こういった委員会
をIWCの中に設置することは、全く必要がないのにもかかわらず、反捕鯨
国によって決議されたしまった。IWCが、鯨の持続的利用から鯨保護へと
変質させることを象徴的に示す動きである。

 もう一つは、沿岸小型捕鯨の再開として、わが国の沿岸海域でのミンク鯨
年間150頭の捕獲枠の設定提案が、大差で否決されたことである。前回の
下関会議では、1票差での否決(採択には、4分の3の賛成が必要)であっ
た。その際は、150頭ではなく、50頭であり、目的も調査捕鯨の一環だっ
たという違いはあるが、やはり反捕鯨国からの風圧はさらに強まったと見る
ことができる。

 こういった事実関係は、新聞でも報道されているので、この稿では、初参
加の私が感じたことを少し書いてみたい。

 会議では、「鯨を殺すのはかわいそう」とか、「鯨肉を食べるのは野蛮」
といった議論は全くなかったのは、当然と言えば当然なのかもしれない。そ
れなりに、理屈の世界が展開されていた。しかし、その「理屈」というのに
は、言いがかりのようなものも含まれていると思わざるを得ない。

 「科学的知見」というのを、どう扱うか。鯨が、種類ごとに増えているの
か減っているのか。増えているという根拠に、ある程度の不確実性があるの
は、当然であり、そこに安全率を掛けて、その範囲で捕獲すれば何の問題も
ないのにもかかわらず、「不確実性」を言い立てて、たった150頭/年の
捕獲枠設定に強行に反対する。聞いていて、まるで日本が、反捕鯨の先進国
に、いじめの対象にされているような気がしてきた。

 「環境保護のためには、いささかでも鯨を捕ることは悪である」という考
え方が、反捕鯨国の根っこにあるのではないか。であるとすれば、鯨が実際
に増えているのかどうかを調査することの意味が、最初からないも同然であ
る。となれば、鯨の持続的利用を、国同士の合意に基づいて管理していこう
というIWCの設立目的そのものに、反しているということにならないか。
「鯨保存委員会」の設立決議をめぐって、日本、ノルウエー、アイスランド
などの捕鯨国が主張していたのは、まさにその点であった。  会議は会議として、私としては、コーヒー・ブレークの機会に反捕鯨国の 代表や、NGOの人たちと直接意見交換できたことが収穫であった。捕鯨は あきらめて、鯨観察(ホエール・ウオッチング)に転向したらどうかという 人もいた。日本が、象、虎、ウミガメ、パンダなどの野生生物の保護にもっ と熱心に取り組んでいるところを見せたら、捕鯨に関しての外国に見方も変 わるのではないかとか、結構興味深い見解を聞くことができた。  それにしても、国際舞台では、国益をむき出しにした激しい議論が戦わさ れている。日本は、そういった戦いにおいて、着実に勝利していかなければ ならない。政府の存在意義は、まさに、そういうところにある。留守をして いた日本では、時あたかも、「三位一体」の改革が中途半端な形で「政治決 着」されようとしている。農水省もその一つだが、中央省庁は、内政問題は 基本的に地方に任せて、こういった国際問題にこそ、人材とお金と精力を注 ぎ込むべきではないか。IWCにおいて、日本の国益が侵されようとしてい る状況を目の当たりにして、そういったう思いを新たにしたところである。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  15年ほど前、私が小学生の頃の給食には「くじらのオーロラ和え」という メニューが、月に一度出てきました。とっても好きな献立で、クラスのみん なでおかわりを争った記憶があります。  捕鯨への関心がそれほど大きくならないのは、食生活が豊かになったから でしょうか。私は、あのオーロラ和えがまた食べたいです。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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