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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/8/5
http://www.asanoshiro.org/                  第100号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「宮城県北部連続地震」(浅野史郎)

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 ○「宮城県北部連続地震」(浅野史郎)

 7月26日の未明、早朝、夕方と、一日に3回、震度6以上の地震が宮城
県北部を襲った。一日3回というのは、観測史上初めてという。旭山撓曲と
呼ばれているが、地下の岩盤がずれた影響で、その上にある地層が階段状に
折れ曲がるという現象が起こった。そういったことからも、予想もできない
ような態様の地震となった。

 地震発生当時、私はブラジルにいて、帰国が遅れた。そのため、現地視察
をしたのが、7月30日(水)になってしまった。河南町、南郷町、鹿島台
町、矢本町、鳴瀬町の被害の状況を直接見て、大変な災害であることを実感
した。こうやって現地の惨状を見れば、もう一日早く現場に来るべきであっ
たことは、よくわかる。被災された方々は、どれだけ心細い思いであったこ
とか。言い訳をするべき時ではない。被害に遭われた方々に、率直にお詫び
を申し上げたい。

 これだけの大きな地震である。何百世帯もの家が全壊し、ブロック塀が崩
れ落ちた。急傾斜地の崩落も数多く発生した。道路の地割れ、陥没は数え切
れない。それだけの被害があった中で、死亡者がゼロというのは、奇跡的と
も言える。

 一日3回も大きな揺れに見舞われたということも特異なことであるが、撓
曲という現象による揺れ方は、普通と随分違う。外見上の被害はさほどでも
ない家屋が、内部に入ると、撓み、ゆがみのために、とても使用に耐えない
ような状況になっている。全壊とはいえないし、半壊でもない。しかし、被
害としては尋常でない程度のものである。

 裏山に地震による亀裂が入り、崩落している。その真下にある住宅は、た
とえ被害を受けていなくても、崖の崩落で、いつ直撃を受けるかわからない。
そういった家に住み続けることは、事実上困難である。

 加えて、その後も何度も余震が襲うという状態がある。不安が募る。恐怖
心のために、家に戻ることができない人たちがいる。建物は残っても、内部
に物が散乱してしまい、それを片付ける気力が湧かずに呆然としている人が
いる。そういったことから、各町の避難所には、当初、2000人を超える人た
ちが夜を過ごすことになった。私が視察にうかがった時にも、多くの方々が
避難所での生活を強いられていた。

 生活再建のために、県としても、全力を尽くさなければならないと思った。
大事なことは、スピードである。理屈はいらない。財源のことも、しばし忘
れなくてはならない。ともかく、目の前の被災者を救わなければならない。

 まずは、仮設住宅。法令により決められている入居要件とかをうんぬんす
ることはせずに、入りたいという人たちが一日でも早く入居できるように、
発注を急ぐべきと考えた。完成までは、通常、20日ほどかかるので、なお
のことスピードが必要である。8月1日には、まずは第1次の仮設住宅につ
いて、事実上の発注を終えた。

 仮設住宅に入るまでの間、ホームステイをしてもらったらどうだろうかと
提案した。「ホームステイ」という名称がよくなかったのかもしれない。被
災者のほうに遠慮がある。他人の家に身を寄せるのは、気が引けてならない
という方がほとんどである。それでも、空いている住宅を提供して下さると
いう方が出てきたので、これを書いている現在では、何人かがそれらを利用
することになる見込みである。

 住居ということで言えば、被災者の自分の家への思いの強さというのは、
農村部であることもあって、格別である。家畜を飼っている、畑が目の前で
ある、ビニールハウスから離れられないということもあり、仮設住宅も自宅
にごく近いところでなければ入りたくないという。

 鳴瀬町での例であるが、崩落危険の傾斜地を背にした家の方は、避難所に
すら移らない。自宅から数十メートルの距離のビニールハウスに寝泊りして
いらした。自宅から位牌を持ち出して、そのビニールハウスに置いてある。
家族の説得にも、全く応じる気配がない。どんなことがあっても、父祖の地
から離れない、自宅が見えるところに居たいという、高齢男性の強い意志が
感じられた。

 県として、被災住宅再建支援金を新設することにして、8月2日に発表し
た。全壊・半壊した住宅について、建て替えの場合100万円、補修の場合
50万円の費用を補助するというもの。そういった制度は、現在は存在しな
いが、国などの動きを待っているわけにはいかない。財源のあてはないが、
やらざるを得ないものと判断した。これも、スピードが大事だということで
ある。

 助け合いの実践は、至るところで見られた。県外からの大勢のボランティ
アの方々。中には、静岡県から来たと言う中学生の姿もあった。被災した家
の片付けを、その地区ぐるみで手伝っている例を、鳴瀬町で見た。南郷町の
ボランティア活動は、それまでの積み重ねもあって、極めて円滑に機動的に
動いているのが、特に目に付いた。たまたま私が目にしたものだけではない
はずである。全国各地からのボランティアの力に、どれだけ被災地は勇気付
けられたか。ありがたいことである。また、各地から寄せられた義捐金、
メッセージにも、心から感謝申し上げたい。

 地震から1週間ちょっとのところで書いている。まだまだ、私自身も夢中
になって動いている最中であって、まとまった文章を書けるまでになってい
ない。目に付いたこと、気が付いたことを、書き綴っただけである。被災者、
特に、高齢者や子どもたちの精神的なケアの必要性も強く感じる。残された
課題は、まだまだ多い。いずれ、もう少し落ち着いたら書き足したい。

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> [編集後記] <

 未だ余震が続く宮城県北部では、多くのボランティアの方々が復興支援に
あたられています。がれきの片づけを手伝っている方もいれば、「心のケア」
を行っている方もいるということです。

 阪神大震災で生まれたボランティアの仕組みが、ここでも生かされ、そし
て、地域に根ざしつつあることに感動しています。       (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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